オペラ座の怪人 


                              電通劇場「海」 1階 S席 4列16番



                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 高井 治  クリスティーヌ 苫田亜沙子  ラウル子爵 佐野正幸
  カルロッタ  岩本潤子    メグ・ジリー 松元美樹    マダム・ジリー 戸田愛子
  ムッシューアンドレ 寺田真実   ムッシューフィルマン  小林克人
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 田代隆秀
  ムッシュールフェーブル 鈴木 周

2005年9月22日(木)マチネ




7月の遠征では、高木さんのクリスデビュー当日でしたが、今回は苫田亜沙子さんの
クリスデビュー2週目の観劇になりました。


ファントムとラウルはすっかりお馴染みのお二人ですが、最近どんどん若返る
クリスティーヌ女優さんに、胸もときめく新しい恋の予感ってところでしょうか☆





第1幕



オークション

以前に比べると、鈴木オークショナーに重厚感が出てきて良くなったと思います。
佐野さんの老ラウル、ホントにか細い声でどんどんお年寄り度が増しているような。


「ハンニバル」リハーサル

新クリスの苫田亜沙子さんは、第一印象はホッペが丸くて小柄なお嬢さん。
メグの松元さんとお顔の印象が似ているので、冒頭のバレエのシーンでは
すぐ行方不明に(笑)。


実は、50回以上観ておいてナンですけど、私はあまりこの場面でダンサーさんを
見てないので、クリスの立ち位置がどこなのかいまだによく知らないのです。
(最近林アンドレがお休み中なので、ようやく視野がひらけてきたという話も☆)



岩本カーラにお会いするのはお久しぶりかな。
女王様なプリマドンナにしては、どことなく優しい上品さを感じるカーラではありますが、
こういう癒し系カーラもアリでしょうか。
寺田アンドレは2回目だと思いますが、カーラの手にキスをしたあと、その手を
ずっと握ったままおしゃべりしてるのが、感激ぶりが伝わって良かったです。
ただ、今回の支配人さんお二人は、セリフがどちらも2枚目声なのがキャラ的には、
ちょーっと惜しいような気もするなあ。



お初といえば、マダムジリーの戸田愛子さんもデビューしたばかりだそうで。
うーん、役としてうんぬんというより、基本的に年齢設定がキビシイな〜。
プログラムによると、戸田さんは04年10月のオーディションに合格。
藤原歌劇団のご出身だそうですから、学校を出たばかりってことはないみたい
ですけど、とにかくマダムにしては若い!


でも見た目以上に問題なのは、セリフの声でしょうか。
メグの年頃を考えると40代以上の設定だと思うけど、若い戸田さんが無理に
声を抑えようとすると、棒読みになってしまうのがちょっと残念。
ベテランの西島マダムと比べては可哀想だけど、できればもう少し実年齢も高い
女優さんをこの役には当てて欲しいような気が致します。



Think of me

苫田クリスのソロ。 ちょっぴりピッチが早いような気もしたけど、
さすがクリスティーヌに抜擢されるだけのことはあります。綺麗な声。
ただ、冒頭はまだ花のつぼみが固い感じだったかな。


2ヶ月ぶりの佐野ラウルは髪をカット、髪の色も少し暗めに変更されていたような。
立ち上がったラウルを、今回は3人がかりで寄ってたかって座らせた感じになったのが
ちょっと可笑しかった☆



クリスの楽屋

えーと苫田クリス、ぽーっとしている時間が全体に長くないかしら。
ドレッシングガウンの膝下を、最初のうちはちゃんと留めておかなかったので、
足が見えていました。 細かいことで申し訳ないのですが、
鏡台に座ってから、身体を丸めて裾をごそごそするのはいかがなものかと☆



ファントム登場

出だしはちょっとソフトに、後半は力強いファントムの歌声。
トラベレータでの移動も、不慣れな新人クリスの歩調に合わせて、ゆっくりと
導いているような印象でした。
ゆっくり歩くのは良いけれど、苫田さん、舞台袖の近くなるとホッとするせいか
普通にスタスタ歩くのはちょっと目立っちゃうかな。


オペラ座の地下

今日はどうしてもクリス中心に観ていますけど、この場面も口をちょっと
開け気味にしてる時間が長かったな〜。


高井ファントム、珍しく息つぎの音がマイクで聞こえたので
「ん〜ちょっとお疲れ気味なのかなあ?」 と思いました。
正直言って、前半は100%の調子ではなかったのかもしれませんね、
ところどころで、かすかにざらついたりしていたようです。



