1階7列71番
                                    「芸術の殿堂」オペラハウス


                       当日のキャスト


 ファントムBrad・Little  クリスティーヌ Marni・Raab  ラウル子爵 Jarrod・Carland 
 ムッシュー・フィルマン Jonathan・Taylor  ムッシュー・アンドレ Anders・Sohlman 
 カルロッタ Pauline・du・Plessis  マダム・ジリー Jackie・Rees 
 ビアンジ Marcus・Desand  メグ・ジリー Jee・Hyun Noh 




エピソード4〜 第1幕




ようやく、観劇までたどり着きました。
広々とした円形のロビーの吹き抜けになった天井から、「Phantom of the Opera」と
書かれた巨大な垂れ幕が下がって、ますます期待感を高めてくれます。


以下の文章には日本語と英語が混じって出てきますが、英語の歌詞だけだと、
どうしてもわかりにくくなるので、やむを得ずのバイリンガル方式、ご了承下さいませ(^^)



客席に入る前に、ちょこっとだけ皆でボックス席を探検に行きました。
残念ながら5番じゃなかったけど、赤いカバーが掛けられた2脚のイスが鎮座する
ボックスを見学。
舞台を横から見るのは案外見づらいかもしれませんが、かなりの高さがあるし、優雅な
雰囲気は素敵ですね♪


さて客席に入ってみれば、天井が高くて舞台が広ーい! 
汐留「海」劇場を基準にすれば横幅、高さ共に2倍近くはあろうかという大舞台です。
これは下手上手にハケるのも、大変そうだなあ☆




いよいよ会場が暗くなってきました。  開演です。




第1幕



オークション

日本ではあまり聞こえない、「ガヤガヤ」というざわめきと共に始まったオークション。
白い頬ヒゲのあるオークショナーが芝居がかった英語でしゃべります。 
最初に「ほぉ」と思ったのは、老ラウルの後ろにいる世話役の女性。
四季版では車いすを少し前に押すぐらいしか動きがありませんが、こちらは老ラウルの
前に回って、膝掛けを直してあげるんですね〜。



オーヴァチュア

花火が床からバシッと吹き出して、負けじと大音量で始まったオーヴァチュア。
四季で使っているシャンデリアは、飾りが前面だけに付いていますが、どの角度から
見てもおかしくないようにとの配慮でしょうか、全周にきちんと飾りがついた大きな
シャンデリアでした。
観客みんなで「ホー」と口を開けているのは日韓同じ(当たり前ですね)。



カルロッタ登場

さすがプリマドンナ、パワフルなソロを聴かせて下さいました。
身体を前に倒して、手にした生首にキスをしそうな仕草があるのが面白いな〜♪
クリス役の女優さんは、体型ほっそり型で面長の顔立ち。
実年齢がいくつかわからないけど、背も高いし、ちょっとお姉さんって感じです。
メグは韓国出身の女優さんだそうで、小柄な黒髪のメグでした。



支配人登場

小柄でヤセ気味で人が良さそうなフィルマンさんと、背が高くて豊かな白髪、
押し出しの良い紳士という雰囲気のアンドレさん。
面白いのは、二人の性格の差が登場からハッキリわかること。
前支配人から説明を受けつつ、フィルマンさんは座席の数を数えて手帳に几帳面に
書きつけ、ふむふむと納得する演技をしています。
あれはたぶん、チケット代の収入がいくらになるかを、計算しているんだと思うわ。
対してアンドレさんは、根っからのオペラ好きなんですね。
あまり説明とか聞いてなくて、笑顔でダンサーさんやカーラばかり見て手を差し伸べたり。


「ハンニバル」象が出てくるシーン。

四季に比べると、全体に三枚目扱いのビアンジさん。
今回は黒人の方が演じていらっしゃいました。 フィナーレ間近なのに、途中で
コケたりするもんだから(笑)象の背に登るのがもうギリギリ。
どうにか登ってズレた帽子を直し、あ〜間に合わないよ〜っと思ったら、あわてて
剣を持って得意げにポーズ! 
絶妙のコミカルなタイミングに観客から、どっと笑いがおこっていました。



Think of Me

ここで面白かったのは、突然指名されたクリスティーヌ、歌い出しは声がふるえて、
しどろもどろになるところ。
四季版では、最初から上手に歌えて一同ビックリみたいな演技になっていますが、
本場では支配人さんも「これで大丈夫かな?」という会話になっていたようです。
衣装が変わり、スポットライトが当たったとたんに笑顔で伸びやかに歌い始めるわけで、
ここで時の経過を表しているのですね、なるほど。



