好きで好きで仕方がない

 けれども、それを告げる事も
 けれども、それを悟らせる事も

 口にしてはいけない
 行動に出してはいけない

 それは―――まるで拷問だと思った










片想い【9】











「お邪魔しまーす」


 きちんとご挨拶をして、快斗は工藤邸にお邪魔する。
 快斗は荷物を持つと、新一を先導する様に先に歩き、広い工藤邸を迷うことなくリビングへと辿り着いた。

 そうして、荷物を持ったままリビングを抜けキッチンへと移動すると、買ってきた物で直ぐに食べたり飲んだりしないだろう物を冷蔵庫へとしまっていく。
 ついでに珈琲でも淹れてやろうと、戸棚から必要な物を取り出す。 


「なあ、黒羽」
「ん?」


 そんな快斗を後ろから眺めていた新一は、複雑そうな表情を浮かべる。


「何回入った?」
「え…?」
「うちに何回入ったかって聞いてんだよ」
「いや、俺工藤の家何度もお邪魔してるじゃん」
「そんな事聞いてんじゃねえよ。俺が居ない間にお前絶対うちに入ってるだろ」
「え、えーっと……;」


 しまったと思った時には既に遅し。
 確かに何度もお邪魔した事があるとしても、快斗が快斗として訪れた事があるのはリビングまでだ。
 飲み帰り+カラオケで疲れているだろうから早々に珈琲でも淹れて寛がせてやろうと思ったのが失敗だった。
 勝手知ったるとばかりに色々してしまった自分の行動の異常さに、快斗が今更ながらに気付いても今更仕方がない。

 そんな快斗に新一がそんな質問をしたくなったとしても仕方がないだろう。


「正直に言えよ。別に怒んねえから」
「……えっと……資料調べに1回。それから、名探偵の生存確認に1回…それから……」
「何だよ、その生存確認って;」
「いやだってさ、暫く姿が見えない時期あっただろ?」
「ああ…。あの時か…」


 組織を潰して。
 薬のデータを手に入れて。

 コナンから工藤新一へと戻る段階で、新一は暫くの間姿を消した。

 それは組織の残党の処理だとか。
 身体が戻った後のデータの採取だとか。

 そういう諸々の事情があった為ではあるが、その時の新一の居場所は博士と哀しか知らなかった。
 両親すら、幼馴染すら知らなかったのだ。
 だから彼が新一の居場所を掴める筈はなかったのだが…。


「お前、さり気なく心配してくれてたんだな」
「心配するに決まっているでしょう? 私の好敵手は名探偵だけなんですから」


 一瞬にして夜の雰囲気を纏ってみせる快斗に新一は苦笑を浮かべる。

 世間じゃ怪盗紳士とか、世紀末の魔術師とか、そんな御大層な通り名を頂いている怪盗。
 その怪盗がそこまで自分を気にかけてくれているかと思うと、心が熱くなる。
 そして、それと同時にそれが『自分』ではなく、あくまでも『探偵』に向けられている事に、酷く複雑な思いを抱える。

