オペラ座の怪人 


                              福岡シティ劇場 1階 S席 H列16番


                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 高井 治  クリスティーヌ 村田恵理子  ラウル子爵 内海雅智
  カルロッタ  河合和代    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 西島美子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 長 裕二
  ムッシュールフェーブル 喜納兼徳

2004年3月18日(木)マチネ


千秋楽まであと10日。


今週のキャスト発表、なんといっても話題の中心は高井ファントムの復活でした。
13週連投の後、村ファントムはわずか2週間という短期間での交代。村さんの
体調も良さそうなうえ、これまで公演全体の4分の1しか登場してないんだし、
これってバランス的にはどうよ、って感じもいたします。
でも、2月29日が不調に終わった高井さんとしては、最高のファントムで福岡公演を
終えたいというお気持ちなのではないでしょうか。
こちらとしても、最高のリベンジを期待しておりますですよ。




第1幕




「ハンニバル」リハーサル

今日のキャストはアンサンブルに大前さん、沼尾さんの名前がありました。
村田さんも入れて3人のクリス女優さんが舞台にいらっしゃるわけだ。結局、
大前クリスは福岡では昨年夏頃の1週間程度の登板でしたね。
できればもう少し登場していただきたかったなあ。
この場面、沼尾さんは宝石箱を持って歌っていらっしゃいました。


今週ビアンジが半場さんに交代。ますます体型が立派になって(笑)、
歌声も立派なオペラ歌手って感じです。


冒頭のダンスシーン、初登場の女性アンサンブルさんが多かったせいか、なんとなく
全体のまとまりを欠いていたように思います。
村田クリスは集中力がちょっととぎれてるという演技だから当然としても、ほかの
ダンサーさん達はもうちょっと揃わないといけないような。



ラウル登場

とうとう内海さんは16週目に入りました。もう千秋楽までこのまま続行できそうな
声の勢いは、さすが若いというか、衰えが見えません。
ボックス席で歌うとき、ちょっと声が濁るのは一種のクセで仕方ないのかな。
私は目が悪いのであまり気がつかなかったのですが、特に左頬のお肌が荒れてる
そうで、やっぱりプレッシャーと長期登板の疲れも色々出てるのかもしれません。
大変だと思うけど、頑張って頂きたいものです。



クリスの楽屋

今まで気づかなかったけど、衣装係の女性、今日は井田さんですけど花をもって
先にクリスの楽屋に入った後、花を飾ったり、ドレッシングガウンを用意したりと
暗いなかで結構、動き回っているんですね。



ファントム登場

村ファントム5連チャン観劇のあと、約3週間ぶりに聴く高井ファントムの歌声。


第一印象は「若ーい!」(笑)

・・失礼、村さんが年寄りくさいってわけでは決してないのですけど、やっぱり
高井さんの歌い方とか声質もあいまって、この日の私の目にはどうしても
青年ファントムに見えちゃって。



3月4日、村ファントムに久々にお会いした時も「こんな感じだったっけ?」の連続
でしたけど、今回も同じような気持ちになりました。
それだけ両ファントムの違いがいろいろあるということで、それぞれの良さや魅力、
うける印象の違いが今日はとっても面白かったです。


比較することは必ずしも正しい観劇姿勢ではないのかもしれませんけど、リピーター
ならではの楽しみってことでお許しいただきたい。
ゆえに、今日はあえて比較しながらの観劇日記になりそうです。



ミラーの中のファントム
まっすぐにクリスを見つめる高井ファントム。 ん?シャドウはそうでもないけど
アイラインがいつもよりしっかり入ってます?
以前、ある女性歌手さんが「アイライン書くのに命をかけてます(笑)」って言って
ましたけど、確かにと眉とか、アイラインにその日の気合いがあらわれますよね。
高井さんも今日は気合い充分ってことなのでしょうか。
でも、下まぶたより上のラインの方が大事なんだけどな〜。誰か教えてあげて☆


オペラ座の地下

お休み明けの高井さんが、元気モードになるのは先刻承知ですけど、今日はホントに
嬉しそう。 2週間のお休みの間は歌いたくて、うずうずしてたのかもしれません。


クリスを地下に連れてきたあたりから、オペラグラスを覗いてびっくり。
「笑ってる・・よね?」  ホント、ときおり口元にうっすらと笑みが浮かびます。


マントさばきも派手派手! まるで闘牛士(笑)。
村さんのマントさばき、というか別にひるがえす気は最初からないんでしょう、普通に
脱いでちょっと丸めるようにぽいっとボートに置くのとは正反対なんですよね〜。
思わず心のなかで「おぉ〜」っと叫んでしまいました。



・・・まったくの余談ですけど、
考えてみると高井さん、闘牛士の役って結構似合いそうだと思いません?

