──私立・鳳雛学園、高等部。


 その名の通り、将来素晴らしい大物になると期待される、特にすぐれた才能をもつ──神童と呼ばれる者達が集う学園。

 小中高の他にも大学・大学院まであり、学園敷地内には膨大な書庫を有する図書館や食堂・スポーツ施設の他にも、病院や銀行・遊楽施設なども点在し…ある種の都市のような状態になっている。
 学園に通う全ての学生は、最低限の衣食住の保証をされる好待遇。
 希望者には無償で寄宿舎を提供し、個人個人の状況に応じて奨学生制度も設けてある。

 小中高は基本的に10のクラスに分かれており、振り分けはアルファベットでA〜J。
 そのうちのA〜Iクラスまでは、学力・能力を均等に選別し割り当てられているのだが……最後のJクラスだけは、各々の学年で最も秀でた生徒だけが集められている。


 その生徒達を、通称『joker』と呼んでいる…



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  Strongest Tradition 〜ROOM 6〜
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 某月某日。

 呼び出しもなくや打ち合わせなどがなく、久々にのんびりとした休日を過ごしていた学園きっての『joker』達。
 1人は有意義にここ最近読めずにいた書籍の山に手を伸ばし、1人は貯まっていた洗濯物を片付けつつ、読書の邪魔にならないようにお部屋のお掃除。

 暫く要請やイベントや打ち合わせ等で時間が取れず、仕方なくもすれ違っていた2人。
 2人で何かをする訳ではないが、同じ空間にいることで自然と頬が緩んでしまう。
 そんな状況が解っているからなのか、いつもは何かと声をかけてくる307号室からの誘いもない。

 ──外は穏やか。小春日和。

 今日も今日とてとても……


「工藤君、黒羽君。ちょっといいかしら(冷笑)」


 ………穏やかな日にはならないようデス;


「志保ちゃん…?」
「どうしたんだ?」

 ノックもなしに開かれた扉と、時に聞こえてきた知ってる声(但しちょっと絶対零度だが;)に、洗濯物を畳んでいた快斗と本日5冊目の書籍に手を伸ばそうとしていた新一が同時に顔を向け声をかけた。
 その仕草は、示し合せた訳ではないのだがタイミングばっちりで、304号室を絶対零度の笑みと共に訪問した志保の表情も僅かながら温かみを帯びる。


 ──どうやら、彼女の怒りは自分達にではないらしい。


 志保の彼等にしか解らないであろう表情の変化に、同時にそう結論つける新一と快斗。
 さり気なく、

「検診サボってたか…?」

 …等と考えていた新一は一安心(笑)。

 快斗と共に生活するようになって改善はされていたが、それでも警察への協力などで不規則な生活を送っている新一は、元々の体質もあるのだろうが少々身体が弱く、すぐに風邪を引いたりしてしまう。
 どうやら免疫力に問題があるらしく、月に1度は志保に定期検診をして貰っていたのだ。


 彼女はアメリカの大学をスキップで卒業し、医学免許を習得していたりする。
 しかし、その行程で色々と事件や確執があり、新一の父親である工藤 優作の協力の元日本へやって来たという…少々問題がある過去を持っている。
 その過去を知っているのは、日本では新一と志保の養父である阿笠 博士。それから、新一から説明を受けた快斗だけ。

 勿論、事情説明の際には志保の了承を取り、同席してもらった上で快斗に説明をした新一。
 しかしその場で、

「志保ちゃんの事情だけ知ってるのはフェアじゃないよね♪」

と、快斗が自分のこと(=キッド)までバラしてしまったのは…新一にとって全くの予想外だった。
 だが、結果としてそれが好感度を上げる事になったのか、それ以来、病院には行けない快斗が怪我をした際には、志保の元で厄介になる──と言うカタチが出来上がったのだった…。




「…で、なんかあったのか?」

 とりあえず部屋に入って貰い、丁度準備をしていた珈琲を振舞った処で、快斗がもてなしの準備をしている間に机の上(全て書籍)を片付けた新一が問い尋ねる。
 テーブルを挟んで対面している落ち着いた色と座り心地をしたソファー。
 それに向かい合うように座っている新一と志保。当然ながら快斗は新一の隣に座っている。

「ええ…ちょぉっとだけ、協力して欲しいことがあるのよ」


 ……「ちょっと」の間に「ぉ」が聞こえたのは気のせい?!


