「なあ、腹へらねぇ?」

「お腹空いたの?じゃあなんか作るね」



















事の起こりはこの会話だった。

久しぶりにのうちに遊びに来て、二人でまったりしてたのはいーけど…

オレの正確な腹時計が、そろそろ昼時だと言いだした。

確か今日は、親御さんが出かけてるって言ってたし…うまくすりゃコイツの手料理にありつけそう?

とか思ってな。

案の定、はオレのためにスペシャルランチを作る気になったようだ。

計画的犯行。

さすがオレ!

















リビングまで一緒に行って、が台所に消えてから20分もすると

なんか…うまそーな匂いがしてきたな。こりゃー期待できんじゃねえか?

悶々と…って意味違うか?

まあとにかくそんな感じで待つこと40分。

ついにが特製ランチを持ってリビングへ現れた!

















「たこ焼き作ったの。食べて?」

「………」















変な丸い形で…ソースの匂いと踊るカツオブシが食欲をそそる…確かにたこ焼きだ。

たこ焼き…キライじゃねーけどな。

とりあえず腹も減ってるし…食うけどよ。

んでもよ…彼氏に初めて食べさせる手料理だぞ?





















「おいしいでしょ」

「うめーけど…もっとなんかねえのかよ」

「ん?」

「縁日じゃねーんだぞ?もっとこう…色気のある…」

「料理に色気って関係あるの?」





















いや…確かにそうなんだけど…

オレとしてはこう…パスタとかグラタンとか…そういうのを期待してなくもなかったわけで…?

そりゃたまにはたこ焼きもアリとは思うけどよぉ。

たまにコイツのセンスがわかんねぇ…。



















「なに変な顔してるの?たこ焼き冷めちゃうじゃん」

「…………」

「はい」

「…あ?」

「ほら、あーんして?」

























爪楊枝に刺したたこ焼きを、はオレの口元へ…?



















「あぁ!!はやくはやく。落っこちちゃう!!」

「お、おう」





















に急かされて、思わず開いたオレの口に放り込まれたたこ焼き。

それを食うオレを見ながらなぜか嬉しそうな顔で笑うがなにやら呟いた。

聞き取れはしなかったけどな。





















「へへ。コレがやりたかったんだよねー。実は」

「んあ?」

「あ、もう!食べながらしゃべらないの!行儀悪いでしょ!」

「…おう…悪い…」

「よろしい。じゃ、次どーぞ」

















テーブルの角を挟むようにリビングの床に並んで座ってるオレと

はテーブルに頬杖つきながら、タイミングを見てオレにたこ焼きを食わしてくれる。

胡座かいたままで口さえ開けばいいなんて…今のオレってちょっとガキくせぇか?

照れくせぇところもあるけどよ…のヤツがすげー楽しそうにしてるから

なんとなくヤメロとは言えねぇ雰囲気。

まあオレだって…別にイヤってわけじゃねーしな。



















「ごっつぉーさん。まあ、うまかったぜ?」

「本当?よかった!じゃあまた作ってあげるね。おやつ系なら得意なの!」

「あーなるほどな」

「ん…なに?」

「お前ってさ、メシって作れねーんだろ?」

「…うっ…ち、違うもん!!」



















…慌ててやんの、のヤツ。

やっぱ図星かよ。

















「あ、あたしだってホントはゴハンぐらい作れるんだけどね!!
ただちょっとよその人に食べさす自信がないだけでぇ…」

「あ?ナンカ言ったか?最後が聞こえねーなぁ」

「っくぅ…!!寿のバカ!!!!!!!!」

「ぶっ…あっははははは!!!」















あー…笑いすぎて腹痛ぇ…

のヤツはすげー顔してムクれてるし…ちと笑い過ぎたか?















「よお、台所借りんぞ?」

「え…いいけど…なんで?」

「たこ焼きの礼に、オレ様が最高に美味いコーヒーでも淹れてやるよ」

「え、ホント?!」

「おー。ちと待ってな」



















んちの道具を勝手に拝借して、コーヒーを二人分。

つってもペーパードリップだけどな。

ちょっとしたコツがあんのよ。







使う湯は沸騰してからちょっと時間を置いたもの。

少しの時間でもいいからコーヒーを蒸らすのが大事だ。

円を描くようにフィルターに湯を入れ始めたら…湯の量は常に一定に保つ。

最後は…必要な分のコーヒーが出来たら、湯が全部落ちる前にドリッパーを外す…

そうすっと、変なアクが出ねーんだよな。

















「出来たぜ。『寿スペシャル』だ」

「…寿スペシャル…」

「いーから飲んでみ?」

「うん…」















ネーミングにはちょっと文句ありそうだけど、は素直にコーヒーを口にする。















「あ、おいしいかも!」

「うめーんだよ」

「へ〜。意外な特技…。コレどうやるの??」

「企業秘密」

「えー、ケチ」

「うっせー」

「いいじゃない!教えてよ〜」

「メシがうまく作れるようになったら、考えてやるよ」

「う〜ん…あたしも、やっぱ少しは料理しようかな…」

「お、いいんじゃね?しょうがねーからオレが味見してやってもいいぜ?」

「よ〜し!寿を実験台にして、おいしいものいっぱい作れるようになってやる!」

「実験台かよ!オレまだ死にたくはねーぞ?」

「む!そんな危ないモノは作らないし!」

「どーだかなぁ…」

「ムカツク!!!今に見てろぉ!!」













オレが淹れたコーヒーを飲みながら意気込む

口ではなんだかんだ言いながらも、がどんなもん作ってくれるのか…

実はオレ、ちょっと楽しみだったり。

やっぱ彼女の手料理ってのは、男にとっちゃある意味「夢」みてーなもんだかんな。


















なあ

オレ様のためにも、せいぜい精進しろよ?












後書き

三井って…大好きなんだけどうまく書けない…





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