オペラ座の怪人 


                              電通劇場「海」 1階 S席 3列17番



                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 村 俊英  クリスティーヌ 高木美果  ラウル子爵 佐野正幸
  カルロッタ  種子島美樹    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 秋山知子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  小林克人
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 田代隆秀
  ムッシュールフェーブル 鈴木 周

2005年7月14日(木)マチネ

東京公演遠征7回目にして、ようやく村ファントムとの再会を果たしてみると、新クリスデビュー日という美味しいオマケがついておりました。
今回、たまたま押さえていたのは最前列の席。
「海」劇場の最前列は初めてなので、これも楽しみです♪




第1幕




今回、初お目見えになったクリスティーヌ1年生は、高木美果さん。
「チェ・ウンシル」 または 「チェ・ウンシリ」 名で、昨年 「ジーザス」 の舞台を
踏んでいらっしゃいました。韓国出身の女優さんだそうです。
20歳代のクリスティーヌは、ホントに久しぶりなのではないでしょうか。


高木さん、来日からまだ2年もたっていないそうですが一番心配なのは
外国の方だけに、やっぱりセリフの出来具合かなあ?
先月は、坂本クリスお初の舞台となりましたけど、今回はそういった心配の上乗せも
あってか、妙にドキドキしてしまいます☆


ご一緒したお嬢さんとも、あとで 「いつもより緊張しましたね〜」 というお話を
しましたので、これは新クリス登場日をご存じのお客様には、共通の心理だったかも
しれません。
なんというか客席全体に言葉にならない緊迫感というか、緊張感がありましたわ。
たとえるなら、1000人の父兄が1人の娘を見守る授業参観って感じかしら(笑)
高木さんのプレッシャーも並々ならぬものがあったのではないでしょうか。



オーヴァチュア

お馴染みの音楽に、ゆるゆると上昇を始めるシャンデリア。
一番心ときめく瞬間ですけど、前方席ど真ん中付近に初見の奥さまグループが
いらっしゃって、「うわぁすごいねーアハハハ♪」と大はしゃぎ。
あの、お気持ちはわかりますけど奥さま方、ここは重厚で妖しい雰囲気が
キモなのでございます〜☆



「ハンニバル」リハーサル

さて、新クリスの第一印象は「お、ちょっと気が強そう?」
ブルーのアイシャドウが、先輩クリスさんたちより多めなのもあるんだと思いますが、
眉もきりりとして「いつも夢見てるような女の子」度はちょっと低い印象を受けました。


しかし若々しくてなかなか綺麗な方ですね〜。黒い瞳にパワーが感じられます。
ただ、バレエとダンスの経験はあまり長くないのかな?
荒井さんに比べると、ちょっと身体が固そうな雰囲気でした。



種子島カーラが「シィンク・オブ・ミー」を歌うところでちょっとしたハプニング。
例の長いキラキラしたスカーフが、頭上の冠にひっかかってしまいました。
歌いながら、どうにか自力で取れたからよかったけど、ちょっと時間がかかって
こちらもドキドキ。
林アンドレも思わずハッとしたのか、いつもより陶酔度も低めでした。



Think of me

高木クリスの初ソロ。
なかなか綺麗な声の持ち主です。
音程もしっかりしてるし、質からすると沼尾さんの声に似てるかな。
それまで緊張気味のちょっと硬いお顔だったのが、歌い始めたら緊張が
ほぐれたのか、優しい表情になったのが印象的でした。



ファントム登場

お久しぶりの村ファントム、なぜか息を詰めて登場を待っていましたけど
「私の宝物に」、 ちょっとソフトに始まっちゃいましたね〜。 
ドラムロールとのタイミングも微妙にズレたような感じで、「ん〜???」となりました。


以前にも観劇日記で書いたことがありますけど、この場面だけは大音響に
ジャストミートで始めていただきたいものです。
ま、そうは言っても、1年4ヶ月ぶりの村ファントムとの再会は嬉しかったなあ。


ただ、「おいで エンジェル オブ ミュージック♪」の歌い方、以前は
「エーンジェル」 だったのに、伸ばすところが変わって 「エンジェール」 に
なってますよね?


