オペラ座の怪人 


                              福岡シティ劇場 1階 S席 K列16番


                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 村 俊英  クリスティーヌ 村田恵理子  ラウル子爵 内海雅智
  カルロッタ  河合和代    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 西島美子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ビアンジ 石井健三  ムッシューレイエ 長 裕二
  ムッシュールフェーブル 喜納兼徳

2004年3月13日(土)ソワレ



ようやくたどり着いた感じの週末。前日予約でチケットを取って出かけました。
前回、完全復活を感じさせた村さん、週末だけどお疲れの方はどうかなあ。


観劇前、いつもお会いする地元の方や、関東からの遠征観劇の皆さんと楽しい
ティータイム。
キャナルシティ博多では、いくつかのお店が公演期間中「オペラ座の怪人」に
ちなんだサービスをやっていますが、この日はファントムのマスクをかたどった
チョコレートプレートつきのデザートを味わえるお店に行きました。

こういうのって思い出になるし、楽しいよね。
そうだ千秋楽までには一度、写真を撮っておかなくては☆



さて、劇場に入れば結構なお客様ではありませぬか。
ようやく千秋楽モードになってきたかな。  それでも「当日券あります」が
出てましたから、全席完売ではなかったみたいですけど(泣)


このソワレ公演が通算200回。でも結局、特に記念品もご挨拶もありませんでした。
なんかちょっと寂しいですね。今回福岡公演ではさんざんイベントをやったから、
もういいかなってところなのでしょうか☆




第1幕



オークション

前日の公演では喜納オークショナー、猿のオルゴールの説明をするあたりでセリフが
一部抜けてしまったと聞きました。なんとなく緊張して聞きましたが、今日はスムーズ。
ちょっと重みも出てきて、最初にお会いした時よりだんだんと良くなっていらっしゃるのではないでしょうか。


老ラウル「おまえはこうして亡き人の懐かしい歌を」のあたりは、ものすごいエコーが
かかってるんですね。
私はこの場面、バックに流れているメロディが寂しく、かつドラマティックで好きです。


過去の記憶とはあのメロディのように、細く頼りなくかつ寂しさを伴うものなのでしょう。
特に年老いた彼が、若く輝かしかった自分や、愛する人を失って一人残された
道のりを思うとき、50年前と変わらないオルゴールの旋律がどんな感慨を
呼ぶものなのか。

まだ若い内海ラウルより、それなりのお年を召した(失礼。でも素敵なのにかわりはありませんよ♪)佐野ラウルの方がとっても悲しそうな顔をして、オルゴールを持ってきてくれた男性に合図をします。
悲しみをこらえつつ、それでもクリスにかかわるものを買いあさらずにはいられない。
そんな老ラウルの心情をしみじみと思いました。



「ハンニバル」リハーサル

喜納ルフェーブルになって印象が変わったところは色々ありますけど、
支配人ファンの私にとって、以前から気になっているところがあります。


象が出てくるフィナーレ前、ルフェーブルさん達3人は舞台奥に歩いていきますね。
で、フィルマンさんはつまらなさそうにしてるけど、深見ルフェーブルと林アンドレは
いつもここで、なぜか大笑いしながらおしゃべりしてるんです。
いったい何を話しているんだろうというのが、この数ヶ月の疑問。
・・やっぱ象の話?(笑)


喜納ルフェーブルは、ここではあまりアンドレさんとおしゃべりしません。
決められた演技ではなくてアドリブに近いものだったようです。
うーん、やっぱりもう一度深見ルフェーブルに会いたーい☆



ラウル登場

内海さん髪を切られたんですね。妙にスッキリして、ちょっと幼い感じ。この時期に
散髪するってことはやっぱり千秋楽まで行っちゃうのかしら。



クリスの楽屋

荒井さん、すっかりメグのイメージに定着しました。
どちらかというと、クリスティーヌより年下に見えちゃうこともあるけど、いつも
クリスティーヌのことを気遣ってる優しいメグ。
マダムに叱られながらも、ちょっと目配せしたり笑顔を見せたりが愛くるしい。


実はこの日、西島マダムのお声がちょっと不調でした。歌はそうでもないけどセリフの声がかすれたり不安定な感じ。  西島さんも一番寒い1月に復帰されてから、もう2ヶ月連続登板ですね。
いつも真摯な姿勢でマダム・ジリーという大事な役に取り組んでいらっしゃることがよくわかるだけに、頑張って下さいと心から申し上げたい気持ちです。



ファントム登場

ミラーの村ファントム。いよいよ帽子が目深になって、ほとんど目元は見えません。
お声の方は「私の宝物に〜」が、イメージ通りの圧倒的な声量で始まってくれて、
思わず「そう、これよ!」って心のなかで叫びました。


オペラ座を震撼させる闇の帝王。 まがまがしい噂の絶えない魔物としての
登場ですから、ここだけは人間でなく、暗闇から手を伸ばしてヒロインを
さらっていく「オペラ座の怪人」としての登場をみせていただきたいものです。


