剣道教士称号筆記試験対策
1.指導法 | |||
【剣道の理念】 |
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剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である。 | |||
【剣道修錬の心構え】 |
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剣道を正しく真剣に学び 心身を錬磨して旺盛なる気力を養い 剣道の特性を通じて節礼をとうとび 信義を重んじ誠を尽くして 常に自己の修養に努め 以って国家社会を愛して 広く人類の平和繁栄に 寄与せんとするものである |
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【剣道指導の心構え】 |
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(竹刀の本意) 剣道の正しい伝承と発展のために、剣の理法に基づく竹刀の扱い方の指導に努める。 剣道は、竹刀による「心気力一致」を目指し、自己を創造していく道である。「竹刀という剣」は、相手に向ける剣であると同時に自分に向けられた剣でもある。この修錬を通じて竹刀と心身の一体化を図ることを指導の要点とする。 (礼法) 相手の人格を尊重し、心豊かな人間の形成のために礼法を重んずる指導に努める。 剣道は、勝負の場においても「礼節を尊ぶ」ことを重視する。お互いを敬う心と形(かたち)の礼法指導によって節度ある生活態度を身につけ、「交剣知愛」の輪を広げていくことを指導の要点とする。 (生涯剣道) ともに剣道を学び、安全・健康に留意しつつ、生涯にわたる人間形成の道を見出す指導に努める。 剣道は、世代を超えて学び合う道である。「技」を通じて「道」を求め、社会の活力を高めながら、豊かな生命観を育み、文化としての剣道を実践していくことを剣道の目標とする。 |
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【指導法講和における[重点事項]】 |
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「剣道の理念」をより深く認識し、高い水準の剣道を目指すため、下記事項を指導法の重点事項とする。 1.講習の実施にあたっては、対象者の特性に応じ指導内容を精選して効果の上がるように留意する。 2.技術以前の所作、礼法、着装については徹底指導させる。 3.竹刀の操作について、刃筋・手の内・冴え・鎬(しのぎ)を意識した使い方を徹底指導させる。 4.一足一刀の間合いから、一拍子で正しく打ち切る技能を中心課題とするとともに、それぞれの技量に応じて理に適った応用技の習得を図る。 5.正しい攻防の指導を徹底させる。 (1)気勢の充実しないままの打ち合いを是正させ、気構えを強くして中心を外さない 攻め合いを重視させる。 (2)安易に左拳を中心線から外す防御体制を厳しく是正する。 6.正しい鍔ぜり合いからの技の理解・実践を徹底させる。 (1)鍔と鍔が接する構えをとらせる。 (2)分かれる際、相手の身体に竹刀をかけたり、当てたりさせない。 (分かれる方法としては、技を出すか、瞬間に間を切るかの二通りである。) 7.剣道の理解を深めさせるため、講和を積極的に取り入れ、心の問題について認識を深め、修錬を通して道徳的価値観の育成を図る。 |
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【木刀による剣道基本技稽古法】 |
