剣幸会

虚 実 (吉村正大先生:剣道時代2012.8)
虚実に関しては、様々な表現がされているが、具体的で分りやすいので以下に記す。

虚実
   実を避け虚を打つのは勝利の秘訣である。相手の頑固な備えと強烈な攻撃の実を避けて空費させ、我が力を最も有効に使って相手の弱点たる虚をついて勝つことこそ勝利の方程式にほかならない。故に、攻防においては虚実の見極めが極めて重要になってくる。
 
 ところが、この虚実ほど厄介なものはない。互いの虚実は常に移り変わりその転機はめまぐるしい。レベルの高い試合になればなるほど、長い虚、長い実というものは存在しなくなる。実と見れば虚となり、虚と見る間に実に移り変わる。実の尽きたところが虚であり、虚の終わりが実に移るものだ。さらに厄介なのが、形の上では実に見えても心が虚の場合があれば、虚に見えていながら実の場合がある。よって、虚実の真偽を正確明敏に捉え、一瞬の決断を持って一撃に打たなければ功を奏さない。そここそが、「捨てどころ」なのである。
 
 虚実を利用した攻めには二つの方法がある。ひとつは虚実を知って読んで打つこと。もう一つが、虚を誘って打つ方法である。