美女と野獣 


         

                                 京都劇場 1階 S席  L列 9番 
                                               


                     当日のキャスト



  ビースト 佐野正幸      ベル 木村花代      モリース 松下武史 
  ガストン 田島雅彦    ルミエール 青山 明    ルフウ 遊佐真一
  コッグスワース 青木 朗  ミセスポット 横山幸江  タンス夫人 秋山知子
  バベット 八重沢真美   ムッシューダルク 寺田真実   チップ 川良美由紀

2004年4月23日(金)マチネ

今日は4回目の「美女と野獣」観劇で京都まで来ました。
前回の観劇からは約20日ぶりなのですが、主要キャストがガラリと変わっています。
ビースト、ベル、ガストン、ルフウが前回と違うので、舞台の印象がどう変わってい
るのか、実に楽しみではあります。


4日に京都に来たときは雨でしたけど、今回は強風。前日まで夏日の暑さだったそう
で、ときおり強く吹く風が特別冷たく感じられます。
観劇後一緒にお茶をした方にも「もしかして雨女ですか?」と言われてしまいました☆




第1幕



さて、まずはお初の木村ベル。顔だちは可愛らしいのにちょっと表情が冷たいなあと
いうのが正直な第一印象でした。「夢から醒めた夢」のマコはそんな感じではなかった
ので、ちょっと意外〜。
朝の街にはパン屋さんを始め、色々な街の人が行き交うのですが、シリーガールも
通り過ぎるのですね。揃ってマンガチックな動作。三色スミレみたいなとりどりの衣装が
綺麗です。


次はこれまた初対面の田島ガストン。田島雅彦さんは四季に入団されたのも
ごく最近のことらしいですね。四季の会報誌「ラ・アルプ」では学校の先生だった
という経歴が紹介されていました。
劇団に入る前、音楽関係の教職についていたという俳優さんの話は
結構あるみたいですけど、この方の場合は音楽じゃなくて数学だそうで。


「知ってるぜ!」
最初のセリフと歌を耳にした瞬間「お、なかなか良い声だなあ」と思いました。
今まで3回が宮川さんと深水さんのガストンだったので、ガストンは大男という
イメージからすると、ちょっぴり身長が足りないかな。
でもプレスリーをイメージした髪型と、あごのしっかりした顔立ちはなかなかアニメの
イメージに近いかもしれません。音程が安定して低音の魅力がありますわ♪


今日のルフウは遊佐さん。ガストンがベルに色々話しかけている間、ルフウは彼女が
持っているカゴに手をいれて覗こうとしたりしているんですね。
「女は本を読むと不幸になる」と言うところ、ぶるぶると震えてしゃがむガストン。
小ちゃくなってちょっと可愛い☆
しかし、木村ベルの声、低くてなんというかドスがきいてますね〜。
一筋縄じゃいかない気の強そうなベルって感じ。



野獣のお城


青木コッグスも2回目になると、こちらもかなり慣れてきます。前回よりも青木さん
ご自身がスムーズに役に入り込んでいる印象を受けました。
青山ルミエールのセリフ回しが、いつも自然でソフトで好きなんですけど、特に口を
大きく開ける「コッグスワ〜〜ス」とか「助けてやろー」の言い方がおもしろい。
青山さんはたしか東京のご出身だったと思うのですが、アクセントとか発声がホントに
東京弁なんですよね〜。
ちょっと早口だけど、セリフが聞き取りやすいのは、さすがベテラン。


「ぎっちょんちょんのちょんだな」なんて、にくまれ口を叩く軽い言い方も可笑しい。
渋谷ルミエールも同じことをおっしゃってたので、もちろんアドリブではないんで
しょうけど、このセリフってオリジナルの英語はどうなってるんでしょうね?



ビースト登場


たまたま1回ずつ交互に柳瀬ビーストと佐野ビーストにお会いしていますけど、
佐野さんの低い声、艶がありますね〜。
「オペラ座の怪人」ラウル役で何度も聴いてるはずなのですけど、ビーストとは声の
出しかたが違うのかな。歌のキーが違うという話は聞いたことがありますけど、
セリフも別人とまでは言わないけど、かなり違う印象を受けます。
個人的にはビースト役で聴ける低音の魅力と迫力が好きです。
柳瀬ビーストもこの登場シーン、かなり迫力があるんですけど残念ながら、艶は
佐野さんほどにはないような気がします。



