剣道の続け方
 
●中学生の剣道

1)中学生の特徴
 男子の場合、中学生の特徴は何といっても体格の差と反抗期です。親の言うことを何でも聞いてくれて身体も頭も少しずつ成長していた子供が、急に身体と態度が大きくなるのです。
 小学高学年、中学卒業前後、遅い子は高校三年間など、急成長する時期は様々です。成長の遅い子にとって、中学生として同じ部門で勝ち負けを争う必要があるのか疑問なくらいです。技術や理論より、体力・筋力の優れた子、成長の早い子が圧倒的に有利な3年間であるのです。

 何でも大目に見られた小学生時代と違って、校則・集団行動等の制約が急に厳しくなります。責任行動へと成長する反面、干渉されることを極端に嫌う性格が出現するのが普通です。これを指導という名で押さえつけようとすると、萎縮して従う子と無視する子に二分化されます。親や嫌いな一部の大人に対して反抗的な態度の方が普通なくらい。実はこれで正常なのです。しかし、自分の認めた人や興味のあることに対しては全く接し方を換える一面があります。それは先輩だったり、指導者だったり、芸術的なことだったりします。

 大事なことは、そういう状況の中での剣道ということなんです。剣道の役割も重大です。自分の認めた人の話しか聞かないというのは、尊敬できる人に出会って人生を左右される可能性もあるということであります。しかし、剣道嫌いになったり、勝負での挫折や不満、人間関係などから剣道から離れるのもこの中学生の時期からなのです。まだまだ燃え尽きるのには早い剣道の入り口なのですが、指導者の力量で大きな岐路に立たされる危険な時期とも言えます。

 高校でも剣道を続けてやりたいと思って中学生を卒業できれば、その子の中学生剣道は成功なんだと思って良いのではないでしょうかね。現実的には、進学した高校に剣道を一生懸命できる環境が無かったという場合が多いのですが、辞める場合は大きな嫌な原因があるものです。

 

 剣道を中学部活動から始める子も多いです。特に女の子は多いです。身体の成長は男子よりも早いので、体力的に劣るという子も少なく、集団で同じように上達していきます。この場合、本人の努力よりも指導者の力量で決まります。
 
 学校か道場かどちらかで一方的に指導をして、それをもう一方が容認している場合。また、今までの指導者が中学校でも指導に入るという環境。ほとんどがこのケースです。これでは両立とは言えないかも知れませんが子供達にとってはいい環境です。

 顧問の先生が指導に殆ど来ないという話はよくあります。部活動は教員の仕事でもどちらかというとボランティア的な部分であり、放課後の時間が自由にとれるとは限りません。教師にも家庭があり、家族の健康状態のこともあります。必ずしも、部活動をみれる状態ではないということを認識しておく必要があります。

 今まで育った道場と学校でどちらでも一生懸命できれば、それがベストです。しかし、なかなか難しいのも現実で、こういう恵まれた環境は少ないようです。部活動と道場剣道では明らかに活動の目的自体に違いが存在するからです。道場が長期的な計画なのに対し、学校剣道は2年数ヶ月間の限られた期間の中で、結局は結果を追い求めるという方向になってしまうのです。いわゆる強豪中学校はレギュラーの子とその親が一生懸命試合中心の活動をして、メンバーにあふれた子はそれなりに流しただけの活動になっているのが正直なところです。

 顧問の先生と道場の先生がお互い協力しあってという関係がなかなかとれないのは、指導内容などのすり合わせが無かったり不十分だったりするのが大きな問題のように思われますが、実際にはほとんどが個人的感情のもつれです。トラブルの多い顧問はあちこちで同じような問題を起こします。 結局、指導者同士が同門ならともかく、考え方が正反対の場合は共存は無理というのが現実です。


2)中学校だけの剣道部で大丈夫なのか?
 出身道場が中学生を対象にした稽古をしていないのなら仕方ないです。所属を変えてまで他にお世話になるのか、学校だけでも十分なのか、それぞれ状況も違います。
 学校によっては、自分で抱え込みしないと機嫌の悪くなる顧問の先生が結構いらっしゃるようです。そういう先生が指導している中学校に進学する場合は、道場に通えなくなることを覚悟してから入部すべきですし、道場で続けることを優先したいのなら、中学3年間は中体連に所属はせず、高校入学時に指導者を求めて学校選びをすればいいと考えます。通える公立中学校は限られています。そこに理想の先生がいれば一番いいですけどね。
 

3)道場だけの剣道で中学生として大丈夫なのか?
 しっかりした団体であれば勿論可能です。昔はほとんどがそうだったのです。試合経験が極端に少なくならないよう、適度な対外試合もしながらという条件つきで、基本稽古、掛り稽古、地稽古で十分と思います。

 また、中学校に剣道の指導者がいない場合は必ずといっていいほど悪癖がつきます。むしろ道場だけの稽古にしたほうが、高校生になってから大きく成長する可能性が高いと考えます。高校剣道は、同年代の人と激しい稽古が必要ですが、中学生時代に悪癖がついてしまうと修正するには時間がかかります。
 ただし、高校も道場剣道だけでとなると、今後、勝負という点においての歩合はかなり悪くなると考えます。
 
 中学校時代の剣道を学校ではやらず道場だけで過ごすということは十分可能です。しかし、これも所属道場の稽古内容と稽古回数によります。例えば、週2回となると少な過ぎますし、他競技と掛け持ちとなると十分な成長は望めません。もし所属道場の稽古回数が少ない場合は、大人や高校の稽古に参加させてもらうなり、所属道場からどこか紹介してもらうなり、最低限、週4回程度の稽古回数が必要と考えます。

 現在、水泳は中学校水泳部は私立くらいで、ほとんどがスイミングスクール中心の活動です。同様にサッカーのトップクラス、硬式野球の一部も中学校から離れた活動です。剣道も中学校時代を道場だけで過ごすことが特に珍しいわけではありません。

 

4)学校を変わりたい場合は?
 転校という方法はあり得ます。
 私立に進学して、馴染めなかった場合、地元の公立に転校というのは義務教育期間ですから簡単です。高校と違って、出場停止期間というものは存在しません。また、公立から私立に転校という場合もありますが、一部の実力のある生徒に対しての特例です。公立間でも理由によっては転校はできます。
 
 中学生の公立の越境入学に関しては、問題になるケースもあるようです。地域での容認の感覚に差があります。あまり勝利至上主義的な越境は私個人的には好きではありませんが、引越ししてでもそこに行きたいくらいの気持ちがあるのなら、その気持ちを大切にしてあげるのも良いと思います。