 彼が気にしてくれているのは『名探偵』としての自分。
 彼が気にしてくれているのは『好敵手』としての自分。

 だからこそ思う。
 彼に認められる為には――――自分はいつまでも『探偵』で居なければならないと。


「そんな事言ったら白馬が泣くぞ?」


 照れ隠しか。
 複雑な思いを打ち消したくてか。

 少し茶化してそう言えば、快斗はあからさまに顔を歪めて見せた。


「別に白馬はいいって…;」
「何でだよ。俺より白馬のがお前を追ってる年数は長いだろ?」
「いや、そうだけどさ…」
「だったら、白馬も『好敵手』に入れてやれよ」


 クスクスと笑ってそう言えば、じろっと睨まれる。


「工藤。面白がってるだろ?」
「しょうがねえだろ。面白いんだから」
「工藤!!」
「わあった、わあった。もう言わねえって」


 むぅっと眉を寄せた快斗がとても面白くはあったのだけれど、そのぐらいでやめておくことにした。
 これ以上虐めては後で何を言われるか分らない。


「ま、言わないでやるからさっさと準備しろよ。うちの構造も知ってるみたいだしな」
「うっ……;」


 そう言われてしまってはそれ以上何かを言う事も出来ずに、溜息を吐きながらも食器棚からいくつかの食器を取り出すと、さっき買ってきたおつまみ類を綺麗に盛りつけていく。
 食器が良いせいか。
 はたまた快斗の盛りつけのセンスが良いせいか。
 コンビニで買ってきたつまみの割には中々様になっている。
 つまみを盛り付けた皿と、買ってきた缶チュウハイをグラスに注いでそれをソファーテーブルに乗せる。
 女王様宜しくソファーに横になってそんな快斗の様子を見詰めている新一に、はぁっと少し溜息を吐きながらも、快斗は黙々と用意をする。
 

「黒羽。ワインは?」
「はいはい。今持ってきます;」


 何だか完全に弱みを握られてしまった;
 今日はきっと思う存分使われるに違いない。

 渋々ワインセラーからワインを選びだしてくる。
 それこそ売る程あるワインの中には、そっちの道の方々が喉から手が出る程欲しいであろうワイン達がゴロゴロしている。
 流石は工藤邸。
 流石にそんなお高いワインなんぞは頂けないからその中から、なるべくなるべくお安そうなワインを選び出す。
 それでも、とてもとても大学生が飲める額のワインではないのだが…。


「工藤。ワイン持って来たよ」
「ん」


 いつの間に持ってきたのか。
 リビングへ戻って来た快斗が見た時には、ソファーで悠々寛いでいる新一の手にはホームズ(研究本)が持たれていた。


「ホント、ホームズヲタク……」
「何か言ったか?」
「いえ。別に」
「つーか、黒羽」
「ん?」
「何遠慮してんだよ、お前」


 どうやら本に集中していても悪口は聞こえるらしい。
 本をぱたんと閉じてテーブルの隅に置いた新一は、快斗の持ってきたワインに視線を移すと不満げにそう言った。


「遠慮って…」
「お前、安そうな銘柄ばっかり持ってきただろ」
「いや、安そうって言ったって…コレだって普通の大学生は絶対手出せないレベルだよ?」
「馬鹿だな。こういう時だからこそ高いの飲んでやろうって気にならないのか?」
「いや、俺そこまで厚かましくなれないんだけど…;」
「……ホントそういうとこは謙虚だよな、お前って」


 「まぁ、いいか」なんて言って、少しは動こうと思ったのか、とりあえずワイングラスを二つ持ってきた新一の横で、快斗は何処からともなくソムリエナイフを取り出してみせる。
 手慣れた様子で何本かあるワインの中の一本を空ける快斗に、新一は感心半分、呆れ半分の溜息を吐いた。


「お前、出来ない事とかないのかよ」
「いや、これぐらいは別に出来て普通でしょ」
「普通ねえ…」


 まあ、存在自体が普通じゃない奴だし。
 それぐらいで驚く事はないと思い直して、新一は注がれていく赤い液体を眺めた。

 流石エンターテイナー。
 注ぎ方さえ様になっていて、何だか嫌味なぐらいだ。


「お前は存在自体が嫌味だよな」
「おい、工藤! 何だよそれ!」
「いや、同じ男から見ても格好良いなんてホント嫌味……」
「……ふーん♪」


 言いかけて、そんな新一をにやにやと見詰めている快斗の視線に気付いた新一は慌てて口を閉じた。
 が、時既に遅し。
 そりゃもう、にこやかーな笑みを快斗は新一に向けた。


