どうしてなんだろう
君の瞳はとってもとっても綺麗だと思うのに
その瞳に映る全てを消し去ってしまいたいと思うなんて
【12.君の瞳に映るもの】
「ホント新一の瞳は綺麗で宝石みたいだ」
「な、何気障な事真顔で言ってんだよおめーは…!///」
大きくて蒼い瞳を覗き込んで真面目な顔でそう言えば、真っ赤になった顔がぷいっと逸らされる。
そんな動作の一つ一つが可愛くて、背けられてしまった顔に落とす代わりにそのさらさらな髪にそっと口付けを落とした。
「っ…///」
ぴくりと肩が反応して、赤かった耳が余計に真っ赤に染まった事に満足する。
それでも、俺の視界から隠されてしまった瞳をもっとちゃんと見たくて、無理矢理顔をこちらへと向けさせた。
「かい…と…?」
「好きだよ、新一。ちゃんと俺だけ見てて?」
俺以外その瞳に映さないで欲しい。
他の物なんて見ないで欲しい。
「…見てるだろ、いつも…///」
視線を少し斜め下に逸らして恥ずかしそうにしながらもそんな風に可愛い事を言ってくれる新一に思わず口元が緩む。
何だかんだ言ったって、この可愛い生き物は最後にはこうやって俺を喜ばせてくれるんだから。
「そうだね。でもまだ足りない」
「…足りないって…」
「新一の綺麗な綺麗な瞳には、他にまだ一杯色んなものが映ってる」
「快斗…」
「西の探偵とか白馬とかアイツらと話してる時の新一の瞳、キラキラしてる…」
思い出して、ギリッと奥歯を噛みしめる。
探偵仲間で気の合うらしいあの二人と事件の話しやらホームズの話しやらをしている時の新一の瞳はとてもキラキラしている。
それを綺麗だとは思うけれど、そこに映っているのが自分の姿ではないのが酷く腹立たしい。
自分でも馬鹿だとは思うけれど、それでも――彼の瞳に自分以外のモノが映っているのが酷く理不尽な事に感じられる。
「ばーろ…。お前、嫉妬し過ぎだ」
「しょうがないだろ。それだけ新一のこと好きなんだから」
「…っ…だ、だからお前はそういう事を真顔で言うな!///」
「それもしょうがないよ。だって俺は新一の事愛してるんだから」
「……///」
何も言えず真っ赤に染まる頬に軽くキスを落とせば、その頬はより熱を上げる。
それにまた嬉しくなって、ギュッと新一を抱きしめた。
「ねえ、新一」
「…何だよ」
「新一はさ…俺だけ見てればいいんだよ」
君の目を引くものは沢山ある。
難解な事件。
複雑な暗号。
魅力的な推理小説。
そして――大切な探偵仲間や、大切な幼馴染。
君の瞳はそれらを映し出して、キラキラと輝く。
それはそれは綺麗に。
それが酷く快斗をイラつかせる。
「…バーロ」
見えなくても気配で分かるのだろう。
不機嫌な快斗のオーラに、新一は逆にクスリと小さく笑った。
「俺が一番見てるのは……他でもないお前だよ」
そう言って笑った新一が、快斗の頬を両手で挟みその瞳をジッと見詰めてくる。
新一の瞳に自分が映し出されている事に快斗は酷く安心し、そして酷く渇望した。
―――ああ、君の瞳が俺しか映さなくなる日が来ればいいのに……。
END.
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