オペラ座の怪人 


                                   電通劇場「海」 1階 S席 3列



                     当日のキャスト



  オペラ座の怪人 村 俊英  クリスティーヌ 西 珠美  ラウル子爵 北澤裕輔
  カルロッタ  種子島美樹    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 戸田愛子
  ムッシューアンドレ 寺田真実   ムッシューフィルマン 小泉正紀
  ウバルト・ピアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 喜納兼徳
  ムッシュールフェーブル 林 和男

2006年4月21日(金)ソワレ

東京公演が始まってから、もう早いもので1年と3ヶ月。
佐渡さんから数えて5人目となる新クリスティーヌ、西珠美さんが今週デビューされました。


手元のプログラムを見ると、アンサンブル欄には少し前から顔写真が掲載されています。
その時の名前は 「崔珠美」 さんとなっていまして、今回、劇場で見たプログラムには
新しく名前を書いたシールが上貼りしてありました。
日本の方じゃないので、名前の読み方も 「ニシ」 ではなく 「サイ」 さんだそうです。


前週は高井さん・苫田さん・柳瀬さんだったので、主役3人が総入れ替え。
どんな感じに仕上がっているのか、ドキドキしつつ劇場に入りました。
でも客席に入ってみれば、別の意味で胸が痛むことが。 


さすがの人気演目も、1年以上のロングランで中だるみなのでしょうか、
お客さまが少ないな〜☆ 
2階はパラパラ、1階も下手後方ブロックは誰も座ってない?というくらい、
席が空いています。 思わず福岡公演の苦戦が思い出されますわ。




第1幕


オークション

林オークショナーから幕をあける舞台は初体験。
うーん林さんの声は大好きだけど、軽い声質を抑えながらゆっくり発音するせいか、
他のオークショナーさんが 「6フラン」 と普通に言うところを、「ろーくーふらんー」 って
感じになったり、ちょっぴり不自然なところもあるような。


林さんの個性をそのまま打ち出して、たとえば喜納さんみたいにスマートな
オークションにしても良いような気もするんだけど、いかがなものでしょ☆



「ハンニバル」リハーサル

さて、いよいよ新クリスに初対面です。
西さんは面長で大人っぽい感じのお嬢さんですが、苫田さんや高木さんに比べると
身長は高め。 佐渡さんと同じくらいの身長がありそうですが、腕や肩などは
もう少しふっくらしている感じでしょうか。


林ルフェーブル、「これは失礼、ムッシュ・レイエ」 が皮肉じゃなくて、
ホントに恐縮してます。 
喜納レイエも、普通に 「恐れいります (にっこり)」 と答えるところを見ると、
職場の人間関係はうまくいっている模様(笑)。


寺田アンドレは相変わらず細やかな表情で、マダムや踊り子に愛想が良いですね。
今週の相棒は1週間前にデビューした小泉フィルマン、衣装が新調されて
コートの柄や素材感も若干変わっておりました。


すみません、どうしても支配人さん中心になってしまいますが、
「いつも、なにかを夢見ているような子でしてね、ハハッ」 
と笑うルフェーブルさんは初めてです。
福岡公演時のリハーサル見学会で、ルフェーブル代役をしていた喜納さんは
反対に (困ったもんだよ) という雰囲気の言い方でしたっけ。
笑ってごまかしながら、どんどん逃げていく林ルフェーブルが妙に可笑しいな〜。



Think of Me

西クリスのソロ。
透明感があるというよりは、落ち着いた印象の声ですね。
歌い始めは緊張ぎみなのか声が小さいかな、と思いましたが、後半にいくにつれて
だんだんとパワーアップしてきました。


ボックス席の北澤ラウル。 
1ヶ月前に柳瀬ラウルを見た印象が残っているので、えらく細いな〜。
暗転の 「ブラヴァー!!」 の声がすごく大きかったようです。
東宝さん風に言えば 「激賛!」 って感じ(笑)。