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まえがきから 基本的な目的は次の三点である。 ①竹刀は日本刀であるという観念を理解させ、日本刀に関する知識を養う。 ②木刀の操作によって、剣道の基本技を習得させ、応用技への発展を可能にする。 ③この稽古法の習得によって、日本剣道形への移行を容易にする。 1.制定の趣旨 剣道の基本技術を習得させるため、「竹刀は日本刀」であるとの観念を基とし、 木刀を使用して「刀法の原理・理合」「作法の規範」を理解させるとともに、適正な 対人的技能を中心に技を精選し指導するものとした。 2.構成 基本1 一本打ちの技 「正面」「小手」「胴(右胴)」「突き」 基本2 二・三段の技(連続技) 「小手→面」 基本3 払い技 「払い面(表)」 基本4 引き技 「引き胴(右胴)」 基本5 抜き技 「面抜き胴(右胴)」 基本6 すり上げ技 「小手すり上げ面(裏)」 基本7 出ばな技 「出ばな小手」 基本8 返し技 「面返し胴(右胴)」 基本9 打ち落とし技 「胴(右胴)打ち落とし面」 3.基本指針 (1)所作事は、「日本剣道形」に準拠するものとする。 (2)習技者に対し、木刀を使用し剣道を正しく体得させる。 (3)使用する木刀は基本的には日本剣道形で用いるものとするが、幼尐年にあっては発育段階に応じて適切な木刀を使用する。 (4)基本動作については、「幼尐年剣道指導要領」に則って指導する。 (5)習技は基本的には集団指導によるもので、「元立ち」「掛り手」の呼称は相互に平等の立場で行うという観点から用いた。 (6)集団指導を効果的に進めるために、指導者による随時適切な指揮の下に行うこととする。 ア.前記基本技の選別は、指導者が習技者の錬度に合わせ行う。 イ.適宜、指揮者の号令を導入するほか、錬度を高めるため「掛り手」だけの要領を 繰り返し行う等の具体的内容や進め方について創意工夫を凝らす。 4.指導上の留意事項 (1)構え ア.構え方はすべて「中段の構え」とする。「中段の構え」は右足をやや前に出し、左こぶしは臍(へそ)前約ひと握り、左手親指の付け根の関節を臍の高さで中心線に置く。剣先は「一足一刀の間合」においてその延長が相手の両眼の中央または左目の方向とする。 イ.構えの解き方は、剣先を自然に相手の膝頭から3~6cm下で下段の構えの程度に右斜めに下げ、この時の剣先は相手の体からややはずれ、刃先は左斜下に向くようにする。 (2)目付 目付には、相手の顔を中心に全体を見ることとし、ここではお互いに相手の目を見る。 (3)間合 ア.立会の間合はおよそ9歩の距離とし、3歩前進後における蹲踞しながらの木刀の抜き合せと、技の終了した時点の間合は「横手あたりを交差させる間合」とする。 イ.打突の間合は「一足一刀の間合」とし、この間合は個人の体格、筋力、技倆(ぎりょう)の程度などにより、若干の差があることを指導する。 (4)打突 ア.打突は、充実した気勢で手の内を絞り刃筋を正しく「物打」を用い、後足の引き付けを伴なって「一拍子」で行わせる。 イ.打突は、常に打突部位の寸前で止める空間打突となるが、刀で「切る・突く」という意味を理解させる。 ウ.「掛り手」の打突動作は、「元立ち」が合気になって与える機会を逃すことのないよう、的確に捉えて「掛り声」とともに気合をこめて行わせる。 (5)足さばき 足さばきは、送り足を原則とし「すり足」で行わせる。 (6)掛け声(発声) 打突時に、「面・小手・胴・突き」と打突部位の呼称を明確に発生させる。 (7)残心 打突後は、油断することなく相手に正対し、間合を考慮しながら「中段の構え」となって残心を示させる。 「立会前後の作法」 ☆ 木刀を右手に提げ、下座で約3歩の距離で向かい合って正座し、木刀を右脇に刃部を内側に、鍔を膝頭に揃えて置き、互いに座礼をする。 ☆ 立ち上がり「提刀」のまま立会の間合いに進み、まず上座に礼、その後相互に立礼の後、木刀を左手に持ち変えると同時に左手の親指を鍔にかけ「帯刀」となり、相互に右足から3歩踏み出して蹲踞しながら木刀を抜き合せ、立ち上がって中段の構えとなる。 ☆ 最後の演武が終了したら蹲踞して木刀を納め、立ち上がって帯刀のまま小さく5歩退がり、右手に持ち変えて「提刀」となり相互に立礼後、上座に立礼して下座に戻り座礼して退場する。 ☆ 座礼の位置は、下座の中央が望ましい。 ☆ 正座は「左座右起」とし、座礼の両手は同時に着く。 ☆ 上座の立礼は、約30度、相互の立礼は約15度で相手に注目して行う。 ☆ 木刀の持ち変えは、概ね体の中央で行う。 ☆ 帯刀時の柄頭の位置は、正中線となりようにする。 |
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2.試合・審判 |