氷のように冷静な表情の下に秘めた闘志。華麗にムレタ(あの赤い布のことですね)をひらめかせて怒り狂う牛をかわし、最後に剣にキスをしてからなんの躊躇もなく、大胆なひと突きで優雅に死を与える、トレロ・マタドール。

もちろん、素のご本人はそういうことができる人ではないと思いますし(ていうか、
血を見るのはダメなんですとか言いそう) 私自身もあの残酷なイベントが決して
好きではありませんけど、ファントムだって、ひらたく言えば殺人犯役ですからね〜☆
あくまでフィクションのイメージのお話ってことで。


以上、なんの役にも立たない余談おわり(笑)



さて、今日の「The music of the night 」
歌詞が先走りしすぎることもなく、気持ちよく聴くことができました。
ただ、クリスに恋してるファントムの感情は、まだ充分に装填されてない印象を
うけたのは、この日は高井さんご自身が透けて見える気がしたからかな。


いつかご本人もおっしゃっていたように、体力気力と感情のバランスすべてを
揃わせるのはかなり難しいことなのかもしれません。
もともと俳優でなく、歌手としてのキャリアが長いせいもあるのか時折、
演技や役柄の感情より歌の比重が重くなることがあるのではないでしょうか。
なんて、ちょっと辛口すぎるかしら?


でも、高井ファントムの嬉しそうな表情は面白かったなあ。
「心のおもむくまま」のところなんて、はっきりいつもと違ってましたもの。
この前日、つまり復帰初日は観劇した方によると、もっと笑ってらしたそうです。
あくまで高井さん基準での満面の笑みだったのかも☆



オペラ座名物(爆)羽交い締めシーン。
高井さんてば、後ろからかなり密着して立つうえに、
クリスの身体をすべらせる手にもまったく遠慮がない(笑)。胸のふくらみに
沿うように動かしたりもう大胆〜。最後も村田クリスの肘の上あたりから、手首へと
ゆっくり指をすべらせて手を握ってらっしゃいました。


ただ、お声の方は、まだ絶好調ではなかったようで、めずらしく「闇を治める私の力
に」と歌うところで、ちょっとひっかかってひっくり返ったような感じに。
「夜の調べのなかに」のラストも、たぶん以前から苦手なんだと思うけど、
今日はちょっと綺麗さに欠けましたね。残念。



暗転後、オルガンのところで作曲にいそしむファントム。細かいところだけど、
羽ペンの動かし方も村さんに比べるとおとなしめ。


マスクを取られて怒るところも、今日はブチ切れて怒鳴るのではなく、ちゃんと
歌ってる感じでした。
でもこんなところでも今日の私は、内心「若いなあ、綺麗な声だなあ」と感心しきり。
これは単に比較の問題で、高井さんご自身の声域もバリトンですけど、
村ファントムのような地の底から響くような厚みのある低音じゃないかわりに、
澄んだ高音部が目立って感じられてるんだと思います。
「だが、クリスティーヌ」の声も今日の私には高く、優しく聞こえました。


 西島マダム、やっぱりこのところお疲れが声にあらわれてるような気がしますね。
「悪ふざけだわ」とブケーに警告する場面でも、張り上げるところは良いけど、
セリフに近くなったり低めの声になるととたんに不安定な感じになるようでした。



支配人のオフィス

荒井メグはママに叱られ、フィルマンさんに叱られ泣きべそかいてますけど、両手で
ぎゅっとスカートをつかむところが子供らしい動作でうまいと思います。


今日は河合カルロッタがちょっと浮き足立ってるというか、一人、元気ありすぎな
感じになっていたかな。 石井ビアンジと違って半場ビアンジは、カーラと
ラブラブな恋人同士の演技ではないので、ちょっとカルロッタが浮いてしまいそう。
「歌声はまるでそうエンジェル」を歌う石井ビアンジの嬉しそうな笑顔が恋しいデス。



