《 寿〜!一時間目ね、数学なんだけど自習になった! 》






 《 次体育なんだけどさ〜、スポーツテスト。外でやるから寿の教室から見えるかもね〜 》






 《 体育のあとのクラシックの鑑賞って…眠い…zzzz…。

寿はちゃんと起きてる?んー、寝てるほうに1000円! 》






 《 おなか減ったぞ!今日、お昼一緒してもいい?にふられちゃったよ〜。

昼休み委員会の仕事だって。一人でお昼ご飯はイヤダ〜!!! 》


















四時間目終了のチャイムで目が覚める。

睡眠中に固まった体の筋肉をほぐそうと首を回しながら、三井は制服のポケットから携帯を取り出した。

予想通りに新着メールあり。それを開けば、からのメールが4通届いていた。

付き合いだしてそろそろ一ヶ月のかわいい彼女はメールが好きらしい。

アドレスを交換してからは毎日メールを送ってくるし、最近ではその数が増えた。

暇さえあればメールを打っている様子…。

それでも、自分はあまりメールをするほうではないと言ってあるので、貯まったメールを見てもあせったりはしない。















《 おう、屋上でな 》
















一通りメールを読んで返信した三井は、弁当を持って屋上へ向かう。

あくびしながら屋上のドアを開ければ、フェンス越しに景色を眺めていたが振り向いて手を振ってくれた。

フェンスに背中を預けるようにして並んで座り、それぞれの弁当を広げる。















「くぁ…」

「あ、あくび」














天気もいい。空腹も満たされた。眠気が襲って来るのも当然だろう。

部活で毎日精根尽き果てるまで練習している三井にとって昼休みは体力充電の時間。

もそれはわかってくれているから、普段は昼食も別々に取る。

こうして昼休みに会うのもたまにのこと。

















「寝てもいいよ?予鈴なったら起こしてあげる」

「あ?…寝ねえよ」

「でも眠そうだし」

「まあな…」
















せっかく二人でいるのに寝るのも気が引けた三井だったが…

食べ終えた弁当箱をカバンに戻したは、携帯を取り出した。

誰かにメールを送ったり、ゲームで遊んだり…一人の世界へ旅立つ…

















「お前さ〜、メール好きだよな」

「うん、好き。だから寿にもいっぱい送ってるじゃん。

本当に、無理しないで寝ていいよ?なんなら膝貸すし」

「マジで?それはなかなかおいしいな…」

「10分1000円」

「金とんのかっ!しかも高ぇ!」

「当然。誰の膝だと思ってる?」

「ぜってー借りねぇ!」
























疲れている自分に、気を使ってくれているんだろうと思う。

部活のあとに一緒に帰れば、「コンビニでなんか奢れ!」とか言われるけれど、

膝枕にも金を請求されるけど…

は三井が困るようなことなど絶対言わない。

































本当はもっと、に振り回されるかと思っていた。

女は我侭言うもので…それがならなおさら。

気が強くて、言いたいことははっきり言うタイプのだから。

もっと会いたいとか、もっとかまってほしいとか…言われると思っていた。
















だけどは何も言わない。

たまに部活が休みになっても、三井が誘わない限りは…は何も言わない…

結構夢中になって携帯をいじっているを見つめながら、三井は口を開いていた。

本当はずっと聞いてみたかったこと。



















「なあ…お前さ」

「んー?」

「さみしくねえ?オレ、あんまお前にかまってやれねえし…」

「んとね〜…」





































































「さみしいよ」























































は三井に視線を移し、なぜか笑った。その答えは笑って言うものだろうか?

の考えがわからない…
























「…さみいしいならそう言えよ。オレ頭悪ぃから、が言わねえとわかってやれねーぜ?」

「うん。限界ぽかったら言うよ。今はまだ平気かな」

「…我慢してるってか?」

「我慢…とはちょっと違うかな?

