オペラ座の怪人 


                              福岡シティ劇場 1階 S席  I 列18番
                                               F列16番


                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 高井 治  クリスティーヌ 村田恵理子  ラウル子爵 内海雅智
  カルロッタ  河合和代    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 西島美子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 長 裕二
  ムッシュールフェーブル 喜納兼徳

2004年3月20日(土)マチネ・ソワレ

千秋楽を8日後に控え、初めてのマチ・ソワ観劇になりました。2公演分、まとめて書き記しておきたいと思います。


個人的な累計観劇回数もソワレで40回。まあ、よく通ったモンです(笑)
でも、私よりもっと多い観劇回数の方もいらっしゃいますからね〜。「オペラ座」の
魅力は破壊的といわざるを得ませんな。
しかしこれで、福岡公演中に新ファントムなんて登場してたら、どんなことになったやら、
そら恐ろしい気もいたします。


と、のっけから余談はさておき、前回18日は久しぶりの高井ファントム観劇。
村ファントムに交代したときと同様、前のファントムの影響をちょっと引きずりつつの
観劇でしたけど、今日はこちらも完全に高井モードで準備OKです。
マチ・ソワでキャナル滞在も8時間たっぷり。あらゆることから現実逃避して(笑)
「オペラ座」の世界に浸る1日になりそうですわ。


この日、マチネは全席完売。
・・ああ、なんて久しぶりに聞く言葉なんでしょう(しみじみ)
ソワレも9割程度のお客様ではなかったでしょうか。今日あたりは千秋楽が近いのは
もちろん、高井ファントム復活後最初の週末ということもあって、遠方からの遠征の
お客様が多かったような気もします。


キャストはマチネとソワレでアンサンブルも含めて変更はありませんでした。




第1幕




オークション

ハンニバルのポスターを持つ俳優さんって、ちょっと前から変わりましたよね?どなた
なのかよくわかりませんが。声がちょっと小さめなのは仕方ないとしても、
あのポスターの丸め方はいったい・・ポスターの真ん中のほうを持って、まるで
リスみたいにすごいスピードで「カリカリカリッ」と丸める仕草をなさるんですけど、
全然巻き取れてない(笑)
マチネで気づいて、ソワレでつい笑ってしまいました。


「ハンニバル」ポスターといえば、昨年の秋「品物はこれでございます」って言った
ものの、向きを間違えたのか裏返しになってて「あらら・・」ってことがありましたっけ☆



オーヴァチュア

何回見てもこのシャンデリアが上昇するシーンは良いですね。
斜めに上がるせいで最後までゆらゆら揺れているところが、またなんとも言えない
妖しいムードがあるところです。


「ハンニバル」リハーサル

マチネ、ソワレともできるだけ全体を見ようと思ってはいたのですが、やっぱり
支配人さんと、ビアンジ・カルロッタに注目してしまいます。なぜかこの場面、私は
ダンスの女の子達をあまり見ようと思わないんですよね〜。


毎回、今日の支配人さんの調子はどうかなあと思っているのですが、青木フィルマンは
ほとんどブレがないけど、林アンドレは日によってノリに差があります。
この日、マチネとソワレでも演技は違ってました。
・・これってもしかして私へのサービス?(ちゃうちゃう)


マチネでは、カルロッタの歌の間じーっと見ていて「あなたの胸に」といわれて
「え、私ですか?いや〜困っちゃうな」と胸に手をあてて嬉しそうに照れる演技。
ソワレは最初から歌を口ずさんで指揮者みたいな動作、「あなたの胸に」のところでは
真剣な表情のまま、ちょっと二枚目を気取った感じで右手を差しのべる、という演技。
個人的には素人っぽくて初々しい前者の反応が好きです。


海外のオペラ座ではあのスカーフをカルロッタがアンドレさんの首にかけてあげるので、アンドレさんがメロメロになるという演技もあったそうで。そういうのも可愛くて良いかも。