ラウル登場

ラウルは茶色の髪にあごがしっかりした輪郭の、大人の雰囲気をもった男性です。
オジサマとまでは行かないけど、若造って感じでもありません。
これなら、佐野さんも石丸さんもまだまだ大丈夫ですね。
いえ、それどころか高井ラウルだってイケそう(笑)。


どうしても四季版と比べてしまいますが、細かい演技の違いが見られました。
ラウルは 「ブラヴァ!」 で立たないし、オペラグラスもフィルマン夫人に途中から
借りています。
そして、クリスに気がついて歌い出すと、他の人たちはストップモーションになって、
時が止まる演出。 これはなかなか雰囲気があって良いと思いますわ。



クリスの楽屋

しっかしこのクリスティーヌ、スカーフの扱いあたりから思ってたけど、
かなり大ざっぱですね〜。
着替えと靴の脱ぎ方が雑でバタバタしてるので、モロに足が見えてます。
こういう小さな仕草も、日本女性は無意識にしとやかな表現になってるんですね。
しかも支配人さんやラウルが前でしゃべっている間、ラウルからの手紙で
パタパタ顔をあおいだりしてるし(笑)。 ・・ありゃあO型かB型だな、間違いない☆


しかしこうなるとラウルも負けてはいられません。(←なぜ勝負☆)


食事に誘い「私の音楽の先生は・・」と心配するクリスを、軽く笑い飛ばす子爵さま。
しかも 「2分・・・」 の言い方も、2分で戻ってくるからじゃなくて、2分あげるから
用意をしなさいと言いつけるような雰囲気です。 
さすが特権階級というか、ちょっと横柄な子爵さまだなあ。
でも、欧米のお客様の目から見ると幼なじみとはいえ、もともと身分違いなのだから
これで当然なのでしょうか。



ファントム登場

さて、いよいよファントムが声だけで登場するシーン。
胸がドキドキしてきました。



「Insolent boy!」 



聞こえてくる第一声は男性的で、攻撃的。声質としてはやっぱりテノールなのかな。 
最初から感情がこもって、激しい歌い方でした。


日本語なら 「私がいるのだ その中に〜♪」 を歌って、
鏡にファントムの顔が浮かび上がります。



・・なーんだ本場も丸いじゃん(爆)


村さん擁護派としては、丸というか四角く見えるブラッド・ファントムさまに、
妙な安堵を覚えました。そうそう、いいんですねこれで。
(・・って、フォローになっていないような気も・笑)


さてこの舞台では、スモークが上に立ち上るせいで身体はほとんど見えません。
ん〜あんまり煙だらけだと、神秘的というより 「バルサン使用中」 みたいに
なっちゃうなあ(暴言失礼)。


しかし、歌声に込められた「誘い寄せよう」という意志の強さにはスゴイものがあります。
「Come to me」 の低音の響きが、ぞくっとするほど妖しいファントム。



オペラ座の地下へ

トラベレータらしきものはありましたが、ツアー仕様なのか、前後にはあまり
動かないセットになっていたようです。
右へ左へ折り返す中で、二人が離れたりカンテラで足下を照らしたり。
それにしても、ブラッド・ファントムはボートの漕ぎ方がリアルですね〜。
手にしたオールで水底を捏(こ)ねたり寄せたり、ホントに操縦している感じ。
うーむ、このファントム様は絶対そっち方面の副業があると見た(笑)



いよいよボートから降りて、ファントムの全容があきらかになります。
やっぱり大きい! 彼は身長190センチ以上あるそうで、迫力が違います。
ついに愛しいクリスを連れてきた喜びに高ぶるファントムですが、表現が激しいな〜
「Sing!」 は叫んでいるし、続く 「歌え 私のために!」 の部分は全くメロディに
乗せず怒鳴ってます☆  


中央に歩いてきたファントムは正面を向いて帽子をとり、そのままスパッと
上手側の袖方向に投げたり、マントさばきも派手で華やかな感じ。
ちょっと身体の前に下ろしかけてから、闘牛士のようにひらめかせていらっしゃいました。
もうこの段階で、右手の小指に指輪をしているのですね。
楽しみにしていた身体と髪の撫でつけポーズはなく、片手でマスクをちょっと直す
程度なのが不思議です。
うーん、眼鏡をかけている人がちょこっと眼鏡を直したくらいの感じだったな〜。