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(1)「有効打突」「禁止行為」「審判」 |
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(有効打突) ・規則第12条 有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。 ・細則第10条 規則第12条の「刃筋正しく」とは、竹刀の打突方向と刃部の向きが同一方向である場合とする。 ・細則第11条 次の場合は、有効打突とすることができる。 ①竹刀を落した者に、直ちに加えた打突。 ②一方が、場外に出ると同時に加えた打突。 ③倒れた者に、直ちに加えた打突。 ・細則第12条 次の場合は、有効打突としない。 ①有効打突が、両者同時にあった場合。(相打ち) ②被打突者の剣先が、相手の上体前面に付いてその気勢、姿勢が充実していると判断した場合。 (禁止行為) 第1節 禁止行為事項 ●規則第15条 禁止薬物を使用または保持すること。 ●規則第16条 審判員または相手に対し、非礼な言動をすること。 ●規則第17条 試合者が次の各号の行為をすること。 ①定められた以外の用具(不正用具)を使用する。 ②相手に足を掛け、または払う。 ③相手を不当に場外に出す。 ④試合中に場外に出る。 ⑤自己の竹刀を落す。 ⑥不当な中止を要請する。 ⑦その他この規則に反する行為をする。 ○細則第15条 規則第17条④の「場外」は、次のとおりである。 ①片足が、完全に境界線外に出た場合。 ②倒れたときに、身体の一部が境界線外に出た場合。 ③境界線外において、身体の一部または竹刀で身体を支えた場合。 ○細則第16条 規則第17条⑦の禁止行為は、次の各号などをいう。 ①相手に手をかけまたは抱えこむ。 ②相手の竹刀を握るまたは、自分の竹刀の刃部を握る。 ③相手の竹刀を抱える・ ④相手の肩に故意に竹刀をかける。 ⑤倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、うつ伏せになる。 ⑥故意に時間の空費をする。 ⑦不当な鍔競り合いおよび打突をする。 第2節 罰則 ●規則第18条 第15条、第16条の禁止行為を犯した者は、負けとし、相手に2本を与え、退場を命ずる。 退場させられた者の既得本数、既得権は、認めない。 ●規則第19条 第17条①項の禁止行為をした場合は、次の各号により、処理する。ただし、両者同時になしたときは、両者とも負けとし、それぞれの既得本数および既得権を認めない。 ①不正用具の使用者は、負けとし、相手に2本を与え、既得本数および既得権を認めない。 ②前号の処置は、不正用具使用以前の試合までさかのぼらない。 ③不正用具の使用が発見されたものは、その後の試合を継続することができない。 ただし、団体戦における補欠の出場は、別に定めのない限り認める。 ●規則第20条 試合者が第17条②号ないし⑦号の行為をした場合は、反則とし、2回犯した場合は、相手に一本を与える。反則は、1試合を通じて積算する。ただし、同時反則によって両者が負けになる場合は相殺し、反則としない。 ②第17条④号の場合、両者が相前後して、場外に出たときは、先に出た者のみ反則とする。 ③第17条④号の場合、有効打突を取り消したときは、反則としない。 ④第17条⑤号の場合、その直後に相手が打突を加え、有効となったときは、反則としない。 ○細則第17条 規則第20条の同時反則による相殺は、次の方法で行う。 ①1回目の場合は、赤・白の順に反則を宣言し、相殺する。 ②2回目以降の場合は、相殺の宣言と表示を同時に行う。 (審判) ☆規則・細則・手引きをよく読む! 剣道試合・審判・運営要項の手引き ≪審判の基本的な留意点≫ 一、有効打突 有効打突の条件は、試合・審判規則第12条に「充実した気勢」「適正な姿勢」をもって「竹刀の打突部で打突部位」を「刃筋正しく打突」し「残心あるもの」と規定されている。 打突そのものが軽くても、「玄妙な技」などは技の質として一本に取れる場合がある。 “軽いから一本にならない。”とはせずに、技の違いによる有効打突を見極めることが大切である。 安易に相打ちで済ましてしまうことがあるが、相打ちはまず無いと考えて対処しなければならない。 ☆≪主な事例の解説≫よく確認すること! |
