その星は地球を廻る衛星。

 半径1738キロメートル。
 質量地球の〇・〇一二三倍。
 表面重力地球の約六分の一。
 地球からの平均距離38万4400キロメートル。

 そんな唯の衛星が新一の瞳に神秘的に映るようになったは、紛れも無くあの気障な怪盗のせい…。








『15 English titles』 titles 12.Moon -月- 









 月を見るのが好き
 あいつが側に居なくても一緒に居る様な気持ちになれるから

 月明かりが好き
 暖かい光りがまるであいつの温もりの様だから

 月の褥で眠るのが好き
 あいつに抱かれて眠っている様な気がするから








「新一ってばほんとに『月』が好きだよね?」


 快斗は新一の眠るベッドサイドに彼を起こさないようにと静かに腰を下ろした。
 あどけない新一の寝顔に目を細めさらさらの髪を優しく手で梳きながら、快斗は返ってこないと解っている問いを投げ掛ける。


「どうしてそんなに『月』が好きなの?」

 今だって月明かりの下で眠れる様にカーテンを引いていないしね?


 自分が仕事で居ない日はいつもこうして眠っているのを知っているから。
 解っているからこそ嬉しくて嬉しくて、口元がついつい上がってしまう。


「ほんとに新一は『月』が好きだよね?」
「…ばーろぅ…月が好きなんじゃねえよ」


 返って来ない筈の答えが返されて快斗はほんの少しの驚きと共に新一の顔を覗き込む。


「あれ? 起きてたの?」

 てっきり寝てるもんだと思ってたのに。

「てめえが起こしたんだろうが」

 ったく、一人で勝手な事ばっか言いやがって。


 寝起きの機嫌の悪さも手伝って不満げに言われた言葉に快斗はわざと首を傾げた。


「間違ってないでしょ?」

 新一は『月』が好きでしょ?

「お前解ってて言ってるだろ?」

 だから余計に質がわりぃんだよ。


 極上の二つの蒼に睨まれて快斗は降参とばかりに苦笑を浮かべる。


「だって新一に言ってもらった事がある訳じゃないしね」

 俺が勝手に良い様に思い込んでるだけかもしれないし。

「ったく、お前は言わなきゃ解んねえのかよ」

 お前がそんなに人の心の機微に疎い訳ねえだろうが。

「新一ってば俺の事買い被り過ぎ」

 俺だって言ってもらわなきゃ解らない事あるんだけど?

「そうか…」


 快斗の苦笑交じりの言葉に新一は少し考え込んだ後、ゆっくりと身体を起こす。


「っと……急に起きたら危ないでしょ?」


 未だ少し寝ぼけていた身体はふらついて再びベットに沈みかけたが、すかさず快斗の逞しい二本の腕に抱き込まれた。
 しかしそれを気にすることなく快斗の腕の中で新一はそっと快斗の頬を両手で包みその双眸で快斗の瞳を捕らえる。


「一度しか言わないからよく聞け」
「うん」

「俺が月を好きになったのはお前と出逢ってからだ。
 俺が月を眺めるのはお前が側に居ない時だけ。
 俺は別に月が好きな訳じゃない。
 お前と月が重なるから月が好きなだけだ。解ったか?」

「うんvv」


 満面の笑みで頷く快斗に満足したのか新一はそのまま快斗に抱き着いてきた。


「今日の新ちゃんてば積極的vv」
「馬鹿。寝るからさっさと抱き枕になれ」
「はいはい♪」


 新一を抱き締めたまま快斗は静かにベットの中へと入り込む。


「これで宜しいですかお姫様?」
「ん…」


 快斗の温もりに既に半分眠りの淵に落ちてしまっている新一の額に快斗はそっと触れるだけのキスを贈る。


「おやすみ新一。月じゃなくて俺が抱き締めてあげるからさ」

 だから俺の腕の中で良い夢を…。







Author by 薫月 由梨香

【薫月後書き】

ごふっ…(吐血)
砂吐きの甘いの書こう〜♪と思って書いて……見事玉砕(爆死)
甘さが中途半端…ι

【桜月様コメント】

きゃぁ──///←また叫んでるよ;
新一サンってば可愛いわっ!
なんだかちょっと乙女チック…
(オレには一生真似出来ないな・泣)
充分甘いですよ!!

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