オペラ座の怪人 


                              電通劇場「海」 1階 S席 6列26番



                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 高井 治  クリスティーヌ 苫田亜沙子  ラウル子爵 北澤裕輔
  カルロッタ  種子島美樹    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 秋山知子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  小林克人
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 立岡 晃
  ムッシュールフェーブル 深見正博

2005年12月9日(金)ソワレ

今年最後の東京遠征。
1月の開幕から毎月きっちり通って、12回目となりました。
この1年で、新クリスと新ラウル、新支配人や新メグ、新マダムも出たけれど
ファントム俳優さんだけは今年もずーっと2人きりでしたね。 
そうそう代わりがいないタイトルロール、ホントにお疲れさまでございます。


11月の観劇は、高井さんが体調不良(?)で週の途中から交代した流れで、
村ファントム・苫田クリス・北澤ラウルでした。
さて、今日は2ヶ月ぶりの高井ファントム、復活から3週目の舞台はいかに。




第1幕



オークション

北澤さんのラウルは先月に続き2回目です。
前回は老ラウルの声が若いなあと思いましたが、だいぶお年寄りらしくなられました。
ただ、細い声を抑えて歌うのはやはり難しいのか、「歌を」の音程がちょっと
ズレちゃったかな。



ハンニバル

立岡レイエ、見るたびに楽しそうで、生き生きしておられますね。
最近、公式サイトのキャストコメントに、レイエはお気に入りの役のひとつだと
ご本人が書いておられましたが、ホントそうなんだろうな〜って感じです。
ひとつひとつの動作も大きく、足をふんばり前方を指さして
「帰り来し、からーーーっ」 と、大号令をかけていらっしゃいました。


深見ルフェーブルにお会いするのは今年春のオペラ座以来でしょうか。
福岡オペラ座ではイベントでもお世話になったし、再会が嬉しい限りです♪
「恐れ入ります」 と皮肉たっぷりのレイエから、憮然と顔をそむける表情もコミカルで
ハンニバルシーンは、全体のテンションも上がってる感じを受けました。


それに深見さんが入ると、なぜか支配人'sが
「うちら、陽気な支配人〜♪」 って、かしまし娘状態(笑)。 

象が出て来る頃には、3人が後方で顔を近づけて楽しそうに
おしゃべりしたり、大笑いしたりしてます。



Think of me

ボックス席でにこやかに登場した北澤ラウルですが 
今回あれっと思ったのが 「ブラヴァ」 で人差し指を出す手つき。
あれは北澤さんのクセなのかな。 「僕はおぼえてる」 も、右手で指さすように
していらっしゃいました。


・・と、ここまで苫田クリスの話が全然出てこなくてごめんなさい。
前回の日記でも書きましたけど私にとっての苫田さんは、小柄なせいもあるのか
どうもダンサー達への紛れこみ度が高いんですよね〜。


それと、9月に初めて拝見したときは松元さんがメグだったのですが、今回
荒井メグと並ぶと、どうしても雰囲気的に、お客様の視線を
取られてしまうような気がしました。
別にクリスは最初から目立つ必要はないんだけど、中央に立って歌い出すまで、
もしかしたら初見の方にはどれがクリスティーヌか、ハッキリとはわからないかも。


ただ、クリスデビューからわずか3ヶ月ですし、沼尾クリスの大変化もあったように、
印象もこれから、どんどん変わって行かれるのではと思っております。



クリスティーヌの楽屋

北澤さん、前回に比べるとずいぶん表情が豊かにソフトになりました。
「2分で戻ってくるから」 の後にハハと笑い声を上げて、 「可愛い、ロッテ・・フフフ」
って笑うのがちょっと面白い。
クリスを夕食に誘えたのが、ホントにホントに嬉しかったのね〜。
地に足がつかない様子で駆け出す雰囲気は良かったと思います。



ファントム登場

「わたしの 宝物に」
支配欲とあざけりを含んで圧倒的な歌声。
今日の高井ファントムは攻撃的というか、最初からケンカ腰?(笑)
「おーし、かかって来い!」 みたいな感じで、ちょっとウケてしまいました☆


今日のメイク、眉のラインがほんの少し丸いアーチになっているような印象でした。
以前はもっと鋭角だったような気がしますが、色々と工夫中なのでしょうか。



オペラ座の地下

「わたしの 音楽の天使」   「歌え!!」 

もともと命令口調ですが、今日は組み伏せるような言い方だなあ。
やる気満々、パワー全開。 男性的でとどろくような美声は、音楽の王国の主に
ふさわしい雰囲気で、これは納得です。


マントも高い位置から派手にひるがえすし、手つきも気合いが入って
やたら指先が色っぽい。 
苫田さんは催眠状態の演技、他のクリス女優さんよりも大きくのけぞるように
ゆら〜りと回転するのが特徴ですね。
なので、余計にファントムの魔力も強く感じられるのかも。