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(2)「審判法講和における[重点事項]」 |
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審判員は、剣道試合・審判規則の理解のもとに、下記の事項に留意して、適正な試合運営に努め、試合の活性化を図る。 1.試合内容を正しく判定する。 2.有効打突を正しく見極める能力を養う。 ①有効打突の条件と諸要素の理解 ②技の違いと錬度に応じた打突の見極め 3.禁止行為の厳正な判断と処置をする。 ①行為の原因と結果の正しい見極め ②禁止行為に対する的確な処置 |
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(3)「審判員の心得」 |
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1.一般的要件 ①公平無私であること。 ②試合・審判規則、運営要領を熟知し、正しく運用できること。 ③剣道に精通していること。 ④審判技術に熟達していること。 ⑤健康体で、かつ活動的であること。 2.留意事項 ①服装を端正にすること。 ②姿勢・態度・所作などを厳正にすること。 ③言語が明晰であること。 ④数多く審判を経験し、反省と研鑚に努めること。 ⑤よい審判を見て学ぶこと。 |
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3.日本剣道形 |
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(1)A「日本剣道形における[重点事項]」 |
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日本剣道形を正しく継承し、次代に伝えることは大きな意義がある。 「講和会資料[日本剣道形]作成の大綱」の目的を十分に理解し、平素から日本剣道形の修錬に努める必要がある。 下記に留意し、修錬度に応じて、より深く高度な形を修錬し、指導することが大切である。 1.立会前後の作法、立会の所作、刀の取り扱い。 2.正しい刀(木刀)の操作(刃筋、手の内、鎬(しのぎ)使い方、一拍子の打突など)や体さばき。 3.打太刀、仕太刀の関係を理解し、呼吸を合わせ、原則として仕太刀が打太刀より先に動作を起こさないこと。 4.打太刀は、間合に接したとき、機を捉えて打突部位を正しく打突し、仕太刀は勝機を逃すことなく打突部で打突部位を正確に打突すること。 5.形の実施中は、目付け、呼吸法、残心などを心得て、気分を緩めることなく終始充実した気迫で行うこと。 |
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(1)B「日本剣道形審査上の着眼点」 |
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1.立会前後の作法、立会の所作、刀の取扱いを適切に行っているか。 2.5つの構え、小太刀の形における半身の構え、入身の所作を正しく行っているか。 3.目付け、呼吸法を心得、終始充実した気勢、気迫をもって合気で行い、段位にふさわしい、迫真性、重厚性が見受けられるか。 4.打太刀、仕太刀の関係を理解し、原則として仕太刀は打太刀に従って始動しているか。 5.太刀の形においては、「機を見て」小太刀の形においては、「入身になろうとするところを」とある、打突の時機は適切であるか。 6.各本ごとの理合を熟知し、技に応じた打突の度合い、緩急強弱を心得一拍子で行っているか。 7.打太刀は、一足一刀の間合から打突部位を打突し、仕太刀は物打で打突部位を確実に打突しているか。 8.太刀の振りかぶる度合いを心得、振りかぶり過ぎて剣先が両拳の高さより下がっていないか。 9.足さばきはすり足で行い、打突した時、後ろ足を残さず前足に伴ってひきつけているか。 10.仕太刀は打突後、十分な気位で残心を示しているか。打太刀は仕太刀の十分な残心を見届けてから始動しているか。 |
