──深夜の工藤邸に2つの人影が降り立つ。

 1人は、暗闇の中でさえ、鮮明な『白』を放つ月下の魔術師。
 そしてもう1人は…小さな、とても小さな子供。

 しかし、黒渕の大きな眼鏡の奥に隠された瞳は…妖艶な『蒼』を纏っていた…──


「本当に、良いのですか? 名探偵…」
「…ここまで来て、今更ナニ言ってやがる」
「それはそうですが…もう、押さえは効きませんよ?」

 ベッドの上に横たわり、薄暗い室内で見詰め合う2人。
 最終確認…とばかりに尋ねたキッドに、コナンは面倒臭そうな溜息を付く。

「ったく、良いンだよ! これはオレが決めた事だ」
「………」
「……オレだって、魔術師に焦がれてた1人なんだから…さ」


 ──What you desire most?



                                   
Halloween Night





 10月31日──言わずと知れたハロウィン。

 ハロウィンとは万聖節の前夜祭。
 古代ケルト起源で、秋の収穫を祝い悪霊を追い出す祭りとして、カボチャをくりぬき目鼻口をつけた提灯を飾る。
 夜には怪物に仮装した子供たちが近所を回りお菓子をもらったりする…


「Trick or Treat?」

 上弦の月が空から姿を消した頃…そう言って悪戯な笑みを浮かべる少年が1人。

 そして…

「これはこれは名探偵…お久しぶりですね」

 …優雅にマントを広げ、恭しく一礼する怪盗が1人──


「今宵、私の前に訪れて頂けたのには…何か訳でも?」
「別に? ただ、言い訳が吐きやすかっただけだ」
「なるほど…。さしずめ、阿笠邸でハロウィンパーティーを…と言った処でしょうか」

 キッドの言葉に素っ気無く答えるコナン。
 反面、キッドは此処に降り立った時から微笑みを絶やさない。

 何故なら、このやり取りは何の意味も持たないから。

 …始めから交わす必要の無い会話だから。

 今日、コナンが此処に訪れたのは『答え』。
 キッドがコナンにだけ宛てた『予告状』への『答え』。

「それで?」
「予告状に記した通りですよ」
「ふ〜ん?」

 途端に楽しげな笑みを浮かべたコナンに、キッドも同じような笑みを浮かべる。

「…予告通り、貴方を頂きに参りました」


 『今宵、穢れなき蒼の姫君を頂きに参ります。』


「みたいだな。しっかりオレの居場所まで掴んでやがる」
「ええ…、隠れる貴方を探し出すのは一苦労でした」
「怪盗に狙われたターゲットは、厳重に隠されるもんだろ?」
「その上で鮮やかに盗み出すのが…私の仕事」

 予告状を受け取った探偵はターゲットである自分の存在を隠した。
 そして予告状を出した怪盗は…怪盗らしく今宵の獲物を探し出した。

 天空に月が見えてから沈むまでの──攻防戦。


「…それでは。予告通り、“蒼の姫君”を頂きます」
「好きにしろよ……オレは最初に聞いたはずだぜ?」


 『尚、今夜はハロウィン。お菓子は用意致しませんので…』



 ──さぁ…、Trick or Treat?






【桜月様後書き】
なんとか作成してみたハロウィン創作♪
何気なくだいぶ昔の『罠』メールを使ってみたり…
(思いっきり苦し紛れι その上短くてごめんなさい)←殴。

お解りかと思いますが、冒頭のシーンはこの後の2人です。
キッドからの予告状に書かれていた『お菓子は用意しません』に対し、コナンは「Trick or Treat?」と問い尋ねます。
つまり、『Treat』がないのを知っているコナンは「悪戯すれば?」と言ってるのですよ(笑)

…まあ、後はご想像にお任せってことでv


 ──What you desire most?=『お前がもっとも望むものは?』



きゃぁ〜vvコナンさんが格好良いのですvv
「お前が最も望む物は?」なんてもうカッコ良すぎなのですvv
ふふ〜vvコナンさんが誘い受けvv(妖笑)
雪花姉素敵なハローウィンをありがとうぅ〜vv

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