──ベッドの上、布団も何もかけずに丸くなる。


 何かを拒絶するように… 何かから身を守るように…

 膝を抱え、顔を隠す。


 それでも記憶力が良い頭に残る言葉は消える事はなく、



ただ、小さく小さく、身を丸める──







─浅い眠り─






 1ヶ月程前から世間を騒がせていた通り魔が捕まった。

 愉快犯による短絡的犯行だと思われていたそれは徐々にエスカレートしていき……5件目の事件で死者が出た。
 その為、それまで軽度の傷害と窃盗だけだったために呼ばれる事がなかった探偵が要請を受け、現場に足を入れた。
 警視庁が認め世間が認める名探偵は、既にこれまでに起きていた数件も把握しており、事件は急展開で解決の方向へ進展していった…。

 そして、7件目の犯行を前に捕まえる事が出来た一連の犯人。
 自分の推理を口にする探偵を…探偵だけを視野に入れ、犯人は静かに紡がれる声に耳を傾けた後、あっさりと犯行を認めた。

 犯行の理由は至極簡単。


 …聡明な名探偵を、すぐ目の前で見たかった…



 警視庁の救世主だと言われる名探偵。
 しかし、彼には厳重な報道規制がなされている。
 一般人である上に未成年の彼のプライバシーは絶対だと、少し前までは許されていた写真撮影なども今では全てシャットアウト。

 そんな彼を見れるのは…事件現場だけ。
 しかも事件の難易度が高くなければ、名探偵は要請されない。

 だから…自らの手で事件を起こした──



 事情聴取を終え帰宅する彼を送り届けた警部と刑事が「気にするな」と声をかける。
 その言葉に苦笑を浮かべ、探偵は「大丈夫ですよ」と返した。
 そして誰もいない屋敷に消えていく彼の背に、

「…そう言うと思ったから、心配しとるんじゃないか」

と、彼と彼の性格を把握していると自負している警部が呟いた…。







 しん…と静まっている部屋の中。
 物音はなく、僅かに聞こえるのは家主の呼吸音だけ。


 ──そんな室内に何時の間にか入り込んだ白い幻影。


 幻影の気配を背中で感じつつも、探偵は起き上がる事は愚か振り返る事もない。
 今までと同じ、身体を丸めて膝を抱え……顔を埋めてただ時間が過ぎるのを待つ。
 全く反応しない探偵に気を悪くするでもなく、かと言って話しかけるような事もせず、幻影はその表情を少しだけ歪めた。

 衣擦れ1つ立てずにベッドへと近付いた幻影は、探偵を気遣うようにそっと…空いていたスペースに腰を下ろす。
 軋んだベッドと間近に感じた気配に、探偵の肩が一瞬だけ揺れる。



「名探偵…?」

 その場の空気を壊すことなく、探偵へと声をかける。
 返事など期待していなかった幻影。

「…ンだよ」

 しかし、予想に反して探偵から応答が返ってきた。
 その事に幻影は小さく口元を緩める。

 こういう時の彼が、自分の領域に誰の侵入も許さず、周囲を拒絶しているのは知っているから…

 領域に入り傍に近寄る事が出来ることでさえ、この幻影だけに許されていた行為だった。
 それが今、初めて呼びかけに対しても反応を見せた。

 それだけ探偵が幻影を信頼し、気を許している……ということ…



 嬉しさに舞い上がりそうになる心を静める。
 本当はこの喜びをもっと噛み締めていたいけれど…

 …それよりも、今はもっと必要な事がある。


 その為に、幻影は探偵の元に訪れたのだから…──




 探偵のすぐ傍に腰を下ろしていた幻影は、何も言わず彼の頭を撫で始める。
 触れられたその一瞬だけぴくりと反応したものの、抵抗せずに行為を受け入れる探偵。

 そうして暫く、再びの沈黙が空間を支配する。
 けれど不思議と、先程まで探偵が感じていた息苦しさが消えている。

 それは幻影が訪れる前と後では歴然としていて…


「…お疲れ様でした」

 ゆっくりと探偵の絹糸のような髪を梳きながら、幻影はポツリと呟いた。

「…………」

 今度は何も答えない探偵。
 幻影もそれ以上は何も言わず、ただただ探偵を撫で続けた。

 心地良い動きに、自然と探偵の瞼が落ち始める。


 今までにも、何度か似たような事件が起きた。
 その度に探偵は1人で全てを背負い込み、その日から暫くの間、まともな睡眠を取る事が出来なかった。

 それを知った幻影がいつからか探偵の家へと足を運ぶようになり……気が付けば、探偵は幻影の前でだけは穏やかに眠るようになった。

 幻影が傍を離れれば目が覚めてしまう程、普段に比べれば到底浅い眠りではあるけれど…


 だから探偵は、落ちていく瞼に逆らうことなくゆっくりと瞳を閉じていく。
 幻影も心得ているように優しく微笑みを浮かべる。
 その空気を感じて、探偵は漂う睡魔の波の中、最後の意識で口を開いた。



「…サンキュ…、キッド…」


「…お気になさらず、ゆっくりとお休み下さい」



 浅い眠りに落ちた探偵に、そっと慈しむ口付けを贈る。

 そして朝陽がこの部屋を包むまで、幻影は探偵の傍を離れない。


 幻影が幻影としていられる時間は極僅か。
 その時間が過ぎれば、幻影は怪盗としての顔を取り戻す。




 こうして向かえた朝陽を合図に、探偵と幻影は普段の立場へと戻っていく…






【桜月様後書き】

【言い訳と書いて遺言と読みましょう;】

 …………ごめんなさい(土下座)←いきなり?!
 なんだか訳がわからん話になった自覚があります。
 リクを踏み倒している自覚も勿論あります(爆)←ダメじゃん
 BBSでは『60%は踏み倒す』と言っていたが…明らかにそれ以上なような気がします。
 まあ…、雰囲気を察してくださればありがたいかと…;←他力本願。

 こんな代物でも良ければ、由梨香サンのみお持ち帰り可能です。
 もちろん叱咤・罵倒・書き直し請求も受けつけてますので、遠慮なくお申し付け下さいマセ;



 ──ってか難しいンだよリク内容っ!!!(シャウト)←苦手ジャンルだったらしい(笑)



【薫月の暴走(…)コメント】

 桜月様のサイト1412hitの代理リクで頂いちゃいました。
 ほんと厚かましいリク内容だな…(爆)
 で、何を仰る雪花姉さん!素敵にリク通りですよ!!(力)
 新一さんの弱り具合もそれを慰めてるキッド様も正にリク通り!
 多くを語らなくても傍に居るだけで心休まる関係…素敵なのですv

 桜月様、酷いリク(解ってんならすんなよι)だったにも関わらずこんな素敵なお話しを有難う御座いましたvv





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