この場面は、これから起こる騒動直前の一番平和なところ。新支配人さんは
自分たちに降りかかる苦労も全然知らないわけですから、特にアンドレさんには、
あくまでお暢気に楽しく演じていただきたいと思います。


歌がまだ終わってないのに拍手する青木フィルマンさんに、むっとしてにらむ
河合カルロッタの表情も面白かったです。


半場ビアンジと河合カルロッタが、上手端のほうでダンサーさんたちの踊りを
待ってる間、ビアンジさんたら、近くに来たダンサーの一人に歩み寄って
口説こうとするんですね。今まで気がつかなかった。で、カルロッタに一言叱られて
「しまった」って感じで元の場所に戻る。
ビアンジさん、なにやらちょっと言い訳したりしてます。


これって石井ビアンジもやってましたっけ?イメージとしては石井ビアンジは
カルロッタひとすじで、こういう浮気っぽいことはしてないような気がするのですけど。
ちなみに半場ビアンジはこの待ち時間、カルロッタの手を取ってキスしたり香水を
ほめたりという仕草はなさらないので、やっぱりビアンジ俳優さんによって
解釈が違うところなのでしょうね。


カルロッタの代わりにクリスティーヌが歌うことになったとき、スカーフを渡した
荒井メグは祈るような仕草を見せます。
公演が中止になるかどうかではなく、親友のクリスティーヌのことを心から想うメグ。
長レイエ先生と顔を見合わせて、みるみる笑顔になっていく様子が微笑ましいですね。



ラウル登場

毎回、内海ラウルの髪型がどうのと観劇日記に書いてごめんなさい。でも内海さん、
福岡の理美容業界の技術が問われますから(爆)お願い、カッコよく決めてね☆


立ち上がって顔を輝かせ、拍手をする若々しい仕草は素敵なんだけど、最初の頃に
比べて「ブラヴァ」の「ヴァ」が強調されるクセがついてるのがちょっと気になります。
でも、笑顔が可愛いから許すわ♪



ファントム登場

マチネもソワレもここ、良かったですよ。
しかし驚くのは高井さんのくっきりアイラインと、熱ーい視線。
そしてやっぱり口元に時折、笑みが浮かぶこと。
そっかー、嬉しいんだよね〜よしよし(爆)  「ここだエンジェルオブミュージック」
歌いながらマントをさっと払う仕草まで嬉しそうにみえます。



オペラ座の地下

18日に観劇したときも思ったのですけど、やっぱりお声はまだ絶好調とは言えない
みたいですね。マチネよりはソワレの方が良かったけど、「心のおもむくまま」とか
長く伸ばすところが短めに終わってしまいます。


特にマチネ「夜の調べの中に」の最後は前回同様「???」な終わり方に
なってしまってちょっと残念でした。
長さはそこそこあるけど、余韻のビブラートがかからなくて美しさがイマイチ。
この方、もっと綺麗な声が出せるはずですものね〜。


しかし仕草の方はあいかわらず、優雅でスマート。
官能ポイントもしっかり見せて下さいます。
ただ前回もでしたけど、時々カッと目を見ひらくようになさるのにはちょっとビックリ。
かなり気合いが入ってるということでしょうか。


うーん、個人的には高井さんの目ってこんな風に見ひらくより、
反対にかすかに細めるようにする方が、獲物を冷静に狙う猛獣みたいな、
ちょっと冷たい感じの色気があって良いんだけどなあ。


特にここは、ファントムが圧倒的な優位に立つ「音楽の天使」としてクリスを歌声で
惑乱するところですから、彼の支配欲は、熱っぽさと、冷静さの両方を兼ね備えて
いないといけないと思うのですが、いかがなものでしょう。


さて、暗転後のアンマスクシーン。
高井ファントム、マスクを取られた怒りがマチネソワレとも、ちょっと少なめ。
村田クリスが悲鳴をあげて逃げ回る演技とのバランスが、いまひとつ良くなかったかな。
その前の場面では優雅で冷静な支配者だったファントムが、うってかわって激昂する
ところですから、思いっきりやっていただきたい。