Music of the night

今回、あらためて「こんなに情感豊かな曲だったんだなあ・・」と感心したのがこの曲。


歌詞のひとつひとつに、意味と気持ちを込めているのがよくわかります。
たとえば日本語なら 「歌って欲しい どうか」 の部分 「My music・・・」 になると、
囁くような声に変わり、両手で楽譜を愛しげになで回すファントム。


「静かに広がる闇」 で始まるフレーズになると曲のペースもゆっくり、夢の中で
ささやきかける雰囲気に変わります。
最初のうち、クリスは完全なトランスにはなっておらず、ちゃんと意識があって
怯えている表情。夢の中で目が覚めたり、またうとうとしたりという感じでしょうか。


ブラッド・ファントムの大きな手で中指を折り込むような妖しい指の動かし方は、
以前ビデオクリップで拝見したマイケル・クロフォード氏のファントムに似てるかも。
歌が進むにつれて波が寄せては引くように、声の調子が変わります。
「空に高く」 の繊細さと低音の男性的な響きの波に、クリスも観客も
惑乱されていくようで・・・。


曲の小さな区切りが四季版より明確で、まるで物語のページをめくるように、
色とりどりの歌声を聞かせるファントム。


時に高く、時に低く。


これは秘やかになめらかに、彼女の心に忍び込む音楽での愛撫なんですね〜。



羽交い締めシーン、四季ではファントムがクリスの右手を持ち上げますが、
この舞台ではファントムの手を借りず、自分の意志で顔に触れる演技になっていました。



さて人形を覆う布を取る直前、ファントムが歌いながらも、左の手のひらを上にして
指でちょいちょいと招きます。
顔の角度も軽くかしげるようにして、 「ほら、こっちへ来て来て♪」 と動作で
積極的に呼び寄せるファントム。
まさに、へぇ〜☆☆ですけど、驚くのはまだ早い。
クリスが失神して床に倒れたのを見て、このファントムは 「あれれ?」 って、
明らかにあわてるんです。
しかも頭に手をやって 「参ったなぁ」 ってポリポリしそうな雰囲気(笑)。


・・・はーアナタはそういうキャラクターなのですか☆
四季版のファントムと根本的に違うんだなあとわかって来ましたよ。
そこらあたりの結論は、2幕に話を譲るとしまして。



さて、お気づきでしょうか。
欧米ファントムであると聞いていたお姫様抱っこは、この舞台のファントムは、
やっていませんでした。
四季版同様、床に倒れたクリスにマントをかけ、そばに片膝をついて歌います。
「Music of the night・・・」 手を高くかかげる仕草は、闇に住みながらも、
クリスという光を求めるファントムの心情をよくあらわしていると思いました。



暗転の後、作曲をするファントムがパントマイム状態で、ここでもちょっとウケました。


羽ペンを右手に持ったまま、ちょっと首をかしげて上空を見つめ、
ふーむと考え込み・・、あ、今なにかアイディアを思いついたんですね(笑)。
「うんそうだ、ここはこうしようっと♪」 って感じで楽しげに譜面を
書きこむファントム可愛すぎ☆


クリスティーヌがソファから起きあがるとき両手を伸ばして、うーんと伸びをしてます。
アーよく寝た〜って感じなのが笑えました。
クリスってば、さらわれて来たのにリラックスしすぎでは(笑)。



次はご存じ、アンマスクシーンですが、このファントム、叫び声が
「ぎゃおー」 って吠えるように怒るので、恐がりの私にはちょっと心臓に悪いです。
「地獄へ行け」「呪われろ」 にあたる 「Damn You!」「Curse You!」 が
引き裂かれるように悲痛な泣き声。


片手で顔をおおってクリスのそばに這っていくシーン。
高井ファントムは、完全に上半身を起こしているし、村ファントムも這っていくときは
片手を伸ばし気味にしていますが、こちらは本物の匍匐(ほふく)前進ですね。
んーと自衛隊の第5匍匐に近いかしら(・・って、よけいわかりにくいですねスミマセン☆)
なにしろ、このファントムさま、衣装も気にせず床にしっかり胸までついてます。
舞台が広いせいもあり、クリスの場所が結構遠いけど大丈夫かなあ? 


