『愛してる』


嵌り込んだのは

愛という名の甘い罠








共犯者








「愛していますよ、私の名探偵」


 何時もの様に口付けられる。
 それは甘い甘い罠。


「どうせ同じ台詞を他の女んとこでも言ってんだろ」

 ああ、女じゃなくて男の可能性もあるのか。


 返す言葉は甘い睦言でも優しい言葉でもない。
 けれどその裏に含まれている意味など疾うにこの目の前の彼にはばれてしまっている。


「とんでもありませんよ。貴方以上の方なんていらっしゃいませんから」
「ったく、よく言うよ」


 溜め息を吐く。
 どうしてこうも歯の浮く様な台詞をすらすらと並べられるのか。


「相変わらずつれない方ですね」
「解ってんなら他の奴のとこにでも行けば?」


 ぷいっと彼から顔を背ける。
 すると顎を掴まれて、無理矢理彼の方を向かされた。


「本気で言ってるんですか?」
「本気だったらどうする?」


 ぶつかり合う視線。
 どちらもそれを逸らそうとはしない。


「何を言われようと貴方から離れる気はありませんよ」


 そう言って少し乱暴に口付けられる。
 それが酷く心地良い。

 彼が自分を自分だけをこうして見てくれるのが純粋に嬉しい。

 それはまるで子供の様な独占欲。
 解っていても止める事等出来ない。

 そのまま貪る様なキスを続けて、息苦しくなった所でKIDのネクタイを引っ張れば漸く開放された。


「っ…はぁ……お前少しは…加減つうものを覚えろよな…」
「貴方の前では理性が飛んでしまうものですから」


 にっこりと悪びれも無くそう宣ってくれる怪盗に探偵は薄く笑う。


「天下の怪盗KIDにそう言ってもらえるとは光栄だな」
「私は貴方の恋の奴隷ですから」

「………」


 返す言葉もない。
 寧ろ言葉を返したくないという方が正しいのか…。


「ですから貴方の為なら私は何でも…何にでもなれるんですよ」


 微笑んだ瞳の中に宿る強い意志に新一は笑みを零す。
 それは彼が自分にだけ見せるもの。

 けれど少しばかり訂正してやった方がいいのも事実。


「ばーろ。オレはそんなもんいらねえよ」
「名探偵…?」
「オレが欲しいのは俺の為に動く人間じゃない。オレと共に動く…」




 ―――共犯者なんだよ。




 欲しいのは自分と同じだけの力量を持つ人間。
 欲しいのは自分と同じだけの想いを返してくれる人間。


 それは…二人が『共犯者』になる為に必要だったもの。






END.


桜月様のサイトの5000hit記念に送りつけつつ、ずーっと放置だったブツ(爆)
何だかとても中途半端なブツι

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