レ・ミゼラブル 


         

                                    日生劇場 1階 S席 M列
                                               



                     当日のキャスト



   ジャン・バルジャン 今井清隆  ジャベール 鈴木綜馬  ファンテーヌ シルビア・グラブ
   コゼット 河野由佳  テナルディエ コング桑田  テナルディエ夫人 森 公美子
   アンジョルラス 坂元健児  エポニーヌ 新妻聖子  マリウス 岡田浩暉
   ガブローシュ 大久保祥太郎
   
   

2006年4月21日(金)マチネ

昨年の春に続いて、東京での 「レ・ミゼラブル」 観劇にやって来ました。
2005年12月から2006年1月に大阪で、3月には名古屋での上演もありましたので、
ツアーとしては休みを挟みつつではありますが、長丁場を頑張ってきたことになりますね。


東京での上演期間は4月2日〜25日。 
私が観劇したのは、千秋楽も間近という日のマチネ公演です。
日生劇場には初めて来ましたが、複雑なロビーの構造も面白いですね。 
現在なら消防法にひっかかりそうな設計ですけど、日常から離れた雰囲気は好きです♪




第1幕




今回の私の楽しみは、コンサート以外ではお初になる今井バルジャン。
体格の良い囚人姿が見えるだけで、嬉しいです。 
しかしなんと立派なボロなんでしょ(笑)。



独白

司教は宮腰裕明さん。 公演期間の前半は病気のために休演だったそうですが
1週間ほど前から復帰されました。
私は初めて博多座でレ・ミゼラブルを観たときに、高野二郎さん演じる司教の歌声に
強い衝撃を受けました。
なので、どうしてもあれを求めてしまうのですが、なかなか出会えませんね〜。
宮腰さんの司教様は、ちょっと声に伸びが足りなくて残念☆


今井バルジャンの独白は、CDで何度も聞いていますが、やはりナマの迫力は
違います。 「俺の 人生〜〜〜」 ロングトーンでは、客席からも拍手が起こり、 
張りのある男っぽい美声に酔いしれました。



工場

CDでもそうなのですが、この冒頭の民衆コーラスを聴くと、そのダイナミズムと
ハーモニーの美しさに涙が出てしまいます。歌詞はホントに悲惨なんですけども。


小鈴まさ記さんの工場長も初めてです。
昨年、アンジョルラス役でお会いしたときも思いましたけど、立ち姿が綺麗な方なので
あの扮装もよく似合ってて素敵〜。


これまで私は上條コウさんの工場長しか観たことがなかったのですが、上條さんが
最初から目つきがギラギラして、いかにもという感じなのに比べると、小鈴さんの
工場長は一見クール、でも実は・・・というむっつりスケベな工場長(笑)なのですね。


ファンテーヌの腰にすっと手を回したり、彼女の顔にさわりながら言い寄る時も
あまり表情を変えないし、ちょっと目を伏せて、やる気なさそうに
机に浅く腰掛けるようにしたり。
けだるい感じにリアリティがあるというか、おさえ気味の演技が新鮮でよかったです。


余談ですけど、工場長の歌詞で私が一番好きなフレーズは、
「♪なあ、淑女のファンテーヌ」 っていうところ。


あの 「なあ、」 試しに歌ってみるとわかりますが、あるのとないのとでは大違い。
リズムが整う上に、リアルな感じがするので大好きです。
ただ、やっぱり小鈴さんは音程が不安定ぎみなのがもったいないな〜。


細かいところですが、「夜には 娼婦かね」 のあとの男達のひやかし声、
以前は 「ヒューヒューヒュー」 だったと思うのですが、今回は 「イヤッホー」 でした。

なるほど今度カラオケで歌うときは、合いの手を変えなくては。(←ウソです、すみません)



夢やぶれて

シルビア・ファンテーヌのソロは、パワフルで中低音の響きが美しいですね。
私の席からは見えなかったのですが、同じ公演を前方席で観た方によれば、
このナンバー途中でシルビアさんの大粒の涙が、ポタリと舞台に落ちるのが
ハッキリ見えたそうです。



