俺の存在意義は
私の存在意義は
貴方の存在無しには語る事など出来ないのです
【11.存在意義】
例えば夜眠る時だとか。
例えば朝起きる時だとか。
隣に貴方が居ないこの気持ちをどう表現したらいいのだろう?
「んっ…」
朝の日差しが部屋に降り注ぐ。
その眩しさに眉を寄せゆっくりと瞳を開いた。
夜カーテンは引かない。
だって月が見えない。
朝の日差しはキライ。
だってまた君の居ない1日が始まる。
のろのろとした動作で身体を起こす。
頭がだるい。
気分が悪い。
それは此処数ヶ月変わる事の無い症状。
「んー…」
ベットの上一つ伸びをして、首を回す。
けれど消えてくれない身体の倦怠感。
変わる事の無い光景。
「新一…」
毎朝呟く名前。
毎朝追い求める影。
けれど、日々は変わる事無く残酷に時を刻み続ける。
名を呟いた後、ベットサイドの写真立てを手に取る。
其処に写っているのは笑顔の自分と…そして彼。
あの時はあのままの幸せが続く気がしていた。
あの時は彼が居る事が当たり前だった。
写真立てを再びベットサイドに置いて、ゆっくりとベットから降りる。
緩慢な動作で身支度を整えて、1階へ降りる。
其処にあるのはあの日から変わらない光景。
「おはよう」
リビングに掛けられている写真達に挨拶する。
全て彼の写真。
全て彼の姿。
何十枚というそれら一枚一枚に挨拶してから台所でお湯を沸かす。
淹れるのは彼が好きだったコーヒー。
昔の様に馬鹿みたいに砂糖を入れる事はしなくなった。
彼の様にブラックで。
彼の様に何も食べずに。
ホームズも好きになった。
サッカーも好きになった。
あれだけ苦くて駄目だったコーヒーさえブラックで飲めるようになった。
全部君と同じ様に。
全部君に合わせられる様に。
何もかも同じ様にした筈なのに、一番大切なモノが足りない。
中味を飲み干したコーヒーカップをシンクへ置いて、髪を整える為に洗面所に行って。
真正面の鏡に写った自分の姿に最後の朝の挨拶をする。
「おはよう…新一」
映し出されたのは嘗ての彼を髣髴とさせる自分の姿。
元から顔貌は兄弟のように似ていた。
だから髪形さえ変えれば友人達さえ騙せる程に、幼馴染さえ見間違う程に似てしまった。
「今日も1日宜しくね」
そこにはもう、『黒羽快斗』という人間は存在していなかった。
貴方がいなければ『俺』にも『私』にも存在意義など存在しないのです
ですからどうぞ戻って来て下さい
どうぞ私に存在意義を与えて下さい
END.
ぷち壊れ気味の快斗くんです…。
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