オペラ座の怪人 


                              福岡シティ劇場 1階 S席 E列24番



                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 高井 治  クリスティーヌ 沼尾みゆき  ラウル子爵 内海雅智
  カルロッタ  河合和代    メグ・ジリー 荒井香織    マダム・ジリー 西島美子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ビアンジ 石井健三  ムッシューレイエ 長 裕二
  ムッシュールフェーブル 深見正博

2004年2月20日(金)ソワレ

高井ファントムリターンを誓って1週間。ファントム交代がいつになるかわからないの
で、前日予約でチケットを取りました。

この日、2月としては20度を超える、最高の気温を記録したそうです。
高井さんのリハーサル見学会でのコメントの通り、寒さがゆるんでお客様が増えて下
さると良いのですが。


いつも苦戦する平日ソワレとあって、おそるおそる客席を覗いたのですが、
7割くらいでしょうか。
ちょっとホッとしましたけど、最近全席売切れってあったのでしょうかね。

劇場入口の大看板、残り公演数は「36」となっておりました。




第1幕



「ハンニバル」リハーサル

今日は私にとっては初めてになる、荒井メグ登場。
13日のリハーサル見学でちょっとだけ拝見してるのですが、どんな風に本番を
こなされるのか、楽しみです。


石井ビアンジが声を張り上げるときに、体を左右に細かくゆする様子が、いかにも
欧米人風で良いですね。ほかの役柄の石井さんもぜひ見てみたいものです。


支配人さん登場
前回と違って今日は落ち着いてるというか、ちょっと表情が乏しいなあ。
支配人さん、少々お疲れ気味なのかしら。


カルロッタが去り、「クリスティーヌなら歌えるかもしれませんわ」とメグが
言い出すところ、今までは慌てたクリスティーヌが「え、ちょっと待って。
そんなこと急に・・」って感じにメグを押さえようと立ち上がるという風になっていた
ように思うのですが、今日は荒井メグが沼尾クリスの両手をとって、立たせて
いました。これって、沼尾クリスになってからなのでしょうか。


荒井メグは表情が豊かで、おきゃんなお嬢さんですね。

「シィンク・オブ・ミー」をクリスティーヌが歌いはじめて
「なかなかいけるじゃないか、この子は」となるところ、長レイエの
「これはいいぞ」という表情に荒井メグ、小さく歓声をあげて喜んでいます。
うふふ、可愛い。

親友の大抜擢を素直に喜んでくれる、世話好きで優しいメグ。
ちょっと秋本メグの流れをくんでる感じかな。


お人形さんのような可憐さは、安食メグの方がありますけど、荒井メグは
性格づけが、よりはっきりしてるような気がします。



ラウル登場

内海ラウルのオペラグラスの見方って、ちょっと目を離しすぎ?(笑)

あくまで演技であって実際に覗いているわけではありませんけど、もう少し
それっぽく見た方が良いかもね〜☆


しかし内海さん、ここの表情とっても良くなりました。昨年12月、新登場のころは
あまり変化が感じられなかったけど、最近は「ん?あれは・・」となってから、
だんだんと幼なじみに気づいていく流れがはっきりしてきたように思います。


余談ですけど、実際問題として初恋の人が美しく(またはカッコよくなって)舞台の上で
主役として歌ってるのに出会っちゃったら、ホントに胸がときめくものでしょうね〜。

うしろに座っている人のことも忘れて、ボックス席がぐらぐら揺れるほど拍手をする
気持ちもわからんでもない(笑)


(そういえば昔、スーパーに買い物に行ったら、イトコが「カールおじさん」の
 かぶりものでアルバイトしてるのに会ってビックリしたことがあります。
 ・・・って、なんてスケールのちっちゃい話だ☆)



閑話休題。



クリスの楽屋

「なんて素晴らしいあなた、感激したわ」のところ、安食メグはちょっと音程が
不安定になることが多いのですが、荒井さんはなかなか綺麗です。


クリスがメグを楽屋に誘う仕草、五東さんは顔の横で小さく手招きするの
が可愛くて好き。でも沼尾クリスは普通に身体の前で手招きしてますね。
ホントにちょっとした違いなんですけど、女の子っぽさに差が出るような。



ファントム登場

今週の初めに観劇された方によると、高井ファントム、伴奏より歌がかなり走り気味
だったそうです。
ご本人もおっしゃっていたように、週の初めは体力気力がありあまってるのかな。