イル・ムート

いつも楽しいこの場面。今日は荒井メグの帽子がずれちゃいましたね。
ニコニコしながら荒井さんが帽子を直してるのが可愛かったです。



オペラ座の屋上

エンジェル像の高井ファントム。
ここも村ファントムと大きく演技が違うところ。
「愛を与えた」のファルセットはやっぱり村さんの方が得意なのでしょうか。
今日は高井さん、ちょっぴり不安定な声の出し方でした。
でも、ここでファントムの底知れぬ怖さを感じるのは断然、高井ファントムでしょう。


二人の歌声が聞こえてきても大きなリアクションは取らないのですけど、
なにも映さなくなったような空虚な目が怖い。歌が聞こえる間、かすかに息づかいが
大きくなって、肩が上下しています。 耳をふさぐけどジタバタはしない。
やがてその手を下ろした時には「冷たい炎」とでも表現するほかない、
ぞっとするような男に変貌を遂げ・・。


村ファントムは、悲しさを前面に押し出すせいか狂気は少ないのですが、
高井ファントムは悲しさを押し殺し、静かに狂気を身のうちに育てていくような
印象を受ける気がします。




第2幕




マスカレード

喜納さんはお猿さんグループの後ろの道化なんですけど、左の袖っていつもあんなに
長かったでしょうか?今日は左の手のひらは、ほとんど袖の中に入ってしまって
見えません。
「???」と首を傾げているうちにレッドデス登場になってしまいました。



墓場にて

さて、ここでクイズです。両ファントム、十字架から一番に出てくるのは何でしょう?

答え、高井ファントムは肩で、村ファントムはつま先です(笑)ホントだってば〜。


それはさておき、今日の高井ファントム「ここへおいで私のクリスティーヌ」の声は、
優しくてとっても良かったと思います。
「さあこちらへ立ち止まるな」あたりは、なんだかいつも嬉しそうですよね。
悪人っぽい声を出すのは演技としては面白いのかもしれません。



ドンファンの勝利

カーテンを開けて出てきた高井ファントム、やっぱり手の動きは素敵です。
リンゴを取り上げる手、指輪がキラキラ光っていて綺麗。

「行く手には未知の愛のよろこび」のところは両ファントム、立ち位置も仕草も
まったく違うんですね。
個人的には高井ファントムの、クリスの真後ろに立って両手を広げ、触りそうで
触れない、ファントムのほの暗い欲望を感じる仕草の方が妖しくてドキドキしますね。



ふたたび地下へ

地下へ連れて行くボートの上の高井ファントム。
まったくと言っていいほど漕いでません。オールを持った手を少し動かしてるだけ。
なんだか「やっぱり」って感じで懐かしくて一人でクスクス笑ってしまいました☆


「血に呪われた運命」と語るファントムは自分自身を冷笑するような表情を
浮かべます。でも村ファントムに比べるとやっぱり表情の変化は少ないですね〜。


クリスのことをホントに好きなの?執着してるだけなんじゃないの?と思えるのは
正直言って、二人の間の精神的なつながりが今日はあまり感じられないから。


村田クリスの言動のひとつひとつに細やかに反応する村ファントムを見た後だと、
どうしても感情の起伏が見えにくい。 動作も全体に優しいし、今日は怒鳴るトーンも
ちょっと低めだし。
まだ、ファントムの愛憎の世界を自分の中から完全に引っ張り出してないというか、
まだ役に浸り切れていないような。そんな印象をうけました。


クリスに哀願されても、キスを受けてもボロボロになるところを見せない。
昨年、初めて高井ファントムにお会いしたときから思ってるのですけど、
最後まで誇りを失わないファントムなんですね。


唯一、彼の心の傷を感じさせる「お願いだー!」も短めだったので、何となく中途半端な
感じになってしまいました。



村さんの復帰2公演目もそうでしたけど、高井さん、やっぱり今日あたりはまだ、
ファントムモード全開ではなかったのでしょうね。



大好きな高井ファントムの燃え上がる情念を、最後の日までには必ず拝見できると
信じております。・・・・そうでなかったらグレてやる〜(笑)







             きみこむの観劇日記に戻る    銀色文字トップに戻る