ひとりよがり

田島ガストンの声、やっぱりいーなー。悪人声がうまいというか、
低音に厚みがあって、なかなかセクシーな声。
音程もしっかりいらっしゃるし、これは掘り出し物かも☆
宮川ガストンは「このうえない」のところなど、ちょっと音程がはずれるのが
辛かったけど、今回は安心して聞けます。
「オーイエース」の声が思いっきり3枚目調で女性声になって、おもしろかったなあ。


ところで田島さん、今日が初対面でしかもガストンを聞いての直感ではあるのですけど、
この方、もしかしてファントムをやれる声なんじゃないでしょうか?
なぜそんな風に感じるのか、うまく説明ができないけど、ただ単に歌がうまくて
良い声だからという問題ではないような。
なんだか田島さんの声を聴いていると、単純なディズニーキャラでは収まらない、
もっと複雑なものを内包している方のような気がするんです。
・・って、偉そうに言ってごめんなさい。
数学の先生だったという話はこの観劇のあとに知ったのですけど、やっぱりどこか
表現に「理知」を感じさせるからかなあ。うーん、よくわからない。


しかし考えてみれば、現ファントム俳優のお二人もどちらかというと、悪人役が
似合いそうなバリトンだし、ファントム役の表現にはどこか翳りというか、「闇」を
想像させる部分が必要なのかもしれません。



閑話休題。



1月にも思ったのですけど、佐野ビーストは全体的に動作が優しいですね。
隠しきれないこの方のお人柄なのでしょうか、(もちろん、柳瀬さんが野蛮な方だと
いう意味ではありませぬが☆)


しかし愛を知らないまま、絶望や怒り、悲しみと焦りに10年という歳月を過ごして
きた男なのですから、もう少しすさんだ感じがあっても良いような気もします。
でないと、ベルとのふれあいでビーストが変わっていく対比が明確でなくなるでしょうし。
ベルを脅かす「わかったな!」も柳瀬ビーストに比べると優しいなあ。
でも天性のフェミニスト、佐野さんには女性を手荒く扱うのはこれが限界かも(笑)



酒場

遊佐ルフウ、前回までのヘラヘラふわふわぶりが今日はえらく少ないです。
どうしてだろう?今週デビューしたばかりの新人ガストンとの初コンビで、ちょっと
緊張してらっしゃるのかな。
それとあくまで個人的な感想なのですけど、遊佐さんは歌も上手な方だと思うのですが、
なぜか田島ガストンとの声のからみが今ひとつの印象を受けました。
いくら良い声同士でも、デュエットの相性ってあるんですね。
発声法の違いなのかもしれませんが、遊佐さんが一緒に歌う声だけで言えば、
宮川さんとの方がぴったり来るような気がします。


マグカップダンス、毎回見るたびに「ずいぶん練習したんだろうなあ」と感心するところ
ですけど、この場面、ガストンの笑顔が可愛い♪ 田島さんって笑うとエクボが
できて、優しい目元がいよいよ下がって見えるし、いわゆるハンサムさんじゃないけど
魅力ありますね。



ビーストが夕食にベルを付きあわせようとするところ。
ベルの「バカなことを!」吐き捨てるような言い方にビックリ。秋本ベルはこういう
セリフを言ってもどこか優しいのに対し、木村さんの言い方、マジできっつー(笑)


さて、青山ルミエールは相変わらずアダルト度満点☆
ベルに初めて挨拶する時、手にキスしようとして青木コッグスに止められるところが、
残念そうでおもしろい。カタブツで融通がきかない青木コッグスワーズと、
柔軟性の固まりみたいな(笑)青山ルミエール、だんだんコンビネーションも
良くなって来たかな。


ビーアワゲスト

「でも、ディナーには欠かせないね、ミュージックが」の時の青山さんの表情、
もう最高です。あの衣装、不自由だし重くて大変だと思うんですけど
「ビーアワゲスト」をスローに歌いはじめるところ、フランス仕込み(?)の
カッコつけも素敵。
ベルにブーケを渡された時、ルミエールは花の匂いをかいで喜ぶんですね。
いかにも女好きの伊達男らしく、途中でベルの手にキスしててバベットに怒られる
場面もあって、思わず笑ってしまいました。 ホント懲りない人だわ(笑)



愛せぬならば

こういうナンバーはやっぱり佐野さんがうまい。
柳瀬さんの圧倒的な声量も、確かなテクニックもいいのですけど、
パワーの「押し」だけじゃない、切なさや甘さといった「引き」の情感が持つ彩りは
佐野ビーストが豊かな気がします。
特に「愛なしでは生きては行けぬ」のささやき声が切なくて良かったです。
ラストにかけてのビブラートが綺麗で劇場に響き渡る歌声。