今日の高井ファントムは週末に近いせいなのか(?)、歌が走りすぎることもなく、
ほどよい甘さと声量で始まりました。



ザ・ミラー
先日もあったみたいですけど、今までは二人を隔てるガラスが最初半分くらい開いて、
クリスが入る直前に大きく開くという段取りになっていたような気がしますが、今日は
最初からかなり大きく開いていました。
トラブルなのか、単なる変更なのか? 鏡の中は暗い上にスモークもあるし、
見ていて違和感があるほどではないけど、リピーターは「?」となるところでは
ないでしょうか。




オペラ座の地下


もう私、今日は沼尾クリスには目をつぶります。表情が子供っぽいのも、
情感が不足しているのも多少のことは大目に見ましょう。

ていうか、正直言ってほとんど目に入りません(笑)


だって高井ファントム、今夜の甘いことったら!


まさに「スウィート・ビューティ」

歌声もゆったりと麗しく観客を酔わせて下さいます。
ご本人も、そういう気分だったんでしょうか。
髪撫でつけポーズも、身体をすべらせる手がいつもよりゆっくりで。
あードキドキした☆


しかし、こうでないといけませんね〜。


高井ファントムの魅力はやっぱり、あんまり急いだ感じでは発揮しきれません。
村ファントムの歌い方は、ちょっと自分に酔っているように、もたれ気味になるクセ
がありますが、高井ファントムはあまりそういう風にはならない。
しかしこの地下の場面だけは、歌が先走るよりはこんな風にゆったりと優雅に、
ときになまめかしく魅せていただきたいと思います。



見る者の心も体も、甘くとろけさせるような 「The Music of the Night 」。
良い目の正月(笑)をさせて頂きました〜。


これが五東クリス相手だったら、さらにエロティックで良かったんだけど、
もうそれはワガママってやつでしょうな☆



さて、アンマスクシーン。怒ってクリスを追いかけるファントムのガウンが、なんだか
いつもと違うように見えたのですが、気のせいかなあ。色合いとか柄が微妙に違う
ような。
「???」とガウンに気を取られているうちに、ファントムさまは床を這い、クリスを
連れ去ってしまいました。 あらら。



支配人のオフィス

青木フィルマンさんも初日以来の長丁場ですけど、あまり調子の善し悪しを
感じさせない安定したコンディションぶりは素晴らしいと思います。
林アンドレさんの方は時折、気分にムラを感じるんですけどね、ここだけの話☆


今週のリハーサル見学会で、支配人さんが後ろを向いて、手紙を高く差し上げて
見比べるところ、高さが揃っていないというチェックが入ったそうで。
今日はさすが、綺麗に4通の手紙の高さが揃っています。こうして日々、舞台が
磨かれていくわけですね。


皆でカルロッタを讃える場面、支配人さん達は単におだててるんですけど、
石井ビアンジは心の底から愛しいプリマドンナを賛美しています。表情が嬉しそう!
彼女を「カーラ」って愛称で呼ぶのもビアンジさんだけだし、ホントに二人はラブラブ
なんですね。


荒井メグは上手側でマダムジリーに叱られて、シュンとなっている表情がリアル。
ちょっと眉根にしわを寄せて、泣き出しそうな顔をしてママを見上げています。
七重唱も綺麗でした。


「イル・ムート」
港さんのドン伯爵、今日は杖のつきかたがナイスですね。身体の正面に杖をおいて、
ゼンマイ仕掛けみたいに前進してくるのがお客様の笑いを誘っておりました。



オペラ座の屋上

回を追うごとに、内海ラウルの存在感って強くなってますね。私もいつのまにか
内海ファンになってるような(笑)。
沼尾クリスは「史上最もラウル寄りのクリス」という噂もあるようですが、
(つまり「史上最もファントムが好きでないクリス」ってことですか、あぁスゴすぎ☆)
この場面の沼尾クリス、ホントに嬉しそうです。


ただ、「クリスティーヌ、君がすべて」でラウルが手を握ってひざまずく直前だけ、
表情をぼんやりさせるのは、いかがなものでしょうか。


クリスティーヌの心情として、まだここではファントムへの畏れと憧れ、ラウルへの
想いに揺れる不安定な状態のはず。
歌詞にも表現されている、彼女の感情の流れがとってつけたように
なっている印象を受けるのですが。
 



