月夜の輝く…空気がとても澄んだ夜。

 そんな日は、気障で気紛れな“白い鳥”が空を駆け巡っている事もある。





                         ──さて。どうやって落とそうか…?



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 口説き方講座
   -Setsuka Ougetsu Writer Side-
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「おや…?」

 仕事の後の気ままな空中散歩を楽しんでいた“白い鳥”は、目的地であったビルの屋上で1人佇むコナンの姿を目にした…。

 ──常に自分の心を捉えて離さない稀少のブルーダイヤ──

 逢えるとは思っていなかったこの偶然に、“白い鳥”は迷う事無く寄り道を決定した。



「これはこれは…お久しぶりですね、小さな名探偵」

 ふわり…と、コナンの背後に音を一切感じさせずに降り立つ怪盗。
 そんな怪盗に、

「…お前こそ。今日は出てなかったよな? 予告状」

と、驚く事無く問い返すコナン。

「一応、お出ししていたのですが…どうやら、警察にはお届けにならなかった様です」
「ふ〜ん…、で。守備良くご帰還…って処か」
「まぁ、そんな処ですね♪」

 明るく肯定する怪盗に、コナンは呆れたような溜息を付く。

 こんな姿をしてはいるが、仮にも『探偵』と名乗った自分を目の前に、この怪盗はナニを考えているのだろうか…?

 ましてコイツは……


「──先日、元のお姿にお戻りになられていましたね…」


 ……『江戸川 コナン』=『工藤 新一』だと知っているのに──…


「…一時的にな」
「そうですか…」

 ポツリ、と肯定を意味する言葉を零すコナンに、KIDもそれ以上は何も言わない。

 この小さな名探偵が元の姿──工藤 新一に戻ろうと、死力を尽くしているのは知っている。

 その為に、黒の組織を抜けた薬学者の少女が協力している事も…


「ああ…、そう言えば…」


 ……だから、僅かながらでも力になれる様、少しでも情報を提供する──


 突然思い出したかの様に声を上げたKIDに、コナンは素直に首を傾げる。

「?」
「本日お邪魔させて頂いた処で、とても興味深いモノを見つけましてね」

 たまに見れるようになったコナンの『探偵』として以外の表情。
 KIDは自然と綻ぶ頬を引き締め、いつも通りのポーカーフェイスを気取る。

「…怪盗の性、とでも言うのでしょうか…? ついつい持ってきてしまったのですが、私には無用の長物。宜しければ受けとって頂けませんか?」

 そう言って何処からともなく1つの書類袋を出現させる。

「はぁ? またオレから返却しろって言うのかよ」

 たまに、目の前の怪盗はコナンに盗んだ宝石の返却を頼む事があった。
 だから今回もそれかとボヤくコナンに、KIDはにっこりと、

「お願いしますねv」

と、問答無用で書類を手渡し…ついでとばかりにその手に軽い口付けを落とすと、そのままコナンが反応を起こす前に離れ、その背に人工の羽根を広げる。

「な…っ///」
「お届け先は中に入っていますので…よろしくお願い致しますねv」

 …余りにも素早かった動き。
 漸くコナンが反応した時には、既にKIDは夜の天空へと舞い上がっていて…

「くそ…っ! アイツ、端からそのつもりだったな…?」

 今だ手の甲に残る唇の感触に、コナンは自分を誤魔化すかの様に言葉を口にする。
 そして強引に持たされた書類袋を見つめ…溜息と共にその封を開ける。

 …どちらにせよ、受け取ってしまった以上は返さなくてはいけない…

「なんでオレがこんな面倒な事を……っ!」

 今はいない怪盗へ文句を言いつつ取り出した書類。
 その文頭を目にした瞬間──コナンの唇は動きを止める。

 途端に流れ出す汗。急速に回り出す思考。

「アイツ…」

 …KIDの残した書類の文頭にあった文字。それは…


 『APTX4869』





「ホント、予想外だったなぁ♪」

 多少変わってしまったものの、予定通りにあの書類をコナンに渡せたKIDは、上機嫌で自宅へと向かう残り僅かな空中散歩を楽しんでいた…。

 当初。KIDは寝ているであろうコナンの元に、そっと…今日の『獲物』を置いて行くつもりだったのだ。

 ──目的はあの書類だけ。

 予告状に記した宝石は、それを悟られない為のダミー。
 勿論。それも守備良く手中に収めてはいるのだが…

「渡す事には問題なかったンだけど…本当なら、気付かれずに渡したかったなぁ;」

 仮にも『怪盗』である自分からの差し出し物である。
 それをすんなりと受け取ってくれるとは思わなかった。
 だからこそ、寝ているであろう仕事帰りにそのまま寄ったというのに…

「…ま、それでも受けとって貰えたし。ついでにちょっとだけご褒美も貰っちゃったし♪」

 既にKIDのものとは違う表情・口調だが…だからこそ解るご機嫌振り(笑)。


 これから益々、KIDに対する組織からの追撃は高くなるだろう。
 それを視野に入れても、今日の『仕事』を止める事は出来なかった。

 …コナンが元の姿を望んでいる様に、KIDもまた『工藤 新一』の姿を望んでいるのだ。

 自分が唯一認めた名探偵。
 一時でも気を抜くわけにはいかない──難攻不落の至宝。

 たとえ月下の魔術師と呼ばれる怪盗KIDでも、それを落とすのは至難の技。





                         ──さて。どうやって落とそうか…?




【この作品は薫月の『口説き方講座』(series参照)と競演(笑)です♪】


んふ〜Vv有難き雪花姉からの頂きもの〜♪
5000hitのお祝いで頂きました〜Vv
散々地雷踏んでるにもかかわらずこうして素敵なブツを下さるのだから良い方ですVv
でもって、ちゃっかりご褒美をもらっていくKID様♪羨ましい…(オイ)
KID様がどうやって落とすのか…これからが見物です!(要は続きが欲しいと・爆)
って言ってたら続きを下さったのでそれは10000hit後のお目見え♪(爆)


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