私の七段合格
  <しらさぎ剣友会母の会会報第100号に掲載 H16.3.1.発行>

 剣道は人間形成ということですから、最終的には、相手を思いやる心をもって社会に貢献するということだと思います。
 しらさぎ剣友会でも剣道を始めるにあたり、まず、礼ということから教えられたと思います。相手に不愉快な思いをさせないように細かい心遣いをするということです。
 やがて礼は、教えて頂いている先生や仲間達から、現在の自分の環境に携わる全てに対してと、その対象は拡大されていきます。
 さて、今までの剣道生活を振り返ってみると、様々な苦労が沢山思い出されます。何度も壁にあたり、自分なりに何とかそれを乗り越えてきたことです。
 剣道を行う環境は何度も変わり、やがては、体力的に下降線をたどることになります。自分の思いどおりにはならなくなっていくということです。他の多くの競技ではここで引退ということになるのでしょう。
 剣道は、むしろここからがスタートでした。体力的な衰えを感じてきた時、また、稽古量を十分には取れなくなってきた時、これをカバーするための心が少しずつ補ってくれるようになるからです。
 自分の思いを実現させるには、相手の気持ちを考えるようになり、それを利用できるようになります。あるいは、調和だけを楽しむようになります。そして、満足する成果を上げることもあります。これは無理やり封じ込めてた強さとは別の強さです。
 この剣の理法の理論が実社会で活きていると考えております。
 私は歯科医師ですが、日々の患者さんと接するにあたり、相手の「心を診る」ということが仕事と思うように変化しております。剣道で身に付いてきたことは、臨床ではおおいに役立っていると確信しています。また、逆に沢山の患者さんとのやり取りは剣道の心の修業にも計り知れない程プラスになっていると考えております。
 私にとって、剣道七段とは、このことを審査会で滲み出させるということだったと思います。そして合格を頂いたようです。