オペラ座の怪人 


                              福岡シティ劇場 1階 S席 B列13番


                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 村 俊英  クリスティーヌ 村田恵理子  ラウル子爵 内海雅智
  カルロッタ  河合和代    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 西島美子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ビアンジ 石井健三  ムッシューレイエ 長 裕二
  ムッシュールフェーブル 喜納兼徳

2004年3月9日(火)ソワレ


先週までの寒さが緩んで、日中は暖かくなりました。

今日は久々の下手寄り最前列。でもこのチケットを公式HPで予約したの、3月に入ってからですからね〜。信じられない状況が続いています。
お客様の入りはたぶん半分弱というところでしょうか。


今週のキャスト、カルロッタが河合さんに交代。深見さんはどうしていらっしゃるのかなあと思ったら、今週は東京「ライオンキング」でティモン役だそうでちょっとビックリ。
え、プンバァの間違いじゃないの?と思ってしまいました。
コミカルなミーアキャットの深見さんも面白そうだけど、できればもう一度オペラ座に
帰ってきていただきたいなあ。




第1幕



オークション

喜納さん、この場面では長いもみあげとおヒゲが黒いんですね。
深見さんもたぶん同じ扮装だったんでしょうけど、今まで全然気がつかなかった。
喜納オークショナーは顔立ちが洋風でハッキリしていて遠くから見ても、
綺麗なオジサマ(笑)って感じ。もう少しお若い頃なら、ラウル子爵がやれたんじゃ
ないでしょうか。大きな瞳が甘さを添えて、上品なルックスに澄んだテノールの素敵な
喜納ラウル、お会いしてみたかったわ♪


「ハンニバル」リハーサル

このところちょっとお疲れ気味の林アンドレでしたけど、今日は元気一杯。
笑顔も多くて楽しませていただきました。

ルフェーブルさんに紹介される時、河合カルロッタはかなり気の強そうな視線で、
アンドレさんを見返すんですね。小柄な身体に、プリマドンナとしてのプライドの高さが、
チャーミングなきらめきを感じさせる河合カルロッタ。
林アンドレも目をとじてうやうやしく、長めのキスを捧げております。
やっぱり女王様なのね、気持ちはよーくわかるわ(笑)。


最前列だと、俳優の皆さんがマイクに入らない声で「だれか歌える人はいないの?」とか
「ちくしょう」「中止だなんて・・」と話してるのが、よく聞こえて楽しい♪


ラウル登場

内海さん、とうとう15週目ですね。すっかりラウル子爵をご自分のものになさってるの
ではないでしょうか。今日は、ヘアスタイルもかなりすっきり(笑)
クリスが歌い終わったとき、暗転した途端にラウルはもう一度立ち上がって
「ブラヴァ!」と声をかけます。笑顔のままボックスごと移動していくのが面白い。


幕が降りたあと、マダムジリーにダンサー達が叱られるシーン、荒井メグが
「あーあ、またお稽古ね」って感じでため息をつく表情が可愛いです。


しかし、このところ拝見していて、毎回不思議なんですけど、荒井メグの髪の白いリボンだけが、いつもヨレヨレしてるのはなぜなんでしょう?他のダンサーさんのリボンは皆、綺麗なチョウチョ型になってるのに。荒井さんの動作が大きかったりして、だんだんとヨレてきてしまうのかなあ☆



ファントム登場

「私の宝ものに」の村ファントムの声、今日は声量もあって、とっても良かったです。
むやみと伴奏から遅れる(正確に言うと遅らせる☆)こともなく、安心して
聞けました。ただ、この下手側の席だと鏡の面は見えるけど、
ちょうどファントムの姿は見えないんです。
ラウルと同じで「誰なんだ、この声は」状態(笑)。



オペラ座の地下

村ファントム、今日はお休み明けということもあるのでしょうか、声の調子が
すこぶる良さそう。あまり調子がよくない時は「優しい夜 やすらぎの夜」のところが、
若干かすれるようですが、この日は綺麗に高音を出していらっしゃいました。