「協力…?」
「オレ達が、志保ちゃんに?」

 あまり自分達に頼ってこない(入手困難なブツを要求する時は別・笑)志保の言葉に、益々訳が解らず首を傾げる新一と快斗。

 普段らしからぬ行動と態度。
 それだけでも充分に首を傾げる代物なのだが…

「あの人の『お気に入り』である貴方達にしか頼めないことなのよ」

 …そう言った志保の言葉に、2人の疑問は一瞬で拡散された…。

「……あの人って…あの人か?」
「ええ」
「お気に入りになった覚えはないンだけどなぁ;」
「事実でしょ?」

 新一と快斗の表情が途端に変わる。
 対する志保も、2人に頼む切欠になった出来事を思い出したのか、心底嫌そうな表情を見せた。

「…今度はナニやったんだ…?」
「あの人…時々おかしなことするからなぁ…;」
「時々?! あの人は存在事態がおかしいのよ!!」

 聞きたくはないが、状況を把握しなければどうにもならない…と新一が尋ねれば、隣で快斗が過去の遍歴(…)を思い出し呟く。
 すると、その遍歴の全てに関わっている(←強制)志保がらしくない声を上げた。

 普段は冷静沈着。クールビューティー(笑)と言われている志保だが…


 …彼の人物が関わると、その認識は180度覆されるらしい。



「──で。ナニやったんだ、ベルモット先生は」



 鳳雛学園高等部3年、情報処理学科担当・クリス=ヴィンヤード。
 情報処理だけではなくコンピュータ関連の学科を全て扱う美人教師。
 彼女のニックネームが『ベルモット』なのは、単に彼女が1番好いているお酒だから。

 そんな彼女の趣味が…

 1.変装
 2.演劇
 3.『お気に入り』で遊ぶこと

 …と、酷く変わっている。

 そしてその『お気に入り』に、志保は元より新一や快斗も含まれている…らしい。

 ちなみに『お気に入り』選別方法は完全に彼女の好みである。
 だいたいは能力的に優秀な人材。基本的には『joker』から選ばれているようだ。
 …たまにリアクションなど面白味だけで選ばれたりもするようだが(笑)。←例として服部 平次氏が上げられる。

 そんな中、彼女に最も気に入られ構われているのが、先程までの会話でお解りの通り…才女であり薬学に詳しい志保なのだ。


「…今回ばかりは我慢できないの。だから…手伝ってくれるわよね?」


 静かな笑みを浮かべ、疑問形には聞こえない疑問形で尋ねてきた志保に、2人は理由も原因も聞けぬまま頷くしか無かった。

 心の中で、穏やかだったはずの休日が潰れた事を悔やみながら…



 ──ちなみに。
 志保がベルモット先生にナニをされたのか…


 …それは、聞かない方が身の為、と言うものです。








【桜月様後書き】
今までにない駄文っぷり…;

由梨香サン! サイト40000hitおめでとうゴザイマスっ!!
遅くなりましたが恒例のお祝い品(笑)をお届け致します。
…が。今まで以上に内容がない話と相成りました(泣)
やっぱり修羅場中に書くのは間違い? それともこの寝不足な頭が問題か?←どっちも。

今回の話で志保ちゃんを出すことは決めていたのだが…どうしてベルモットさんまで出てきてるのでしょう?!←満開予想外。

とりあえず、これから色々と『お気に入り』を掻き回してくれそうな予感をヒシヒシと感じさせてくれる方です(笑)



【薫月のぐふぐふv(妖しい…)】
今回も素敵ブツをありがとうvv
内容がない?とんでもない!めっちゃありまくりで、ディスプレイ前でぐふぐふ言わせて頂きましたv←妖しいからやめれι

今回は…志保ちゃんに加え、ベルモットさんまで登場で、キャストが豪華豪華♪(ほくほく)
しかも「『お気に入り』と遊ぶ」でなく、「『お気に入り』で遊ぶ」に爆笑(笑)
いやぁ、流石は雪花姉。毎回毎回やってくれます♪

ほんとにほんとにおいしいブツを有り難う御座いましたv
と言う訳で、次回も期待してますね♪(なんつー厚かましさι)


そして最後に……あぷが激しく遅くなって本当にごめんなさい(平伏)

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