クリスの楽屋

ラウルと支配人達の会話。
北澤ラウル 「皆さん、申し訳ないが〜」 のセリフが、颯爽と決まってます。
クリスとの会話では、西クリスがどうしてもカタコトの感じなので、カバーするために
ことさら丁寧におっしゃっているような印象でした。
そういえば、高木クリスデビュー日の佐野さんもこんな感じでしたっけ。



オペラ座の地下

まさか2ヶ月連続でお会いできるとは思っていなかった村ファントム、
気合いが入っていて良かったです。
久しぶりに反射角度が合ったみたいで、目がキラキラしているし。


先月観た苫田クリスとの村ファントムが、甘やかしながら優しく包み込むような
愛し方 (歌い方) だとすれば、今回はもっと注意深く見守りつつ、
常に先を歩いて手を差し伸べているような村ファントム。
西クリスに注ぐ、真剣な眼差しが男らしくて素敵でした。


・・と、うっとりしながらも、オルガンの前のファントムが足元のスイッチを押すところ。
高井さんが自然にこなすのに比べると、村さんが足を伸ばして 「ぺた」 という感じで
押してる様子にちょっとウケる不謹慎な私(スミマセン☆)。


前回の観劇日記にも書きましたが、村ファントムはクリスに触れる時間が
短いですけど、今日は羽交い締めシーンで、クリスの前に回す手が少し震えてました。
あれは演技? それともバランスを取ろうと踏ん張ったせいかしら☆


村ファントム、人形のところへ連れて行くときにクリスの手を握るのも
高井ファントムみたいにしっかりじゃなくて、指先だけ軽く握っています。
これはたぶん西さんの方が手に力を入れてないんだと思うな〜。

ある意味なすがまま、導かれるままの西クリス。
純粋無垢な感じで、これはこれでアリかも。



暗転後のアンマスクシーン。
ファントムのマスクを取ったあと、他のクリスがすぐ後ろに走り出すのに比べると、
西クリスはじっとしてる時間が長いので、逃げ足が遅い感じ。


這い寄ってくるファントムを、クリスはじっと固まって見てます。

「おお、クリスティーヌ・・」

恐ろしい秘密を見てしまう衝撃の場面だから、もっと驚かないといけないはずなのに、
西クリスは口をあけて少し下がるだけ。
うーん、もう少しはっきり表情や動作を見せないと、後方席のお客様には
なんだか全然わからないかも。



支配人のオフィス

小泉フィルマンはさすがに声が良いですね。
でも、こちらもまだ表情が硬いかな。 1週間前にご覧になった方によれば
これでもずいぶん良くなったそうです。
小泉さんは響きのあるバリトンなので、寺田アンドレとの声のコントラストは
良いのですが、見た目が似てて凸凹コンビにならず。
特に今回は種子島さん半場さんも出てくると、舞台が丸っこいもので一杯(笑)でした。



オペラ座の屋上

北澤ラウル、前回観劇したときに比べると、熱さが出てきたように感じられるのは
もしかして、先週までいらした柳瀬ラウルの影響があるのでしょうか。
クリスが 「あの声は すべてを包み」 と歌い始めると、北澤ラウルは目を閉じて
「そんなばかな、信じられない!」 と言いたげに、かすかに首を振っています。


ただ、欲を言えば 「だれ?今のは」 の場面などで、クリスへの思いやりを
もう少し表現して欲しいな〜。 なんというか、北澤さんのラウル像は
結構キビシイ恋人のように感じるのは私だけでしょうか。 
でもこの日は新クリス登場からまもなくで、双方に緊張があったのかもしれません。
北澤ラウルがのぞき込むように顔を近づけ、様子を見ながらキスしてる雰囲気の
ラブシーンでした。