当然長く伸ばすところも、ブレスを挟まずに楽々出してる感じ。「きらめく」とか
「妙なる」の低音部がずっしりと厚みをもった独特の美しさで響きます。


初めて村さんの声を聞いたとき、「深紅のビロードみたいな声だなあ」と思ったことを
思い出しました。その深紅も、漆黒に近いくらい濃いイメージなんですよね、
私にとっては。


あくまで個人的な感じなんですけど、高井ファントムの声には光が、村ファントムの
声には闇がもっとも似合うような気がします。


光といっても、さんさんとふりそそぐ昼間の太陽ではなく、もっと根源的な白い光。
水晶とかダイヤモンドとかそういうものの中にある、清涼感のあるきらめきなのかも
しれません。


村さんの声の闇。
こちらは先に書いたように、漆黒に近い深紅のビロードとか黒っぽい大輪の薔薇の
花びらとか、みつめていると軽い眩暈をおぼえそうな感じ。
罪とか血といった深部の闇を浮かび上がらせるような印象をうけます。
シェークスピアの悲劇とか、スケールの大きい悪役等をインスパイアさせるお声なんじゃ
ないでしょうか。



以前から、ぜひ一度は最前列で村ファントムのアンマスクシーンを、と願っていたので
ようやく実現して嬉しいです。
しかしオルガンに向かうファントムに、2回クリスが手を伸ばしかけるところ、村さんと
村田さんのタイミングがうまくあいませんでした。 ファントム俳優さんの方は、
後ろが全然見えないので、ここ結構難しいよね。


マスクを取られて怒る仕草が、高井さんに比べるとかなりアクションが大きいです。
よろめきつつ左手を大きく振りながら叫ぶ「呪われろ!」は、遠い席から見る人にも
わかりやすいかもしれない。


「業火に焼かれた」の出だし、初めて見たけど目をつぶって歌っていらっしゃるんですね。
いつもってわけじゃないのかもしれませんけど。


「だが、クリスティーヌ」は歯を食いしばるように。


「みにくくゆがんだ私の顔だが」で
目を開けてクリスをじっと見つめながら這い寄り・・。


肘をついてほとんど床に腹這いになった体勢で

「おお、クリスティーヌ・・」

目をきらめかせて手を伸ばしかけた途端、
クリスが息をのむ表情に、小さく苦しそうに 「く・・っ」と、うめいて顔をそむける
ファントム。

見ているこちらも、胸の痛みを感じてしまいます。



イル・ムート

平野さんに代わって今週のコントラルトは井田さん。平野さんに比べると、かなり
しゃきしゃきした印象でしょうか。「私は何でも知ってるわよ!」って得意げな感じで
歌ってらっしゃいます。


カルロッタが、カエル声になってしまうところ、今日は青木フィルマンさん
「皆さま〜」のセリフが早く出過ぎて、石井ビアンジの「カーラ、カーラ」がちょっとダブった
感じになっちゃいました。でも、皆が右往左往している場面だから、かえって
臨場感もあるような☆



オペラ座の屋上

ここの二人はずっと安定してますね。ただ、キスのあとにクリスを抱き上げてくるくる
回すところ、村田さんが「せーの」って感じでぴょんと飛びつくのがはっきりわかるので、
ここはもう少し自然にやって下さると嬉しいな。


エンジェル像のファントムは、座席の関係でほとんど見えず。
ちょっとヒマだったので(笑)2階席のところについている、俳優さんの歌い出し合図用の
点滅シグナルを眺めておりました。
素朴な疑問ですけど、やっぱりアレがないと、プロでもタイミングが
ずれちゃうものなのかなあ?