今日はいつもよりちょっと席が後方なので、舞台全体がよく見渡せます。
特にプロセニアムアーチの天使や悪魔の縁取りが、暗い舞台に19世紀の
幻想を感じさせてくれて、つくづく最高の舞台美術なんだなあと改めて感心。
なーんて、37回も観に来といて、いまさら言うことじゃないような(笑)



オペラ座の地下

やっぱり村さんの「The music of the night 」は最高です。
厚みのある低音から透明感のある高音まで自由自在のテクニック。
高井ファントムに比べると手の動きは単調なんですけど、声の彩りの豊かさは
負けません。
今日は演歌調(!)にもならず、素晴らしい歌声を聞かせて下さいました。


深い闇色の声が持つ、つややかな香り。
始まりはゆったりと優しく、ときに熱く、クリスから片時も視線を離さないで歌いかける
村ファントムに、もうたっぷり酔わせて頂きました。


ただ人形が鏡の中にあらわれるところ、クリスが倒れる前にマントを取りに
歩き出すのは、やっぱりちょっと早すぎておいおいって感じ。

でもクリスの寝顔をずっと見つめながら、胸に両手をあてて歌う
「二人は歌うのだ」は、ファントムのせつない願いとクリスへの愛しさが感じられる
ところですね。今日も暗転ぎりぎりまで声を伸ばしていらっしゃいました。


最後に手を高くかかげる仕草は、ファントムの憧れ。光に向かうこと、彼女と共に
歌うことへの心からの渇望なんだと思います。



イル・ムート

宝石箱を捧げ持つ荒井メグがホント可愛い。
セラフィーモと伯爵夫人がキスするのを見て、「はらほろひれはれ〜」って感じで
イスの上にのけぞってるし(笑)さすが「美女と野獣」のシリーガール出身(?)こういう時ホントに楽しそうに演じてらっしゃいます。



「カエルとはおまえのことだ!」と指さす村ファントムは、ラメのキラキラした黒マント。
あいかわらず音はギシギシ言ってますけど、もういいんです、あきらめました(笑)


林アンドレがバレエに巻き込まれるところ、今日はかなり笑い声があがってましたね。
週末ということもあるし、ローカルな話題ですけどこの日は九州新幹線の
開通初日。  初見のお客さまが多かったのかもしれません。



オペラ座の屋上

・・ん〜やっぱり暗いなあ。
ちょっと席が後方になると、舞台の暗さがよくわかります。
夜の屋上だから当然なんでしょうけど、私のように目がよくない人間には、この場面
かなり視界が悪くなってしまいます。
ちょっと後ろの方からかすかなイビキが聞こえてきたんで「寝るなよー」と思ったけど、
これだけ暗けりゃ気持ちはわからんでもない☆


内海ラウル、怪しい声の主を捜してからクリスティーヌを振り返る時のコートの
ひるがえりがいつもスゴイ。よほど颯爽と振り返ってるんですね(笑)


何をするにしろ、勢いがあって若々しい内海ラウル。あともうちょっと繊細さとか、
甘さが欲しいと思うのはワガママでしょうか。
佐野ラウルも初登場の頃は、きびきびテキパキしすぎという感想も聞かれた
そうですから、これは今後、内海さん自身の成長とともに加わっていくべき
魅力なのかもしれません。



エンジェル像のファントム。
いつもながら村さんのここの演技、好きです。

嫉妬、悲しみ、絶望、怒り。  色々な感情がファルセットの切なさと、
二人の歌声にハッとする表情にあらわれていて。
黒い憤怒と憎悪がほとばしる「これほどの辱めを」の声の変化が
ゾクゾクするほど良いです。  なんてブラヴァな悪人声(笑)




第2幕




ドンファンの勝利のお稽古

石井ビアンジの細かい表情が楽しいところ。
「戦う相手は・・」のフレーズを小声で何度も繰り返して練習したり、
「ん〜、こうかしら?」って感じで口元に人差し指をあてて考えたり。
「彼の歌い方のほうがいいわよ」って言われたとき、カルロッタと
顔を寄せ合って嬉しそうに微笑んでいますね。「かのドンファーン」と歌って大きく
口を開けたままなのが、コミカルな感じで最高です♪



墓場にて

ここもかなり暗いので、正直言ってちょっと集中力がとぎれてしまいました。
でも、村田クリスの歌声の安定ぶりにはいつも、感心してしまいます。
今日は歌い方が違うなあなんていう引っかかりもなく、透明感のある澄んだ歌声。



ドンファンの勝利

警察長官が登場するところですけど、ここ数ヶ月ずっと見ていて
「君はどうだアンドレ」とラウルに尋ねられる林さんの答え方が、
内海ラウルになってから変わってきたような。
佐野ラウルの頃は「すべてお任せいたします」は比較的落ちついた声で、確信に満ちた信頼を示す感じだったのですが、内海ラウルが登場して以来、内海さんのセリフの
勢いに呼応するように「すべてお任せいたしますっ!」って体育会系の答え方。
これだと上下関係による服従という印象をうけます。どちらが良いのかはわかりませんけど、同じセリフでも相手のテンションによって変わってくるということなのでしょうね。



The point of noreturn 

「殿さま・・」を受けて、村さんの「パッサリーノ」と答える間隔が回を追うごとに、
どんどん詰まっている感じを受けるのですが、気のせいでしょうか?


