美女と野獣 


         

                                 京都劇場 1階 S席  F列19番
                                               




                     当日のキャスト



  ビースト 石丸幹ニ    ベル 坂本里咲     モリース 林 和男 
  ガストン 田島雅彦    ルミエール 青山 明  ルフウ 遊佐真一
  コッグスワース 高桑 満  ミセスポット 岩本潤子  タンス夫人 武 木綿子
  バベット 八重沢真美  ムッシューダルク 寺田真実  チップ 岸本美香

2004年7月17日(土)マチネ

真夏の京都劇場、巷の話題は、お久しぶりの石丸ビースト登場ですね。
短期のつなぎ登場なのかどうかが、よくわからないのが四季のオソロシサ(笑)
ファンは右往左往させられますが、今回、個人的には石丸さんと同じくらい楽しみに
しているキャストが、モリース役の林 和男さん。


「オペラ座」のムッシュー・アンドレ役以来、林さんにお会いするのは約3ヶ月半ぶり。
どんなパパなのか気にもなるけど、とにかく舞台でお会いできるなら今日は、
多少のことは目をつぶろうじゃありませんか。・・・って、観ないうちから失礼☆


もともと仕事がらみの遠征で、実際行けるのかどうか不安もありましたが、どうにか
当日大阪から無事に移動して京都劇場に到着。
いや、とにかく暑い一日でした。
前日の大阪は気温36度だったそうですし、京都も同じくらいあったかもしれません。
チケットはさすがの全席完売でした。




第1幕



変わりものベル

坂本里咲さん、ポスターその他で写真はよく拝見していたのですが、実際に
舞台の坂本ベルにお会いするのは初めて。安定した優しい声の女優さんですね。
「女らしいベルだな〜」が第一印象でした。


田島ガストンにお会いするのも4月以来。あの頃は、初登場から2週間くらいだった
ので、段取りで精一杯だったと思いますが、その後3ヶ月の続投。表情も生き生きと
細かくなって、着実にガストン役を自分のものにしてらっしゃるのではないでしょうか。
ルフウとキスしちゃってぺっぺっとなったり、ベルとのユーモラスな会話の
タイミングが良くなったような気がします。


ただ、女性アンサンブル、特にシリーガールのお一人の声がちょっと低くて
セリフの場面はちょっと違和感があったかな。



モリース登場

なぜか意味もなく緊張。授業参観の保護者みたい(笑)。
林モリースの第一印象は、「やっぱり細いな〜」。半分まくったシャツの袖から
見える手首なんて痛々しいほど。松下モリースみたいにお腹の詰め物はあまり
していないんですね。
それから噂には聞いていたけど、パパにしてはやっぱり若いです。
でも見た目が多少若いのは良いけど、気になるのは話し方。実年令より年を取った
役のセリフは難しいのでしょうね。ちょっとセリフが切れ切れになって余韻が
少なくなってしまいます。
ベルとの会話でもモリースが、感心したように言うセリフ 「本が好きだねぇ」 が
林さんは 「本が好きだね!」 って感じで元気一杯☆



二人で

坂本ベル読書の楽しさを語る「ロマンス」の言い方がちょっと重たいかな。
この言い方は秋本ベルの方が夢見るような印象で好きです。
林モリース、車を修理する「トントン」の音が小さいなとか、セリフが早口だなあとか、
ついつい細かくチェックしてしまいました。
ベルとのデュエット、歌声はさすがに澄んでいて綺麗ですが、愛情深いパパにしては
時折目つきが鋭い。なんだか油断ならない男モリースって感じ(笑)
でも、独特のふわっとした手つきが時々アンドレさんを彷彿とさせて懐かしいわ〜。



野獣のお城

今日は前方席のせいか、狼の出てくる場面、スモークがすごくて前が見えない。
こちらもお初の高桑コッグスワース、吉谷さんとも青木さんともタイプが違うけど、
セリフが聞き取りやすいし、演技が自然でとっても良いと思いました。青山さんとの
コンビネーションも良さそうです。
お城に迷い込み、バベットが自分の膝に座り込んだときの林さんの表情が、あまりに
もワクワク嬉しそう(笑)松下さんは、ここは嬉しいというより、驚いてる感じの方が
強かったと思うのですが、こういうところも林パパは反応が若いな〜。
全然年寄りくさくなくて思わず笑ってしまいました。



ビースト登場

いよいよ石丸ビーストの登場。想像していたより声が男っぽい野獣。
かぶりものの下の目が大きくて、ハッキリ見えます。



ひとりよがり

自称2枚目、ガストンの楽しいナンバーですが、振り回される坂本ベルの表情、
あきれるのはいいけど、ちょっと嫌そうな顔をしすぎるような気もしました。
でも歌のうまさはさすがですね。
ガストンのセリフと声が楽しい。シリーガールに呼びかける 「ガールズ!」
「グーッド!」 「これ、どうぞマッドモアゼ〜ル」 とか強調した表現がコミカル。
長期登板ですが、ツヤのある美声は健在でした。
田島さんの他の役も、ぜひ拝見したいなあ。



