間を切る

 剣道では「無制限の延長戦」、医療においては「手術」という、大きな仕事があります。

 私は歯科医師ですので、ここでは「難抜歯」で考えてみます。
 終了予定の時間はとっくに過ぎて、何時終われるのかわからなくなったことは何回もあるんです。気が付いてみると同じようなことばかりずっとやり続けてしまって、時間は30分、1時間と刻々と経っていく。この歯は曲者だったと思っても気持ちはいらつくばかりである。
 思い切って、一旦、休憩をとってみる。仕切り直ししてみる。そうするだけで、次に始めたときは、あっという間に終わる場合がとても多いのだ。

 これで何とか患者さんとの面子が保たれたというか、次に進めたというか、反省の中にも、一応勝利を思える瞬間である。私は口腔外科出身ということで、よく抜歯の秘訣を聞かれることがあるが、困った時は、一息入れることが大事と答えています。
 剣道の試合でも、中断後の開始直後は、長い試合が終わる可能性が高い。何かひらめく時は、冷静になれた時である。