ステンドグラスのような青とパープルの照明が美しい中、愛を求める男の魂が
空気をびりびり震わせています。

愛を知ることは失う怖さを知ること。
心底求める相手があらわれて初めて、自分の存在のもろさに気づく。
あの人の愛なしに、もう一人では生きられない。

そんなビーストの心情がひしひしと伝わってくる1幕の終わりでした。




第2幕



さて、お城を飛び出したベルを助けてケガをするビーストですけど、
木村さーん、倒れたビーストを見てぼーっと立ってる時間が長すぎでは(笑)
ちょっとリアリティのあるタイミングじゃなかったな。木村ベル、こういうタイミングの
ズレがところどころでありますね〜。なぜでしょう?
もしかして段取りを考えてるのかなあ。


・・今日はどうもベルに厳しいですね、ごめんなさい。ベテラン女優さんと比べるのは
気の毒だと思うんですけど、どうにも気になってしまいます☆


ビーストがイスに座って、自分の手の傷を舐めるシーン、佐野ビーストは舐め方が
「ぺるぺるぺるぺる」って感じで早く細かいのが、なんか野獣というより小動物☆
傷に触れられる「痛っ!」が小さな声でかえって実感があったのか、
客席から笑いがおきておりました。


図書館で本を読む二人。
佐野ビースト「忘れさせてくれる」のセリフでちょっとうまく口がまわらない感じに
なりましたけど、「僕が、『何か』ということを・・」で寂しげにうつむくところなど、
相変わらず演技が細かいですね。


ビーストが部屋でコッグスとルミエールに励まされる場面。
今まで気がつかなかったけど、青木コッグスがビーストの尻尾にブラシをかけているん
ですね。
お世話するのは執事の当然の役目だけど、青木さんが佐野さんの尻尾を(笑)って
思うと、なんだか嬉しくなってしまいました。


ようやくたどりついたベルとの夕食。ドレス姿が夢のように綺麗です。
佐野さんの本領発揮はこういう「恋する演技」ですね。ワインを飲むのに横目で
うかがい見たり、ベルと視線があって身をよじるように照れたり、初々しい表情が
野獣のかぶりものごしでもハッキリわかりますわ♪



美女と野獣

ミセスポットの優しい歌声の中、恋の淵にすべり堕ちていく二人。
「幸せかい」「ええ、とっても」のあと、佐野ビーストは慣れない恋のときめきに
耐えるように、胸に手をあてていらっしゃいました。
しかし今日、特筆すべきはこの場面の佐野さん。父親のことを案じるベルを
行かせることへの迷いと、彼女を手放したくない気持ちの揺れがもう☆


ビーストが思わずベルの手を、ほほずりするように両手で握る仕草が切なくて。
「ベル、僕は・・・」言いかけてやめたけど、あふれてくる恋情と葛藤が
「さあ、行って」の前の無言の中にたしかにありました。
つらい心中を隠し、笑顔で「行って」と優しく促すビースト。
初めて相手を大切にする「思いやり」を知ったんですね。佐野さんやっぱスゴイわ〜☆
思わず、ここでホロリと来てしまいました。



ラストに向けてはいつもながらの急展開。
「野獣を殺せ」の場面で田島ガストン、声はいいけど、ちょっとダンスは迫力不足だった
かな。デビューしたばかりだし仕方ないかもしれませんが、ガストンを頂点に民衆が
三角形のフォーメーションで迫ってくる「殺せ」のところはガストンがマジで
格好良く見えるところだから、もうちょっと頑張って頂きたいものデス。



ビーストが王子様に変身したのに、気づかない青木コッグスのセリフ
「あの若い人はだれ?」が大ウケしておりました。
しかしあの長髪の大きなカツラ、なかなか誰でもは似合わないよね〜。
ラウルみたいな髪型ってわけにはいかないのかしら。




でも、ハッピーエンドはいつでも嬉しいもの。終演後、周囲のお客様達も席を
立ちながら「良かったね〜」と口々におっしゃっていました。
観劇後は、ご一緒した方との楽しいおしゃべり。田島ガストンはなかなか良いかもと
いう話で意見が一致して嬉しかったデス♪




柳瀬さんが5月から始まる「ジーザス・クライスト=スーパースター」に入られるなら、
当分は佐野ビーストの登板が続くのでしょうか。
あの重たい衣装で、連日タイトルロールを演じられるのは大変だと思いますけど、
佐野さん、あなたは同年代の希望の星(笑)ですからぜひ、頑張って下さいませね(^^)








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