ミュージカル エリザベート 


         

                                 博多座 1階 A席  E列43番
                                               



                     当日のキャスト



   エリザベート 一路真輝  トート 内野聖陽  フランツ・ヨーゼフ 鈴木綜馬
   ルドルフ パク・トンハ  エルマー 今 拓哉  少年ルドルフ 苫篠和馬
   ルキーニ 高嶋政宏   マックス 村井国夫 

2004年10月5日(火)ソワレ

エリザベート2回目は、たまたま最前列チケットを手に入れることができました。
内野さんはやっぱり目で見て楽しむべきだという評判なので、初内野トートに
間近でお会いできるのはこの上なく嬉しいことです。
この日は仕事で出張していたので、開演ぎりぎりに博多座へ滑り込みました。



ところで観劇前に、内野聖陽さんについて思い出すことといえば・・。

私にとっては、NHK朝のドラマ「ふたりっ子」でヒロインの夫になる棋士役で
ご出演の時がホントの初対面だったと思います。
そのときは「2枚目役にしては、あんまりハンサムさんじゃないなあ(暴言失礼)」と
思ったくらいで、それほど印象に残りませんでした。
ただドラマそのものは面白かったので、(特に主役の姉の方が、前半で小さな
悪事をはたらくのが、朝ドラにしては珍しくて・笑)しっかり見ていたのですが。
調べてみたらあれって96年放映だったのですね。8年前ですか。なんだか
もっと昔だったような気もするのですが、案外最近だったんだなあ。


内野さんはその後も映画にドラマに舞台にと大活躍ですが、最近では
「エースをねらえ!」の宗方コーチ役で一世を風靡(笑)。
マニアックなファンが倍増したのではないでしょうか。

実は宗方コーチの内野さんも一回しか拝見してないのですが、たまたまテレビを
つけたら、ちょうど愛弟子の岡ひろみに口ごたえされたところだったらしく(笑)、
内野さんが歯を食いしばるようにして「なにっ!」と殺気だった返事を
してるのに遭遇。


ほとんど口を開けずに、このセリフを言うところがウマイ!と感心してしまいました。
(「なにっ」て大きく口を開けてこれをやると、学芸会みたくなってしまうのです。
皆様いちどお試し下さいませ。
現実にはヒトは激昂すると、こうなるってことですね☆)


とまあ、前置きが長くなりましたが、内野さんの演技力には期待大デス♪




第1幕



我ら息絶えし者ども


絞首台に下がっている暗殺者ルキーニが、トートダンサー3人に下ろされ、
裁判官とやりとりするところから物語が始まります。
なかなかおもしろい導入だと思うのですけど、初見の日はなんて言ってるのか、
全然聞き取れなくて参りました。 ご年配で初見の方なんて、CDでの予習が
なかったら導入からザセツしそう☆
劇団四季の明確すぎるほど(笑)明確な発音に、こちらが慣れているせいも
あるのでしょうけどね〜。


パープルやブルーの照明がとにかく綺麗。
霊廟というのでしょうか。いくつも並んだ棺桶からトートダンサーが死者を
呼び起こします。黒い布きれを衣装に沢山つけて、ゾンビみたいなイメージ。
どうしても「スリラー」を思い起こしてしまうのですけど、きっと振付けもあの有名な
ダンスに似ないように苦心したのかなあ、なんて余計なことを考えてしまいました。



トート登場〜私を燃やす愛


舞台上空から、ゴンドラが斜めに降りて来るのに初回は驚きましたけど、
今回は大丈夫です。
心の準備もできました、内野さん思いっきり来て下さいませ(笑)。
死者を従える黄泉の帝王。 内野トートの第一印象は、山口さんに比べると
やっぱりちょっと線が細いというか、若い閣下って感じかな。
でも、目つきは激しいものがありますね。


「ただひとつのあやまちは 皇后への愛だ」のところで、前回公演の時は
内野さんの、自分の人差し指を咬むという仕草が話題になったそうですが、
今回はやってないような。
繊細な内野さんには似合う仕草だと思うし、またやって下さらないかなあ。
これが山口さんだとなんとなく似合わない、というか山口さんは誰かの指を
咬むことはあっても(笑)、自分の指をかむことはなさそう☆