馬車の暴走のあと、ジャベールが市長のことをいぶかしく思うシーン。
今井バルは 「私が バルジャンではないのか?」 と言いながら笑うんですね。
内心の動揺と不安を隠して、ジョークとして聞いているという感じなのでしょうか。



病院

以前の観劇日記にも書きましたが、山口バルジャンで一番好きだった場面のひとつ。
バルジャンが変わると、ファンテーヌとの接し方も違うのが面白いところ。
「あたためよう」 でファンテーヌの手を握ったあと、今井バルは彼女の手に
息をハーと吹きかけて、あたためようとしていらっしゃいました。


うーん、細やかな心遣いはうれしいけれど、前屈み気味になるので、
バルジャンの大きな背中待ち派としてはちょっぴり残念。
でも、ファンテの顔をのぞき込んで、何度もうんうんとうなずくバルジャンの
誠実さが感じられて、今井さんにはこの雰囲気はピッタリかもしれません。



テナルディエの宿屋

今日の少女コゼットは藤井結夏ちゃん。
声があどけなくて可愛くて、これだけでもウルウル。


テナルディエ夫人はおなじみ森公美子さんですが、観るたびにパワーアップして
なんだか恐ろしいことに(笑)なってます。
今日の相棒、コングさんのテナルディエはこれが初対面。 
しかし、こんなに夫婦揃って大きな熊みたいだと、ホントにエポニーヌの
両親なのかという疑惑が浮上しませんかこれ。



旅人役で再度登場の小鈴さん、みんなが踊る場面では堂々と女性のスカートを
めくったりして、むっつりスケベぶりを、いかんなく発揮していらっしゃいます。
えーと表情をあまり変えないで大胆なことをやってのけるところが、
どうも某ファントム俳優さんを思い出させるんですけど・・こういうのも、
デジャヴっていうんでしょうか☆



取引

バルジャンがコゼットをテナ夫妻の宿に連れて帰った場面。
森テナ夫人が、コゼットが怯えて座るイスをタイミング良くカーンと蹴ったので、
お客様から思わず笑い声が上がっていました。


コング・テナルディエは、ガラガラというより、なんだかジャミジャミした声ですが、
音程がしっかりしているのは安心して聴けるところ。
何かに印象が似てるよね〜と、観劇中に思っていたのですが、後半になって
思い出しましたよ、よくお店に置いてある信楽焼きの大きなタヌキ(失礼☆)。



10年後のパリ

大好きな岡田マリウスとの再会が嬉しいところですが
あら、髪型が変わってるのですね。 後ろでひとつに結んでいます。 
うーん、色々と都合があるのでしょうが、自然な髪型の方が私は好きだったな〜。
そうは言いつつ、エポに触られると、慌てて飛びすさるところなど
相変わらず純情青年ぶりが初々しい岡田マリウス。


コゼットに出会ってから、バルジャンやテナルディエたちが中央で色々もめてる間、
マリウスはずっとオロオロしてるんですね。
今回は全体がよく見渡せる席だったので、今まで気づかなかった部分もよく見えました。
コゼットを探し廻るマリウスに、エポニーヌが橋の上から二人が逃げた方向を
指さして教えていたり。
その方角を、ずーっと立ちつくして見ているマリウスの姿に、新妻エポニーヌが
橋の上でふっとため息をついているのが見えました。



Stars

鈴木ジャベールは今回で2回目だと思いますが、やはり鈴木さんのジャベールは
個人的に抱いている外見のイメージにピッタリ。
今さんや岡さんのジャベールももちろん素敵なのですが、ちょっぴり若いのと
同時に、お顔が綺麗すぎるような気がいたします。


私にとってジャベールは、
「顔の造作そのものは普通、だけど目の煌めきが尋常でない」人物って感じでしょうか。

 
顔ではなく、ストイックな精神が美しく見える男。
ふむ・・こうしてみると、ちょっとファントムと共通するところもあるかも。



ABCカフェ

あいかわらず、坂元アンジョルラスの声が大きいな〜☆
一人だけ特別の拡声器を使ってるのかと思うくらいの声量です。


阿部さんのグランテールは、伊藤さんのグランに比べると、露悪的な性格を強く
押し出しているように私には感じられます。
声と体型は伊藤さんの方が好みなんですけど、阿部さんの煙たそうな目つきは
チャールズ・ブロンソンみたいで、なかなかセクシーなんですよね〜。