野獣のお城

初めて拝見するミセスポットの岩本さんには、もうすこし柔らかいお母さんのムードが
欲しいところ。まだ年齢的にお若いのか、ちょっと話し方も歌も鋭い感じがしました。
ミセスポットは登場人物の中で、特に包み込むような愛情の器を求められる
役どころだと思います。
同じ女性でもタンス夫人になると、華やかさの方が必要でしょうし、バベットは
フランス娘らしいコケティッシュさが期待されるのではないでしょうか。


石丸ビースト、前半の野獣は作り声で、ちょっとおどろおどろしく喋っている感じ。
野蛮というより怪奇モノみたいな喋り方。
本来の声質を変えて、重たくしようと努力している印象を受けました。
声は重いけど動きは機敏。衣装が重くて大変だと思いますが、階段の手すりも
さっさと昇って行かれます。
佐野さんは正直、時々 「どっこいしょ」 みたいな感じがありますものね〜☆
ただ、やっぱり持ち味としてどこか繊細な印象を受けますね。野蛮さは少ないけど、
もともと大事にされすぎた王子様なんだから、こういうムードもアリかな。



コッグスの背中にねじ巻き用の取っ手がついてしまう場面、
高桑さん 「取ってくれ」
青山さん 「うーん、取れないな」 がえらく軽くて可笑しい。
今回、このペアのギャグは大ウケしておりました。


石丸ビースト、コミカル演技もちょっとやりすぎなくらいメリハリがきいているのが
特徴ですね。
「それで?」 「彼女はどこだ?」 は歯をくいしばったまましゃべるので、笑いが
起きておりました。いかにも癇癪を必死で押さえている感じが面白い。
「夕食に来て欲しいからだ!!」 のジタバタぶりも大ウケ。
同じように 「私と一緒に夕食を食べない」 「かね?」 も歯をくいしばる。


と、ここまでは良いけど、最後に折れる 「よろしくお願いします」 までえらく
クヤシそうなのは、ちとやりすぎかな。
ここは柳瀬ビーストや佐野ビーストみたいに素直に
「お願いします」 の方がしおらしくて良いような気がします。


さて、バベットとルミエールのラブシーン(笑)八重沢バベットが色っぽーい。
青山ルミエールがいよいよ単なるスケベになってしまいます。 でもそこが好・き☆
「ダメよ」「いいだろう?」で、最後二人でじゃれあいながら階段を下りていくとき、
青山ルミエールが嬉しそうに 「はいはいはいはい・・」 と笑うのが、妙に
オジサンくさくて笑えました。



ビーアワゲスト

高桑コッグス 「ミュージック!?」 のタイミングが5回聞いた中で一番良かった!
青山ルミエールのヤル気満々の笑顔と、ご主人の命にそむけない頭の固い
執事の対比がハッキリ。
この場面に限らず、今回高桑コッグスで、
「ああ、あの動きはこういうギャグを狙ってたのね」とか初めて感じるところも一杯。

このナンバーは大好きな青山さんの歌声が満喫できるところ。
「オードブル」 の鼻にかかった発音、さすがフランスの伊達男(笑)
シャンソン風のアレンジも好きです。
「給仕人にとって給仕できない・・」のところはオリジナルの英語ではたぶん
ダジャレになっているんだろうなあと思いながらいつも見ています。
ベルがコッグスにお城の案内を頼む
「あなたならお城のことは、すべてお分かりでしょ」
「えー知ってますとも」 の首の傾げ方がベルと同じようになって可笑しい。
久方ぶりに登場した美女に頼まれれば、そりゃあいくらカタブツの執事とはいえ、
断れませんよね〜(笑)



愛せぬならば

ベルを突き飛ばした拍子にちぎってしまった
ブラウスの片袖を、石丸ビーストは愛しげに撫でています。


傷つけるつもりはなかったのに。
ごめんと言うヒマもなく走り去ったベルを呆然と見送るビースト。
悲哀というより、とまどいと痛みがありました。


石丸さんの声はソフトで甘さがあるのが素敵です。パワーは少ないけど、
こまやかな表現力はさすが。ちょっと伸びが足りないところもあったみたいですが、
醜い姿で生きなければならない男 (ん?こう書くとやっぱりだれかさんが
浮かびます・・) の切ない気持ちが伝わってきました。





第2幕



ベルのためにケガをしたビーストが手当を受ける場面。
痛がる演技は俳優さんによってちょっとずつ違うのが面白いですね。
短く鋭く 「痛っ!」 と言う方もありますけど、今日の石丸ビーストは
「いたたたた〜〜っ」って、カン高い悲鳴をあげて思わず立ち上がり、
観客の笑いを誘っていました。
ベルの手を拭くのもいかにも不器用っぽく、布でこわごわ軽く叩くようにしているのが
面白い。


ピンクのドレスを着て現れたベルにときめくビースト。
「とても素敵なドレスだ」 「ありがとう」 で、テレまくる石丸ビーストが可愛い!
「どういたしまして」 の素直さに観客からもあたたかい笑いが。
図書室の場面でも、坂本ベルの 「ここへ来て」 でダッシュで走ってくるビーストは、
恋する少年というより、飼い主に呼ばれた大型犬みたい(笑)