Music of the night

そうは言っても、やはりさすがベテランの域に入ってきた高井ファントム。
聞かせるべきところはしっかりと聞かせて下さいます。

そして、羽交い締めシーン。
苫田さんは小柄ながらも胸の豊かな方で、ドレッシングガウンの襟についた
フリルが立ち上がる角度からして、まったく違うんだなあ。
(と、こんなところで感心している私っていったい・・笑)


というわけで例のシーンは高井ファントムの右手が美しく波打っていました。
新人でも手加減は無しなのですねファントム様(☆)。


さて、アンマスクシーンにつながる場面ですが、ここでもちょっぴり動きが
トロい感じの苫田クリス。
しかもファントムの後ろから手を伸ばさないといけないはずなのに、
苫田さんてば、ほとんど横に立ってます。 いくら作曲に没頭しているからって、
その場所だと、丸見えかもよクリス(笑)



支配人のオフィス

比較的新しいキャストが多い七重唱ですが、気合いが入ってて良かったです。
セリフでは危なっかしい戸田マダムも、いざ歌になると綺麗な声を
響かせて下さいました。



イル・ムート

白塗り3人組は孔さん、増田さん、大月さんだと思いますが、ドン伯爵役が
九條マーティンさんでしょうか。 お名前の雰囲気からしてもわかるように、
外国籍の俳優さんみたいで、セリフと歌詞には日本語とは違う訛りがありました。
よぼよぼのおジイちゃん伯爵のはずなのに、普通に杖をついてスタスタ前に
歩いて来るし、コミカル演技も、あともうひと踏ん張り欲しいところですね。


バレエに巻き込まれるアンドレさん、寺田アンドレが一瞬だけ
バレエ立ちしてあとはダダッと走って逃げちゃうのが惜しい。もったいない。
お笑いの神様が怒りそう(爆)



オペラ座の屋上

「甘い その調べを」で、うっとりと目を閉じて甘い歌声と切なさに浸るクリス。
対するラウルの厳しい表情との対比が良かったと思います。
基本的に、ファントムもラウルもジェラシーを煽られることが、物語展開の要なので、
あくまでクリスはフラフラ、男性2人はメラメラってのがお約束ですね♪


ジェラシーが激しいからこそ、クリスが自分の方を向いてくれてる瞬間の
ラウルの至福が伝わるわけで、佐野ラウルが屋上でのキスの直前に、
彼女が可愛くて仕方ない感じで、とろけるような笑顔を見せたのが良かったわ〜。



それから、「私を導いて」のところだったな、苫田クリスが胸の前に
手をあてるようにした仕草が、なかなか可愛い♪
これはご本人が若いせいなのか、このクリスティーヌのあどけない動作は、
なんとも言えない愛らしさがありますね。男性陣にはぐっと来るポイントかも。



エンジェル像

今日は前方席ではありますが、かろうじてファントムの顔が見えました。
恋人達の声に耳をふさぐ直前の高井ファントムの手が、震えているように
見えたのが、苦悩を感じられて良かったと思います。
村ファントムみたいに身をよじらないかわりに、確実に彼の中で何かが
崩壊し始めている、そんな不気味さがあるこの場面の高井ファントム。
イキオイのままにシャンデリアも派手に落下していきました。





第2幕



マスカレード

登場からいきなり怯えた表情の寺田アンドレ。
それだけに 「フィルマンさん?」 「アンドレさん?」 で、客席からも
ほっとした笑いが漏れておりました。
マスカレードでは、ちょっとアンサンブルさんの顔ぶれの変化を感じたかな?
私はダンス重視派ではありませんが、蝶々さんのダンスは、もう少し綺麗に
お願いしたいです〜(泣)


さてクリスの肩載せリフト、なんか久しぶりに見たような気がします。
ただ、肩から下ろしたあと、お姫様抱っこでのクルクルはありませんでした。



支配人のオフィス

あれこれの板挟みになった人々が悩んだり怒ったりというナンバーですが、
「あちこちに 引きずられて」 から始まるクリスのソロがなかなか良かった。
特に最後の 「死の影がさす 恐ろしいオペラ・・・」 を、ゆっくりと綺麗な声で
聞かせて下さって、こんな風にメロディの美しさを感じたのは初めて。
これは指揮者さんの采配によるものなのでしょうか。



墓場にて

後半になるにつれて、徐々に声に輝きを増してくる苫田さん。と同時に、
高井ファントムも、エンジンかかってきましたね〜。
ファントムとクリスのデュエットには、師としての力をふるいたいという
支配欲がありあり。
ただ、「エンジェル」 の抑揚がいつもと違っていて、ちょっぴり気になりました☆