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(2)A「太刀の形一本目」 |
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~相上段から先の気位で互いに進み、先々の先で仕太刀が打つ!~ ①<打太刀>(諸手左上段) 左足を前に出し、諸手左上段に構える。 (①補足)左自然体となり、左拳を左額の前上約一握りのところとし、剣先は約45度後ろ上方に向け、やや右に寄せる。 ①<仕太刀>(諸手右上段) 打太刀の動作に合わせて、諸手右上段に構える。 (①補足)左拳を額前上約一握りのところとし、剣先は約45度後ろ後ろ上方に向け、正中線上とする。 ②<打太刀・仕太刀> 前足から3歩で一足一刀の間合に進む。 ③<打太刀> 間合いに接した時、機を見て右足から踏み出し、「ヤー」の掛声で仕太刀の正面を打つ。 (③補足)ア.機とは、相手の「心」と「体」と「術」の変わり際に起こるときの「きざし」である。 イ.この場合、打太刀が仕太刀に勝つ機会を教えているもので、仕太刀が十分になったところを見て打つ。 ウ.打つとき反動をつけることなく、仕太刀の柄もろともに正面を打ち下ろす気構えが大切である。「打つ」とは「切る」という意味である。 エ.上体はやや前倒するが、顔だけ上がる姿とはならない。 オ.目付けは外さない。「目付け」とは目と目を見合わせることが原則であるとの理から「目を見る」こととする。 カ.右足から踏み出すときは左足を伴う。一方の足を移動させたときは原則として他方の足を伴って移動させる。 ③<仕太刀> このとき、左足からひいて打太刀の剣先を抜き、右足から踏み出し、「トー」の掛声で打太刀の正面を打つ。 (③補足) ア.自然体でひき、諸手も後ろに引いて剣先方向に抜く。 イ.抜きと打ちとは一拍子で行い、物打で打つ。 ウ.左足から右足も伴って後方にひいて抜き、右足から左足を伴って踏み出して打つ。 一方の足を移動させたときは原則として他方の足を伴って移動させる。 ④<打太刀> 下段のまま送り足で一歩ひく。 ④<仕太刀> 剣先を顔の中心につける。 (④補足) ア.十分な気位で打太刀を圧しながら行う。 イ.顔に中心とは両眼の間をいい、剣先をつけるとは剣先の延長のことである。 ウ.気位とは、鍛錬の積み重ねたことによって得られた自信から生まれる威力、威風のことである。 ⑤<打太刀> さらに一歩ひく。 (④⑤補足) ア.送り足でやや前傾のまま二歩ひくことになる。 イ.その時の歩幅は仕太刀との間合いによって大小あることに注意する。 ウ.仕太刀の気位が十分に充ちたときにひくようにする。 ⑤<仕太刀> 左足を出しながら諸手左上段に振りかぶり残心を示す。 (⑤補足) ア.残心を示すとき、顔の中心に突き刺すような気勢で圧しながら行う。 イ.残心は、一本目から七本目まで形(上段または脇構えなど)の示されている、 いない、にかかわらず、十分な気位で相手の反撃に対応できる身構え・気構えで行う。 ⑥<打太刀> 上体を起こしながら、下段から上げて中段となる。 (⑥補足)仕太刀が十分に残心を示した後、中段になり始める。 ⑥<仕太刀> 左足をひいて諸手左上段を下ろし、中段となる。 |
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(2)B「小太刀の形一本目」 |
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①<打太刀> 左足を前に出し、諸手左上段に構える。 ①<仕太刀> 中段半身に構える。 (①補足) ・上段に対する中段半身の構えは、右足をやや前に出し左肩を引き、剣先は打太刀の顔の中心の高さにとり、やや高く構える。 ②<打太刀・仕太刀> 間合いに進む。 (②補足) ・互いに前足から三歩で間合に進む。 ③④⑤<打太刀> 間合いに接したとき、仕太刀が入身になろうとするので、右足から踏み出し、「ヤ―」の掛声で仕太刀の正面を打つ。 (③補足)諸手左上段から反動をつけることなく、正しく仕太刀の正面を打ち下ろす。 (④補足)目付を下げず、顔を仕太刀に向ける。 ③<仕太刀> 入身になろうとする。 (③補足) ア.