守破離

 口腔外科研修医時代、0peがとても上手いと言われていた先生に同じ剣道部出身ということで可愛がってもらっていました。
 ある時、他の人達がやっているメスの使いかたをちょっとだけしてみた時、「誰がそんなこと教えた」と、いきなりきつい一言がありました。

 医局に残るにあたり、剣道部の先輩から言われたことは一つ、「絶対に言葉を返さないこと」です。

 開業というのは、離ということになると思いますが、実はこの離が剣道においても難しい点と考えています。早すぎるのが駄目なのは誰でも解りますが、遅すぎるのも問題があるということです。
 
 私が主に中学・高校と毎週稽古を頂いていた先生と二人で飲みにいっていた時のことです。
 道場を開設したので少年指導も始めようと思っている旨の話をしていたのですが、
 「どんなに自分が信頼する相手であっても、距離を置くこと。恩師であっても、もちろん俺のことも信用するな」
 ということでした。
 とっても意外なアドバイスでした。何度もこの日のことを思い出しているうちに、また、自分でも寂しい体験が何度かあって、、私はこれが、「離」の重要な条件なんだと、感じるようになりました。

 確かに師はいつまでも師なわけですが、師からみれば、大勢の中の弟子のひとりが自分なわけです。そこは、やはり親子の絆に比べると崩れる可能性のあるものに違いはありません。
大学病院の医局なんかは典型的で、教授は各科に一人です。教授が退官しても助教授がスライドで教授になれないケースはいっぱい見てきました。

 「離」ということは、それだけの覚悟を持てということであるし、同時に、いつまでも誰かを頼ってるんじゃないということでもあると考えてます。
 そして、「離」の者同士のほうが、かえってお互いを尊重できて、ライバルであってもお付き合いはできますから、相応の実力がつけば、離れるべきなのでしょう。