剣道の礼について (岩立三郎先生の資料より)
この資料は堀正平先生の剣道礼儀考から一部抜粋したものを判り易くしたものであります。
1997年11月1日 岩立三郎

とある資料の中より、稽古に関する部分2つです。

稽古をお願いするときの礼
 同等の人と稽古する場合は、まず「どうぞ」といって上座を譲るべきである。上座に立つときは「失礼します」、又は「上下なし失礼します」と挨拶してから立つべきである。
客人ならば先ず一度は上座に廻すべきである。
先輩にたいしては正座又は手を突いて「お願いします」と鄭重にすべきであり、面を着けてお願いするときは甲手をはずしてお願いすべきである。
上座に立つにはよくよく考えて立たなければならない。
ただ段が上だからといって立つのは考えものである。相手が先輩などの場合は更に注意して失礼のないようにすべきである。
譲り合いも軽重を考えてすべきで相手に譲り過ぎるのも失礼な場合がある。

稽古をお願いする場合と止め方の礼
 勝負にならないほど差のあるものはどんどん懸かり稽古をするのが礼であり、又正しい稽古法である。
稽古は正確に打つ理を知り、体を馴らすのである。そうすれば元立ちの者も無理をせず正しく稽古してくれる。下の者が無理に当てようすれば上の者は当てさせまいとして無理もすれば技を押さえたり殺したりされてしまうのもやむを得ないこととなり、結局無駄な稽古になってしまう。
 元立ちに稽古をお願いするには、十分気をいれて礼から蹲踞、そして立ち上がるまで剣道形のように師に従うがごとく、そして立ち上がったなら勝負を争わず精一杯に懸かり息があがったら切り返しをして止める。長い稽古は上にも待つ人に対しても大変失礼なこととなる。
 あまり差のない人と稽古するにも一二本は譲らない覚悟で礼を失わないように稽古し、下のものから礼をいって切り返しをして止めるべきである。特に上の者から「いま一本」とか「三本」とか言われない限り、絶対下の者から言ってはならないことである。これは上から稽古の数をかけさせるための慈悲から生じるものである。
更に大切なのは、立ち上がって身繕えをしたり竹刀を構え直したりするのは論外である。

元立ちをあけてはならない