・・・前回の観劇から中4日しかたってないじゃないか。
昨年8月、「オペラ座」ハマリたての頃に取ったチケットですが、
一体何を考えてたんでしょう、ワタシ(笑)


でも結果的には「取っててよかった!」って感じの、個人的に特別な観劇になりました。
かなり長いので、ご用は先に済ませておいて下さいませね(笑)



劇場に着いて、エスカレーターに向かうあたりから「変だな」とは思ったんです。
なーんか、えらく人が少ないような。  ホワイエも妙に人影がまばら。
「もしかして」と中に入って思いました。 「うっわ、少な・・」


私自身28回の観劇中でも、ダントツに少ない観客数。
1階2階あわせたら、全体で4割程度の入りではないでしょうか。もしかしたら4割切ってるかも。恐ろしくて、2階に上がってみる勇気はありませんでした(泣)

さすがに前面の中央ブロックは満席だけど、それ以外のブロックは空席が目立ちます。
というか、横にのびる中央通路をはさんだ後方ブロックなんてパラパラのお客様。


今日が初見の人、ビックリしただろうな〜。 
平日のソワレ、以前から苦戦しているのは知ってたけど、千秋楽まで2ヶ月を切った段階でこれっていうのも、ホントに気の毒というか、もったいなくて涙が出そう。 



第1幕



オークションシーン
深見ルフェーブル、一番高いところから客席の状態をみてどう思ってらっしゃるかなあ、なんて余計なことを考えてしまいました。
もちろん舞台のほうは、いつもと同じようにちゃんと進んでいきますけどね。


「ハンニバル」リハーサル
女性アンサンブル、今週は久しぶりに平野万里さんが登場。
丸っこくて、あったかみのある笑顔。和みのキャラクターで大好き♪
カルロッタの衣装の裾を直していて、コケちゃうところも自然に、ユーモラスに
やってくださいます。


さて、村田クリスの「Think of me 」を聴いているあたりで気がつきました。
いつもと音の響き具合が微妙にちがう?  そっかー、人が少ないからなんですね。

誰もいない体育館とか教会に行くと声の響きが違う、あの感じ。
いつもの半分以下の人数となると、こんなに違うものなんだなあ☆


それからもうひとつ感じました。   静寂の濃さ。
人が多ければ、いつも誰かの咳払いや囁き声がしたり袋がガサガサしたり、
シーンとしているようでも人の気配に満ちていますが、今日はそれがあまりありません。

たまたま最前列で目の前に人がいないせいもあって、まるで自分一人が座っているような錯覚に陥る瞬間があるほど。


この集中感はすごいです。 小劇場ってこんな感じなのでしょうか。


しかもこの日、観客の質も特徴がありました。
センターブロックは若い人より中高年層の人が若干多かったのですが、たぶん初見の
お客さまが多かったんでしょう、とにかく反応が素直で初々しい。
コミカルシーンでは声を出してよく笑ってくれるし。


この観客が、俳優さんの演技に影響を与えてくれたように思います。




クリスの楽屋
バレエの女の子たちの、ドガの絵のような象徴的な踊りも毎回楽しみ。
音楽に合わせた構成がよくできているなあと感心してしまいます。



ファントム登場

最初に浮かんだ、この日の感想。
なんか、今日の高井さん好きだなあ・・


いえ、今までももちろん好きだったんですけど、お客の入りの少なさに、肩の力が抜けたのか、それとも逆に気合が入ったのかわかりませんけど、先週の高井ファントムとは違ってました。


何がどうだとうまくいえないけど、緩急自在というか、彩りが豊かになったというか。
歌も演技も、メリハリがはっきりしてたような気がします。


それと、先に書いたように、今日は歌声の響き具合が微妙に違うんです。
特にその違いがきわだった感じがしたのは、地下のシーンになってから。



濃い静寂の中で響く高井ファントムの声。



誰も知らない「音楽の王国」に君臨するのは燕尾服に仮面の謎めいた男。
その歌声はこの世のものと思われぬほど美しく官能的で、
クリスティーヌを地下深くに誘いこんでいく。