ポッセンホーフェン城の庭


ルキーニの「始めよう」で、死人達が「あぁ〜」とうつろな返事をして、場面が
変わります。オペラ座と同様、タイムスリップが起きてシシィも早変わり。
チェックのドレスが可愛い、ティーンエイジャーのシシィですね。


上手のベンチで女性に膝枕してもらいながら、キスする恋人同士は誰かと
思ったらシシィの父マックスと家庭教師。席が上手側で目の前だったのですが、
舞台が暗いうちから村井さんと女優さんがキスする音が派手に聞こえました。
村井パパ、絶対やりすぎ(笑)。


マックスの妻、つまりシシィの母ルドヴィカは宝塚出身の春風ひとみさん。
綺麗で上品でなかなか素敵なお母様ですね。シシィの姉ヘレネを
オーストリア皇后にする夢を託している様子や、コミカルな表情がとっても
キュートで好きです。



ところで今回、各方面から非難が雨あられのように降り注いでいる
電光表示板くんですけど、最前列席でこそホントの本領発揮でしょうか(笑)。
なにしろ目が粗いせいで、なにがなんだかよくわかりません。
もう笑っちゃうくらいですわ。まあ正直言って、個人的にはあまり気にしてない
のですけどね〜。(ええ、もとから視野も狭いし・・笑)
たぶん次の再演では廃止になってると思うのですけど、どんなものでしょうか。
・・なーんて言ってたら、次回はさらに巨大化してたりして☆



冥界〜愛と死の輪舞


この場面の内野トートの衣装が個人的には一番好きです。
山口トートはたしか黒一色だったのですが、内野さんのはグレーのジョーゼット
というのでしょうか、薄い長い袖が付いています。この布が動くたびに
ふわりと風をはらんで、優雅な雰囲気が素敵〜。


内野さんは汗っかきだしよく動くトートだから、衣装も軽く薄く作ってあるという
話を思い出しました。ふむふむ納得。


トートダンサーの妖艶なダンスで、シシィが徐々にトートの元に運ばれてきます。
シシィとトートの出会いの場面、内野さんは恋に落ちた瞬間をハッキリと
見せて下さるのですね。


少女の瞳に一瞬で心を奪われ、息づかいも荒く動揺する内野トート。
「俺の すべてが 崩れる」のところでは
しっかりと掴んでいるはずの、自らの心のぐらつきに戸惑うように
震える両手を見つめる目が、気持ちをよく語っています。


こういう表現も、内野さんに若々しいトートを感じるところ。
山口さんのトートはあくまでプライドが高くて、一目惚れしてどぎまぎしてるところ
なんて見せられるか!って感じでしょうか。


しっかしこの場面を拝見して、内野聖陽という俳優さんに対して抱いていた
イメージが大きく変わりましたわ〜。
なんとまあ内野トートの仕草のエロティックなこと(笑)
「この思い 体に刻まれて」と歌いながら、せつなげに自分の体を抱きしめるように
するし、シシィの命を助けてやることを決意した時も 「その時おまえは
 俺を忘れ去る」 で、頭を左右に小さく振るようにしてらっしゃいます。
髪が小刻みに震えてるんですよ、激情のあまり。


もう、これを間近で見ただけでもう冒頭からクラクラ☆
まだ始まったばかりなのに、こんなことで私の心臓は
最後までもつのでしょうか(笑)



ウイーン王宮


フランツ・ヨーゼフと母ゾフィの関係を示すナンバー。
王宮らしく衣装も豪華だし、チェンバロの音色も雰囲気があります。
フランツ役は鈴木さんの声質にぴったり、ノーブルだけどいささか線の細い
マザコンぶりがよくあらわされていると思います。



バートイシュル


フランツのお見合いのシーンですが、ルキーニはポーターの扮装で登場します。
電光で背景の山を表現するのは良いとしても、鹿は無理矢理出さなくても
良いのではないでしょうか。フランツが狩猟をしているという流れに
合わせたということなのかなあ。
妙にマンガチックになって、現実に引き戻されるのが残念☆



ウイーン・アウグステン教会〜結婚式


結婚式なのに、不幸の始まりを予感させるナンバーと、破滅に向かう運命に
巻き取られていく人形のような王族たちの演出が面白いですね。
シシィのベールに続く、白い布をたぐり寄せて笑うトートは、いかにも人間を
高みから見下ろしている非人間的な存在に見えました。



