4月1日、午前0時。
 怪盗キッドの予告時間まで、あと30分…




April 1 -邂逅-





 世間から『江戸川 コナン』と言う存在が消えた。
 前触れもなく、突然──いや。見せていなかっただけで、実際には周到に準備していたのだろう。

 『彼』と共にいた少女もまた、一緒に姿を消したのだから…


「元々、存在しなかった人間。だから消えても不思議じゃない」


 支度を終え、白き衣を身に纏った怪盗が呟きを漏らす。
 そう呟いても納得していない自分がいる。

 それも、『彼』の正体を知っている怪盗ならば当然とでも言うのか…


「お前は今、どこにいる…?」





 …静寂だけが支配する夜のシティホテル。
 そこは去年、怪盗が初めて『彼』と出逢った場所であり…

 なんの偶然か、獲物は違えど同じような展開になった今回の仕事。

 展示されているのは米花博物館。
 そこに置かれている物は、精工に造られたイミテーション。


 ──本物を誘き出すためのデモンストレーション。


 その類似した内容に、怪盗は自らの出現場所を『あの時』と同じこの場所にした。

 運命を感じたあの出逢い。
 信じてなどいなかった「運命」と言う名の存在を認めざる得なかった。
 一生忘れはしないだろうあの瞬間。
 きっと、『彼』もそう思っているだろうと確信している。

 だから…


「どちらの姿でも構わない。「お前」という存在がいるのなら……コナンであろうと、新一であろうと──」


 懇願するように呟いた怪盗の視界に、シティホテルの屋上が映し出される。


 …そして、そこに佇む…人影も──







「──行くの?」

 極力物音を立てずに部屋を出ようとした人物に、その様子を全て把握していた女性が小さく声をかける。
 その声は心地の良い高さであり、しかし何処か、ぴん…とした冷たさを感じる。

「…ああ」

 かけられた声に動きを止めたのは、彼女と然程年齢の変わらない青年。

「まだ病み上がりなんだから、無茶はしないでね」
「いいのか…?」
「止めても聞く人じゃないでしょ、貴方。…まあ、許す変わりに、彼への伝言を頼めるかしら?」
「………」
「その沈黙は肯定を受け取るわよ。──伝言内容は…」



 外出許可を出してあげたんだから、責任持って送り届けなさい。





『15 English titles』 titles 8.April 1 -邂逅-





Author by 桜月 雪花

【桜月様後書き】

 念願の邂逅記念〜♪
 『15English titles』開始時から、これだけは当日更新を!! …と、密かに意気込んでいた桜月サン。

 結構曖昧な表現のまま終らせるのが好きなんです(笑)
 その前後の展開や、微妙な心理描写は読み手の自由。
 だからなのか、1話読み切り系の駄文はこういった物が多い…まあ、受け入れられるかどうかもまた人それぞれですが(爆)


【薫月コメント】
 うわぁv素敵に邂逅記念日を狙ってきましたねvv(妖笑)
 色んな諸事情でこちらでのあぷが遅くなって大変大変申し訳ありません(平伏)

 ふふv桜月様のこういう表現大好きなんですよぉvv
 一人で「ああでもない、こうでもない」と色々考えられる様になっていて、とっても素敵☆
 毎回素敵な読み切りをこうして楽しませて頂いております。

 そして今回は……最後の女史にやられましたっ…!!←やはりそこか(笑)
 怪盗さんは恐らく、きちんと次の日の朝(…)送り届けたんでしょうねえvv(妖笑)


 そして…桜月様の分が終了した時点で………自分が後2個残ってるってどうよι
 なるべく早く消化出来るように頑張ります(泣)


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