美女と野獣 


         

                                 京都劇場 1階 S席  E列9番
                                               


                      当日のキャスト



  ビースト 柳瀬大輔    ベル 秋本みな子     モリース 松下武史 
  ガストン 宮川政洋    ルミエール 青山 明  ルフウ 明戸信吾
  コッグスワース 青木 朗  ミセスポット 横山幸江  タンス夫人 秋山知子
  バベット 八重沢真美  ムッシューダルク 寺田真実  チップ 岸本美香

福岡「オペラ座の怪人」が終わってわずか1週間。早々と他の演目を観に遠征している
私は、なんという節操なしでしょう(笑)


でもこれって、観劇という行為があまりにも日常生活化した後遺症なのかも。
福岡シティ劇場は5月末に始まる「ジーザス・クライスト=スーパースター」まで
休業状態ですから、これも致し方ないということで☆


四季の「美女と野獣」観劇は昨年12月、今年1月に続いて今回が3回目。
ビーストは1回目が柳瀬さん、2回目が佐野さんでしたから、たまたま一回ずつ交代で
拝見することになりました。


前回から約3ヶ月ぶりですけど一番楽しみなのは、オペラ座では交代なしの7ヶ月半
ロングラン状態だった青木朗さんが、これまた2日のお休みだけで登場する
コッグスワース。  さて、どんな執事さんになるのでしょうか。


急に思いたった遠征で、往復とも乗り換え利用ではありましたが、福岡からでも充分に
日帰り圏内ですね。なにより京都劇場が駅の中にあるというのが最大の利点だと
思います。
9時すこし前の「のぞみ」に乗って、お昼前には京都の人でしたが、着いてみれば
京都は雨。 
それでも桜の季節とあって、駅は旅行者らしい人々でごった返しておりました。





第1幕



暗い舞台の中、音楽とナレーションが物語にいざないます。

貧しい老婆の姿が魔女に変わって、王子に魔法をかけるところ、花火がかなり王子の
近くまで行くので、ちょっとハラハラしてしまいます。



変わりものベル

最初に出てくる朝の場面。アニメからそのまま出てきたような、家並みのデザインが
おもしろいなあと毎回思っています。
3回目ともなると、ようやくストーリーを追うだけでなく、細かいところにも目をやる
余裕が出てきたかな。


明戸ルフウにお会いするのは初めて。どちらかというと個人的には遊佐ルフウの方が
好きかな。遊佐さんのヘラヘラ、フワフワした感じがルフウらしくて上手いと思うから。


ところで、このルフウという名前、英語の「馬鹿・fool」を並べ替えたものでホントは
「ル・フー」なのでしょうか。もしかして私が知らないだけだったら失礼。



宮川ガストンは2回目。この方、足が長くてスタイルが良いですね。ただ、前回も
思ったのですが歌の安定感が薄いところが残念。
発声法の問題なのか、ある程度以上の高音になると苦手なんだなあとありありと
感じてしまう。
音程も微妙にずれるのでちょっと辛い。
声質も姿も良いだけにもったいないなあと思ってしまいました。


秋本ベルは昨年秋からずっと続投状態だそうで。
ソロも多いし大変だと思いますけど、お疲れを感じさせない歌声はさすがです。
優しさのある表情、昨年夏頃、福岡「オペラ座の怪人」で優しいメグを演じて
いらっしゃったのを思い出します。



二人で

ベルが街の人に「変わった娘だ」と噂され、家に帰ってきてそのことを父モリースに
話すところ。モリースも発明家で、同じように変わっていると言われているけど、父と
娘は互いに固い絆で結ばれています。


「いつでもそう、私はお前を見つめ続けてる」
「娘は父親が大好き」


二人のデュエットには、互いへの暖かい愛情と深い理解があらわれていて、おもわず
私も涙ぐんでしまいました。
特にデュエットの後、秋本ベルがモリースの作った車に乗ったところで、泣きべそを
かきそうになって、「もう泣いてなんかいないわ」って感じで、その涙をこらえる表情が
ホントに若い女の子らしくて、いじらしさに胸が痛くなります。



野獣のお城

いよいよお城のシーン。
出ました、青山ルミエールに青木コッグスワース。


給仕長ルミエールはフランス人、執事コッグスワースはイギリス人をイメージしている
そうですが、青山さんの役作り、ホントに上手い。いつでもどこでもルミエールとして
生き、呼吸してる感じです。


オペラ座CDでムッシュー・アンドレ役として参加されているので、耳にも馴染んだ
ソフトなテノール。セリフ回しが自然かつユーモラスで楽しませて下さいます。


さて、注目の青木コッグスワースですけど、最初、時計の扮装で登場されたとき、
もんのすごい違和感が(笑)
そのホントの理由は終演後にわかるんですけど、とにかく最初は口をあけて
見てるだけ☆


でも、声を聞いたら「あぁ、青木さんだ〜懐かしい」と思いました。
「オペラ座」と違って周りに声楽畑の人が少ないせいなのか、青木さんの声が
きわだって耳に残ります。
ちょっと硬質なツヤがあってよく通る、いかにも声楽家さんの声って感じですね〜。
今まで2回はソフトでひょうひょうとした印象の、吉谷コッグスワースだったので
青木コッグスは、えらくしっかり者のガンコ執事という印象をうけました。


