Hrads or Tails -表か裏か-
ふわり…、と闇夜に漂う白いマント。
とあるビルの屋上に姿を現した怪盗は、周囲の状況を瞬時に見極め、素早く姿を別のものへと変える。
その姿はスーツにネクタイ。髪型はポマードを塗った七三分け。
自主性が無く、上司から言われた事だけを正確にこなす真面目なサラリーマン。
…ただ存在感は薄く、少々根暗な処があり…人との接触は極端に嫌う。
周囲もその根暗さにあまり彼には近寄ってこない。
きっと何処にでもいるようなそんな人物になりきったキッドは、屋上の扉を開け堂々とエレベーターで一階に降り、そのままそのビルの出入り口から外へと出た。
外へ出るには必ず通らなければならない守衛室にいた警備員も、キッドが自社の社員だと信じきっているのか…はたまた、その存在感の無さに、目の前を通過した事にすら気付いていないのか…?
それはともかく、あっさりと外へ出たキッド。
「……オレが言うのもあれだけど、もう少しなんとかした方が良いンじゃないのかねぇ?」
出てきたばかりのビルを見上げ、くすり…と笑みを零す。
警察もまさかこんな処からあの怪盗が出てくるとは思いもしないだろう。
こうして今日も、怪盗キッドの犯行は成功を収める。
手に入れたモノは自分の求めたモノではなかったが…もはや落胆する事も無い。
…馴れてしまった、と言えばそれまでだが、そんな暇があれば一つでも多くの情報を手に入れて犯行を繰り替えすまで。
余計なものに手を伸ばす余裕はない。
目的を達成するまで、他のものに目を奪われてはいけない。
……けど……
「どーすっかなぁ…」
遠くでパトカーが駆け巡る音が響く。
その音を耳にしつつ、人通りの全く無い路地裏で再びその姿を変えると、漸く本来の姿である「快斗」に戻る。
…その姿に戻ると同時に呟いた言葉は──随分前から快斗の中で自問自答してきた言葉…
出会いの瞬間からその輝きに目を奪われた。
どうしても、この手に収めたい衝動を押さえきれない。
自分の信念を一瞬で翻した存在…
「このままじゃ、アイツに気を取られたまま中途半端になっちまう、よな…」
今まではなんとか見ないフリをして誤魔化してきた。
自分の心に蓋をして…気付いていないフリをした。
…それでも、所詮は『フリ』でしかない…
「……ここは一つ、女神様にでも助言を請いますか…?」
そう言って手にしたのは本日の獲物…だったもの。
女神とその使い魔の描かれたクリスタルで作られたコイン。
表にいる女神のつけている王冠にはダイヤが散りばめられ、裏にいる使い魔の両目には毒々しいピジョンブラッド…
「女神が出たら…手に入れる。使い魔だったら、その役割の如く…」
手にしたコインを見つめ、そう自分の中で決める。
…どっちが出ても、後悔はしない。
空中に浮かぶ女神のコイン。
僅かに回転しながら落下し始める使い魔のコイン。
月明かりに照らされて光り輝く様は…彼の瞳のようで──
「──さあ、表か裏か…?」
『15 English titles』 titles Extra. Hrads or Tails -表か裏か-
Author by 桜月 雪花
【桜月様後書き】
短いです。ごめんなさい(土下座)←素直に謝る。
しかもセリフ少ないし…
そして快斗しか出ていない;
…あれ? オレって快斗苦手なはずじゃ…?
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【薫月コメント】
うわぁ〜(///)
雰囲気が〜vv余韻が〜vv
かっこいい快斗君なのですvv
雪花姉…貴方快斗全然いけるじゃないですか!(笑)
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