──私立・鳳雛学園、高等部。

 その名の通り、将来素晴らしい大物になると期待される、特にすぐれた才能をもつ──神童と呼ばれる者達が集う学園。
 小中高の他にも大学・大学院まであり、学園敷地内には膨大な書庫を有する図書館や食堂・スポーツ施設の他にも、病院や銀行・遊楽施設なども点在し…ある種の都市のような状態になっている。
 学園に通う全ての学生は、最低限の衣食住の保証をされる好待遇。
 希望者には無償で寄宿舎を提供し、個人個人の状況に応じて奨学生制度も設けてある。

 小中高は基本的に10のクラスに分かれており、振り分けはアルファベットでA〜J。
 そのうちのA〜Iクラスまでは、学力・能力を均等に選別し割り当てられているのだが……最後のJクラスだけは、各々の学年で最も秀でた生徒だけが集められている。


 その生徒達を、通称『joker』と呼んでいる…




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  Typhoon Warning 〜ROOM 3〜
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 某月某日。
 今日も今日とて、とても穏やかな快晴に恵まれた……木曜日。

 時間帯はお昼。平日なので、当然この日は学校。
 珍しく(今のところ)呼び出しのない新一は、ルームメート(兼恋人)の快斗と共に、屋上でお昼ご飯中…

 …ちなみにお弁当の中見は快斗特製の栄養メニューである。


「快斗…これなんだ?」
「ん〜? ああ、これはジャガイモのハンバーグ」
「………」
「あれ? もしかして気に入らない? 美味しくない?」
「いや…、触感が違ったから……美味いし」
「ほんと? よかった♪」
「……快斗、お茶///」
「はいは〜いv」


 ……ご馳走様でした。もうお腹一杯だよ、てめぇら。…畜生。←?


 何処でもとっても(強調)仲の良いお2人サン。
 快斗がお弁当を作っているのも、いつ呼び出されるか解らない新一に、その際ちゃんとお昼を取ってもらうため。
 手作りのお弁当を渡せば、普段は食事を抜きがちな新一でも、余程の事がない限りきちんとそれを食べる。
 そんな思惑の元、毎日お弁当を作っているのだが…当然。こうして一緒に食べれるのなら、それに越した事はない(笑)。

 とても穏やかな陽射し。
 お弁当を食べた後は、ここでのんびりするのも丁度良い。

 黙々と食べている新一を優しい眼差しで見つめながらそんな事を考えていた快斗。

 しかしまあ、なんと言うか…
 此処は学校。しかも小・中・高・大学・大学院…と揃っているマンモス校である。
 当然ながら2人以外にも山ほど…ウザイくらい沢山の人間がいるわけであり…


「見つけたわよ、黒羽 快斗ぉぉぉぉっぉ!!!」


 ……穏やかな空気など、この場においては壊されるだけの運命にあるのだ。(違)



「げ…;」
「…生徒会長?」

 バッターンっ!! と激しい音を立てて開かれた扉の前にいるのは、1人の女生徒。
 その姿に、快斗は心底嫌そうな表情を見せ、新一はきょとん、とした顔でその人物の役職名を口にした。


 ──彼女は鳳雛学園高等部の生徒会長・薫月 由梨香。
 3年A組在籍。運動はダメだが成績優秀(笑)
 その人柄で2年生の時から2期連続で生徒会長に就任した人物。

 しかし、それは人柄だけではなく…かなりの「やり手」と認識されている…らしい?


「あ。新ちゃんだ♪」
「その呼び方は止めてくれ…別の誰かを思い出す;」
「え? でも志保が良いって…」
「………」

 由梨香は新一の姿を認識するなり、それまでの鬼のような形相(…)から一転。にっこりと微笑み2人の元へと歩み寄る。
 新一がその呼び方に異議を唱えれば、きょとんとした表情で2人の姉的存在である女性が許可をくれた旨を伝えた。
 その答えに新一は何も言えなくなり、黙ってお弁当の残りを消化し始める。隣では快斗も苦笑い。

 件の女性の名前は宮野 志保。
 3年J組在籍の『joker』であり、薬学のエキスパート。
 そして何故か、生徒会長(つまり由梨香)と仲が良い。
 彼女は2人の「姉」でもあるが、同時に絶対的な存在でもある。
 なんたって、彼女に逆らえば………恐ろしくて考えたくもない(泣)←どんなことされるンだよ;


