後輩

その一。

 私の尊敬する指導者の一人、かつての中日ドラゴンズの闘将、星野仙一監督の指導持論、
 「後輩には、正しい理論と大きな愛情。そして少しの恐怖感で接する」
 とあり、さらに、
 「その恐怖感が、前者の二つを超えないこと」
 を重要な条件としている。

 そして、これこそ、すべての指導的立場にある者の条件と思っている。この言葉に出会い共鳴したのは、すでに40歳間近の頃である。それまで三十年近い後輩への接し方と、先輩や先生の選び方を反省させられたのである。実績重視の終わった瞬間であった。

 今では、これが優れた指導者を探す場合においても最重要なポイントと考えている。


その二。

 今、自分のライフスタイルとして、本職の診療の傍ら、自分の趣味の剣道を楽しむ時間が非常に多い。でも、最初からこのスタイルは不可能だったんです。 非常に楽になったきっかけがありました。

 患者さんを代わりに診てくれるいい人がいれば良いのですが、これが非常に難しい。後輩のやった治療に腹が立ってしまうことが多いからです。

 私は医院を開業してすぐ軌道に乗ることができたラッキー者ですが、歯科治療のいろはを教えてもらった開業医の先生にそのアドバイスをもらいました。

 「自分はお世話なってた二年半の間、一度も、怒られたことが無かったが、なぜか?」

 ということに対し、簡単な答えでした。

「自分が頼んでやってもらっているわけだから、自分がやったと思えばいい」

 それ以来、何人もの後輩が、私の仕事と趣味の両立に協力してくれているわけである。剣道付きで。