「よお…

「ん、なーに?」

「お前さ、オレと結婚する気あるか?」

「え…」











付き合いだしてから毎年欠かさず来ている花火大会の夜。

いくつになっても打ちあがる花火に感動して大歓声をあげるに、オレが言った言葉。

花火に釘付けだったの視線がオレに向く。











「寿…?あたしさ…もしかして今、寿にプロポーズされ…てる?」

「ッ…たりめーだろ!それ以外の何だってんだよ!!」

「だ、だって…急に言うからびっくりしたんだもん!」

「バカかお前…。予告してからプロポーズするヤツなんかいねーっての!」

「それは…そうなんだけど…」

「で?結婚する気あんのか?」

「も、もちろん!!!」

「おし!決まり」



















オレのプロポーズなんてあっさりしたもんだった。

「恋人」だったが「婚約者」になってからの半年間は、

普段どおりに見えてもなんか照れくさい…実に妙な気分だったな。

お互いの両親に挨拶して、式場決めて新居決めて、あっちこっちに招待状出して…

めまぐるしく過ぎ去った半年間。

それを何とかクリアーして…オレとはいよいよ明日、結婚する。



























式場は、の希望で小さな教会。

両親と友達だけ呼んだ質素な式。

親父さんとバージンロードを進んできたの手をとり

みんなに見守られらながら、オレとは祭壇の前に立った。













「 汝、その富める時も、貧しき時も、病めるときも、健やかなる時も、

妻を愛し、敬い、慰め、助け、その命の限り堅く節操を守ることを誓うか?」

「誓います」

















厳粛な空気の中での誓約。

ガラにもなく…神聖な気分だぜ。

ダレだ?

オレに節操なんか守れねぇって疑ったヤツは!





























「 汝、その富める時も、貧しき時も、病めるときも、健やかなる時も、

夫を愛し、敬い、慰め、助け、その命の限り堅く節操を守ることを誓うか?」

「……ッ………」



























誓約に無言でうつむく。突如、参列者がざわめき出す…

ギクッとした。

話ではよく聞くアレだろ?

新婦が感動して泣いちまって…言葉が出ねぇって。

そういやこういうときは、そっとハンカチ差し出せって言われてたっけ?

まさかコイツがそんなタイプだとは思ってなかったな…

ハンカチで涙を抑えてやる?チッ…恥ずかしいじゃねえか!!!













つってもまあ…しょうがねー。

オレは内ポケットに忍ばせてたハンカチを取り出して、のほうを向いた。

も同じようにしてオレと向き合い、顔を上げた。



































あ?コイツ…泣いてねぇぞ?



































「…寿…ごめん!!」

「は?」

「あたし…あたしやっぱり寿とは結婚できない!」

「ッ!…なにぃ?!」

「マジごめん!あたし、寿より好きな人がいるの。だから…」

「だ、だれだそいつぁ!オレの知ってるヤツなのか?」

「それは…」





















厳粛なはずの教会で、突如始まった痴話ゲンカ。

だけど今のオレには、うろたえる牧師の姿も騒ぎだす招待客の姿も目に入らねぇ。

オレより好きな男がいるだと?!

チクショウ…ふざけんな…

出て来い!勝負しろ!!!







































!!」































まわりのざわめきをかき消すほどの声で、の名前を呼んだヤツがいた。

その場にいた全員の視線がその声の主に集まる。

テメぇか!オレの恋敵は!

オレよりいい男だったらただじゃおかねーぞ…

じっくり顔を拝んでやろうじゃねーかッ!

















オレ様からを奪還すべく、ソイツは客席から立ち上がり、バージンロードへ飛び出してきた。

すっかり頭に血が上ってるオレには、その声が男のものか女のものかも区別できなかったらしい。

お、お前は…!!

































「なッ…だとォ ?!」

〜!!」

























オレの隣から、に向かって駆け出した。

両腕を広げて迎えるの胸に思い切りダイブしたは、しっかりとに抱きつく…

















「ごめんね。あたしやっぱりが一番好きなのッ」

「いいのよ。そんなこと、わかってる。を幸せにできるのは私だけだもの」

「ありがとう!大好き〜!!」

「三井先輩?は返してもらいますね。このコは私のですから。では、私たちはこれで」

「バイバイ」















勝ち誇ったような笑みを浮かべるの隣で、はオレに向かって手を振る。

くるりとオレに背を向けて…仲むつまじく手を繋ぎ、時折見つめあいながら教会を出ようとする

あまりのショックに呆然と立ち尽くしていたオレは、危うくそのまま見送るところだった。























の本命は

オレはに負けたってのか??





























んなワケあるかバカヤロウ!!!



































「「ちょ、ちょっとまてコラぁぁ!!!!!!」」























































自分の叫び声で目覚めた朝。

カーテンを閉め忘れた窓から降り注ぐまぶしい朝日は…すがすがしいじゃねえか…































「…な、なんだったんだ…夢か?ありゃぁ…」





























おかしな夢のせいで無駄に早起きしちまったオレは、いつもより早めに家を出た。

校門に寄りかかり、待つこと30分。

いつもどおりの時間にが登校してきた。

隣は…チッ…やっぱりかよ…











なに話してんだか、はいつものテンションで

身振り手振りを交えてに話し掛け…ときおりその腕に抱きついたり?



























ありゃ夢だ

んなことはわかってる。







































「あ、寿だ!!おはよー。今日は早いね?」

「おはようございます、三井先輩」

















ようやくオレの前までたどり着いた二人。

ちょっと頭を下げてオレに挨拶をするは…いつものだ。

の「ただの」幼馴染で、あの流川の彼女…。

けど…

夢だろうと何だろうと、負けっぱなしじゃオレの気がすまねぇんだっつーの!

























!」

「…はい?」

「おめーにゃ負けねえからな!」

「…はぁ…?」





















昔取ったなんとやらで睨み一発。

びしっと宣戦布告をしたオレは、の手を取って先に校門をくぐった。

その場で固まるはほっといて、をつれて体育館の裏までダッシュ。

夢でも何でも、の本心を聞くまでは落ちつかねぇ

ここはやっぱ、直接聞くんが一番だよな?

頑張れオレ!!!



























「な、なに?寿、どうしたのよ?」

…お前、オレと結婚する気あるか?」



































































「…えー…わかんない」





















































…あっそ…

























後書き

…あっそ…

おかしいな…一真はみっちーが一番好きなはずなのに…。
なによりこの終わり方ってあり???
ひどいわ〜一真サン!!
頑張れみっちー!!


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