余談ですけど、他のファントムはどっちだっけ、と思いながら帰って
山口ファントムCDを聞き直してみたら、どちらかというと 「エンージェル」 に
近いようです。
ちなみにロンドンキャストのマイケル・クロフォード氏は 「エーィンジェル」 って感じ。
たぶん、 「エンジェール」 の方が村さんにとっては歌いやすいんだとは思うけど、
ちょっぴり気になるところでございます☆



オペラ座の地下

しかし村さん、今日はお声の調子が良さそうですね〜。 
先週までお休みでしたし、4ヶ月ぶりのファントム役に身も心もノッてる感じでしょうか。
オルガンの前に立つと、瞳がキラキラ光って見えます。
そうそう、これも懐かしいわ〜♪ 


高井ファントムに比べると脱いだマントもバサッと置いちゃうし、動作としてはちょっと
いえ、かなり(笑)大ざっぱなんですけど厚みのある低音と、語尾に残る
独特の甘さがやっぱりツボです。



さて、アンマスクシーン。
最前列の恩恵を生かして、じっくり楽しませて頂きました。
マスクを取られ、床にうずくまってからの村ファントムが、いや〜良かったな〜。


「おぉ、クリスティーヌ・・・」

声にならないため息のように、クリスティーヌに呼びかける切なさ。
基本的に村ファントムには支配欲って少ないし、歌詞にもあるように
「美しいものに 心ひそかに憧れる」 感じがホントにファントムらしいと思います。


個人的には今回の舞台、ここから先がなんといってもベストショットでした。


マスクを返してもらってから向き直り、クリスティーヌに両手を差し伸べるファントム。
それは、恋焦がれる男の真摯な眼差し。


もう少しで、クリスの頬に指がふれそう・・・なのに、最後の瞬間に
息を呑むようにあきらめたファントムが、リアルで色っぽくて、もうクラクラ☆



高井ファントムは内心の動揺から、結構早く立ち直っているというか、
「行かなければ」 ではクールな表情の仮面をつけ終えている感じだけど、
村ファントムだと 「行かなければ」 の声にはまだ動揺が残っていて、よけいに
切ないような気が致します。



イル・ムート

上手のボックス席では、プログラムを手に舞台に見入る林アンドレに対し、
小林フィルマンが席でうとうとしています。
過去のフィルマン俳優さんに倣っての演技だと思うのですけど、小林フィルマンって
正直言って、こんなふうに寝る人じゃないよね。
几帳面で数字にもこまかそうだし、どちらかというと不眠タイプでは(笑)。



オペラ座の屋上

今回、佐野ラウルにあまりふれていませんでしたけど、全体を通して
新クリスのフォローに徹している 「頼りがいのある」 子爵様でした。
もともとエスコート上手には定評のある方ですけど、いつも以上に丁寧に
リードしている心遣いが伝わって良かったです。
特にこの場面では、佐野ラウルのエスコート熱も最高潮。恋人モードも全開ですよ。


クリスとのキスシーンの直後、佐野さんが笑顔のままマイクに入らない
小さな声で 「おいで。」 って言ってるのがわかりました。
嬉しそうに抱きつく高木クリスを、笑いながらクルクル抱き上げる佐野ラウル。


じゃあ、年寄りは退散して、あとは若い方だけでごゆっくり・・・って感じ(爆)


高木クリス、「大変 もう時間だわ」 の歌い出しが早すぎて、伴奏から完全に
ズレちゃいましたが、佐野ラウルがゆっくり 「クリスティーヌ アイ・ラブ・ユー♪」 を
歌うことで帳尻を合わせて下さいました。 ナイスフォローです☆




第2幕


マスカレード

さて、ドキドキすることがお客様にも義務づけられているとしか思えない(笑)
リフトですけど、予想に反して今回は、肩乗せリフトはありませんでした。
高木クリスは、まだ振りをやるのに精一杯という雰囲気だったかな。
これは仕方がないことかもしれません。



支配人のオフィス

なぜか小林フィルマンに、どうしても目が行ってしまいます。
林アンドレファンとしては、ゆっくりアンドレさんを観たいんですけど、どうしてかなあ。
お手紙を取り出すのに手間取ったり、マダム・ジリー 「ここに 手紙が また」 で、
必要以上に 「おぉう」 ってビックリしたりする小林さんの演技が、
妙に濃いからなんでしょうね。
ここでの高木クリスは 「やめてちょうだい!」 が早すぎて、全員の歌を
うまくさえぎれなかったり、ちょっぴり危なっかしいところがありました。



墓場にて

でも、この場面のクリスはとっても良かった。
暗い墓場を不安げに とぼとぼ歩くクリスが、小さな少女のままに父親を呼ぶ
切なさがありました。
聞こえてきたファントムの声に、耳にしていることが信じられないようにゆっくり
振り向く表情がリアルだったと思います。



ドンファンの勝利

この場面、突然オーケストラピットに現れた警官に、例の前方席の奥様方が
口々に 「あ〜びっくりしたぁ」 。 
でも内心 「次はもっと来るぞ〜」 と思っていたら、案の定、目の前での銃声に
「どっひゃー」 と、ビックリしてらしたので、子供みたいに素直な反応に
思わず笑ってしまいました☆



The Point of noreturn

高木さんのアミンタは、あどけなさと気の強さが同居した娘っ子って感じでしょうか。
「決めたわ」 で目をきらめかせ、イタズラを思いついたように微笑んだのが
印象的でした。