最後のダンス〜シェーンブルン宮殿


婚礼のパーティで浮かれる宮廷ですが、いつのまにかトートが階段の上に
立っています。白いドレス姿のシシィの意識を、魔力であやつりながら下りてくる、
その表情の色っぽいこと。

どちらのトートでも、ここの歌詞の前半が好きだなあ。


フランツ陛下の腕に抱かれていても、あなたは私を忘れていない。
その証拠に、ひそやかに私にも微笑みを与えているじゃないか。


やんわりと、しかしチクチクとシシィを責めてますね〜(笑)
トート閣下が並の男性のように、嫉妬したり、じれたり、歯がゆい思いをする
というのが面白いです。黄泉の帝王なのに、全知全能ではないというか。
いつの世も、誰にとっても、自分の思い通りにならないものは
想い人の心なのですね。


でも、内野さんの歌声がなぜ色っぽく感じられるのか、この場面でちょっと
わかったような気 がしました。
文章だとうまく伝わらないのですが、たとえば
「デュエットを じっと待ちこがれる」の歌詞で言うなら
内野さん「待ちこがあ・ァ・・れ」って感じで「・ァ・・」の母音をほんの少し重ねて
ささやくように声をかすれさせるんですね〜。

なんとセクシーなテクニック。これはどこかで使わねば(←無理です)



ハンガリー・デブレツイン


ハンガリーを訪問するフランツとシシィ。
革命家の今エルマー達3人が姿を現します。
今さんにお会いするのは、今年夏のレ・ミゼラブルコンサート以来ですね。
うふふ。相変わらず瞳が黒葡萄のように、まん丸くて可愛い☆
3人の青年の服装が端正で好きですね〜。今さんも良いけど、野沢さんと
おっしゃるのかな、長髪の青年も目を引きました。
内野トートは分厚い感じの焦げ茶のロング丈の衣装で登場。シシィ達を
狙撃するエルマーをトートの魔力で隠し、ピストルを構えるエルマーに
トートがニッコリ笑ってかすかに首を振ってみせてました。


ここ、幼い長女の死を直接小さな棺桶で見せるのが、コワイ表現だと思います。
シシィに手を差し伸べたのに、決してあなたを許さない、と責められる内野トート。
一瞬悲しそうに背を向けて顔を伏せるのが、なんかホントに人間みたい。


「死」そのものであるトートが、死を責められて気持ちが傷つくのは
変なんですけど、内野さんのタイミングは、マンガなら
「ぐさっ☆」っとか擬音が入りそう(笑)



ウイーンのカフェ


シャンデリアを天井にあげているのは、カフェの給仕姿のルキーニ。
客達が新聞を旗のように持ち、歌に合わせてパンと払う振りがおもしろい。
レミゼのABCカフェみたいですが、ヨーロッパではカフェというのは情報交換の場
として大きな役割を担っていたのですね。


ルキーニが給仕のエプロンを脱ぎながら、次の場面に誘います。

皇太子ルドルフのことを、「強く〜厳しく〜育てられ・・たとですたい!」って
博多弁で歌ったので、会場大ウケしておりました。
LKもそうだけど、こういう地方を意識した限定バージョンも生の舞台の
おもしろさですね。そういえば、9月に見にいった古田新太さんと生瀬勝久さんの
舞台「鈍獣」でも地元限定のコマーシャルソングを歌って、大ウケしてましたっけ。



エリザベートの居室


部屋の前で閉め出されたフランツが、シシイへの想いを歌います。
厳しい公務に耐え、神経をすりへらして疲れ切った彼にとって女性の愛情は、
やすらぎなのですね。
ここ、結構男性の観客には胸にせまるものがあるのでしょうか。
それでも「お母様か、私か!」なんて最後通牒を突きつけられるフランツさん。
でもね、ある意味自業自得なのよ(笑)
ま、それは後々のシシィにも言えることなわけですけどね〜。


暗転の間にトートが机に座っています。
燭台の火が緑色に変わって、魔物の登場を表現しているというわけ。
「泣かないで」と優しくささやきかけるトートですが、ここの動作が山口さんとは
まったく違います。
机の上で寝そべって「お休み 腕の中で」と自分の腕の中に誘いこむような
仕草を見せる内野トート。
つ、机の上で一体何をしようとなさってるんでしょうか閣下(爆)
シシィの部屋着の肩をはだけさせたりして、見てるこちらもドキドキしましたわ。