ルミエールに「いつもギリギリ巻かれて融通がきかないから、時計なんだ」と
いうようなセリフがあったと思うのですが、いかにも青木コッグスは時間にうるさそう。


そういえば、青木フィルマンは、
(って、すぐオペラ座の話になってしまいますね、ファントマーゆえ、ごめんなさい)
プリマドンナに急に歌ってもらうことになったとき、アンドレさんに文句を言う
理由も「時間がないんだよ」でしたね。
懐中時計を眺めながらぶつぶつ言っているフィルマンさんを
ちょっぴり思い出してしまいました☆



ビースト登場


一瞬の暗転の間に、イスの手すりに立ってモリースを威嚇する柳瀬ビースト。
「ガルルル」という吠え声が最初の頃は入るんですね。


初めて「美女と野獣」を見たのは昨年の12月だったのですが、まずビーストが
少年っぽいのに一番驚いた記憶があります。
プログラムの写真とかアニメのビーストの絵を見て、なんとなくもっと大人の男が
野獣に変えられる話だと勝手に思っていたので。
野獣という表現には、単に醜いということではなく、不躾とか野蛮というニュアンスが
含まれているんだなあと思いました。


柳瀬ビーストにお会いするのは2回目。
前半の野蛮ぶり、癇癪もちの激しさは佐野ビーストより柳瀬ビーストの方がはっきり
表現されているような気がします。
前回よりも席が前方のせいもあって、野獣のかぶりものの下の表情も案外ハッキリ
見えるのを初めて知りました。



ひとりよがり

宮川ガストンの見せ場ですね、歌声が不安定ですけど、セリフの声は艶があるし、
動きはなかなかスマート。
前回はたしか深水ガストンだったんですけど、深水さんはホントにコワイ。
ベルのセリフじゃないけど「野獣はあなたよ!」って言いたくなる(爆)ようなガストン、
純正の悪役のイメージでしたが、そういう点で言うと宮川ガストンは愛嬌もある、
お調子もののガストンですね。天然の「陽」を感じさせるお声のせいかもしれません。


しかしCDで今井ガストンを聞いてるので、どうしても比較してしまうのですが、
「俺の足をマッサージ」とかはもっと照れを捨てて思い切りやって欲しいなあ。
本人は2枚目気取りなんだけど、端から見ると全然ポイントがズレているというところが
ガストンの役割だと思うので、クサイくらい陶酔して、しかも3枚目的愛嬌も残して
欲しいような気がします。



ベルがお城に来るシーン。


ベルの呼びかけに対してビーストが声だけで答えるところ。
「私がこの城の主だ」のセリフが迫力があります。
柳瀬さんの声、私にはツヤというのはあまり感じられないのですが、
ドラマチックでビーストらしい緊迫感のある声は素晴らしいです。
特に「どこでも好きなところに行っていい」とか、ちょっと苦々しいおさえた感じの
セリフに重厚感というか、悲劇の主人公らしい感じが良く出ているように思います。


個人的には柳瀬さんのイメージは少年マンガのヒーローというか(笑)
どこまでもまっすぐな、男っぽい声のように感じられます。
なぜか「あしたのジョー」みたいな男性ウケの激しいマンガを連想してしまう。
もうひとりのビースト、佐野さんはたぶん正反対ですね☆


でも、柳瀬さんの声を聞きながら、私の心はすでに「ジーザス」へ(笑)
ジーザスのナンバーはどんな感じかな、とかダイエットが大変だよねとか☆
・・余計なお世話ですね、スミマセン。



ガストン

酒場でルフウたちがガストンを慰めます。
明戸ルフウはちょっとフワフワぶりが足りないけど、動きがとにかく軽い。
セリフのコミカルさは、さすがベテランのテクニック。
登場人物の中でも、こういう役が実は一番、難易度が高いのかもしれません。



ベルを夕食に誘うシーン。


この場面で一番好きなのは、召使達の奮闘ぶり。
どうしたらいいかわからないビーストに、ルミエールとポット夫人がはげましたり
知恵をつけたり。不躾でかんしゃく持ちのご主人様を、恐れつつも一生懸命に
心配する様子がおもしろいです。
遅れて部屋に入ってくるコッグスワースのセリフ、「なんですか?」は
吉谷さんならトボケた味わいで、笑いを取るところなんだけどな〜。
青木さんは吉谷さんにくらべるとセリフの声が前に出すぎるのかな。


柳瀬ビーストの声を少年マンガ風と書きましたけど、ビーストの表現全体が
わかりやすくて子供ウケが良いような気がします。
癇癪を起こすときの爆発的な声、絶対男の子たちなら「カッコイイ!」ってなるよね。
だからこそ、怒るベルのセリフにあてこすって
「失礼よ」を女性の声音で言うところの対比が明確で
子供たちが大笑いしています。