勢いよく開けたカーテン、今日は狭めな隙間ができてしまいましたね。
そういや、こないだ高井さんの時もありましたっけ☆
うーん、ここってどうしても一発勝負になるところですものね〜。


黒いフードをかぶったままですが、全身からファントムの圧倒的なオーラが
立ちのぼります。(顔を隠してもキュピキュピ靴音でバレるという噂もありますが・・笑)


「もはや引けない」と歌うところ、珍しくクリスの顔に両手を近づけて、
アンマスクの最後のような仕草がありました。
自分からは触れそうでなかなか触れられないファントムの、切なさがあって
良かったと思います。


これに限らず、顔は見えなくてもちゃんと表情がわかるような村ファントムの仕草。
後ろから身体をすり寄せられて、びくっとしたように膝に置いた両手を開き、
じわじわと上げていきます。
知らないからとはいえ、激しく想いを寄せている相手に自ら指をからめられ、
肉感的な歌詞を耳元で歌われるなんて想像したら、ファントムでなくても
クラクラしそう☆


でもファントムの衝撃と陶酔は、普通の人以上でしょうね。
舞台上の虚構の世界とはいえ、愛するクリスからこんな風に求められることを、
彼はどれほど夢にみたことでしょう。
ビアンジさんには気の毒だけど、この瞬間、彼は殺人を犯して入れ替わったことを
何も後悔してないと思うわ〜。



ふたたび地下へ

前回観劇した時も思いましたけど、村ファントムのテンション上がってきてますよね。
クリスになじられた村ファントム、「血に呪われた運命」と歌うあたりからの表情の
変化は必見でしょう。


心から愛しているのに彼女を、そして自分をも追いつめていく。
これは運命のせいか、彼を嫌った母のせいか。
天才の自負も、音楽の天使としての優位性も、ただクリスの「ノン」という一言で
すべてのよりどころを失ってしまう。


以前にも書きましたけど、村ファントムはラウルとの対決にはあまり
心を傾けていないような気がします。
いつもクリスティーヌだけを見つめ、彼女の言葉や表情の刃に心を切られ、
刺されてズタズタになっていく、満身創痍ぶりは目を覆うほどです。



「許さない、えらべ」と言った後、苦しげな息づかいのファントムが立ち・・。



そんななかでクリスから与えられるのは、愛しさのこもった優しいキス。



村ファントムはキスの最中、ぎゅっと目をとじています。
クリスよりもずっと年上なのに、この瞬間、キスに不慣れな少年みたいになってしまう
彼の表現はホントにファントムらしくて、胸が熱くなります。


まるで雷に打たれたように、クリスと自分の真実を悟ったファントムが
大きく肩でひとつ息をして、歩きだすまでの長かったこと。



ゆっくりとラウルを横目に歩き、ロウソクを手にもう一度クリスをふり返り。



言葉には出さない、彼の決意がありました。



今日のファントムをクリスはとても置いていけないんじゃないか、そう思えるほどの
熱い視線。
一瞬の視線のひらめきが消え・・。



二人は去り、猿のオルゴールに歌いかけるファントム。



指輪を返しに来たクリスの手を握る彼の目は、ずっと穏やかになっていて。
この胸の痛みは隠せないけど、クリスティーヌの望みを叶えて恋人を
彼女に返してやることは唯一、最後に示すことができた彼の愛情だったのですね。



「我が愛は終わりぬ」


もう二度とこんなふうに愛を抱くことはない。
彼にとっては我が人生、我が命のすべてだったんだなあ。



ファントムが消えた舞台を見ながら、そう思いました。




あくまで個人的な印象ですけど、村ファントムは、ある意味でルルー氏の
ファントムにちょっと近いのかなあ。何というか、プライドをかなぐり捨てて、
クリスの前でひざまずいて涙をこぼしそうなファントム。
切なさや悲しさを表情に出すファントムだから、恋焦がれて死んだ、
哀れだけどそんな最後がちょっぴり幸せな気もする、原作の
ファントムが今日はなぜか思い出されました。




観劇後はご一緒した皆様と、なんか最近恒例になった感じのお食事会。
愛のあるツッコミ(笑)やら、今後のファントム交代の予想やらで
にぎやかに過ごしました。



・・しかし、この翌週、15日の四季キャスト発表は衝撃でしたね〜。
高井さん13週連投のあと、村さんはわずか2週間でファントム交代。
千秋楽まで2週を残しての交代は最初から予定されていたのものだったのか?


日記を作成している現段階では、まだわかりませんが、もしかすると個人的には
この日が福岡でお会いする、最後の村ファントムだったのかもしれません・・・。






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