さんざん知り尽くしたこの設定が、今夜は現実のもののように感じられます。




地下の閉塞感と夜の静寂。
闇を支配するファントムの歌声だけが、クリスと観客の心をふるわせています。





高井さん、お声は絶好調ではないかもしれません。
でも今までで一番好きな「Music of the night」になりました。




支配人のオフィス
さて、やたらと反応が素直な今日の観客、「プリマドンナ」の七重唱なんて皆真剣に
感動してるので、「よし、もう戦いは避けられない」あたりから拍手してます。

逆にいうと、段取りをほとんど知らないってことなんでしょうね。
ラストの「歌え」まで待たないんですから(笑)


いったん幕が降りて「切符は全部売り切れているから・・」のセリフが流れるあたりも、
「すごいねー」の声が聞こえるし。

なんか大衆演劇のノリというか、人数が少ないせいか和気あいあい。


「イル・ムート」になると、もう大変(笑) あれだけウケたら、そりゃあ
気合いも入りますって☆

アンドレさんがバレエに巻き込まれるところなんてもう大爆笑です。
おもわず、林アンドレがつられて一緒に笑いながら袖にハケて行っちゃうし、
青木フィルマンも「事故なんです〜」の両手をプルプル震わせて、なんか妙な
ハイテンションになってきました。    面白ーい☆

1幕の最後でも本日のお客さま本領発揮(笑)
シャンデリア落下前、「イルムート」カーテンコールで流れる「拍手音」のテープにも
「ここ拍手するとこなの?」って感じに反応して、皆素直に拍手してました。
あはは、ホント可愛い。



さて、順番が前後して失礼。ちょっぴり話を前に戻させてくださいませ。




オペラ座の屋上

そんなこんなで、今日もまた、ここの印象が薄くなっちゃいました(笑)

内海ラウル頑張ってるし、登場当初に比べると格段に良くなったと思うのですが、
私にとっては、どうもクリスに「恋してる」印象が薄いんですよね〜。

まだ歌と動作の段取りで精一杯で、ラウルの気持ちでクリスを見てないというか。
優しい笑顔も「子供を見つめる若いパパ」のままじゃダメなんですよ。男としてクリスを求めてる感じがないと。・・いえ、あんまりオオカミ男になってもらわれても困りますけど(笑)




エンジェル像のファントム。
「愛を与えた」のファルセットが、高く高く綺麗です。


でもそれ以上に、この日の高井ファントムにズキンときたのは
「クリスティーヌ・・」のささやき。


このシーン、消え入りそうな声で、つらそうにクリスの名をつぶやくという
イメージだったのですが、この日の高井ファントム、
2回目は「クリスティーヌ!」って呼びかけたんです。



それは愛するクリスティーヌへの悲痛な問いかけ。




・・なぜ・・クリスティーヌ・・・・なぜ?・・




うん、そうだよね、納得いかないよね。


「音楽の天使」としてあれほど彼を崇拝し、信頼してくれたクリスティーヌ。
歌声を授け、プリマドンナとしての道も開いてやり、すべてを彼女に捧げているのに、
それでも幼なじみだというだけで、たやすく他の男のものになってしまうなんて。



この場面は、普通の男には与えられないものを自分なら与えられる、
そんな自負があったファントムの、「音楽の天使」としての翼が
無惨にもぎ取られる瞬間なのですね。


だからこそ「許しはしないぞ」の声は、もはや「音楽の天使」ではなく、
この場面以降の彼は堕天使としての行動を取るようになるわけで。


マスカレードでドクロの「赤い死」に扮し、墓場の闇から呼びかける「死の天使」になる。


その流れの必然が、はっきりと感じられました。




第2幕




マスカレード
いつでもこの場面は、夢のように綺麗ですね。

皆が楽しそうにしている新年のパーティ。
その中で「赤い死」は、力強くまがまがしく立ちふさがります。
「ドンファンの勝利」のスコア、林アンドレが取り落としそうになりました。
でも、かえって皆が彼を恐れているリアリティがあるような。