人間に戻りたい

希望に満ちた素敵なナンバーですけど、途中でルミエール、お掃除道具の
女の子のお尻を追いかけてバベットに怒られているんですね。
初めて気がつきました。
でも、青山さんがやるとなぜか演技に見えないからおっかしい。クスクス☆



野獣の部屋

「告白すればいいでしょ」「僕にできるとは思えないんだ」
と、城主にしては相変わらず狭いお部屋で(笑)召使いたちに励まされる場面。
おしゃれをした姿を鏡で見て「うん!」と気合いを入れ、部屋を出て行きかけて
戻ってくる時の声が可笑しかった。
「ひぇ〜〜〜」って、石丸さーん、なんちゅう情けない声を☆
やっぱり野蛮で不躾なビーストじゃなくて、軟弱なお坊ちゃまビーストなんですね〜。



美女と野獣

坂本ベルのドレス姿はポスターなどで見ていた通り、透明感と上品さがあって素敵。
この黄色いドレスは肩から首のラインが綺麗に見えるカギですね。
ほっそりして柔らかな花びらのように、香りたつ美しい夢の女性。


初めて恋におちたビーストにとって、美女のあでやかな正装姿は
どれほど眩しく、胸ときめくものだったことでしょう。


恋愛は自分の姿を映す鏡。誰かを好きになることは、自分の姿を改めて見つめる
ことですね。彼女が美しいほど、自分の姿が痛いくらい意識される。
でも、彼女の目に映る優しさに触れるとき、ビーストは自分も一緒に
輝いているように感じられたんじゃないでしょうか。


ダンスに誘われた時、石丸ビーストは座ったまま両腕を背中側にまわして、
イスの背もたれにへばりつくようにして、首をフルフルしながら断っています。
「いや、ぼくは・・」
この動作、なかなか素人っぽくて可愛いわ(笑)

でもルミエールとコッグスワースの「踊りなさーい」は、CDみたいに小さい声で
そそのかす方が楽しい気がするんだけどな〜。
最初、ビーストはぎこちなく踊ってるんですが石丸さん、ダンス後半の優雅さは
さすが!って感じでした。


夢のようなひとときは終わり、父親のことを案じるベルを見送って
独りでベンチに座るとき、ビーストは
ベルが座っていたあたりをそっと撫でるようにするんですね。
もう二度と会うことのない、愛しい彼女のおもかげをかみしめるような仕草が
せつなくて、とっても良かったと思います。


相手を思いやることを知り、自分自身が辛くても耐える気持ち。
わがままで冷たい心の王子様から、大人の男性に一歩近づいたのですね。


「やっと、愛することを知ったのね」 というポット夫人の言葉が胸に沁みました。



戦い

ラストにむけての戦いのシーン。
田島ガストン、ホントに悪役らしい表情になられました。
セリフにも迫力が出て、ホントにコワイ。
塔の上、雨の中で野獣をあざける声が男っぽくて良いと思います。



ビーストがガストンに刺されて、死にかける場面。

倒れている瀕死のビーストに、ベルがすがりつきます。
斜め後ろの席に座っていた親子連れ、小さな女の子のしゃくりあげる泣き声が
聞こえてきました。 野獣さんが死んじゃう・・・。


私たち大人は、実際に死んでしまうわけではないことも、このあとの大逆転も
知っているけど、彼女はホントに物語に入り込んで
その小さな胸を痛めているのですね。
声には出せないけど 
「もうすぐ生き返るから、泣かないで・・」 と思っているうちに
女の子の涙に誘われるように、私も胸が一杯になってきて涙が。。。



「愛しています」ベルの心からの告白に、奇跡が起きて
ビーストが人間の姿に変わりはじめ・・・



とうとう石丸王子が目前に。
そのあまりの華麗さに
泣いていた小さな女の子も、私も思わず涙がひっこみましたよ(爆)


あぁ、なんて綺麗な王子さまなんでしょう。
前回まで、王子さまのカツラの髪型が変だなあとか思いながら拝見していたの
ですが、初めて髪型のことが全然気になりませんでしたわ☆
ベルの手にキスをしたり、召使い達に笑いかけたり。
そのキラキラした大きな瞳と華やかさのある笑顔に、見入ってしまいました。


個人的には歌声は佐野・柳瀬ビーストの方が好みだし、石丸さんの特別大ファンと
いうわけでもありませんが、やっぱりこうしてみると、石丸さんってホントに
魅力あるなあ。今更失礼ながら「さすが天下の石丸幹ニ・・☆」 と大感心。
石丸さんの笑顔には、女性の気持ちのどこかのボタンを押す(笑)力が
あるんでしょうね〜。




まさに夢見るようなハッピーエンド。


最後の最後で女性観客一同、恋するプリンセスの気分に
甘やかにひたらせて頂きました。 


今回の 「美女と野獣」 観劇を表現するなら、ラストの歌詞につきるでしょうね。




   「いつの世も 変わらぬは 恋心」   




良い目の正月を、ありがとうございました。            ・・・合掌(笑)








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