オペラ座の怪人 


         

                            福岡シティ劇場 1階 S席  C 列26
                                               


                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 高井 治  クリスティーヌ 村田恵理子  ラウル子爵 佐野正幸
  カルロッタ  河合和代    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 西島美子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 長 裕二
  ムッシュールフェーブル 喜納兼徳

2004年3月26日(金)ソワレ


楽週3回目の観劇です。


今日は昨年11月のイベントでお知り合いになったお嬢さん達と、ご一緒しました。
週末にかかって来て、そろそろ遠征組のお客様も増えてきたのではないでしょうか。
それでも全席完売ではなかったみたいですが。

前回からキャストの変更はありません。
たぶんこのキャストのまま千秋楽まで一直線ですね。




第1幕




オークション

今日は木槌の音が小さいなあ。
やっぱり喜納オークショナーの大きく振り上げる叩き方のせいですね、これは。
もう深見さんのオークショナーに福岡ではお会いできないと思うと、寂しい気持ちです。



「ハンニバル」リハーサル

河合カルロッタ、「ロ〜〜〜〜マ」の伸ばし方が長い!
楽週に限らず、ここ数週間の河合さんの気合いの入れ方にはラウル子爵さまに
なりかわり「ブラヴァ」の拍手をお贈りしたいです。
以前インタビューにも答えていらっしゃいましたけど、50年のタイムスリップを経て、
19世紀のパリオペラ座の世界に、一瞬で観客を引き込む役割ですもの。
相当なプレッシャーですよね。


西島マダム、最近やっぱりセリフが聞き取りにくいところがあります。
この日は「もっと集中しなさい」のセリフの頭がちょっと飛んだ感じになりました。
しかしいつもながら誠実な仕事ぶり、皆が「高らかに響く〜」と歌うところでは
西島マダムも一緒に声を出して歌ってらっしゃるのですね、久しぶりに上手側の
席でよく聞こえました。


幕が突然落ちてきて大騒ぎのさなか、喜納ルフェーブルが「大丈夫ですか?」と声を
かけたのに対して、河合カルロッタ「大丈夫なわけないでしょ!」と言い返しています。
今まで私も右往左往していて、気がつかなかったわ(笑)



クリスの楽屋

パパの思い出話をする村田クリスの話を聞きながら、佐野ラウル「うんうん、そう
だったね」って感じで頷いています。「パパは亡くなったけれど・・」で表情を一瞬
引き締める佐野ラウル。二十歳そこそこの若造にしては、ちょっと人間が出来すぎの
ような気がする。

だって自分の二十歳くらいの未熟さというか、アホぶりを思えば、あーた(笑)

でも、だからこそ完璧子爵様として、音楽の天使であり、色々な技でクリスを惑乱する
ファントムに対抗して、クリスの「揺れ」を誘えるわけですね。


帽子を取りに出て行く佐野ラウル。「可愛いロッテ」のセリフの直前、ふっと笑顔が
浮かびました。ああ、もう毎回この表現にはメロメロです〜☆
この笑顔がチャーミングであるほど、ファントムが鏡の向こうで怒りの炎を燃え上が
らせるのが想像できてしまう。


普通の顔、普通の恋愛、普通の人生に対して、つねに灼けつくような渇望と嫉妬を
感じているファントム。
なにげないことですけど、お日様のような笑顔をなんのてらいも迷いもなく、
クリスに見せることができる子爵に対して、彼が殺意にも似た憎悪を抱くのは
当然のような気がします。


だからこそ、ラウルを出し抜いてまんまとクリスをさらって行けたとき、ファントムの
喜びは最高潮に達するわけですね。
高井ファントムのちょっと暗い笑みはそういう意味でピッタリかも。



オペラ座の地下

いくぶんソフトな調子で歌い始めた高井ファントム、今日もなんとも嬉しそうです。
もともと、アクションはあまり大きくない方ですけど、この日は
「心も胸もときめく」のところで、軽く頷いていらっしゃいました。
「きらめく夜のひかり」「心は空に高く」では、大きく目を見開いていらっしゃいます。



支配人のオフィス

そういえば佐野さん、ちょっと髪が短くなってますね。23日の再登場の日は、
ちょっと髪が長すぎるかなあと思っていたので、これなら納得。
「プリマ・ドンナ」の七重唱は、佐野さんの声が聞こえにくかったような気がします。
まだ内海ラウルの記憶が完全には抜けてないせいもあるのかもしれません。


ただ、1月に「美女と野獣」を見に行ったときは、ビーストのナンバーで劇場に
響き渡る歌声を聞かせて下さったし、佐野さんご自身としては、それほど声量が
落ちているとも思えないんですけどね〜。
音声の方の調整の範囲内のことなのでしょうか。



イル・ムート

今日は最初から、林アンドレのご機嫌が良いのにビックリ。
このシーンでもにこやかにオペラを楽しんでいる様子でした。
いつもボックス席から身を乗り出すようにしている青木フィルマンは、
反対に今日はちょっと眠そうにしてらっしゃいました。
ビーズ細工で、根をつめてお疲れかしら(んなわけない☆)