でも、まーたここでも誘惑に失敗しちゃうトート閣下。
なかなかうまく行きませんね、片思いって(笑)




第2幕



キッチュ


ルキーニがキラキラした上着に派手な帽子、駅弁売りみたいなスタイルで
エリザベートと皇帝一家に関するお土産を売るナンバー、キッチュ。
キッチュというのはドイツ語で 「Kisch」 と書いて、ファッション用語としては
「悪趣味、まがいもの」というイメージを表す言葉として使われています。
本来は19世紀からある言葉らしいです。 もともとは単に偽物というよりも、
民衆に迎合する精神、とでもいうべきものなのかもしれません。



私が踊るとき


戴冠式のパレードで馬車に乗る、得意絶頂のシシィと皇帝ですが、
トートダンサー達がマントを身につけ、お付きの者として控えています。
内野さんは毛皮のついた厚そうな衣装ですが、トートダンサーはマントを
取ると、上半身裸の上に黒いメッシュだけ。
細くてしなやかな身体がセクシーなダンスを見せてくれます。


トートが御者に化けている間、髪をひとつにまとめてるのがなんとなく可愛い。
馬車が止まり、髪をほどいたトートが御者席から振り返って意味深に笑います。
ここ、山口さんもこんな風に笑ってましたっけ?
民衆たちがストップモーションになると、トートとシシィだけの二人の世界。
心象表現をこんな風にする舞台の工夫って面白いですね。
馬車を降りて勝利宣言をするシシィを、馬車の上に立ち上がって腕を組み、
不敵な笑みを浮かべて見ている内野トート。


背景が一面の星空になるこの場面、雄大さがあって好きです。
青、白と星空のコントラスト。シンプルで自由な感じ。
デュエットを歌いながらも、手を差し伸べてはシシィに逃げられるトート。
内野さん、逃げられるたびに笑みを浮かべるのですが、こう回数が多いと
なんだか負け惜しみで笑ってるような感じも受けてしまうなあ。


これはやっぱり、一路さんがハッキリと拒絶しすぎるからではないでしょうか。
もう少しシシィの心も身体も揺らがないと、内野トートの片思いばかりになって
年上の女性に恋する青年みたいなムードが出てきちゃうんですよね〜。


オペラ座のクリスティーヌが二人の男性の間で揺れ動く心情を思い出しました。
きっぱりしすぎる某クリスティーヌ女優さんもいらっしゃいましたが、
やっぱりこういう三角関係では挟まれる立場の人間に、多少のもろさがないと
リアルでなくなるんだなあ・・・しみじみ☆



ルドルフの部屋


ルドルフ少年が本の上に座っています。
あちこちにトートダンサーがだまってうずくまっている部屋。
一番生気に満ちているはずの子供の部屋でさえ、ハプスブルグの運命を
暗示するように、そこかしこに「死」の香りが満ちている。
ヨーロッパらしい退廃と死の雰囲気があって好きです。
猫を殺したと白状するルドルフを、満足そうに笑顔で見ている内野トートは
残忍な本性を隠している、退屈した「死」。
無力な獲物を前に舌なめずりしている、黒豹のようでした。



ゾフィのサロン


ちゃんと年をとって杖をついているゾフィ皇太后さま。
杖でノックをする「ポクポク」っていう音がコミカルな感じ。大臣や大司教たちも
年をとっているのですね。マーチが楽しいナンバーです。
グリュンネ伯爵って、ひそかにシシィに憧れてたのね(笑)



エリザベートの体操室

倒れたシシィをドクトルに化けたトートが誘惑しに来る、ドキドキするシーン。
内野トートは杖をついた老ドクトル。
「どうなさいました」のセリフもお年寄りらしく押さえた発声をしていらっしゃいます。


フランツの裏切りに絶望するシシィが、思わず口走ってしまう「命を絶ちます」を
聞いたときが見所ですね〜。
背を向けていた内野トートがハッとして、喜びのあまり杖を
放り投げる「カラカラカラ・・」という音もドラマティック。
「それがいい! エリザベート!」と叫んで、マントを脱ぎ捨てるトートが
なんだか単純に嬉しそうで、可愛くてたまりませんわ♪


