オペラ座の怪人 


                                 電通劇場「海」 1階 S席 3列



                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 村 俊英  クリスティーヌ 西 珠美  ラウル子爵 佐野正幸
  カルロッタ  岩本潤子    メグ・ジリー 西田ゆりあ    マダム・ジリー 戸田愛子
  ムッシューアンドレ 林和男   ムッシューフィルマン  小林克人
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 深見正博
  ムッシュールフェーブル 鈴木 周
  ジョセフ・ブケー  岡 智

2006年6月16日(金)ソワレ



前回の観劇は5月13日(土)マチネ。
体調不良で夜の公演を待たず交代になった高井ファントム観劇から、
5週間が過ぎました。


その間、2週間を村ファントム、6月に入って2週間は高井ファントムで登板。
引き続き3週目・・・かと思ったらまたしても週途中で、キャスト表に
村さんの名前が追加になってビックリです。


前置きが長くなりましたが、今回はそういう経緯での村ファントム。
村さんは先週末まで「キャッツ」にご出演だったので、もう丸1週間のお休みも
あげられない状況なのかなあという気もしますが、今のところ二人しかいない
ファントム俳優さん、どちらも大事にしていただきたいものです。


この日は開演前にリハーサル見学会がありましたので、その時のことも思い出しながらの
観劇になりそう。




第1幕



オークション

佐野ラウル観劇は、個人的には昨年10月以来なので約8ヶ月ぶり。
そういえば、前回もリハーサル見学後の公演でしたっけ。



ハンニバル

深見さんのレイエは相変わらず、コミカルですね〜。
あれだけ注意したのに、ピアンジさんが「ローマ」って歌うので、ひとりで
憤慨するだけじゃ足りず、後ろに立っている女性にも
「ね、あれってどうなんだよ?」と訴えるゼスチャーをしています。


林アンドレもお久しぶりですが、可愛いダンサーさん達を見ても笑わないな〜林さん。
というか、寺田アンドレがあまりにも嬉しそうだっただけ?(笑)
西田ゆりあさんは最近デビューなさった新メグですね。
可愛いお嬢さんですが、もともとはダンス畑の方なのか、歌声の伸びは少なめでした。



クリスの楽屋

4月のデビューからほとんど休みなしの西クリスですが、美声はまだまだ健在。
「歌を教えさせよう」 が 「教えよう」 になっちゃったり、まだセリフは
ちょっぴりたどたどしいけど、感情の表現はぐんと豊かになられたような気がします。


佐野ラウル、今日はクリスが自分のことに気づいた後の 「クリスティーヌ!」が
大感激って感じで嬉しそう。
ところで、クリスを食事に誘うやりとり、ラウル俳優さんによって少しずつ動作の
タイミングが違うのが面白いところだと思います。
クリスの両肩をつかまえるようにして、ちょっと強引に説得する方もありますけど
「さあ着替えて」 の動作は佐野さんと柳瀬さんがスマートかつ無理がなくて好きですね〜。 
最近はご無沙汰ですが、クリスの両手を握って 「遅くまで引きとめないから・・」 と
甘くささやく石丸ラウルも素敵でした。
(女性にとってはああいうソフトなお願い作戦が、ある意味一番罪深いよね・笑)


以前どこかで書いたことがありますが、女性の歩幅や身長、それからドレスの裾などで
制限される動きに合わせるのって、大人の男性を感じさせる表現だな〜と思います。
演目違いですけど、エリザベートを演じる一路真輝さんがインタビューで
「山口祐一郎さんにはドレスの裾を踏まれたことがない」 とおっしゃっていたのを、
ちょっと思い出してみたり。


私たちの一般の生活でもありますよね、一緒に歩く女性のハイヒールのスピードや、
道の具合に気がつく人とつかない人。(変に細かいのもナンですけども)
これはたぶん無意識に近い感受性と、経験の積み重ねなので、20代前半の
若造子爵さまにしては、佐野ラウルはやっぱり人間出来すぎってことでしょうか。