「俺ってそんなに格好良い?♪」
「べ、別にそんな事…」
「言ってたじゃん。さっき。『同じ男から見ても格好良い』ってvv」
「ぅっ……;」


 確かに言った。
 確かに言った…が、しっかり人の言い方まできっちり真似して下さるのはどうかと思う。


「もぅ、工藤ってば。俺の事大好きなんだねーvv」
「っ―――!」


 思いっきり洒落にならない事を言われて。
 尚且つ調子に乗った快斗の腕の中に抱きこまれる様な形になって。


 そりゃもう―――新一の頭の中は大パニックだ(笑)



「ホント、工藤ってば俺の事よく見てるし。つーか、マジ俺の事好きなんじゃない?♪」
「ンな訳あるか! このバ怪盗!!」


 べしべしと快斗の胸を叩いた所で、そんなモノで彼がびくともする筈がなく。

 背中に回された腕から伝わる温もりとか。
 余りに近くに感じる吐息だとか。

 快斗の存在が余りにも近くて、新一は眩暈がしそうだった。


「もぅ、そんなに可愛くない事言うのはこのお口かな?」
「―――!!」


 幾らカラオケで多少抜けたとはいえ、相手は酔っ払い。
 多少スキンシップが普段からある快斗である。
 それが酔いで助長されていても不思議ではない。

 そう、不思議ではないが、少し離された身体に安心した所で、茶目っ気たっぷりに言われたその言葉と共に新一の唇に快斗の人差し指が触れた。
 その感触に思わず呼吸が止まるかと思った。


「ば、馬鹿!! んな事すんじゃねえ!!///」


 余裕なんてなかった。
 過剰反応過ぎるのなんて分っていた。

 それでも頬に集まった熱を散らす方法なんて他に分らなくて、新一は快斗を思いっきり突き飛ばしていた。
 そんな風にされても、流石は怪盗。
 みっともなく後ろに倒れこむ、なんて真似はせずに、勢いで新一から少し離れたぐらい。


「んもぅ、工藤ってば照れ屋さんvv」
「照れ屋じゃねえ! 当たり前の反応だ!!」


 叫びながらも、必死に自分の動機を押さえて。
 自分の余裕がない事なんて悟らせないように、新一は快斗を睨みつけた。


「馬鹿な事言ってないで、さっさと飲むぞ!!」
「別に馬鹿な事言ってる訳じゃないんだけどなぁ…」
「いーから、早くグラスを持て!」
「はいはい」


 そんな新一を当事者の快斗は微笑ましい気持ちで見詰めながら、グラスを持ち上げた。

 全く、こういう事に真面目な探偵君は免疫がないらしい。
 少しからかっただけなのにこんなにも顔を真っ赤にしてしまうのだから、本当にからかい甲斐があるものだ。


(ホント工藤ってば、こういうとこ小学生か中学生みたいだよなー。何かホントからかい甲斐あるし♪)


 新一が聞いたらきっとかなり怒りそうな事をのほほーんと考えながら、ワタワタしている新一を眺めたりして。
 それはかなり結構楽しかったりするのだが…。


(こんな風に照れ屋さんだからきっと蘭ちゃんとも中々進展しないんだろうなぁ…;)


 同時に、新一にしてみれば余計なお世話とも言える事を考えていた。


「ほら、黒羽!」
「はいはい。じゃあ、乾杯v」
「…乾杯」
「こら、工藤。そんな不満げに言うなって!」
「不満げに言わないで今の状態でどう言えって言うんだよ」
「もう、工藤ってば…;」


 照れ隠しの如く少し不機嫌を装って見せる新一に、快斗は内心で溜息を吐く。


(もう、照れ屋さんとか言ってらんないなぁ…。早く蘭ちゃんとくっつけないとなー…。俺も彼女作れないし;)


 そんな風に考えながら、快斗がワインに口を付けた事など、その時の新一は知る由もなかった。








































「工藤、飲み過ぎ」
「るせー。お前が悪い!」


 びしっと人差し指で指さして下さる新一の目は若干据わっている。
 『さっさと注げ』なんて言われて、快斗は仕方なく新一の空いたグラスにワインを継ぎ足してやりながらも、余りに早いペースに眉を顰める。
 そんな快斗などお構いなしに、新一は注がれたソレも早速空けてしまう。
 流石にそんな新一を快斗が咎める。


「こら、工藤」
「いーだろ。別に俺の家のワインだ。どれだけ飲もうと文句を言われる筋合いはない」
「そりゃそうだけどさ…」
「分ったら、さっさと注げ」
「はいはい。分りましたよ、女王様」


 渋々注がれたワインも、早々に飲みほして。
 新一は内心で悪態付く。


(ばーろ…。飲まないでやってられっかつーんだ!)