醜さの下に込められたファントムの悲しみと憧れが感じられる場面のはずなのですが、
床にうつぶせになったままで、しゃくとり虫みたいに這っていく190センチの巨体が・・☆
いや、笑ってはいけないんですけど、悲哀のこもった声で歌いながら、
しゃかしゃか這っていくスピードが早いもんで、これがまたおっかしくて。
それなのに、ファントムがささやく 「クリスティーヌ・・」 はホントに泣き声で、
可哀想やらおかしいやら、どう反応すれば良いのやら☆



支配人のオフィス

小さいところが、色々違うのが面白いです。
フィルマンさんがラウルにぞんざいな口をきいて怒られる場面、この舞台では
なかったような気がします。


お客様の反応も良くて、コミカルな動作には必ず笑い声が起こります。
どの瞬間だったかよく覚えていないのですが、支配人二人がそろりそろりと
足並みを揃えてわざとらしく歩く場面などは、結構ウケてましたね〜。



プリマ・ドンナ

笑ってしまったのは、カーラを座らせるイスにまずフィルマンさんが座ろうとして、
アンドレさんに止められるところ。
それぞれの演技もなかなか細かいです。
カーラの声がよく響いて、さすがの七重唱でした。



イル・ムート

5番ボックスのラウルは、パンフレットを手に持っているのですね。
よぼよぼしたドン伯爵は、登場だけでお客様にウケていましたが、
「出発は中止だ」 のところ、英語だと 「observ her (彼女を見ていよう) 」 の
ラスト 「her〜〜〜〜〜〜」と ロングトーンに拍手が起きて、ちょっとした
ショーストップ状態になりました。
へぇ〜ここは、ホントはこういう見せ場なのですね。
ラウルと支配人も大笑いしてます。キュートなドン伯爵にブラヴァ!でした♪



オペラ座の屋上

四季に比べるとクリスの方が積極的に、ラウル頼りにしている表現が多いな〜。
とにかく、クリスはしょっちゅうラウルにすがりついて、彼の胸に両手をついています。

しかしこうなるとラウルも負けてはいられません(だから、なぜ勝負☆)

片手を伸ばして、クリスの頬に何度も触るラウル。
こういうスキンシップの取り方は、欧米の方ならではなんでしょうね〜。
一応 「クリスティーヌ 君がすべて」 ではひざまづくのですが、立ち上がったら
あごを少し上げてクリスを見下ろすラウルの仕草、どことなく従属物として
見ているような印象だなあ。
現在の四季ベテランラウルが、佐野さん、柳瀬さん、石丸さんといずれ劣らぬ
フェミニスト演技なので、正直どうもこのラウル像には抵抗があります。


ただ、クリスもそれを承知で (というか、それはエスコートする男性なら
当たり前という雰囲気で) すがってるので、恋人同士としてはもちろんアツアツ☆
キスは4回くらいだったかな。
時間も結構長いので、キスの息継ぎのついでに歌っているような(爆)。



エンジェル像

暗闇にエンジェル像が降りて、まず両手がぬっと現れて中央のエンジェル像の
手に重ねます。
「I gave you my music・・・」 ファルセットの声が泣いているので、見ているこちらも
胸がしめつけられるよう。


しかし、泣いているだけでは終わらないのが、このファントムさま。
クリスとラウルのデュエットの最後の最後に、名状しがたいもの凄い声で絶叫しました。
それは悲しみが、憎悪と狂気に変わった瞬間。


もうひとつ驚いたのは、あの高いエンジェル像の上で、もう一段立ち上がって
ファントムが 「許しはしないぞ〜!!」 と、少し覆い被さるような姿勢になったこと。
うわ〜ケイ女史の小説 「ファントム」 の中に、オペラ座の屋上で、ファントムが
黒々とした憎悪の魔物に生まれ変わる瞬間が描かれていますが、まるでそれを
具現化して見ているよう。


ファントムは最後の瞬間にマントをちゃんと翻して姿を消し、シャンデリア落下の
閃光と共に、笑い声が長く長く響いて・・・。





1幕の終わり。


あまりの迫力に、観客一同ちょっと腰を抜かしておりました・・(笑)




                                  この項続く (しかし長いな〜☆)





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2005年7月2日(土)ソワレ

ワールドツアー 「オペラ座の怪人」 韓国遠征旅行記3

【観劇・前編】