「あ〜、お腹いっぱい!」

「そりゃおめぇ、あんだけ食えばな。…と、そろそろ出るか?」

「うん」

















久しぶりに寿とデート。

今日は映画を見に行きました。

で、その帰りにファミレスで夕飯を食べたあたしたち。

















いつもあたしと寿の『愛の軌跡』を辿ってくださっている皆様、こんにちは。

あたし、です。

寿と付き合うようになって、毎日が幸せいっぱい!

でも…ちょっとだけ不満もあるんです。

例えばそれはこんなとき…

















「わッ…」

「ッと…おい!あぶねーだろ!」

















ファミレスを出ようとしたあたしと寿。

二人が同じタイミングでドアを潜ろうとするせいで、いつもこうしてつっかえちゃう。

一度や二度じゃないんですよ…。

そう、寿に対するあたしの不満はこれ。

寿は「レディファースト」がなってない!ってこと。

















これがうちのパパさんならですよ?

自動ドアなら脇によけて、手動のドアなら扉を開けたところで

さりげな〜く、あたしやママさんを先に通してくれるんです。

もちろん外でだけじゃなくて、家の玄関だったり車のドアだって開けてくれたりする。

一緒に歩く時だって、あたしやママさんが急がなくてもいいように、

パパさんのほうが一歩後ろを歩いてくれます。

間違っても寿みたいに、「おせーよ!」なんて言ったりしません。

そういうのを見て育った弟だって、パパさんほどじゃないけど、中三にしてすでになかなかのジェントルマンです。

女の子を褒めることはあっても、絶対に貶したりしない。

もちろん、うちの家族のほうがちょっと特殊だっていうのはわかってる。

だけどあたしは16年間、そういう家庭で育ってきたの。

だからどうしても、あたしに対する寿の態度は納得できない!

もう少し、あたしのこと大事に扱ってくれてもいいのに…。

















「おら、とっととこねーと置いてくぞ!」

「え…もう!ちょっと待ってよ…ッ!」

















はぁ…これだもんね。

結局先に店を出たのは寿の方。

心の中でちょっとため息なんかついていたあたしは、そのせいでちょっと出遅れてしまう。

寿の男っぽいところは大好きだし、口調が乱暴なだけで怒ってはいないこともわかってるけど。

ちょっと遅れたぐらいで、別に怒鳴ることないじゃんッ!



















「寿ってさ…優しくないよね」

「あ?」

「少しはあたしを労わろうっていう気、ある…?」

「はぁ?」

















寿に追いつくために小走りする羽目になったあたしは、とうとう寿に対する愚痴を口にしてしまった。

付き合いだすと、相手の嫌なところが見えてくるっていうのは本当だと思う。

あたしはあまり細かいことを気にするタイプじゃないはずなんだけど…欲張りになってるのかな?

最近は寿の「優しくない」部分がすごく気になってさ。

「男っぽい」寿のことが好きだって言ってたくせに、こんなことを寿に望むなんて矛盾してるよね。

あたしが寿の態度に不満を持ち始めたように、寿もあたしに対して「話が違う」とか思うんだろうな…。

















「なんだよ、労わるって」

「レディーファーストって言葉知らないの?男の人は女性に優しくなきゃダメなの!

お店のドアぐらい、開けて待っててくれてもいいじゃない」

「お前なぁ…どこぞのお嬢サマみてーなこと言ってんじゃねーよ」

「あたしはお嬢様なの!」















うん、それは嘘じゃない。

文句があるなら、あたしをそういう風に育てたうちの両親に言ってちょうだい。

















「つったってなぁ…オレにそんなマネできると思うか?」

「努力してくれたっていいじゃん!」

「やだね。ガイジンじゃあるめーし」

「ガイジンって言っちゃダメ!外国人でしょ!…とにかく、好きな子には優しくしてあげたいとか思わない?普通」

「日本の男にはなぁ、日本の男のやり方っつーのがあんだよ!」

「なにそれ初耳!」

















売り言葉に買い言葉?

あたしも寿もムキになって、半分ケンカ腰。

歩道の真ん中でいがみ合うカップルを見る周りの目は好奇心丸出しで。

みんな何事かと振り返る。

それに気付いた寿は乱暴に頭を掻いて…でもすぐに頭は冷えたのか、大きなため息をついた。

そしてあたしを促して歩き始める。















「こりゃぁ…うちのじーさんが言ってんだけどな。日本の男が女を従えたがんのは、女を守ってるかならんだと。」

「…なによそれ…」

「女を後ろに置いとけば、いざっつーとき自分が盾になれんだろ?」

「そんなの時代錯誤すぎ…。第一、自分が危ないじゃん?」

「まーな。けど、おめぇが言う『レディーファースト』も、

要は大事なもんを飾っとくかしまっとくかの違いなんじゃねーの?大事にしてんのは一緒だ」

















今日の寿は…なんか「頭いい人」みたいじゃない?

寿の言葉に、妙な説得力を感じてしまうんですけど…。

















「じゃああたしは、大事に『しまっとかれてる』わけですか?」

「ま、そういうこった」

「…守ってくれるんだ?」

「おーよ」

「なんか軽いなぁ…」

「あ、さてはおめぇ信用してねえな?任せとけって。バッチシ守ってやっからよ」

「…うそくさーい!」

「んだとぉ!?」

















とか何とか言いながら?

寿の腕に抱きついちゃってるあたり、あたしは嬉しいんだと思います。

大事にされてるならまぁいいかなぁ〜なんて、あたしも単純だ。

















「ね、寿?大事にしまっといてくれるのもいいけど…時々は飾ってよね?」

「あ?…気が向いたらな」

「む〜…」



















ま、いいや。

期待しないで待ってみることにします。



























【おまけ】



























「宮城とかは、思いっきり『飾っとく』タイプだよね?木暮先輩とかも?」

「あ〜…だな」

「赤木先輩は『しまっとく』タイプ?」

「赤木が飾ってたら恐ぇって!」

「…そうかも…。楓も『飾る』のは無理そうだよね?のこと『しまってる』のかな、やっぱ。

あ、それかが楓を『飾って』そう!」

「そりゃおめぇ…『飾ってる』つーか、が流川を『見張ってる』じゃねぇ?」

「うまい!寿に座布団一枚!」

「いや、二枚ぐらいの出来だな」

















ちょうどその時

さんの部屋で昼寝をしていた流川と、その脇で宿題を片付けていたさんが

同じタイミングでくしゃみをしたとかしないとか…









後書き

みっちーの「男気」を書きたかったはず。



モドル