プリュメ街

河野さんのコゼットはずいぶん久しぶり。
ちょっと身体が弱そうだけど、芯は強い女の子という感じでしょうか。
今井パパが大事に大事に守ってきたコゼット。
河野さんの独特の歌い方が、実は結構好きです。 
とくにK音が軽く鼻にかかったようになるのは、言葉そのものの発音が違うのかな。



ワン・デイ・モア

鈴木ジャベールは膝をついて目を閉じ、祈っていました。
舞台の上で目を閉じる、というのはコワイことなんじゃないかなあと思うのですが
これもジャベールとして生きていればこそ。 


握りこぶしにキスをする仕草にも感じられる信念、
というよりあれは彼の 「信仰」 なのかもしれません。





第2幕



さて、あれこれをすっ飛ばして、バリケードでの戦闘が始まりますが
坂元アンジョの発声はちょっと雑というか、平常心すぎるような。
「部署に戻れ」 とか仲間に指示するとき、ちょっとつっけんどんな雰囲気だし。
これはたとえるなら、現場監督風?
うーん、男所帯のリアルな感じをだそうとしていらっしゃるのでしょうか。


捕虜になって、しばられているジャベールの肩に手をかける今井バルジャン。
「また会ったな」 にらみ合う二人の目つきが緊迫感が凄かったです。 



彼を帰して

ここはバルジャンが座って歌う場面だというイメージがあったのですが、
今井さんはナンバーの前半部、立ったまま歌っていらっしゃいました。
この劇場は、全般にエコーがかかりすぎるきらいがあるようですが、今井さんの
歌声になると、それが何ともいえぬ優しい響きになって伝わりますね〜。


床で寝ているガブローシュに毛布をかけてやる阿部グランテール。
寝顔をしばらく見て、たまらなくなったように顔をそむけています。


今井バルジャンは 「死ぬなら 私を」 では自分の胸を両手で叩くようにして、
神様に訴えるのですね。
山口さんのバルジャンは天の神にむかって語るというよりも、もっと静かに
祈りつぶやいている印象だったので、これは新鮮でした。



最後の戦い

グランテールがガブローシュの前に片ひざをつき、こわい顔で追い払っています。
いまだに学生の細かい区別がつかない私ですが、恋人との別れなど、
これまで気がつかなかった発見もありました。


ガブローシュ、アンジョルラス、グランテール、そして学生たちが
戦闘で命を落としていく場面。
レミゼとは全く関係ないのですけど、 映画 「俺たちに明日はない」 で、
若い主役の男女二人 (ウォーレン・ビーティ と フェイ・ダナウェイ) が、
警官隊に80発以上の銃弾を撃ちこまれ、スローモーションで壮絶に死んでいく
有名なシーンがありますが、ここではいつもあれを思い出します。


未来があるはずの若い命が、スローモーションによって夢のように散っていく
描かれ方には、時が止まったかのような非現実的な美しさと、
凄惨な現実が交錯する悪夢のよう。



下水道

コングテナ、上手だけど魅力というか説得力がいまひとつ。
どうしてなんでしょう?もしかしたら、本物の悪人風すぎて愛嬌が足りないのかも。
マリウスを背負って歩く演技、時間の経過を表すようにバルジャンも肩で息をして、
ハアハアと身体を揺らして苦しそうなのが、今井さんうまいな〜。



ジャベールの自殺

ジャベールが二人を行かせる時に、背中を向けて一瞬目をそらす。
見て見ぬふりをしてしまう瞬間です。


「星さえ凍る」のあと、ハハハと乾いた笑い声を漏らすジャベール。
彼の行動規範は、信念ではなく信仰であったが故に、もう死ぬしかない。


ラストの 「たどる道もなーーーーい」 がすごく長くて、素晴らしい迫力でした。


観劇後に読んだパンフレットに、鈴木さんがジャベールに向けてのメッセージで
「闇をたたえる水底へと肉体が消えゆく瞬間、確かに貴方の魂は光り輝いていた」
と、書いていらっしゃいましたが、命を失う瞬間にこそ、
彼の人生における最初で最後の輝きがあった。 そんなことを感じさせる
ジャベールの最期でした。