第2幕 


マスカレード

いつもの通り、夢のように美しい仮面舞踏会。
今回のクリスの衣装は襟や袖の青色が濃くて、佐渡クリスを彷彿とさせる
デザインになっていました。


ところで西さん、歌とダンスで精一杯なんだと思うけど、お猿さんに後ろから
マスクを取られたのに振り返りもしないというのは、やっぱりちょっと不自然かも。
肩載せリフトは、今回も予想通り無しパターンだったけど、ここで少しでも
西さんと北澤さんの笑顔が見れたのは、なんだか嬉しかったな♪



つづくマダム・ジリーとラウルの会話シーン、戸田マダムのセリフ回しって、
なんだか、すごく良くなったのではないでしょうか。

・・と、えらそうにスミマセン。

以前は声を低く抑えることが中心で、棒読み状態もあったような気がするのですが
ファントムの秘密を明かすことに恐れと不安を抱きながらも、訴えるように語る様子が、
今日はかなり自然に感じられました。



支配人のオフィス

この場面の小泉フィルマンは、マダムの 「ここに 手紙がまた」 に対して
タメ息をついたりの反応がほとんどない上に、
「せめて 痩せてくれなくては」 を聞いても、口の端で笑うだけ。
うーん、コミカル担当としての演技は、これからに期待という感じですね。



墓場にて

西クリスはセリフだけでなく、歌にも日本語と違う口調があるのですが、
温かみのある声がよく響きます。


でも長いソロが終わってホッとしたのか、ファントムが登場した途端に
「エンジェルかしら それとも パパの声なの」 のところを 
「エンジェルの声が 聞こえる パパの声なの」 と歌ってしまいました。


思わず口に両手をあてるような仕草をなさったので、こちらもドキリとしましたが
表情は変えず、歌をとぎれさせることもなく無事続行(ふう・・☆)。



ドンファンの勝利

来ました、オーケストラピットの警官に指示をする、北澤さんのコワかっこいい場面。
「その時が来たら 撃つんだ」 
一瞬間があってから、静かな口調での

「射殺しろ。」

これだけでも、かなりの怖さなのに、
タイミングを聞かれ 「今に わかる」 で、目を細めてふっと笑うラウル。


ひえ〜やはり射殺するのが目的なのですね子爵さま。 
成功したら、スイス銀行の口座へ振込みでしょうか(と、なぜゴルゴ13☆)。


寺田アンドレはビクビクしながらも、「すべて、お任せいたします。」 の声が
さわやかですね。 若き子爵を心から信頼している感じかな。



警察長官は林さん。 細いです。 今日はそれだけで嬉しかったりします。 


面白いのは、深見さんや田代さんの 「閉めたか!」 は語尾が重々しいのに、
林さんだと 「閉めたか?」 って全体にライト仕様になるところ。
なんだか奥さんにお家の戸締まりを確認しているみたいで、ちょっとウケるわ〜☆



The Point of Noreturn


ここはとにかく、村ファントムの演技が熱かったです。


「運命に 従え」 の後、もう一度繰り返す 「従え」 が深みのある美声でゾクゾク。
まるでビターチョコレートのような味わいというのでしょうか。
重低音の中に独特の艶と甘みがあって、しかも力が感じられました。



「もはや 退けない」では、しっかりうなずいているし、フードをかぶったままでも
胸に手をあてたり、はるか彼方を指し示すようにしたり。
アミンタ=クリスに、切なく訴えかけるように歌う熱演ぶりでした。



しかし、この大事な場面の最後でハプニング発生。

「クリスティーヌ 君が すべて」

カツラとマスクをはぎ取るのに、西さんの思い切りが足りなかったのか
マスクは取れたけど、カツラが中途半端に残ってしまいました。
顔にかぶさるように焦げ茶色のカツラが頭に乗ったまま。


ハッと、無言の緊張が走る客席。

村さんがさっと顔を振って落とすと、逃げるように (いや逃げてるんですけどね実際) 
西クリスを連れて走り去って行きました。 




再び地下へ

なんだかこちらも胸のドキドキがおさまらないまま、終盤戦への突入ですが、
あれ?今日の北澤ラウルはメグに冷たかったな〜。
「あなたはだめよメグ!」 あたりでも、親子の会話を聞いているだけ。
上着を脱いで湖に飛び込むところ、足を欄干にぶつけたのか 「ガタン」 と音が
していました。