うーん羽交い締めの密着度も、あいかわらず高いなあ。
前回の村ファントムの記憶があるので、どうしても比べてしまうけど、村さんは最初に
回した左手も軽く浮いてるし、右手なんてホントに形だけですよね〜。
高井ファントムは後ろに立つだけでなく、軽くおおいかぶさるようになるので、クリスの
白い首筋に咬みついても不思議じゃない・・・と、それは別の演目でしたねスミマセン☆



続くアンマスクシーン。

今日の高井ファントムは個人的な好みからすると、正直言って
お怒り度がちょい高すぎかな。 
マスクを取られて追いかける高井ファントム、
「もう2度と許さぬ 地獄へ行け 決して」 まで抑えめだったのに、
突然 「許さぬぞっ!!!」 って、すんごい声で怒鳴るので心臓に悪いです〜☆


それなのに床を這い寄ってクリスに手を伸ばす瞬間の 「クリスティーヌ・・・」 は
小さな子犬に話しかけるように繊細で切なくて。


・・・なんというか、ジキルとハイドみたいなファントムですね。
歌詞にもあるように 「醜くゆがんだ」 部分と 「清らかで夢みる」 部分が明確で、
これはこれでアリかな。 クリスが戸惑うのもよーくわかります。



支配人のオフィス

小林フィルマンはヘアスタイルが変わってます? 少しカットなさったのでしょうか。
ファントムからの手紙を読む場面で 「心より親愛の情をこめて」 のあと、
ちょっと不自然に長い間が 「・・・・・・・」。
ドキッとしたけど、 「私の劇場の」 と無事につながって、ひと安心。



プリマ・ドンナ

ところどころで、世話好きな善人ぶりを発揮する小林フィルマン。
ナンバー冒頭、後ろ姿のカーラの小さなお下げ髪が揃っていなかったので、
指先でつまんでそっと直してあげてました。 うふふ優しい〜♪ 



イル・ムート

クリスティーヌが、伯爵夫人役に抜擢されて不安がる時の
「心配するな、僕がいる」 の言い方は、ラウル俳優さんによって
ニュアンスや動作が違うところですが、北澤さんはこのセリフ、
結構重々しくおっしゃるのですね。
威厳はあるけど、もう少し熱血感を持ってクリスを励ましてあげて欲しいわ。


だってほら、鈴木ラウルとか内海ラウルの 「僕がいる!」 は
「なんだったら、僕が代わりに伯爵夫人やろうか!」 みたいなイキオイだったし(笑)。



オペラ座の屋上

今回は、どうも北澤ラウルの話題が多くなってますね。
怯えていたクリスが 「あの声は すべてを包み」 と、うっとりしはじめると、ラウルは
なんとなく気味悪いものを見るような表情をしています。


佐野さんのラウルだと、「こんなにクリスの心を奪う奴は許せない!」って、
かっとなる雰囲気だけど、北澤ラウルは 「これはどういう現象なんだ?」 と
不審な気持ちが先に立っているという印象でしょうか。


ただ、前回に比べるとクリスとの距離感も自然さを増して来たような気がします。
特に 「誰? いまのは」 と怖がるクリスに 「大丈夫だよ」 と笑いかけてから、
そばを離れる表情などはとっても良かったと思います。




第2幕



マスカレード

苫田さんも北澤さんも、ダンスはたどたどしいところもありますけど、この場面は
唯一楽しそうな二人の笑顔が見られるところですね♪
いつもより、ちょっと上手寄りの席だったこともあって、アンサンブルさんの
ダンスや表情もたっぷり堪能できました。



支配人のオフィス

精神的に参っていくクリスを気遣う北澤ラウル。
やっぱり先輩ラウルに比べると一途なだけじゃなくて、複雑な気持ちを持ってるように
私には感じられます。


ラウルにも迷いがあって、怖がるクリスをなだめたり理解を示したかと思うと
突然、彼女のことがわからなくなったり。
佐野ラウルは、最初からクリスのよき理解者であり熱烈な恋人なんですけど
ホントのところ、北澤ラウルはクリスをどう思ってるのかなー?