パンフレットに載っているトークショーの中で、一路さんが、この場面で
ソファに飛び乗る内野さんが、すごい勢いで飛んでくるのでこわいんですよ、
という話をしていらっしゃいましたけど、ホントにそんな感じ。
一路さんも必死で逃げてるし(笑)。



ゾフィーの死

実は初見の日、一番感動したのがこの場面。
今回加わったという新演出の中では評価の高いところではないでしょうか。
単なる意地悪な姑じゃなくて、彼女なりの使命感をちゃんと描くことで、
偉大な皇太后のイメージを守って下さったのですね。


最愛の息子フランツとハプスブルク家の行く末を案じながら、病に倒れるゾフィ。
死の天使が迎えに来て、ひっそりと立つ様子がなんとも言えない趣があります。
最後に、彼女を抱きかかえるようにして奈落に消えていく
「死」の端正な横顔が綺麗です。
厳かで静かな皇太后の最期に敬意を払って、さすがのルキーニも帽子を脱いで
黙礼していました。



ホーフブルグ宮殿の廊下〜ルドルフ登場


今日のルドルフは、初日と同じパク・トンハさん。今回のエリザベートで
初めてお会いする俳優さんですが、2年ほど前まで劇団四季に
在籍していらしたこともあるとか。四季歴の浅い私は、全然知りませんでした。
パンフレットによるとNHKの「ハングル語講座」にもご出演中だそうですね。
歌とセリフを聞く限りではほとんど韓国なまりも感じないし、
とにかく表情が「悲劇の皇太子」にピッタリ。 ちょっと体格が大きいし、
童顔というタイプではないので、もう大人になっちゃった皇太子という
感じではありますが。


私はパク・トンハさんを初めて舞台で見たとき、なぜか
「ミス・サイゴンのトゥイだ〜」と思いました。単なる直感なので、たいした理由は
ないのですが。
うーん、きちんと分けた髪型と、詰襟の服装のせいかな。
でも、パクトゥイもなかなか魅せて下さるのではないでしょうか。悲痛な表情を
浮かべる亡霊になって、自分を撃ったキムを苦しめるところとか、
ちょっと見てみたい気も致します。



闇が広がる


ひざをついて座り込むパクルドルフ。
塔の横についている棒を滑って降りてくる内野トートですが、山口さんは
この棒を使わなかったですね。ほんのちょっとの距離だけど、そういうところは
慎重なのね山口さん(笑)


内野さんとパクさんのデュエット、力強くてなかなか良かったです。
山口さんのこの場面は、踊るというより柔道かなんかの試合みたいな(失礼☆)
感じがありましたが、ちゃんと男性二人でダンスをしていらっしゃいました。



ハンガリー独立運動


カフェから独立運動への流れはかなり早いので、いまだに
よく理解できないままです。途中からエルマー達とトートダンサーが
戦うのですけど、どうも意味がわかりにくい。


でも、この場面、トートの合図で銃声がした直後のライトが綺麗ですね〜。
緑のシャワーのように上から放射状に振ってくる照明が、ドラマティック。
パクルドルフ、名前を聞かれて震えるように「・・ハプスブルク」と答える演技が
真に迫っていてうまいです。



ラビリンス


シシィが久しぶりに宮殿に帰ってくる場面。
ブルーとグレーの毛皮が一杯ついたドレスが暑そう〜。
その反面、表情はどんどん冷たく無表情になっていきます。
ルドルフが歩きながら母に訴えかける様子が、なんともいじらしいところです。
体が大きくなっても、いつまでもママを求める少年の面影を残しているのですね。


愛を求め、満たされなかった寂しい少年。
「僕を見捨てるんだね」が傷ついた心を感じさせて、ズキリとしてしまいました。
シシィ、あんなに子供を返してって頑張ってたくせに、結局自分と
同じ思いをルドルフに味あわせているのですね。



マイヤーリンク〜ルドルフの死

今回の内野トートで、一番ドキドキしたのはこの場面でしたね〜。
トートダンサー達にもみくちゃにされ、逃げようとするルドルフを、猛禽類のような
鋭い目つきで追いつめ、激しくて長い「死の接吻」でとどめを刺すトート。
でも私はキスそのものじゃなくて、ルドルフにピストルを握らせるまでの
内野さんの手に釘づけ☆
だって息も止まりそうな長いキス。その最中にルドルフの肩から手首まで、
ゆっくりとピストルを滑らせるのが、残酷な愛撫って感じで
なんとも官能的だったのですもの。 もうクラクラ☆