 飲み過ぎだと言われたって、それはひとえに快斗のせいである。

 幾ら飲んでいたと言ったって。
 幾らノリだとは言ったって。
 あんな事をする快斗が悪い。

 全くもって、飲まなきゃやってられない。


「別にどれだけ飲んでもいいんだけどさ、工藤の家だし。帰る心配とかないしさ」
「だろ? だったら…」
「でもさ、俺的には工藤の身体が心配な訳」


 ね?、と言って顔を覗きこまれて。
 新一の心拍数がまた上がる。
 けれど、快斗がそんな事に気付く筈がない。


「俺はね、いつも心配なんだよ。工藤ってば無理し過ぎるから」
「別に無理なんてしてねーよ」
「してるよ。いつも無理してる」


 困った様な、それでいてとても優しい笑みでそんな風に言われて、見詰められて。
 新一は呼吸さえ忘れてしまうかと思った。
 その瞳が―――余りにも優し過ぎたから。


「別に、俺の心配なんてしなくたってい…」
「良いわけないだろ。大事な友達なんだから」


 言われた言葉が、新一の胸に詰まる。

 好きで、好きで堪らなくて。
 それでもそれを言葉にする訳にはいかなくて。

 恋人になんてなれないのは分っているから、友達として接する事を選んだのは自分だった。
 恋人になんてなれないのは分っているから、せめて親友になりたいと望んだのは自分だった。


 けれど――――それが今は苦しくてしかたない。


 新一が言葉にできない胸の痛みを誤魔化す様にシャツの胸元を掴めば、すかさず心配そうな快斗の声が返ってくる。


「工藤? 大丈夫? 気持ち悪い?」
「いや、大丈夫だ」
「でも、…」
「大丈夫だって言ってんだろ。酒がたんねーだけだよ」


 そう言って、注げとばかりにずいっとグラスを差し出して注がれたそれに口を付け、新一は顔を顰めた。


「何だよこれ」
「いーでしょ。原材料は一緒だよv」
「……俺はアルコールが飲みたいんだ」


 いつの間にすり替えたのか。
 グラスに注がれていたのは、紛う方なく、グレープジュースだった。


「もう駄目だって。工藤、ホント今日は飲み過ぎ」
「いいんだよ。別に弱い訳じゃねえんだから」
「そうは言ったって…」
「もういい。自分で取ってくる」


 そう言って、新一がワインを取ってこようとソファーから立ち上がった瞬間、視界がグラっと揺れた。


「―――!」
「工藤!」


 衝撃を覚悟して眼を瞑った。
 けれど、いつまで経っても予測した衝撃は襲ってこなかった。
 それどころか、自分の身体が大して傾いていない事に気付いた。

 そして―――自分の身体が温かな温もりに包まれている事も。


「……?」


 不思議に思って新一が目を開ければ、


「大丈夫?」


 心配そうに斜め後ろから自分を覗きこんでいる快斗と眼が合った。
 そうして漸く、自分が後ろから抱き抱える様な形で快斗に支えられている事に気付いた。


「ったく、やっぱり飲み過ぎだって。今日はこのまま大人しく寝な」


 そう言われたが早いか、新一は自分の身体がふわっと一瞬浮いた様な感覚に襲われた。
 次いで気付いたのは、自分が快斗の腕に抱えられた事。
 いわゆる『お姫様だっこ』と言われる形で。


