「しーんちゃん♪映画行こ♪」
差し出された二枚の券を見て、新一は首を傾げた。
〜株+α〜
「映画…無料券?」
快斗の手にしているのは映画の無料券。
けれどその券は今まで見た事のある無料券とは色や形が何処か違って。
「それ、どうしたんだ?」
「ん?株主優待♪」
「株主優待…」
「そ♪」
にこやかに爽やかに語られた単語を新一は鸚鵡返しに言う。
それから理解したのか、ほぅ…と快斗の顔を見詰めた。
「お前あそこの株持ってたのか」
「うん。丁度5月あたりに結構安く買えたからさv」
「…確かにあの頃は買い時だったな」
普通の高校生の会話ではない会話をして、新一はふむっと顎に手をあてる。
「でもあそこ…」
「ん?」
「無料券は確か1000株で1枚だったよな?」
「うん」
流石名探偵♪記憶力抜群♪
にこやかに茶化してくれる快斗をじーっと見詰めたまま新一は何やら考え込んでいる。
「ん?どしたの?」
「……まさかとは思うんだが…」
「?」
「お前それの為に2000株以上持ってるんじゃないだろうな?」
その質問にぎくっと顔を引き攣らせた快斗に新一は自分の推理が正しかった事を悟って、溜め息を吐いた。
「…ったく、おかしいと思ったんだよ」
あの株は10月辺りが一番売り時だった筈だし、お前がその時期を逃したとは思えねえし。
「だってぇ…」
無料券だったら新一だって誘ったら素直に一緒に見に行ってくれるかと思ったんだもん。
「………馬鹿」
余りの理由にそう言って新一は一つ溜め息を吐いて、快斗の手から一枚券を抜き取った。
「新一?」
「行くんだろ?」
しょうがねえから行ってやる。
「うん♪」
ありがと〜vvv
満面の笑みで新一のコートと自分のコートを用意してきた快斗に苦笑して、けれど最後に念を押す事は忘れない。
「そんな事しなくても映画ぐらい言えば行ってやるから…だから売り時が来たらちゃんと売れ」
「はあい♪」
目的をしっかり果たした快斗は新一の言葉に良い子のお返事を返して、新一にテキパキとコートを着せた。
「じゃあ行こうか新一♪」
「ん」
――裏の顔の資金源でもたまにはこんな+αがあってもいいよね♪
END.
今日銀行に行ったら置いてあった雑誌が株主優待の特集だった。
株について語り合ってる高校生…微妙だよな(苦笑)back