入身とは、気勢を充実して、相手の手元に飛び込んでゆく上体をいう。 イ.「入身になろうとするので」ということから形に表さない。 ④<仕太刀> 右足から右斜め前に体を進めて、右にひらくと同時に左鎬(しのぎ)で受け流し、「トー」の掛声で打太刀の正面を打つ。 (④補足) ア.右手を頭上に上げ、刃筋を後ろにし左鎬で受け流す。 イ.受け流しは、手の内を柔軟にして正しく行う。 ウ.右足から右斜め前に体をひらくとき、体がひらき過ぎないように気を付ける。 ⑤<仕太刀> 左足から一歩ひいて上段にとって残心を示す。 (⑤補足) ア.上段をとるとき、剣先を顔の中心につける必要はない。 イ.確実に正面を打ってから残心を示し、反射的にとらない。 ウ.右拳は額の前上とし、剣先は約45度後ろ上方に向ける。 ⑥<打太刀・仕太刀> いったんその場で相中段になって後、互いに左足から刀を抜き合せた位置にもどる。 (⑥補足) ・小太刀の1本目だけ、その場で相中段になる。 |
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2.称号・段位 |
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(1)「審査員の責務」 | |||
●規則第7条 ①審査員は、審査に当たり、いかなる称号、段位においても、常に厳正、適正、かつ公平であらねばならない。 ②審査員は、その任務の重要性を自覚し、審査の信用を傷つけ、または不名誉となる行為をしてはならない。 ○細則第6条の2 ①審査員は、規則第7条の責務を全うするため、その公正、公平を疑われるような、いかなる言動も慎まなければならない。 ②審査員は、何人を問わず審査に支障をおよぼすおそれがあると疑われるいかなる財産上の利益の供与、若しくは供応接待を受けてはならない。 ③審査員は、審査に利害関係を有する者と審査に公正が疑われるような方法で接見または交信してはならない。 ④審査員は、いかなる審査会においてもみだりに他の審査場に出入りし、また他の審査員に対し特定の受信者を益しまたは害するがごとき言動をしてはならない。 ⑤審査員は、審査に際し、合格または不合格の意思を表明しなければならない。 |
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(2)「段位実技審査の着眼点」 |
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①初段は、剣道の基本を修習し、技倆良なる者。 ②二段は、剣道の基本を修習し、技倆良好なる者。 ③三段は、剣道の基本を修錬し、技倆優なる者。 ④四段は、剣道の基本と応用を修熟し、技倆優良なる者。 ⑤五段は、剣道の基本と応用を錬熟し、技倆秀なる者。 ⑥六段は、剣道の精義に練達し、技倆優秀なる者。 ⑦七段は、剣道の精義に熟達し、技倆秀逸なる者。 ⑧八段は、剣道の精義に通暁し、成熟し、技倆円熟なる者。 着眼点 ・初段ないし三段 ①正しい着装と礼法 ②適正な姿勢 ③基本に則した打突 ④充実した気勢 ・四段および五段 ①応用技の錬熟度 ②鍛錬度 ③勝負の歩合 ・六段ないし八段 ①理合 ②風格・品位 |
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4.健康・安全 |
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(1)「熱中症の種類、症状および予防対策」 |
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熱中症とは、高温環境に高湿度が加わると、うつ熱(体熱の放散が妨げられた状態)によって、体温上昇が助長されて体温調節機能が障害された状態を総称したもので、熱失神、熱疲労、熱けいれん、熱射病などに大別される。剣道では、夏場に発生しやすい。 最も、致命率の高い熱射病では、体温上昇、意識障害、痙攣、血圧低下、発汗中止などの症状をきたす。 予防するには、体感温度に注目して剣道場の換気に配慮し、休息を数多く取り、水分・塩分の補給を考慮する。頭痛・めまいなどを訴える者が続発するときは、練習のペースダウンや中止など早めの対応が必要である。 