ルドルフは手渡されたものが何なのか、その意味もほとんどわからない状態に
なっている様子。そりゃそうでしょうね〜。
魂ここにあらずという感じで顔を正面に向けたまま、ピストルを頭に当てて
引き金を引いてしまいます。


鐘の音がして、静かに奈落に落ちていくルドルフの遺体。
客席もシンと静まりかえっていました。



葬儀


大きな棺桶に近づく喪服のシシィ。
初日は「ルドルフ どこなの?」と、錯乱のあまり少しおかしくなってしまった
彼女の様子に、鈴木さんがハッとして、痛ましそうな表情で下がるという
演技があったのですけど、この日はそんな雰囲気ではありませんでした。


精神病院のシーンにもあったように、彼女の中に萌芽している狂気に
気づくという流れがなかなか良いな〜と思ったんだけどなあ。



夜のボート


シシィとフランツが出会いの時に歌う曲が使われています。
メロディは同じなのに、全然違う印象になるんですね。
つい2時間ほど前のことなのに、私たち観客も一緒に数十年を
旅してきたように感じます。
いつまでも平行線の寂しさを確認する、哀愁あるナンバーですが、
私は歌詞が詩的でとっても好きです。


シシィも孤独だったけど最後までシシィを求め、得られなかったフランツもまた
孤独だったのですね。
この舞台の登場人物は皆、何かを失っているんだなあと思いました。



悪夢


トートが、フランツに見せる悪夢という名のオペラ。
ハプスブルク家を破滅に導く不幸の連鎖は、お前からすべて始まっているのだ
とトートはフランツを責めています。
「彼女にはすべてを与えたのに」と反論するフランツに
「真の自由を与えられるのは、死である自分しかいない」と言い放つ
このやり取りは、年老いた皇帝にはあまりにも厳しい現実ですね。


エリザベート暗殺で実際に使われたのはヤスリだそうですが、
フランツが「刃物だ!」と叫ぶところを見ると、舞台上ではナイフという設定に
なっているのでしょうか。
冒頭のシーンに戻ってフラフラ現れた亡霊達ですが、ルドヴィカとマックスだけは
娘を助けようとして、ルキーニに押さえつけられています。
細かいけれど良い演技だなあ☆


そして暗殺のラストシーン。


刺されたシシィがあっという間に、黒いドレスから美しい白い衣装に変わって
「今こそ 迎えよう 黄泉の世界へ」と歌いながら二人が近づいていきます。


初めて、彼女の方から自分の胸の中に飛び込んできてくれたことが、
一瞬信じられない様子のトート閣下。
こみ上げる嬉しさ、天を仰ぐように喜びのため息をもらした内野トートの笑顔が
胸にキましたね〜。 全編を通して、険しい表情が多かった黄泉の帝王だけど
ここだけは恋に震える青年に戻っちゃって、もうメロメロ(笑)。
考えてみれば、数十年の片思いがようやく実った瞬間ですもの。
年を取らない魔物とはいえ、それはそれは長かったことでしょう。


永遠の愛の約束のように、死の接吻を与えるトート。
ようやく眠りについた愛しいシシィを棺桶に納めて、暗転。
幕となりました。




さて、カーテンコールは明るく華やかに。
指揮の塩田さんが観客をあおったりして、楽しいムードです。
盛り上がった全員でのコールが2回。送り出しの場内放送があっても
拍手が鳴りやみません。


とうとう、一路さんと内野さんが二人だけで再登場。
内野さんが一路さんとつないだ手を高くあげて、見せつけるように
キスをしたので、場内で黄色い歓声が上がりました。


それまでの妖艶な表情から一変、なんだかのんきそうな笑顔の内野さんと、
大きく口をあけて笑っている一路さんを見たらとっても幸せな気分になりました。





ファントムご帰還を待つ間の浮気相手にしては、トート閣下ってば
ちょっと魅力的すぎるかも。 




人妻じゃないけど、なんだかヨロメク予感がしますわ私・・笑。







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