床にうずくまるファントムが「業火に焼かれた」と歌うところで、
マチネは照明のハプニングが。


いつもなら這い寄るファントムの顔を下手から照らすはずの白いライトが、
なぜかついていませんでした。まぶしいほどの光に彼の姿と横顔が浮かび上がる場面
ですけど、ついているのは倒れた村田クリスを上からぼんやり照らすライトだけ。


かなり暗い舞台の上、よく表情が見えないまま高井ファントムが這い寄っていくことに
なりました。
「あれ〜?」とは思ったものの、うん、これはこれで別の趣があります。



ホラーチックな言い方になるかもしれませんけど、薄暗闇の中、苦しそうな息づかいの
男が顔を半分隠しながら這い寄ってくるなんて、クリスの視点に立つと、
ずいぶん恐ろしいことですよね。


次に何がおこるかわからなくて、身動きできないクリス。
近くまで来ないと顔が見えない暗さの中、「おお、クリスティーヌ・・」と
自分の名をささやくファントム。
右手をはずすと、その下には闇に住むしかなかったであろう無惨に引きつれた顔が。


一瞬は恐怖と衝撃にとらわれるクリスティーヌですが、ふと気づくと
大きな背中を丸め、黙って胸の痛みに耐えているのは幽霊でも怪物でもなく、
その目に悲しみと憧れをいっぱいに宿した一人の男だったんですね。


恐怖や衝撃より、後悔に胸をつかれ、申し訳なさそうにそっとマスクを返すクリス。
白い服に光があたるクリスと、闇の中を這いずりまわるファントムの対比が、
彼のせつない恋情と苦悩を感じさせるような気もしました。



支配人のオフィス

マチネ、ソワレとも支配人さんの元気があって、よかったよかった。
パワフルな河合カルロッタのチャーミングさが、このところ倍増してる感じですね。
七重唱も、今日は林アンドレさんのご機嫌もうるわしく(笑)、最後までよく響いて
綺麗でした。



オペラ座の屋上

マチネ、ソワレとも安定しています。
こちらも正直言って、ちょっと気を抜いてしまうところ。ただ、今日のお客様、とくに下手前方ブロックは遠征の方々だったのでしょうか。ちょっと拍手が先走り。
マチネもソワレも村田クリスと内海ラウルのデュエットが終わるか終わらないかの
うちに、拍手をしていらっしゃいます。気持ちはわかるけど、もうちょっと余韻を
楽しんでからにして頂きたいような。
拍手はもちろん俳優さんにとっても嬉しいものでしょうけどね。


エンジェル像のファントム。マチネ、ソワレとも座席の関係でよく姿が見えました。
村ファントムみたいにあくまで澄んだファルセットではなく、ちょっと不安定さも
感じられる歌声だったかな。これもソワレの方がよく声が出ていらしたように思います。
特に「これほどの」の怒りはソワレが断然ハッキリしていて良かった。
「許しはしないぞー」もよく伸ばしていらっしゃいました。




第2幕




墓場にて

火の玉を飛ばしつつ、ラウルと舌戦を繰り広げるこの場面ですけど、
「そのつもりなら覚悟しろ」のセリフ、正直言って高井さんは話し言葉の滑舌は
あまり良くないので、ここって時々うまく言えないんですよね。そんなに早口でなくて、
もっと落ち着いてゆっくり言っても良いのでは?
マチネ・ソワレとも「そんつもりなら」って感じになっちゃって、
悪人っぽいキメゼリフなのにと思ったら、可愛くてちょっと笑ってしまいました。失礼☆



ドンファンの勝利

パッサリーノの「殿様」という声の調子と、ファントムが「パッサリーノ」と答える
調子のバランス、結構難しいですね。 同じトーンで答えるとちょっと間延びした感じに
なりはしないでしょうか。
先週、村ファントムの時に「パッサリーノ」が早くないかい?と思ったのですが、
微妙に口調を変えた方が引き立つような気もします。