第2幕




支配人のオフィス

この日、青木フィルマンさんがめずらしく手紙を取り落としました。
ちょっとひやりとしてしまいました。
ファントムが作ったオペラを誰に歌わせるか、それぞれの思惑があって
すったもんだするところですけど、林アンドレが楽譜をもってクリスに
歌わせようとすると、佐野ラウル、マイクに入らない声で「だめだ」って
おっしゃるんですね。
クリスを守らなくてはならない。そのためにはファントムの指示なんて
知ったこっちゃない、そりゃそうですよね子爵さま(笑)。


てなことを考えつつ見ていて、気づきました。佐野さん、ドレスシャツのボタンが
ひとつはずれてます。マスカレードのあと、着替えるときに止め忘れたんだなあ
なんて妙に現実的なことを考えてしまいました☆



墓場にて

楽週に入って、さすがにお声にちょっぴり疲れを感じる村田クリスですけど、
ここの場面のちょっと寂しげな表情、好きですね。
深見さんも以前、リハーサル見学の時
「この場面がなんともいえない情感がある」とおっしゃっていたのですが、
クリスティーヌが抱える孤独と脆さがよく表現されていると思います。
墓場を一人さまよい、今は亡き父親に助けを求めるクリス。
観客によってはここが一番、胸にぐっとくる場面かも。


そしていつも思うのですが、この場面で着ているクリスの青いドレス、
深い青の反射で肌が象牙のように白くなめらかに見えます。
考えてみれば、最初に楽屋で羽織るドレッシングガウンを除けば、唯一の私服が
これなんですね、あとは舞台衣装とファントムの花嫁衣装だけですもの。
このドレスを着たクリスは、ちょっと血の気が少ないというか、お日様の光でなく、
月の光が似合いそうな青白い肌とはかなげな表情を見せます。


ファントムが「ここへおいで、私のいとしいクリスティーヌ」と甘い声で呼びかけたく
なるのもわかるなあ。ファントムの目には、きっとこの場面のクリスティーヌって、
自分の庇護をホントに必要としている少女に見えたことでしょうね。


その青ざめた冷たい頬を暖めてやりたい。
プリマドンナとして成功するためにも、自分という存在が必要なはずだ。


他の男に心を許した裏切りは許せないでしょうけど、
もしもう一度心からクリスが詫びて、音楽の天使を求めるなら、魂を寄せ合い、
歌声を重ねた二人の日々がもう一度、取り戻せる。
そんな気持ちをファントムは抱いていたのではないでしょうか。
「これほどの辱めを決して許しはしないぞ」と怒ってはいても、クリスに対して
ホントの意味で復讐とか、危害を加えることはできないんじゃないのかな。


ま、そういう淡い感情もラウルが登場するまでのこと。
ラウルが出てきて、彼女を連れ去ると、ファントムの怒りも最高潮に達します。


「宣戦布告だ!!」 完全にキレました。(笑)




ドンファンの勝利


フードを取られて歌う高井ファントム、「ともにどこまでも二人で」の「ともに」が
ちょっとざらつきました。ここ、いつも急にボリュームを上げるところで、
感情の盛り上がりに声がついて来なかった感じでしょうか。



ふたたび地下へ

銃で撃たれそうになりながらも、必死でクリスを連れ去るファントム。
今日の高井ファントムのボートのシーン、なんだかとっても悲しそうに見えました。


「光なき我が心の牢屋」にとらわれたままの自分、
「地獄の闇の中」にしか住めない自分。

そのことを自分自身が一番よく知っている。


救いと光を、せっかくこのクリスの中に見いだしたのだ。絶対に手放したくない。



・・・もう完全に破滅モード。



クリスになじられて答える「マスクで醜さ隠され」のところで、高井ファントム、
ちょっと目を細めるようにするクールな表情が見られました。



ラウルの登場で、ファントムの苛立ちがつのります。
人形を放り投げる「愛のために命がけ」の勢いが今日はすごかったですね〜。
まさに、だんだん腹たってきた〜って感じ(笑)



あの〜高井さん、ラウルの首に縄をかけるの、楽しみにしてるでしょ?(爆)
佐野ラウルは「うあ!」って悲鳴をあげてホントに苦しそうにもがきます。
高井ファントムの感情の盛り上がりゆえでしょうか、
「助けて下さい、どうか」がちょっぴり遅れました。



トライアングルの最後
「そう、もはや戻れない」で玉座に腰を落とすファントムですけど、今週、
なんか日に日にガックリ度が高くなってません?
かなり深くうつむくようにしていらっしゃいます。



ラストシーン。
「行ってくれ、お願いだ〜」は短めでしたけど、激しさはかなりのもの。



でも実は個人的には、高井ファントムがあまりに汚い声になるのは
好きじゃない。
極端に美しく歌い上げるのも、感情がこもらない印象になるのでナンですけど、
怒鳴ること=激しい感情ではありませんからね〜。


声の激しさだけでなく、表情とか仕草とか、タイミングとか、もっといえば
声を出さない沈黙の部分で、深い感情を表現して欲しいのです。
・・って、えらそうなことを言ってごめんなさい。
でも、ファントムという人物の複雑な側面は、そういう演技なしには
表現し得ないのではないでしょうか。



と、最後は辛口になりましたけど、いつものように楽しませていただいた
ことに変わりはありませんよ。 



残り2日。 千秋楽は目前です。


観客の我々もラストスパート、私はもう、かなりヨレヨレですけど(笑)
ついて行きますとも。


・・・そしてこの後、怒涛の二日間は始まるのでした☆






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