ラウルにクリスを連れ去られたファントムの怒りっぷり(というか怒鳴り声)が
久々に凄かったです。本気で怒ってますねー高井さん☆
「宣戦布告だ!!」 の後の花火に、おぉ〜っと客席が大きくどよめいたところを
みると、今日は初見のお客様が多かったのかな。



ドンファンの勝利

たぶんパッサリーノも九條さんですね。 
にやりと笑ってご主人同様、好色な雰囲気のパッサリーノ。
でも案外おっちょこちょいな従者なのでしょうか、黒いフードを半場ドンファンの
頭に顔が隠れるほど、すっぽりとかけてしまいました。あらら☆



The point of noreturn

高井ファントム、本格的にスイッチ入りました。実況席からお送りします(笑)って
感じでしょうか、フードをかぶっているのに導く気マンマンというか、
オオカミ度120%の高井ファントム。


苫田クリスのアミンタの見た目が子供っぽいので、未成年にお酒を飲ませる
イケナイ大人って感じの高井ファントムが笑えましたけど、ホントにイケナイのは
お酒を飲んでからですよ。


お酒が全身に廻ってきて、身体を撫で上げるのに苫田クリスは足首の近くから
胸へ、白いのど元をのけぞらせるようにした露わな姿態が、かなり扇情的。
また煽るだけ煽っておいて、手を出さずにじっと見てるようなファントムも、
熱っぽくて良いかも。



フードを取られた後、ファントムがクリスの指輪をはめた左手をじっと握る様子に、
彼の想いが感じられました。
激しさばかりでなく、ふと泣き出したくなるような切なさと優しさがあるようで。




ふたたび地下へ

高井ファントムの怒りのテンションがどんどん上がってきました。
「ほら、どうやら」 は、まだ普通なのに 「お客さんだっ!!」 って怒鳴ってるし☆

「支度は!できた!」 とか 「さあ!選べ!どちらか!」 とか、
たくさん使ってるので、「!」の在庫が切れそうです課長(笑)



でも、実際に見ている私達には、びりびりするほど伝わりました。
ファントムがどれほど彼女を手に入れたかったのか。
欲しくて欲しくてたまらなかった彼の乾きが。



苫田クリスは、昔は師と慕っていたエンジェルとのあまりに残酷な運命、
恋人の命が危険にさらされてる悲痛さに、もうほとんど泣きそうです。
吊されたラウルのそばに立ち、両手を組み合わせて命乞いをするクリスの
必死の表情が真にせまって。


「許さない 選べ」 が、高くなるテンションとは逆に冷たく響きます。
でもたぶん、それは気持ちとは正反対。



「絶望に生きた 哀れなあなた」
クリスが自分の胸に両手を押しあてるようにしていました。
ファントムのことを醜く恐ろしい 「怪人」 ではなく、憐れみと愛情を
消しきれない 「大切な人」 だと感じているのですね。



ゆっくりと立ち上がり、優しくこちらを向かせて唇を重ねるクリスティーヌ。



小柄で泣き虫のクリスティーヌだけど、長いキスの間、彼女がファントムを
すっぽりと包み込んでいるのがわかりました。
自分の温かみを移すように抱きしめて、さらに彼の唇を求め・・。




・・もう、完敗ですね。




いささか乱暴に身を引きはがしたファントムが、半ば呆然と歩を進めます。
クリスティーヌの真情を知った今、もう結末はラウルを助けて彼女を
返してやるしかない。
知り尽くしたラストシーンですが、今日は心底リアルに感じられました。



でも最後にもうひとつ。
「行け!」 と言われた瞬間、ラウルに引っ張られながらも、苫田クリスが
泣きそうな顔のまま、小さくイヤイヤをするように首を振ったのには参りましたわ☆


その表情を見るまいと、必死で振り切るように叫んだ高井ファントムの
「行ってくれ!!」
あまりの大声に、マイクがハウリングおこしました。
高井さん、完全に美声もプライドもかなぐり捨てた絶叫が凄かった。




ラスト、指輪を返しに来たクリスは少し手前で立ち止まり、驚かさないように
ゆっくりとファントムに近づき。


「I love you」の声に目を伏せ、泣くのをこらえるようにして
去っていく姿が印象的でした。 




クリスティーヌを求めて求めて、激しく恋に燃えたファントム。
「我が愛は 終わりぬ」 は、すがすがしい感じさえして。
なんだかスッキリと後悔のない、ラストシーンで幕となりました。






今回の観劇を振り返ってみると、
これぞ「オペラ座の怪人」だと、心から言える舞台だったと思います。



・・新人を導くつもりが、すっかり導かれたファントムとラウルって
印象ですけど、昔から地球の中心は女性にあるのですもの、
それも良しとしましょうか(笑)。







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