第2幕



マスカレード

お猿さんグループが今日は目の前。お名前がわからないけど、とっても魅力的な方
ですね。きびきびした動作と、生き生きした表情がキュートです。


暗い舞台の上で、マダムジリーとラウル子爵がファントムの正体について話している場面、手前の幕が上がって、薄い幕の向こうになにか白いものが透けています。
最初はよくわからなかったのですが、これ、カルロッタとビアンジが二人で背を向けて持っている楽譜なんですね。
ということは、かなり前からお二人は待機してらっしゃるということで。私みたいにあまり視力がよくない者でも、最前列ならあれこれ見えちゃうというお話。



支配人のオフィス

クリスティーヌを巡ってあれやこれやとモメるこの場面、個人的に大好きな支配人さんの
苦労がしのばれるところでもあります。


クリスティーヌに「あたし、やりたくない」と言われた支配人's、マイクに入らない声で
「まずいよー」って言ってることがあって、これが私には笑いのツボ(笑)。
今日は口をとがらせて「どうするー」っておっしゃってました。



ドンファンの勝利

「ドンファンの勝利」のメロディは不協和音というか、妙に神経を逆撫でする曲。
もちろん意図的に作られているわけですけど、本来なら音楽の天才で美を愛する
ファントムはもっと美しいメロディを紡ぎ出すことができたはず。
でも、ラウルの出現や世間の迫害に(まあそうされるだけの犯罪も犯してますけどね)
怒り狂って作ったオペラだからこうなってしまったのですね。


村ファントム、黒い衣装で全身を隠してはいますが、心情がよく伝わります。
特に「行く手には 未知の愛のよろこび」のところなどは左手を大きく伸ばして、遠くを
さし示すような動作をなさるんですね。
でも、以前からこうだったかしら?


それに応える村田クリス、「あなたは私を連れてきた なぜ」で目をきらりと
光らせた感じの笑みは、おお、なんて挑戦的なんでしょう。
それまでのクリスティーヌには見られなかった、これは情熱的なアミンタとしての表情。


「心を決めたわ」意志的な足取りで近づき、熱っぽく身体をすり寄せるクリス。舞台の上の役柄とはいえ、扇情的な動作には、ファントムも内心ドキドキものだよね(笑)


銃声がしてクリスが連れ去られるところ、内海ラウルの勢いが強すぎて、ちょっと支配人さん達が押さえそこなった感じになりました。大の男二人で本気出して押さえてる感じが、ちょっと面白いです。


荒井メグの悲鳴、今日は「きゃ〜〜あ!」が尻上がりにならず。
もしかしてダメ出しが入ったのかな。



ふたたび地下へ

緊迫感が続くラストシーン。
ボートの上での「地獄の闇の中に」が迫力ありました。
今日は存分に声を出してらっしゃる感じですね。


村ファントム、三つ巴も先週までの老成した哀愁一色ではなく、
ちょっと若返ったというか(笑)充分に男として、クリスティーヌを求めている感じが
ありました。


前回も思いましたけど、村ファントムはクリスの言葉のひとつひとつに反応する、
表情の演技がホントに細やか。


1幕目での彼は自信にあふれ、嬉しそうなカッコつけが決まってただけに、だんだんと
追い詰められていく2幕目がなんとも哀れで。


もうどうにもならないのに、ラウルの首に縄をかけて愛する人を苦しめてしまう。


「選べ」といいつつ、たぶん結末はわかってる。
それでも一縷の望みにすがるように、焦がれ、願い、あがく、村ファントム。



今日の席は、キスシーンが目の前でした。



「今見せてあげる、あたしの心」
クリスにキスされて抱きしめられるとき、村ファントムの唇がふるえてて・・



胸にキましたね、これは。



張りつめたものがぷつんと切れるように、縄を切ったあとオルガンに手をかけ憔悴した
表情をみせるファントム。




あなたにとって、クリスティーヌはホントに「すべて」だったんですね。
玉座に消えた彼は二度とどこにも現れず、文字通り存在そのものも消してしまった。
そんな印象をうけました。





カーテンコールの村さんはいつものように、静かな笑みを浮かべたご挨拶。
お客様の数は少ないけど、せめて精一杯の拍手をおくりました。




あくまで個人的な感想ですけど、今日は全体を通して、村ファントムの完全復帰と
いっても良いくらいのまとまりだったと思います。



こういう変貌が見られるから、リピーターはやめられないのよね〜(笑)







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