そんなこんなで、舞台はオペラ座の地下に。
お二人が舞台に出てくるのが、この日ちょっぴり遅かったような。




今日はハプニングもちょこちょこありますが、さすがベテランの村さん。
動揺もブレも見せず、ラストスパートまでファントムとしての心情を確実に
演じて、お客様を引き込んで行きます。



「けがれは 心の中よ」 とクリスに言われて、何か言いたそうにするファントム。
もどかしいけど伝えられない。 自分が望んでいた方向に進んでいないのは
わかっているけど、もう歯車を止められない。 



「俺を嫌えば こいつを殺すぞ」
西クリスは身体をのけぞらせず、両手でファントムの胸元を押しもどすように
遠ざけていました。
あきらかな拒絶の姿勢がなんとも言えず悲しいな〜。


「もはや 退けないぞ」 オルガンのところで、肩で息をするファントムは
どんどん激情にかられて。
「許さない!」 が、村ファントムには珍しくかなり強い口調でした。





そして、キスシーン。


全体を通して控えめな動作の西さんでしたが、ここはダイナミックでしたね〜☆


キスも最初は左から次は右から、という感じで角度をしっかり変えるし
背が高いので、がばっと上から抱きついた感じ。
私の席から見えるのは主にクリスの背中だけだったので、なおさら唇を奪われて
あたふたするファントムという雰囲気☆




クリスから離れた時は、打ちのめされて半ば呆然としていた村ファントムですが
歩き始めてすぐ、我に返ったように険しい表情に変わってラウルを見ました。
北澤ラウルも、すごい目つきでにらみつけています。


これまで、なんとなく村ファントムはキスの後は、抜け殻になってしまうという
印象を持っていたので、この歩く途中での表情の変化は新鮮でした。
前を歩いている間には、まだ嫉妬心やラウルへの敵対心といった葛藤も
残っているのですね。



ロウソクを取って立つまでは、ラウルの命をどうするつもりか彼自身にもわからない。
でも最後にクリスの顔を見て、心を決めたファントム。


これまでの日々と、彼女への想いを振り切った瞬間がハッキリわかりました。







二人が去った後、ファントムが歌う 「マスカレード・・」。
再度現れた西クリスは静かにやってきて、彼が振り返った時には指輪をはずして
そっと差しだすようにしています。



ホントに魂が抜けたように、今日のファントムが呆然としたのはここから。
ベールを拾ってうつむきがちに歩き、去っていく二人を見つめて。



「我が愛は 終わりぬ」



すべてを、自らの意思で終わらせた。
そんなファントムの男らしさを感じるラストシーンとなりました。






恒例のカーテンコール。
この日は客席からの声が、かなりかかりました。 
よく聞こえなかったけど、「村さん」 コールが一番多かったみたいです。
村さんはいつも通り胸に片手をあてて、少し笑みを浮かべてのご挨拶。


ほっとしたような笑顔の西クリス。 最後は幕の隙間から出てくるご挨拶もあって
爽やかな北澤ラウルの笑顔で、さようならでした。






さてさて振り返ってみると、今日は新クリスにドキドキしっぱなしの観劇でしたね〜。
日本語の完璧な発音が難しいとは思いますが、西さんの歌声には魅力があるし
演技についても、さらに磨いていって下さることと思います。



それから、新キャストを迎える先輩の皆さん。
特に、タイトルロールとしての役目をしっかり果たしつつ、小さなハプニングを
フォローして下さった村さんには、心から 「お疲れさまでした」 を言いたい気持ちです。
 




あおーげば尊し わが師の恩〜♪
ふと歌いたくなるような、春のオペラ座観劇ではありました。









                                     きみこむの観劇日記に戻る


                                     銀色文字トップに戻る