多少剣道にも自信が持てるようになった頃、遠征先の宴会の後、岡先生を囲んでいつものように剣道談義をしていた時の話です。
「審判中、打突部位が見えなかった時、音や機会などで判断して旗を挙げるべきか否か」
を尋ねたことがあります。
普通の講習会なら、審判の具体的な話になっていると思いますが、岡先生の答えは次のようなものでした。
「それは、次元が違ってるなあ。心に響いたものなら一本。そうでなければ、一本ではないんだよ」
という予想もしなかった答えが返ってきました。
小さなことに捕われてたことが恥ずかしかったこと。同時に目の前がパッと晴れたような感動があったのを覚えています。
私達歯科医師は、普段、診断はもちろん、ひとつひとつの処置が、ある基準を満たした成果が常に求められています。その結果、技術的にはちゃんとクリアできてるはずなのに、患者さんとの信頼関係が向上したと感じる機会はそれ程多くはありません。
ところが、ごく何人かの患者さんにおいては、非常に改まって感謝の気持ちを告げられ、その後に沢山のお友達を紹介して下さる方がいらっしゃいます。これが、きっと、岡先生流の有効打突の条件をクリアできたということであるのでしょう。
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