・・と、気がつけば楽屋で延々語ってますね失礼☆



ファントム登場

姿を現した村ファントム、たしか 「ここだ」 のあたりだったか、
珍しく顔をちょっと左右に振るようにしていらっしゃいました。
ライトがピンポイントで当たっているシーンだから動かない方が良いはずだけど、
思わず気持ちが入っちゃったのかな。



オペラ座の地下

それにしても、村さん声の調子が良さそうですね〜。
こういうのをパンチがあるというのでしょうか。
最近の私は村さんお休み明け遭遇率が高いようで、元気一杯の村ファントム。
観劇をご一緒したお嬢さんとも、幕間に
「村さん、今日は声にドスがきいてますねー」 とお話したほどでした。
ホントにお疲れさまです親分!って感じ(笑)。 

「空に高く」 のラストを伴奏よりも長く響かせ、「心の おもむくまま」、もしっかり
伸ばした上に、良い感じの残響が最高にドラマティック。



さて、アンマスクシーン。



また余談になりますけど、
この場面の村ファントムってクリスへの熱い想いに加え、ためらいや「恥」を感じさせて
そこに色気があるような気がします。


高井ファントムにはこの 「ためらい、恥」 っていうのはあまりないような。
それどころか、1幕の地下シーンではファントムが秘めていたセクシュアルな空想を、
(それは当然、クリス自身の空想でもあるんだけど) 体現しているような
雰囲気もありますね。
イベント等で素顔を見る限りは、ご本人には結構恥ずかしがり屋さんの印象もあるのに、
舞台上でのファントムは、全く違う印象なのが面白いところです。


村ファントムは自らの熱情を、どこか 「抑えなくては」 と思いつつも
抑えきれない部分が魅力なんじゃないでしょうか。


素人考えではありますが、ファントムというキャラクターが持つ色気にも、
種類があるってことかな。
もちろん、だからどちらが良いとか正解ということではありません。
個人的に受ける印象の違いってことであります。



イル・ムート

今日の小林フィルマンは、全体にセリフが荒っぽいというか、「観客も!」とか
「思いもよらない・・」の言い方や態度に、少々投げやりな印象を受けました。
手を抜いているというのじゃなくて、そういう役作りに変更したのかなという
雰囲気でしたが、やりすぎると品のない感じになるのでバランスが難しそう。



オペラ座の屋上
 
やっぱり佐野ラウルのキラキラ目力はスゴイです。
でも、ちょっと動くだけで髪がサラサラするのはもっとスゴイ(笑)。 
「君がすべて」 とデュエットしながら、キスする前に一瞬嬉しそうな顔をするところも、
さすが恋愛体質の子爵様☆ 


西クリスの表情もデビュー当時の記憶からすると、ずいぶん豊かになりました。
特に 「すぐに 馬車を〜」 の笑顔が可愛いなー♪ 
本物の恋人同士のように、明るい笑顔を見せて下さいました。



エンジェル像

今日の私の席からは、ファントムの姿は見えません。ほど良い距離から
ご覧になった方によると、ため息をついていたそうです。 はーせつない〜。
「許しはしないぞ」 は、長さはいつも通りでしたが、「ぞーーー」の後半で
声の力を、もう一段押し上げてくるパワフルさが素晴らしい前半の終了でした。




第2幕



マスカレード

リハーサル見学会のことを思い出しながら楽しむ、今日のマスカレード。
林アンドレは不安げに 「フィルマンさん?」 だけど、返事をする小林フィルマンは
特に怯えることもなく。
表情からすると、「アンドレさん恐がりだなあ。ほら僕ですよ。」って感じでしょうか。



ドンファンの勝利

支配人にラウル、警察官達がファントム捕獲を打ち合わせる場面。
佐野ラウル、ボックス席の手すりに両手をついて乗り出し加減の 「射殺しろ!」 
言いにくそうな雰囲気に毎回こちらも緊張しますが、ふーちょっぴり危なかったです。



The Point of Noreturn

リハーサル見学会で初めて知りましたが、水差し状の入れ物から
カーラ達にお酒をつぐ人は宿屋の主人とおかみさんだそうですね。
私はあれが宿だということも知らなかったので、へぇ〜となりました。
増田さんもリハで指導された通り、トレーを揺らさないようにしていらっしゃいます。


