Confusing thing -eye lotion-




 太陽も沈み始めた夕暮れ時…


「…っ、やぁ…!」
「今更ナニ嫌がってンの? 決めた事だろ」

 ここまで来て逃げようとするコナンをその腕で捕らえる。
 見た目には感じられない程の……強い力。

「そ…、そうだけど…」

 腕の力と比例するような快斗の視線に、コナンは今だ逃げようとしながらも答える。

「なら、悪足掻きすんなよ」
「でも! ……怖いもんは怖い」
「…優しくする」

 本当に怯えきっているコナンの背中を擦り、安心させるようそっと囁く。
 その心から優しい…いつでも自分を安心させる声に、コナンは徐々に強張っていた身体の力を抜いていく…

「………ほ、ほんとう…だな?」
「当たり前だろ?」
「信じる…から、な?」
「勿論。……それより、もう良いか? そろそろ…」
「ん…いい、ぜ?」
「じゃあ、遠慮なく…」

 そう言うと共に心を落ちつかせる暇もなく侵入してくるモノ。
 問答無用なその感覚に、コナンはキツク瞳を閉じた…

「──っ!!」
「…っ、入ったぜ?」
「ぅん……いた…ぃ…」
「だろうな…でも、暫くしたら楽になるから…」

 思わす浮かんでくる涙を、快斗は優しくその唇で拭う。

「あ…、」
「どうだ…? 少しは、楽になったか…?」

 衝撃に耐えていた瞳が緩和されていく…
 そして、ゆっくりと開花された蒼き瞳に、快斗は優しい眼差しで微笑んだ──

「だい…じょうぶ、みたいだ…」
「そっか。よかった」
「悪ぃ、快斗…もう、平気だから」
「そぉ? それじゃあ…」





「あー、マジで痛かったっ!」
「そりゃそーだよ、コナンちゃん。思いっきり充血してたもん」

 今だコナンの瞳から流れ落ちる雫を、何処からともなく取り出したハンカチで拭く。
 そんな快斗にされるがままになっていたコナンは、それでも少し不貞腐れたように、

「……ソレの方が痛かったぞ?」

と、呟いた。

「へ? …ああ、それだけコナンちゃんが目を酷使してたってことデショ?」
「ふ〜ん…、そうなのか?」
「そうなんだよ」

 コナンが指差したのは、先ほど快斗に点してもらった目薬。
 ごく当たり前の事を言い、コナンからの返答に言い聞かせるように頷く。

 それは何処にも不振が見られない、ごくごく普通の会話で…


 …しかし。何処となく快斗が動揺しているようにも感じられる──


「………」
「………」


 沈黙と言う名の静寂が訪れる。


「──お前、ナニ隠してる?」
「!!」

 コナンの一言にあからさまな反応を見せる快斗。
 その反応の仕方に、コナンは容赦なく快斗を睨みつけ、

「…………ちょっとソレ、貸しやがれ」

と、腕を伸ばす。
 しかし、焦りながらも快斗がそれを許そうとはしない。

「え?! いや、もう使わないでしょ?」
「いいから貸せっ!」
「あっ!!」

 決して手放そうとはしないソレ(目薬)に、コナンは強引にも身体ごと快斗に体当たりし奪い取る。


「……………」
「………………;」


 2人の間に天使が通りすぎた……その後、


「これ、思いっきり沁みるヤツじゃねぇかっ!!」


 …激怒したコナンの叫び声は、ご近所周囲に響き渡ったらしい…;




【桜月様後書き】
言い訳のお時間デス。
『KOA』掲載、オーナーへの激励SSSの完全版をお届けです。

『Confusing thing』=『紛らわしいもの』(笑)

……なんだかそのうちシリーズ化しそうで怖いな;



んふ〜vv(妖笑)
もう雪花姉ったら焦らすのお上手vv
でも快斗も、どっきどきよねvv


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