「……で。オレになんか用?」

 新一との穏やかな時間を(文字通り)壊された快斗は、少し不機嫌さを滲み出しながら問いかける。
 普段なら鉄壁のポーカーフェイスでそんな事は微塵にも感じさせないのだが…

「ごめんなさいねぇ? 新ちゃんとの逢瀬を邪魔しちゃってv」

 …全てを承知済みの由梨香である。隠すだけ無駄、というものなのだ(笑)
 まあ、快斗がポーカーフェイスをする必要がない程、由梨香に気を許している…とも言えるのだが…。

「げほ…っ!」
「ぅわ! 新一大丈夫?!」
「快ちゃん! お茶、お茶!!」

 由梨香の「逢瀬」発言に思いっきり反応を見せる新一サン。おかずが気管に入った模様;
 それに快斗と由梨香がお茶を手渡したり、新一の背中を擦ったりと大慌て。

「新ちゃん、気を確かに! 傷は浅いぞ?!」
「…由梨香ちゃん…;」

 傷ってなんだよ、傷って…

「いや、なんとなくノリで……てへ☆」

 快斗は脱力気味に名を呼べば、新一も視線だけで突っ込みを入れる。
 涙目の新一からの視線に多少動揺(笑)しながら、可愛らしく(?)頭をかく由梨香。
 その間にもどうにか落ちついたのか、

「…はぁ」
「大丈夫? 新一」
「ああ…、んで。生徒会長は何しに来たんだ?」

と、話を元に戻した。
 快斗も早く話を終らせたいのか、新一の話題転換に素直に乗る。
 そんな2人からの視線を受け、由梨香はこきっと首を傾け、

「ん〜? ………ああ、そうそう」

 思いっきり妖しげな間を置いて手を叩いた。

「……忘れてたな、アレ」
「まあ、由梨香ちゃんらしいけどね;」
「う、うるさぁい!!」

 小声で(?)確認し合う2人に顔を赤くした由梨香が叫ぶ。

「とにかく! 今日の約束忘れてるデショ、快ちゃん!」

 恥じを吹き飛ばすように(笑)本題に入った由梨香。
 目一杯力強く、快斗に向かって指を差す。

 …効果線付きのベタフラ(筆ペン仕様)でも思い浮かべてください。(ぇ)

「は? 約束?」
「そーぉよ」
「……?」

 指を差され、自分で自分を指差しながら聞き返す快斗に、由梨香はだいぶ偉そうな(?)仕草で頷く。
 しかし全く持って思い当たらない快斗は、暫し考えるもすぐに頭を傾げる。
 ちなみに自分には関係ない話だと解釈した新一は、中断していた食事を再開…

「忘れたとは言わせないわよ。先週の水曜日」
「先週の水曜…?」
「そう。あーたは学校にあるものを持ってきたわよね? 学校だけならまだしも、事もあろうか私の神聖なる生徒会室にっ!」

 そこまで言われて、快斗は先週の出来事を思い出す。

 確か先週は…マジックショーの関係で遅刻や早退を繰り返してて…水曜日はちょっとしたイベントのあとで学校に来て、それから……?

「──あ。」

 口から漏れた呟きに慌てて手を押さえる。
 …が。既に漏れた後。時既に遅し。

「思い出してくれたか。そーか、そーか(微笑)」
「いや…、あれは……;」
「確かに。快ちゃんも色々と忙しいだろうから仕方ないでしょうけど?」
「あはは…; 解ってくれて嬉しいよ;」

「……だからってどーして生徒会室であーたの鳩がご休憩なさっていたのでしょうか?(爽笑)」

「………」
「…………」
「…………スミマセン;」


 ──話は先週。
 どうにか昼前に学校に来た快斗は、マジックで仕込んでいた鳩達をそのまま連れてきてしまった。
 流石に教室に連れ込むのは(新一が怒るから)ヤバイ。
 しかし寮まで戻る時間も皆無に等しい。←新一とお昼が取れなくなってしまうから(爆)
 鳩達に帰るように促そうにも、今日に限って鳩小屋の鍵を閉めている。
 そして色々考えた末に、快斗は日頃仲の良い(?)由梨香が使っている部屋(=生徒会室)に、お昼の間だけ鳩達を入れておくことにしたのだ。
 昼を新一と一緒に過ごせれば、その後授業に遅れようが寮に戻れば良い。
 そう考え、いつもの手段(…)で生徒会室の鍵を開け、鳩達を放っておいたのだが…