さて、クリスとファントムが登場。
生オケということもあるのでしょう、全体に村さんのゆったりペースに合わせての伴奏で
「お前はもはや私の・・もの」 が、色っぽくて良かったです。


と、うっとりしている場面でプチ・ハプニング発生。
クリスに杯を渡して、「振り向くな」 で、西さんがどういうわけか、身体の向きを
変えて離れて立ってしまったので、お酒を飲ませようにも手が届かない〜☆ 
村さんが、ちょっぴり追いすがるように手を伸ばしていらしたので、
不謹慎ながらウケてしまってスミマセン。


でも、後半はとっても良かったですよ。
歌声の迫力はもちろん、フードをとられて、ちょっとよろめくように動揺したり、
クリスに熱く訴えかけるファントムの必死さが伝わりました。



再び地下へ

せっぱ詰まっていく感情と共に、ラストに向けての集中力が凄かったトライアングル。
この日なんといっても個人的に特筆すべきだったのは
クリスからファントムに与えられたキスの後でした。


キスから逃れて、歩き出す直前
ふわ〜っと村ファントムの両方の瞳が潤んできたんです。
(あーホントに泣いてる・・) 
初めて村さんの舞台上での涙に遭遇した私、思わず胸がじーん。


そのまま名状しがたい表情でゆっくりと歩くファントム。
立ち止まって、目を細め、唇をかみしめるようにしてラウルを見て。
一瞬だけクリスを見つめてから、ロープを切るのも苦しそう。
痛み、悲しみ、苦しみがほとばしるように 「行け!!!」 が絶叫になり
前屈みに立つ姿勢のまま、両手を胸の前で固く握り合わせて
「お願いだーーー!!」 




やがて客席もしんとなった舞台に、クリスが軽い足音をたてて戻ってきます。
一度立ち止まってから近づくクリスを振り向いた村ファントム、
まず差し出された指輪を見て、呆然としたまま吸い寄せられるように
クリスの顔を見つめていました。


「クリスティーヌ  I love you 」 には
プライドも全てかなぐり捨てて、クリスへの思いを吐露するファントムの
別れを悟って、それでも捨てきれない情愛があるようで良かったです。





カーテンコール。

この日は韓国からの団体さんが来ていたようで、西クリスのご挨拶時に2階席から
大きな歓声があがっていました。
西さんがちょっと恥ずかしそうに笑っていらっしゃいましたが
それがキッカケで雰囲気も盛り上がり、客席全体スタンディングでの大拍手。
佐野さんのいつもながらの丁寧なお辞儀と落ちついた笑顔はもちろん、
村さんがはっきり笑みを浮かべて嬉しそうだったのが印象的でした。



振り返ってみると今回は、初めて見た村ファントムの涙に
かなりの衝撃を受けましたね〜。
海外ファントムがおんおん泣いても、日本の、少なくとも現ファントムお二人は
泣かないものだと思っていたのでなおさらです。
村さんがファントムを演じるようになって、10年以上。数百回くり返してるのに
舞台上でファントムとして泣けるってのはスゴイことだと思います。



プログラムにもあるように 「愛憎」 という言葉が、この物語全体を表しているとしても
今日の村ファントムに憎しみはなく、ただ 「愛を歌う」 存在として
舞台を生き抜いたように感じられました。


素晴らしい舞台に、心から感謝です。




【後日談】


この観劇日の翌週からラウルは北澤裕輔さんに交代。
約2ヶ月後の8月8日に佐野さんは新ファントムデビューを飾られました。


この舞台を観ている時点ではわからなかったけれど、結果的には佐野ラウルの
最終週だったことになります。
今後、佐野さんがラウル役で再登場する機会があるかどうかはわかりません。
でもこうして観劇日記を書きながら改めて思い出すと、やっぱりよく研究されていた
ラウルだったなあと素人ながら感じる次第です。
                                        (2008年12月追記)









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