対処方法としては、、全身の冷却、水分補給、電解質の補給を行うことであるが、 応急処置としては、 ①全身の冷却:涼しい場所に移動し、衣服を脱がせる。水で身体をぬらし、送風する。 氷水で体表を冷却したり、頸部、わきの下、足のつけね、膝のうしろを冷却することも有効である。 ②水分の補給:水分や0.2%程度の食塩水、または、スポーツドリンクを補給する。 意識障害があるときは危険ですので、体温を下げる応急処置を行いながら救急車を呼んで病院にて治療を行う。 ●まとめ:熱中症とは ・「熱中症」とは暑熱環境で発生する障害の総称で、熱失神・熱疲労、熱射病、熱けいれんに分けられる。 ・熱中症での死亡例で、屋内競技でみると最も発生例が多い競技は、剣道である。 1975年以降7件の死亡事故が報告されている。 近年では、死亡に至らなくても医療機関を受診している例は年間数百件に及んでいる。 ●まとめ:剣道には熱中症に起こりやすい要因がある。 ①暑熱環境下での運動によって体温が異常に上昇する。 ②汗により体の水分・塩分が失われてしまう。 ・熱失神 暑熱状況下では、体温調節のために皮膚の血管が拡がる。その結果、血液がそちらに流れることにより血圧が低下、脳の血液が減尐してめまい・失神などが見られる。 対策は、涼しい場所に運び、衣服をゆるめて脱がせ、水分を補給する。 足を高くして、手足から心臓に向かってマッサージをする。 ・熱疲労 大量の汗をかいてしまい、水分の補給が追いつかない場合、体は脱水状態になり脱力感・倦怠感・めまい・頭痛・吐き気などの症状がみられる。 対策は、涼しい場所に運び、衣服をゆるめて脱がせ、水分を補給する。 足を高くして、手足から心臓に向かってマッサージをする。 ・熱けいれん 汗をかくと水と塩分を含むミネラルが失われる。大量の汗をかいた際に水分だけ補給するした場合、血液のミネラル濃度が低下し、その結果、足・腕・腹部などに筋肉の痛みを伴った痙攣が起こる。 対策は、食塩水や食塩を含んだ飲料水(スポーツドリンク)を飲ませること。 ・熱射病 暑熱環境下で激しい運動を行なうと、運動により発生した熱を体から逃すことができずに体温が著しく上昇してしまう。その結果、脳の温度が上昇して、体温を調節する部分が機能しなくなってしまう。 対策は、直ちに冷却措置を開始する。全身に水をかけたり、濡れタオルを当てて仰ぐほうが効率が良い。また、わきの下・首、大腿部の付け根等、大きい血管を冷やすのも効果が高い。 ●まとめ:予防 ①徐々に稽古の強度をあげる ②こまめに休憩をとる ③水分・塩分を補給する ④暑いときは無理に稽古しない |
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(2)剣道用具の安全管理 |
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●まとめ:はじめに ・剣道は、剣道は、自分がけがをするだけでなく、場合によっては、相手を傷つけてしまうことがある。 ・平成7年7月 PL法(製造物責任者法)が施行。製造者責任。 ・平成10年11月製品安全協会および武道関係業者を中心に剣道用具の規格が作成される。 ・剣道をする人、一人一人が安全についての配慮や注意、特に竹刀や武道具などの保守・管理を徹底することが、事故の発生を未然に防ぐ最善の方策である。 ●まとめ:竹刀の規格と安全 ・竹刀に関する事故例 ①「ささくれ」や破片などが原因と考えられるもの、②竹刀の先端部が丸ごと面金内部に突入したり、③1本または2本の竹片が瞬間的に先革から抜け出て、相手の目などに傷害を加えることがある。 ・平成11年4月剣道試合・審判規則、剣道試合・審判細則が改訂され、新しい竹刀の基準が設けられる。竹刀先端部の直径を太くすること。竹刀の重量基準引き上げ。 ・先革の長さは、50mm以上が必要。 ・中ゆいは、竹刀全長の1/4に固定。 ●まとめ:剣道具の安全 ・面金の物見部((上から6本目と7本目の間)を0.5mm太くした。 面金の物見幅15mm、高さ(面金を横にした場合の高さ)は、75mm。 |
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BY AKIRA HIRAI |