バルジャンの告白

病院で手を取り合うマリウスとコゼットを見つめ、うんうんとうなずく今井バルジャン。
バルジャンとマリウスがイスに座って話す場面。
手首のボタンがはずれていたようで、岡田さんが気にしながらも、さりげなく
膝の上の手を猫みたいに丸めて座っているのが、ちょっぴり可愛かったりして。


さてこの場面、マリウスの演技が変わったと聞いていたのですが、なるほど☆
バルジャンが自分のことを告白して、姿を消すからコゼットを頼むという時にも
岡田マリウスはよそよそしくてバルジャンの顔を見ていないし
「そうします」 を言うときも、全然目を見ません。


「頼むよ」 も、以前見たときはバルジャンがマリウスの手を握っていた記憶が
あるのですが、岡田さんの演技を受けてか今井さんも手を握らず、
立っている距離も開いたまま。
二人の心理的な遠さを感じさせて寂しげに去っていきます。


マリウスは、まだバルジャンが自分の命の恩人であることを知らないのですから、
これがリアルな反応なのかもしれません。 でも、なんとも切ないな〜☆



結婚式

公演のたびに、白塗りをエスカレートさせているテナルディエ夫妻。
森テナ夫人が転んでドレスが裏返しになったり、お客様の笑いを取っていたけど
ちょっと悪ふざけが過ぎる面もあるかな。
岡田マリウスが、森さんに突き飛ばされて、ほとんどコケそうになりました。



バルジャンの最期

もってきた燭台にキスをしてさらに頬ずり、それから炎を移して祈るバルジャン。
お年寄りらしく背中を丸めて机に座り、握りあわせた手に顔を伏せています。
立ち上がって歩き出しても、もうヨボヨボでその姿だけで、涙が出そう。


駆けつけてきた河野コゼットが、最初からもう大泣きです。 
岡田マリウスが心から悔いている様子で、さきほどの演技とのつながりは
こちらの方が自然かもしれません。
膝にすがりつくコゼットを、今井さんが何度も胸に抱き寄せては愛おしむ様子が
ホントの親子のようでお客様も涙涙。。。


ようやくファンテーヌとエポニーヌに優しくうながされて、
バルジャンは昇天してゆきました。
でも残ったコゼットとマリウスが手紙を読む様子に、また涙を誘われるんですよね。





カーテンコール

この日は、今井さんと鈴木さんの組合せの最終日。
お二人が中央で握手をするときに、今井さんが握った鈴木さんの手を、反対の手で
軽く叩くようにして笑顔で話しかけたのが印象的でした。
「ありがとう」 とか 「お疲れさん」 って言葉だったのでしょうか。


その後も繰り返されるカーテンコール。
出てくるたびに、プリンシパルの皆さんは上手側や下手側に移動。
1回はアンサンブルさんを前に押し出してのカテコもありましたっけ。
客席から 「キャーッ」 と黄色い声がかかったら、今井さんがわざと
おびえて怖がるフリ(笑)。


途中で上手側に、チビエポニーヌ、チビコゼット、ガブローシュと子役さんがずらりと
整列したのも可愛かったな〜。


最後はやっぱり今井さん。 
スポットに照らされながらの投げキスで終了となりました。





というわけで、1年ぶりのレ・ミゼラブルは大満足☆
昨年春は、まだまだ固かった印象の新キャストの皆さんも、それぞれの持ち場に
しっくりと溶け込んでいる印象を受けました。


2007年は、レミゼ日本初演からちょうど20年ということで、
記念行事を含めて、キャストにも新しい動きがあるのかもしれませんね。
6月から10月まで、東京・帝国劇場と福岡・博多座での再演も決定しましたし、
「レ・ミゼラブル」 の進化はまだまだ続きそうです。



さて、来年はどんなレ・ミゼラブルに逢えるのかなあ♪







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