選挙制度についての試論

世界の選挙制度を大別すると小選挙区制か比例代表制かのいずれかになる。小選挙区制は二大政党制による政権選択モデル,比例代表制は多党制による連立交渉モデルを導くとされる。
そしてこの両者を止揚する制度として小選挙区二回投票制とプレミア式比例代表制が挙げられ,どちらも多党制でありながら二大グループによる政権選択を可能にするとされる。
前者はフランス,後者はかつてのイタリアで採用されたが,近年ではどちらもポピュリズム政党が台頭し,機能不全が指摘される。
そこでプレミア式比例代表制のさらなる改良を試みる。

二回投票式比例代表制
・一回投票には全政党が参加する。政党連合を届け出た場合は合わせて一党として計算する。
・一回投票での上位2党による決選投票を行う。
・決選投票に進出した党は,3位以下の党を政党連合に加えることができる。
・決選投票に進出した党が一回投票の政党連合を解消することはできないが,候補者が選挙自体から抜けることはできる。
・決選投票の勝者は,決選投票の得票率に応じた議席を受け取る。
・決選投票の敗者および3位以下の政党には一回投票の得票率に応じて残りの議席を配分する。

比例代表制における選挙後の連立交渉を残しつつ,二組の連立政権による政権世択を可能にしている。
プレミア式では3割以下の得票率で過半数の議席を得ることがあるが,二回投票式では決選投票で実際に過半数の得票を得ているので,過半数の議席を得る正統性がある。
一方,日本の憲法上,日程的に二回投票制が想定されておらず,違憲とされる可能性がある。
※イタリアでも二回投票式比例代表制が採用されかけたが,違憲とされた。

IRV式比例代表制 ※IRV:即時決選投票
・二回投票を簡略化して移譲式とする。
・有権者は政党に選好順位をつけて投票する。 ※同じ政党連合の党には移譲できない。
・第1選好の票が最も少ない党の票を第2選好の党に移譲し,上位2党になるまで続ける。
・第2選好以下を白票とした場合は移譲しないで棄権として扱う。
・移譲した結果の勝者は,移譲後の得票率に応じた議席を受け取る。
・残りの党には,第1選好の得票率に応じて残りの議席を配分する。

移譲後の得票率に基づくので,過半数の議席を得る正統性がある。
二回投票式と比較して,第3位からの逆転がありうる。
一方,選挙後の連立交渉はできず,選挙前に政党連合を組む必要がある。
ただし,与党は移譲元となった党の支持者に配慮する必要があるため,閣外協力的な立場から次の選挙では政党連合に加わる可能性はある。

※クォータ制や非拘束名簿はここでは考慮していないが,採用は可能。
※参議院の選挙については政党色を排除することが理想だが,議員としての在り方や選挙運動がまったく変わってしまうので,参議院の廃止以上に参議院議員の抵抗に遭う可能性がある。

TOP