好きだという
愛しているという
君はそう言うけれど
何を根拠にそれを信じられるというのだろう
寄る辺ない想いなど
信じろという方が無理だろう
だから―――
―――さっさと諦めてしまえばいい
百夜通い【第十一夜】
「今夜で十一夜目だよ!」
「…唐突になんだよ」
ベランダに降り立って、探偵の部屋の窓を開いた怪盗がそれはそれは唐突に言った言葉に探偵は眉を顰めた。
「いや、ただ覚えてるかなって思って」
「忘れた。今この瞬間に忘れ去った」
「……名探偵。往生際が悪い」
「お前、その台詞は百夜通ってから言え」
眉を顰めた探偵が呆れ果てた様に言った言葉に、怪盗は目を輝かせた。
「えっ…!? それって、通うの許してくれるって事!?」
「あっ…! ち、ちげーよ! これはその…言葉のあや…」
「嬉しいなぁ♪ 俺の一方的な行動じゃなくて、名探偵も毎夜俺の事を待っててくれるなんてvv」
「バーロ!! 誰が待つか!!!」
怒鳴っても後の祭り。
ルンルンと周りにお花畑でも見えるんじゃないかと思う程、テンションの上がりきった怪盗に探偵は頭を抱えた。
「…どうしたらさっきの発言取り消せるんだ…」
「無理だよ。言葉ってのは一度口から出したら元には戻せないんだから」
「………」
嘗て自分が彼らに言った様な台詞を言われて、探偵はただ押し黙った。
――――後の祭り、とはよく言った物である……。
「で、名探偵。ちゃんと責任取ってよね」
「…責任?」
「そう、『百夜通ってから言え』って言ったんだから、約束通り百夜通ったら―――」
真っ直ぐに探偵の瞳を見詰め、怪盗は碧い瞳を僅かに細めた。
「―――私からの告白を聞いて下さいね」
常の砕けた様子ではなく、『怪盗紳士』として凛として響いた言葉に新一は息を飲んだ。
「…考えとく」
「有難う御座います」
にっこり笑った怪盗に、もう二度と余計な事は言わない様にしようと探偵は心の奥底で誓った。