フードを取られた後の村ファントム、「どんな時でも」 と歌いながらの指輪の
はずし方が懐かしい〜☆
ちょっと両手を持ち直して、高く掲げるように指輪を抜き取ります。


「共に どこまでも ふたりで」
クリスの手の握り方がまた熱が入っていましたね〜。両手を包み込む、というか
揉みこむようでもあり、拝み倒しているようでもあり(笑)。


でも警官の銃口にさらされながらの、決死の愛の告白ですもの。
その悲壮なまでの覚悟と抑えきれない熱情が、村ファントムの身体から
立ちのぼるようです。



ふたたび地下へ

3人のテンションもどんどん上がってきた感じのトライアングル。
正直言って、どちらかといえばラウル寄りの高木クリス、佐野ラウルとの方が
絆は固そう。
でも、だからこそ村ファントムの悲哀がくっきりと浮かび上がるのですね。


恋人をかばって立ち、許しを請うように手を合わせるクリスの姿を目にした
村ファントム、思わず歯をくいしばるような表情を見せていました。



「そう もはや戻れない・・」
生きるか死ぬかの修羅場のさなか、疲れ切って座りこむファントム。



静寂の中に 「昔は 心捧げた」 の声が、悲しいほど優しく綺麗に響きます。


無邪気に「音楽の天使」を信じて歌っていた、あどけない少女の昔には戻れない。
「許さない 選べ」 が、ホントに苦しそう。



そして、キス。
高木クリスがちょっと背を向けた感じで立ったので、ファントムの表情が
ほぼ正面になりました。


ファントムは突然のキスの衝撃からか、抱きしめられても茫然自失の様子で、
何か言いたそうに、くちびるを震わせているだけ。
2回目のキスでも彼女を抱きしめることもできず、ぎゅっと目をつぶってて、
こういうウブな反応がファントムなんですよね〜。


身体を離したあとも手がかすかに震えています。


心持ち足を引きずるように、舞台を横切ってラウルをちらと一瞥してから
縄を切ってやる表情は、もうすべてをあきらめている感じでしょうか。




指輪を返しに来た高木クリス、 「アイ・ラブ・ユー」 のあと、顔を見ながら
2歩ほど下がり、くるりと背を向けて去っていきました。



「わが愛は 終わりぬ 夜の調べとともに」

ラストは長く長く綺麗に伸ばして、村ファントムは久々の美声を
完璧なコンディションで聴かせて下さいました。
歌声と演技という点では、ホントにブラヴァな舞台だったと思います。



しかし・・・イス抜けの時に、思いっきりガタンっていわせちゃうのも
村ファントムですよね〜(笑)






さて、カーテンコールの時になって、この公演には、もうひとつオマケが
ついていたことを知りました。
7月14日は劇団四季の創立記念日。
この日、上演されたそれぞれの舞台で、俳優さんからのご挨拶があったそうです。


なーるほど。 休憩時間中、客席に四季の俳優さんが数人見かけられたので
「???」と思っていたのですが、そういうことだったのですか。


「オペラ座の怪人」カンパニーからは、佐野さんがご挨拶。
あら〜今回は支配人さんじゃないんですね。


52年間の演劇活動ができたこと、これまでのお客様のご声援に感謝します。
というような話のあと、 「これからも精進を重ね、この舞台を・・」 と言ってから、
ちょっぴり言葉に詰まった表情になり 「え〜・・守っていきますので
よろしくお願いします。」 って、佐野さんの素の笑顔が初々しくって良かったですよ♪




ということで、この場を借りまして、僭越ながら私もお祝いをひと言。

創立記念日おめでとうございます。
過去の50年よりも、未来の50年はさらに変化が早くなると思いますけど、
ミュージカルという分野が日本で本格的な飛躍を遂げるうえで、
劇団四季の存在を抜きに、その青写真は語れないと思います。
ファン歴は浅いですけど、私も心から今後の充実をお祈りしておりますわ。




・・・とまあ、大きなことを語ったあとに細かい話で恐縮なんですけど、
最後にひとつだけ、四季さんへ申し上げたいことが。



高井さんにも言えるのですけど、特に今日の村ファントムの衣装、ズボンの裾が
今まで拝見した中で一番短かったような気がします。
やっぱり後ろ姿の時に靴の後ろが全部見えるというのは、(普通は裾が
かぶさって、カカト部分はそれほど見えないはずですよね) いかがなものかと。


ファントムの燕尾服は、裾を少し細めに絞ってあるという話を聞いたことが
ありますけど、これは、それ以前の問題なのではありますまいか。 
生地はたぶんまだあると思いますし、少しだけでも良いので裾を出して
あげて頂けないでしょうか。



これは、まさに 「All I ask of you」。 

洋裁師を母に持つワタシめの、ただひとつのお願いなのでございます〜(^^)










             きみこむの観劇日記に戻る    銀色文字トップに戻る