いつも一緒にお弁当を食べているサンが欠席した日。

彩子サンも昼休みは部活のことで部長に用事があるとかで、ゆっくりはしていられないそう。

他のグループに混ぜてもらうのもめんどくさいサンは、潔く一人でお弁当を食べることにしました。

目指すは屋上。

4時間目の授業がいつもよりちょっと早く終わったおかげで、いい場所がとれそう。

そんなことを考えながら屋上に続くドアを開けたさん。

ドアを開けた途端、愛用のスポーツバッグを傍らに置き

屋上のど真ん中に陣取って眠りこける流川くんを発見してしまいました…。













『…授業サボってるっていうのに…悪びれたところは微塵もないのね…』













「ちょっと流川!起きなさい」

「……………」

「流川!!」

「…何人たりとも…オレの眠りを妨げるヤツは許さん…」















声をかけたぐらいじゃ起きそうもなかった流川くん。

サンに軽く頭をはたかれてようやく覚醒…。

でもまだ寝ぼけてるんですね。

むくりと起き上がったと思ったら…

よりにもよって、サンに向かって言っちゃいました。アノ台詞!!!















「…誰を許さんですって…?」

「……む…センパイ…?……なら許す…」

「…あっそ…」















付き合ってられないとばかりに、サンはさっさとフェンスの方へ行ってしましました。

フェンスに背中を預けて座り込み、持ってきたお弁当をヒザの上へ。

それを見て、ようやく今が昼休みだと理解した流川くんは、自分もサンのところへ移動します。













「一緒に食う…メシ」

「そう?じゃ、食べよ」













サンはさっさとお弁当を開きます。

サンのお弁当は、ごく普通の2段ランチボックス。

一段目にはおかずが、二段目には小さなおにぎりが二つ入っていました。

なんだかとってもおいしそう…















「…パン…好きっすか?」













サンのお弁当を見つめながら、流川くんが言いました。

















「パン?…嫌いじゃないけど…」

「んじゃコレやる」

















流川くんは自分のスポーツバッグの中からコンビニの袋を取り出して、サンに差し出しました。

サンが中を覗けば、それはパン。

いろんな種類の調理パンが合計6つ入っています。















「何コレ」

「…コレ…センパイにやる。だからソッチ…くれ…」

「…お昼交換しようってこと?」

コクリ

「……………」

「…オレ…そっちがイイ…」

「…別にいいけどさ…」















というわけで交渉成立。

コンビニの袋を受取ったサンは、自分のお弁当を流川くんに渡しました。

そして中からハムと卵のサンドウィッチを一つ取り出し、残りは流川くんへ返します。















「…そんだけ?」

「…普通6個も食べられないから」

「オレ食える」

「…自慢気だね…?」















なにはともあれ、ようやくランチタイムです。

流川くんはサンのお弁当をいただきます。

卵焼きが「だし巻き卵」だとか…イカリングが冷凍モノじゃないとか?

こう見えても「違いのわかる」流川くんは、いちいち感心しながらお召し上がりになっています。

予想以上においしかったので、仕切り代わりのレタスや飾り用のパセリも全部いただきました。

もちろん…サンサイズのお弁当じゃ足りないので、さんが返してくれたパンも食べたけど。















「…ゴチソーサマデシタ」

「はい、お粗末様でした。おいしかった?」

「…んまかった。また食いてぇ」

「そう?じゃあまた今度交換しようか」

「…から揚げ食いてぇ」

「あ、リクエスト?」

「あと…春巻きと…フライと…肉団子と…」























次々と好きなものをリクエストする流川くんを、サンはちょっと笑いながら見つめています。

あんまりいっぱいありすぎて、きっと何度も流川くんとお弁当を交換することになるだろうなーと思いつつ…

それでもどこか嬉しそうなサン。

「交換」じゃなくて、流川くん用にお弁当を作ってあげてもいいかな? 

 なんて思ってるんですよ、きっと。





















「あ…あと、オムライスも…スキだ」

「や…それお弁当にはちょっとね…」

「…じゃあカレー…」

「もっと無理」

「…すき焼きは…?」

「…流川が鍋とコンロ持ってくるならね…」

「む…」























…どうやら後半のリクエストは無理そうですね、流川くん。














後書き

ああ…個人的には楽しかった…



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