ドンファンの勝利
ピアノでのお稽古シーン。
長レイエ「だいたい、いいんだけど」の解釈が喜納さんとは
違うような気がするんだけどな〜。


喜納レイエはビアンジに「違う!」って厳しく出ようとしてカルロッタに睨まれ、
あわてて「だ、だいたい、いいんだけど」と取り繕って「・・・でも違うんです!」で
こっそり本音を漏らしてる感じ。


「なかなかの専制君主」といわれつつ、実際にはわがままなプリマドンナや支配人、
現場のあれこれやら芸術家としての誇りやらの板挟みになっている、あわれな
中間管理職なんですね〜。
長レイエは、そんな彼の人となりを感じさせるまでには、
まだ至らないような気がします。



墓場にて
村田クリスも絶好調ではないのでしょうが、十分に綺麗で可憐な歌声を
聴かせてくれます。


会場が暗くなると、またあの静寂が。


この日のお客様、コミカルシーンでは思いっきり笑うけど、シリアスなところでは
息をのんでいるように静か。皆、真剣に見入ってるようです。



・・今日は、舞台の上と同じくらい客席の話題が多いですね。
実はこの直後も、反応が素直で初々しい今日のお客様に私は大ウケ。
シリアスな場面なのにスミマセン。

でも「宣戦布告だ!」のあとの閃光と花火に、
あれほど大きなどよめきがおこったことが、かつてあったでしょうか(笑)
人数はいつもの半分なのに、どよめきは倍ですもん。
暗転の間、「わー」「びっくりしたー」の声に、
「ここはファミリーミュージカルか!」ってツッコミたいくらい☆
笑い上戸の私はもう笑いをこらえるのに必死でした(>▽<)




「The point of noreturn」

今日の高井ファントムは、緩急のメリハリがはっきり。
あくまで男性的に激しくクリスティーヌを求めています。

このところちょっと弱いかなと思っていた「未知の愛のよろこび」のところも、
今日は充分に力強く歌っていらっしゃいました。



そして、また銃声が。ごめんね皆様、ビックリさせて(笑)



ふたたび地下へ。

いつも通りの三つ巴の激しい応酬、生きるか死ぬかの修羅場が展開されて、
クリスティーヌの決意が、最後にファントムをうちのめします。

彼女のキスに応えることもなく、立ちつくすファントム。



高井ファントム、今日はなんというか、恋に狂った「死の天使」から、ひとりの人間に
戻ったあとの表情が良かったです。
オルゴールを見つめる彼の目は、静かにおだやかな色に戻りつつあるようで。



戻ってきたクリスティーヌを見つめる「I love you」は、
このうえなく優しい旋律。

彼がそっと、クリスの手を包みこむように触れるのを見たとき、「ああ、あたたかい手だ」
と思いました。

今まで高井ファントム20回近く拝見しているのに、はっきりと手の温度を感じたのは、
初めての経験。



愛を求め、愛を知った男が、いとしい彼女へ永遠の別れを告げ、
最後に愛の言葉を贈る。



そんな結末の自然さが、観ているこちらの胸にも、悲しいけれどある意味で
「よかったね」と言える印象を残してくれたように思います。




今回は、ずいぶんと片寄った観劇記録になりましたが、出演者の皆さんと素晴らしい
お客様に心から感謝します。


よい舞台をありがとうございました。



・・って、まだ千秋楽じゃないってば(笑)







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                  オペラ座の怪人 


                              福岡シティ劇場 1階 S席 B列15番



                      当日のキャスト



  オペラ座の怪人 高井 治  クリスティーヌ 村田恵理子  ラウル子爵 内海雅智
  カルロッタ  種子島美樹    メグ・ジリー 安食智紀    マダム・ジリー 西島美子
  ムッシューアンドレ 林 和男   ムッシューフィルマン  青木 朗
  ウバルト・ビアンジ 半場俊一郎  ムッシューレイエ 長 裕二
  ムッシュールフェーブル 深見正博

2004年1月29日(木)ソワレ