第2幕



マスカレード

最初からずっと、荒井メグに注目してしまいました。表情が明るくて、キュートです。
しかし足が細ーい。 



墓場にて

ファントムの火の玉、今日はいつもより遠くに飛んでました。ショボいとホントに
「子供だまし」で不満だけど、あまり盛大でも心配。
高井さんに限らず、内心ドキドキしてるんじゃないのかなあ☆



警察長官が出てくるシーン。
上手の端で銃を構えているのは、13日のリハーサル見学会でお稽古していた
畠山さんですね。 えらく若くてハンサムな警備隊員さん。
「ここだファントムがいるぞ」の声がするシーン。深見さんに注意されていた銃の
持ち方、正直言ってまだ、視線と銃口が少しあってないみたいでした。
深見さんじゃないけど「ラウル子爵に当たったら大変だよ☆」って感じでしょうか。
でも、声がりりしくて良いですね〜。

銃口から出た煙の綺麗な輪っかを眺めているうちに
この場面終わってしまいました・・・・何をみてるんだか☆



ドンファンの勝利

港パッサリーノ、毎回やたらと慌てていますね。 
今日は後ろからかぶせたマントのフードが、すっぽり石井ビアンジの顔を覆って
しまいました。あわてて後ろからフードを引き上げたら、マイクにさわったらしくて
「ガリガリ」とノイズが。



「The point of noreturn 」

高井ファントムは以前、カーテンを大きく開けすぎて手が届かなかったことが
ありましたけど、今日は反対にカーテンを小さく開けすぎたかな。
ちょっと狭い隙間から出て来られました。いえいえ、笑ってはイケマセン。


ファントムから杯をうけとった沼尾クリス、飲み干したあと「はぁ・・」っと
悩ましげなため息。・・あんがい酒飲み?(笑)
イスの上で身をよじるように体をなで上げるクリス。
村田クリスもそうだけど、スカートが結構持ち上がるのでハラハラしてしまいます。
ファントムが正面から見てないから良いようなものの、ちょっと純粋な娘っ子にして
は淫靡すぎるかもよ、クリス。 



「どんな時でも」と歌うファントムの声が綺麗で哀しい。


銃口が向けられ警察を含めた衆人環視の中で、
クリスティーヌに愛を告白するファントム。

何の罪もないビアンジを殺してまで入れ替わり、いったい彼は
どうするつもりだったのでしょうか。



ふたたび地下へ

ラウルと引き離し、クリスティーヌを手に入れる、そのことだけに
執着していくファントム。

彼女の心を無視してしまうのですから、クリスになじられるのもごもっとも。
日本語は「これがあなたの望んだことね」「飢えた悪魔のえじきのあたし」のところ、
英語のセリフではもっと直接的に「私の体がお望みなの?」というような意味
みたいですから。



狂おしい思いのままに常軌を逸した行動に出る彼は、音楽の天使としての美を失い、
ただただ醜い男に変貌していきます。
「醜さは顔にはないわ」と指摘されるのはそのことなんですね。



それでもファントムは、ただクリスティーヌを求めることしかできない。



「史上最もファントムを愛さないクリス」を見ていると、ファントムの愛、
その救いのなさだけが心に積もっていきます。



高井ファントムの歌声の中にあるきわめて純粋な何か、いつまでもむくわれない何か
がつらく、哀しい。



最後の地下の場面、ファントムはただ怒っていました。



クリスティーヌがファントムにキスをするシーン。
身動きできない内海ラウルが、しゃくりあげる声が聞こえて。


・・なんか、初めてラウルの心情になってしまった。



ファントムもラウルも誰も勝利者じゃない。
ある意味で、「純粋さ」という共通点をもったファントムとラウル。
クリスティーヌという一人の女性を同時に愛したことで、
どれほど多くの人を傷つけてしまったのでしょう。



ボートに乗ってラウルとクリスティーヌが去り、
二人を見送るファントム。


一人ぼっちになってしまったけれど、でも最初から彼はずっと一人だったような。



観劇31回目。
なぜかラストシーンは別の物語を見ているような気持ちになりました。



沼尾クリスのせいばかりではないのかもしれませんけど、
救いのない哀しい気持ちになってしまって。
ファントムとラウルの一途さいじらしさが、今日は胸にこたえました。



ねえクリスティーヌ、もっと二人を愛してあげて。




そんな気持ちになった舞台でした。

・・・でも、それじゃ全く別のストーリーだよね☆





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