ここもやっぱりソワレの方が良かったなあ。

余談ですけど、ソワレだったかな、ファントムが後ろ向きに座ったイス、ちょっと中央に
座りすぎたのか村田クリスが歌ってる間に高井ファントムがすす〜っと右にすべって
いったのが面白かったです☆


さてひとつ白状します。
銃声がしてラウルが飛び込むところ、最近変な意味で楽しみに見てます、私。
だって支配人さん達が腰を低くして「よっしゃ、来い!」って感じで、内海ラウルを
待ちかまえてるんですもの、もうまるでアメフト(笑)。

あんなに待ちかまえてるのってストーリー的には変なんだけど、内海さんの勢いが
わかってるから、ついそうなっちゃうんでしょうね〜☆
笑うところじゃないんですけど、笑い上戸の私には林アンドレさんの真剣な表情が、
ひそかにおもしろくってたまりません☆



ふたたび地下へ

高井ファントムの目力に驚いたのが「血に呪われた運命」のあたり。
目をみひらくようなクセって今まであまりなかったような気がするんですけど、
これはやはり意識して演技していらっしゃるんでしょうか。


高井さん、ソワレは特に声に迫力が出てきて良かったと思います。
ただ、厳しいことを言うようですが、この日、やっぱりクリスティーヌへの愛情、絶望や
悲しみ、怒りといった感情は見えにくかったですね。
歌手の本能が優先されているというか、歌を大事にするあまり、ファントムとしての
演技面での感情表現は二の次になっている印象をうけます。


以前から表情がクールなファントム様ではありますけど、クリスを心から求め、
得られない運命にあらがおうと必死であがいているせっぱ詰まった感じが乏しい。


狂おしいほどの恋情が煮詰まって、狂気にとらわれた修羅場だからこそ、クリスに
与えられる慈愛のキスが、閃光となってファントムを貫くことができるわけで。


ソワレもマチネも、そういう意味でちょっと最後の感情的な盛り上がりが足りない
ような気もしました。もちろん出来が悪いということは決してないのですけど、
高井ファントムの本領発揮とまではいかなかったのかもしれません。


そうは言っても、ソワレは「行ってくれ、お願いだー!」はかなり激しかったので、
「おぉ?」っと思いましたけどね。


指輪を返しに戻ってくる村田クリス、ちょっとした動作の違いですけど、特にマチネは
ファントムに対してあまり未練がなさそうだったなあ。
お互いの呼吸というか、感情の高まりが次の高まりを生むものなのかもしれません。



個人的な感想としてはこの日の舞台そのものは、正直、絶好調という感じはしなかったのですが、やっぱり千秋楽間近ということもあるし、遠方からの熱烈ファンが多かったのもあるんでしょうね。
ソワレのカーテンコールは思いがけないことになりました。


通常より1回多いカーテンコールのあとも、拍手が鳴りやみません。
異様な盛り上がりで電気がついて送り出しの音楽が流れる中での
オールスタンディング。
とうとう加えて2回、合計で7回のカーテンコールになりました。


でも何といっても驚いたのは高井さん。
特に最後は予想外でホントに嬉しかったんでしょうね。あ・の・高井さんが両手を
観客に向かって振りながら、白い歯を見せた笑顔で「バイバイ」っておっしゃったんです。
もちろんマイクは入ってないけど、声を出されたのはハッキリわかりました。
それから内海さん、村田さんと手をつないでもう一度お辞儀。でも皆とのタイミングは
揃ってなかったから、かなり気持ちが高ぶっていらっしゃったのでしょうね。
拍手するこちらも、ファントムの扮装のまま完全に素の高井さんに戻って笑ってる姿に
とっても嬉しくなってしまいました。




いよいよあと残りもわずか。

千秋楽に向けて、いよいよ最終コーナーを曲がったことを、
実感として思い知る舞台となりました。


さて最後までついて行けるかしら☆






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