「っ……/// 何すんだよ!! 降ろせって!!」
「だーめ。このまま寝室まで連れてくから暴れないの」
「いい! 連れてかなくていいから!! つーか降ろせ!!」
「駄目だよ。大人しくしてなさい」


 どれだけ新一が暴れても、その程度で快斗が新一を離す筈もなく。
 結局スタスタと歩く快斗に抱えられたまま、新一はどうする事も出来ずに唯々上がっていく心拍数と熱くなる頬を快斗に悟られない事を願うばかりで。
 表面は悪態付きながらも、内心では違う事を考えていた。


(ったく…悔しいぐらい……男じゃねえか…)


 自分だって男だ。
 幾ら細いとか、軽いとか言われたって、ある程度の重さはある。
 それを軽々と抱えあげ、尚且つ暴れたって降ろす様な事はしなかった。

 抱え上げられて気付いたのは、逞しい腕。
 同じ男として悔しいぐらいの快斗の身体を羨ましいと思うと同時に、そんな彼の腕に抱き抱えられた事に気分が上昇しない筈がない。

 好きな相手に抱き締められて。
 好きな相手に抱き上げられて。

 気分が高揚しない筈などない。

 好きだ、と痛切に心が叫ぶ。
 何も考えずに願うなら、このまま時が止まってしまえばいいのにと思う程に。
 この温もりの中に、もう少しだけ…留まっていたいと思ってしまう。

 それが例え―――許されない願いだと分っていても。


「ほら、着いたよ」


 そんな願いとは裏腹に、寝室に辿り着いた快斗に新一はベットへとゆっくりと優しく横たえられる。
 それを寂しいと思ってしまった新一は、慌てて首を振る。


(駄目だ! 快斗と俺は『友達』なんだから……)


 そんな新一を心配そうに見詰めながら、快斗はそっと新一に掛け布団をかけてやる。
 そして、快斗はベットの高さに合わせる為膝を折り、ベッドのふちに腕を乗せその上に顎を乗せると、新一と視線を合わせた。


「待てよ、別にまだ眠く…」
「駄目だよ。良い子だから今日はこのまま寝なさい」
「子供扱いすんな」
「別に子供扱いしてる訳じゃないよ。ホント、ちゃんと寝なよ。最近あんまり寝てないだろ?」
「何で……」


 言われて、ドキッとした。
 確かに最近睡眠不足な日々が続いていた。

 その理由が…目の前に居る本人のせいだとはとても言えないけれど。


「見てれば分るよ。最近の工藤、少し疲れた顔してる」
「別にそんな事…」
「ごめんね。分ってて、俺今日無理矢理工藤の事付き合わせた」


 申し訳なさそうにそう言う快斗に、新一は慌てて首を振る。


「別に無理矢理なんて付き合わされてねーよ」
「ホントに?」
「ホントだよ」


 自信なさそうに言う快斗に、新一は少し笑ってしまう。
 さっきはあんなに大人の男に見えたのに、今はまるで子供の様だ。

 そんな風にくるくると変わる彼の表情は魅力的だと思う。
 そして思う―――こんな彼が自分は好きで好きで堪らないのだと。


「なら、いいんだ」


 新一の答えに安心したのか、快斗はそう言ってそっと新一の頭に手を伸ばした。


「黒、…」
「いいから、大人しく寝てなよ。寝るまで傍に居るからさ」


 ゆっくりと、優しく快斗は新一の頭を撫でる。
 寝かしつけるように、そっと。


「そんな事しなくていい。別に子供じゃないんだから」
「いいだろ。別に子供じゃなくたって、撫でられると安心するもんだよ」


 新一の一番好きな笑みでそう言われて。
 優しく頭を撫でられて。

 嬉しくない筈がなかった。
 ドキドキしない筈がなかった。

 だから―――本当はいけないと分ってはいても、それを拒む事は新一には出来なかった。





「ゆっくりおやすみ。工藤」





 最後に新一の耳に届いたのは――――優しい優しいおやすみの言葉だった。






























to be continue….



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