 …その日。疲れていた快斗は、新一の傍だった事もありお昼の後ですっかり寝てしまい、新一に起こされそのまま授業に出席。
 放課後まで学校で過ごし、その後呼び出された新一を見送って帰宅。


 ……つまり。ものの見事に鳩の存在を忘れていたのだ;


 当然、真面目(…)な由梨香会長は、放課後の職務をする為に生徒会室へ赴き…


「…あの後、私は悲惨な生徒会室を掃除したのよ…?」

 いくら優秀で人に懐いている鳩とはいえ、イキモノである。
 そりゃ、何がどうなるか……解りますよね?

「はい…;」
「そのオトシマエ、今日つけてくれるンじゃなかったかしら…?」
「…はい。確かにそう言いました;」
「そうよね? まさか忘れてた、何てことないわよねぇ?」

 ……スミマセン。思いっきり忘れてました;←心の声。


「──快斗」

 静かな(?)睨み合いが(一方的だが;)続く中、それまで傍観に徹していた(我関せずだった)新一が口を開く。

 …どうやらお弁当は全てコンプリートした模様だ。←だから話しかけたのか?

 フォローしてくれるのかと目を輝かせる快斗に、

「…お前の責任だろ。大人しく連れ去られて来い」

と、なんとも冷徹なお言葉が返ってきた。

「あら…良いの? 新ちゃん」
「明らかに快斗のせいだろ、それは」

 だからその呼び方はやめろ。

 あっさりきっぱりと言い切る新一サン。それでも呼び方を改めさせるのは忘れない(笑)。
 どうやら今の新一サンにとっては、快斗サンの行方(…)よりもそっちの方が重要らしい。

「まあね。んぢゃ、遠慮なく借りていくわ〜」

 止めないわよv 私くらいしか言わないンだから良いじゃん♪

「晩飯までには返してくれよ」
「りょーかぁい♪」

 既に諦めたのか、それ以上は(呼び方について)何も言わなくなった新一に、由梨香はにっこりと手を振り、そっと逃げようとしていた快斗の首根っこを捕まえる。
 それ(…)をそのまま両手で(力がないから)引き摺り、屋上を後にした。

 その直後、快斗の叫び声が校舎内に響いた…

「…階段、落とされたな…」

 屋上にまで聞こえてきたそこ叫び声に、弁当箱を片付けながら呟いた新一。
 少しだけ心配するものの、

「ま、大丈夫だろ」

と、あっさりと頷くと、そのまま持参していた洋書を読み始める。


 穏やかな陽気に包まれたお昼時。
 珍しく呼び出しのない新一は、そのまま屋上でのんびりと、有意義な時間を過ごしましたとさ♪






【桜月様後書き】
【ちょっと久し振り?なお約束の時間です】

 だいぶ前に「学園の生徒になりたい!!」と言っていた由梨香サンに捧げます(笑)
 同じクラス…って設定じゃ面白みに欠けたンんで、敢えてクラスは別。学年も別にして見ました♪
 その代わり(?)、志保ちゃんと仲良しな生徒会長です(笑)

 ……その後、快斗サンがどうなったのか…それはご想像にお任せします(爆)

 こんなブツを20000hitのお祝いに上げるのはどうかとも思うンですが、宜しければお受け取り下さいませ?



【薫月の妖しげな(…)幸せ表現】
きゃふ〜vvぐふふふ〜vvv(妖笑)
やべえよ…こんなおいしい役回り貰っちゃって良いのかしら♪
確かに『出たい!!』と叫んで(強請って)ましたが、まさかこんなにおいしく(…)出して頂けるとわvv
新ちゃん快ちゃんって呼べてる上に志保ちゃんと仲良しだなんて(///)←何故照れる。
いやぁ〜素敵ブツをどうもありがとう雪花姉vvとっても素敵な20000hit祝いでしたわ♪(激満足v)

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