ただ、ハッキリ言えるのは、北澤ラウルはファントムへの敵対心は
最大級だということ。 「今度泣きを見るのは・・」 では、特に激しい面を見せました。
ここで初めて、LKのシンバを演じた方なんだなあと思いましたわ☆



「ドンファンの勝利」お稽古

椅子に座ったメグが浮かない顔のクリスに、手をさしのべています。 
なかなかその手を取らない苫田クリス。
マイクに入らない声で 「大丈夫?」 と囁くと、ようやくクリスが
握リかえす雰囲気がリアルですね〜。 手をはなすまぎわ 「頑張りましょう」 と
小さな声で励ます、荒井メグの表情が優しいなぁ。



The Point of noreturn

「獲物を 待つだけだ」 の最後の音階が、以前と違うような気もするのですが
高井さん歌い方を少し変えられたのでしょうか。 専門的なことはよくわからないけど
ここってホント難しそうです☆


さて、黒いフード姿でも闘志が感じられる今日のファントム、
リンゴを取り上げるとき、指輪をきらめかせながら小指と薬指を
ほんの少し持ち上げるようにする動きが、なめらかで繊細。
こういうちょっとした動きが、官能的な印象につながるのでしょうね〜。


「未知の愛のよろこび」 で、クリスの真後ろで両手を広げるファントムは、
久しぶりに拝見したような。 ファントムがクリスにいだいている、
抑えきれない熱情 (とても純愛とは呼べない) を、表現している動作なので
この復活は嬉しいわ♪



再び地下へ

マダム・ジリーとラウルの会話。
「両手を目の高さに・・」 「なんのために?」 北澤さんが指をさす仕草をしたのが
ちょっぴり気になったけど、「あなたはだめよ、メグ」 で、 「大丈夫だから」 と
メグにも目で合図をして下さったのが、なかなか良かったと思います。



さて、いよいよ終盤戦。


主役3人がそれぞれ必死に闘っている熱がありました。
修羅場にふさわしく、観客の気持ちをも巻き込む激しい歌の応酬。


「さあ!選べ!どちらか!」 が、ちょっとヤケクソみたいでもありましたが(笑)、
今日のファントムの雰囲気からすると、当然の流れかも。


ただ、いつも不思議なのですが 「許さない 選べ」 は、過去のCDを聴くと
歌じゃなくてセリフに近い気がするのですが、どうして現在のファントムは
ここで歌ってしまうのでしょう?


クリスティーヌを苦しめているのはわかってるけど、ボロボロの自分を知られたくない。
そんなぎりぎりのプライドが言わせるのだから 「えーらーべ」 と間延びした
歌詞じゃなくて、英語の原詞 「Make your choice!」 の雰囲気に合わせて
短く冷たく、セリフとして言い捨てる方が、マッチする気もするんだけどな〜。


それはさておき、苫田クリスのファントムへのキスは今回も、長くて優しかったです。
女優さんによっては、伴奏の拍子を数えながらキスしてるように見えることも
あるので、愛情が感じられるのは大きなポイントだと思います。
キスが優しければ優しいほど、ファントムの無力感も強くなりますね。
「北風と太陽」 のように、彼をキスの暖かさで溶かしてしまうようで。




・・・ここで、ちょっと横道に逸れることをお許し下さいませ。


今回、このラストを観て一番強く感じたのは、村ファントム&苫田クリスよりも
高井ファントム&苫田クリスの方が、バランスが良いのでは?ということでした。


もちろん、村ファントム&苫田クリスが悪いということではないのですが、なんというか
お互いウエットすぎるというか、「同種」でありすぎるような気がするのです。
カレーライスにたとえるなら、 「カレー&カレー」 もしくは 「ライス&ライス」(笑)。


男女関係は 「ふりまわされ願望」 と 「ふりまわし願望」 の、需要と供給バランスが
相性のカギを握っているという話があって、個人的には大いに同感なのですけども
(もちろん男女がどちら側でも良いし、広い意味での 「ふりまわし」 なので
別に悪いことじゃありませんよ。 「能動的・受動的」 でも同じ意味ってことね♪)
演技的にももしかしたら、そういうバランスがあるのかもしれません。


舞台では他にも色々な要素がからむでしょうし、キャスト対お客(つまり自分自身)の
相性も加わるから、あくまで想像の域を出ませんけどね〜☆




閑話休題。




クリスの腕から逃れ、静まりかえった舞台をファントムが歩く音が響きます。


縄を切ったあと 「行ってくれ  お願いだ!」 で絶叫する
高井ファントム、あまりに激しかったので、ふり返った勢いで
膝をつくんじゃないかと思いました。


でも、クリスがそばに来ると静かに手を握り、優しい澄んだ声を響かせて
「 I love you 」 


その落差は最後にひとしずく残ったプライド、それとも何もかも洗い流された
あとに現れる、彼の清純さなのでしょうか。
クリスの手をそっと握って立つ姿は、「忘れないで」 と願っているようでもありました。





幕が降りたら、当然のごとく盛大な拍手が起こります。
キャスト全員のご挨拶に、繰り返されるカーテンコール。
最後は幕の間から、北澤さん、高井さん、苫田さんが登場して下さいました。



しかし最近、ますますカテコで笑わないような気もしますけど、
カーテンコールはお客様と出演者が、素直に感謝を伝える場だから、もう少し
にこやかになさっても良いような気もするんだけどな〜 別に減るものじゃなし。



・・・いえ、もしかしたら減るのかも、アノ方の場合は(笑)。







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