懸待一致

 積極的治療、保存的治療の選択である。
 どちらか一方だけでもだめであるが、どちらでも対処できる用意があってこそ最良の対処ができるのである。

 若い医者は切りたがる。若い選手は打ちたがる。熟練度が増すにつれてその懸かりと待ちのバランスはより良くなっていくのである。

 学生の頃、面白い一日があった。
 丸山ワクチンが厚生省の認可がおりなかった次の日のこと。一時間目の授業が薬理学の時間。可能性のある薬を認可しなかった政府に教授は怒っていた。二時間目は外科学の授業。すぐに切っちゃえば治るものをワクチンなんかでもたもたしてたら手遅れになってしまう。である。両者を別々に考え研究するわけだが、実戦では同時進行である。

 懸待一致のバランスが崩れると、患者さんは、処置を嫌がったり、逆に物足りなかったりする。一つの検査、ちょっとした処置、大きな手術。すべてにおいて懸中待。待中懸である。