「夕食にきて欲しいからだ!」と大きな声を出すビーストを落ち着かせる
「深呼吸して〜スーハースーハー」は何度見てもおもしろーい☆
柳瀬ビーストのメリハリを実感する場面はこの後も続きます。


ついに折れたビーストのセリフ
「よろしくお願いします」で子供達が大ウケ。
大きな声を出してばかりのビーストがこんなしおらしいことを言うのが意外で
笑ってしまうところなんですね。


しっかし、青山ルミエール。
時々たんなるスケベになってますけど、良いのでしょうか?(笑)
ちょっかいを出してくるバベットに 「おいで、カワイイ娘」 と笑うところ、
「私の胸にひどくこたえるよ」と言いつつ、彼女の腕にキスするのに
「ん〜まっ」とヤラシイ濃厚ムードですからね〜。
その後の「ぺっぺっ」の思い切りがまたよくて、ホントに笑えます。


笑えるといえば、このあとのルミエールの場面。
「コッグスワ〜〜ス、あの娘がいなくなったんだ〜」とあわてて騒いだあと
ベルに気がついて、ガラリと口調を2枚目風に変えて
「お目にかかれて光栄です、マドモアゼル」と言うところも子供達が
大笑いしてました。  もちろん、私もデス♪





第2幕


ベルを助けてケガをしたビーストが、彼女の手当てを受けるシーン。
傷にさわられて、「・・☆※☆@▲!」と言葉にならないジタバタぶりで痛さを
こらえる柳瀬ビースト、こういう場面の思い切りのよさも佐野ビーストより
はっきりしているところですね。



何かが変わった

図書館をプレゼントされた秋本ベル、喜び方がとっても良いと思います。
歓声がホントに嬉しそう。「ああ、なんて素敵」と歌う声に感じられる
喜びと優しさが素晴らしいですね
メグの時もそうでしたけど、人柄の優しさや思いやりを感じられる表情と声が
秋本ベルを可愛らしく見せています。



メゾン・デ・ルーン


ガストンとルフウがモリースを閉じ込める悪だくみをするところですが、
ムッシュ・ダルク役の寺田さんはたしか昨年オペラ座カンパニーにいらっしゃって、
福岡公演に出演された方ですね。
あの頃はあまり感じなかったけど、声もいいし歌もうまい方なんですね〜。
オペラ座は声楽畑バリバリの方が揃いますから、こうして他の舞台でお会いすると
またその歌のレベルを再認識させられます。



召使たちと部屋で話す柳瀬ビースト。変化が明確ですね。
最初の野蛮さ、勢いのよさはどこへやら、恋をする気持ちと彼女に嫌われたくない
どうしたらよいかわからないためらい。

「どうしたらいいんだ」と訴える声も変わっています。
情けなくも、カワイイ声、内気な青年の声になってるんですね。



美女と野獣

踊る二人を見ながら横山ポット夫人が歌うメインテーマソング。


「いつの世も変わらぬは恋心」


若い二人を見守る、あたたかく優しい眼差し。


この演目を見ると、女性性がもつ特有の優しさや柔らかさ、その愛情なしには
だれも生きていけないんだなあと強く感じます。
もちろん単に母性という意味でなく、世の花としての女性が持つ
愛情とあたたかさが、ポイントになっているというか。


ベルとモリース、ベルとガストン。  ベルとビースト。
ポット夫人とチップ、召使たちの相談相手になるポット夫人。
ルミエールとバベットもそうだし、シリーガール達の存在だってある意味で
ガストンを支えているわけですね。


このナンバーを聞くと、私はしみじみと「愛情」を感じます。



ラストに向けての展開は速いです。

ベルとモリースは家にたどり着きますが、ガストンが皆を煽動してお城を攻撃し、
最後の対決に。


雨の中でガストンとビーストが戦うシーン、わかってはいるのですが、
やっぱりガストンを殺してしまわなくてもよいような。
ディズニーアニメでもこんな風に終わるのかな。



王子様に変身したビースト。
召使達も大喜びするなか、青山ルミエールったら下手の端のほうで、ベルの両手を
握って「ん〜まっ、ん〜まっ」と嬉しそうに笑いながら何度も手にキスしてます。
ホントにもう(笑)



カーテンコールのラストに、柳瀬さんと秋本さんが寄り添うツーショットが
まるでおとぎ話の美しいイラストのよう。



最後まで夢のような幸せな気分を味あわせてくれる「美女と野獣」。
文句なしに楽しめる演目ですね。



さて、青木コッグスワースに感じていたスゴイ違和感なんですけど、
なんと帰りの新幹線の中でようやく気がつきました。

「そうだ、おヒゲがないんだ!」


いったい私は何を今まで見ていたのでしょう。
7ヶ月半、オペラ座公演で見ていた青木さん、役柄のために鼻の下につけヒゲを
していますが、あとはきれいサッパリなくなってたんですね。
違和感はほっぺたの丸い頬紅とカツラのせいじゃなかったのね〜。



とてもじゃないけど、事件の目撃証言なんかはできない自分を再認識して、
おマヌケぶりに新幹線の座席でひとりクスクス笑っておりました。





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2004年4月4日(日)マチネ