会えない恋愛っていうの、楽しんでるもん。ある計画に夢中だし」

「あ?計画??んだよそれ…」

「んー…そろそろいいかなあ?…へへ。ね、ちょっと携帯かして?」



















言われるがままに携帯を手渡す三井。

は笑顔を浮かべながら三井の携帯をなにやらいじって…





















「あぁ!…小暮さんが…」

「はあ?小暮だぁ?」
























突然笑顔を曇らせるは本当に悲しそうな顔で携帯の画面を三井に見せる。

見ていたのはどうやらメールの受信履歴。






















「…『メールの履歴をさんで埋めちゃおう計画』が…失敗だー!!!!」

「なんだそりゃ!」

「いやね…ここを、あたしの名前でいっぱいにするつもりだったし」





















受信履歴を指さす

最近やけにからのメールが来るようになったのはそういうわけだったらしい。

三井の携帯は履歴が20件ごとに表示されるタイプで…20件中19件がのもの。

残りの1件には小暮の名前が…。

そういえば…昨夜、小暮からメールをもらった。貸していたノートを返せという催促のメール…






















「もーっ!!また最初からやり直し!!!」

「はあ?またやる気かよ」

「うん!だってさ、たまたま履歴開いたとき、

ここがあたしの名前でいっぱいになってたらちょっとうれしいもん」




















しきりに残念がるの手から、彼女の携帯を取る三井。

同じように受信履歴をみたならば、トップにあるのは三井の名前。おそらく先ほど送ったものだ。

それ以外には…と彩子の名前が多く、他の知らない女たちの名前に混ざって

たまに宮城の名前と自分の名前がある程度。















「あー…」















ため息交じりの声を上げる三井。

履歴を見て感じたこと。

がメールをくれる回数に対して、自分が返すメールの数が極端に少ないこと…。

おまけに、返信するばかりで自分からはメールをしたことがないという事実も判明。

そのことをが咎めたりしないものだから気づかなかった三井だが…

これはちょっとひどいのではないかと反省中…。

















の携帯。

たまたま開いて、履歴の名前が自分でいっぱいだったら…確かにうれしいかもしれない。























「悪かったな…」

「なに?」

「メール。オレあんま返してねぇ」

「いいんじゃない?だって、寿はあんまりメールしない人なんでしょ?

これはあたしが好きでやってることだし」

「そうだけどよ…」



















三井が差し出した携帯を受け取ってカバンへしまうと、は座ったまま体ごと三井のほうを向いた。























「寿はさ、気が向いたときにメールくれればいいよ。

あたしは好きで寿にメールしてるけど、

いちいちそれに付き合ってたら 嫌になるでしょ?

嫌々メールされても、あたしだってうれしくないし」

「ん…」

「あたしがメールいっぱい送るの…嫌かな?見るのも面倒?

だったらそう言ってね、すぐやめるから。別に嫌がらせで送ってるわけじゃないし…」

「別に嫌じゃねーよ」

「本当?よかった!!…実はちょっと心配だったんだよね〜。

寿…うざいとか思ってないかなーって」

「思ってねーよ、んなこと。けっこういいと思ってるぜ?

オレら…確かにあんまゆっくり会えねえけどさ、

 が何してんのかとかわかるし。浮気してねーなとか思って安心…」





























そうだ…。自分で言って気がついた。

…なかなか会えないから…はメールをするのだろう。

さみしいと口にしたの、それを紛らわせる手段だったのだ…



















!!」

「は、はい?」


















急に大声で名前を呼ばれ、肩をつかまれたは驚いて返事を返す。






















「悪かった!オレも、やっぱメールするわ」

「え?だから、無理しなくていいって…」

「無理じゃねえ!」

「え?」

「お前…寂しいって言ったよな?」

「う、うん…」

「あんまかまってやれねえけど、メールは毎日する!約束だ。

それなら少しはさみしくねえだろ?」

「寿…。うん…ありがとう。でも無理はしないでね?

本当に、気が向いたときだけでいいから」


















そう言って笑うだけれど、その目がほんの少し潤んでいるのは三井の気のせいではないだろう。

予鈴がなってお互いの教室に戻った二人。























『あっ…』




















五時間目が始まってすぐにの携帯が震えた。履歴の名前はもちろん 






















三井寿


















『…ほんとにメールくれた…』




















三井からの、返信ではない初めてのメール。ちょっと緊張しながら開いてみる。






















《 オレつぎ古典。寝るわ 》









『寝るんかい!!てかそれだけ??』



























色気もそっけもないメールだけれど

心の中で突っ込みも入れたけど









やっぱりうれしい。




















《 寝てばかりいると来年は同級生かもよ?それはそれでうれしいけどさ♪ 》






















本当に寝たのだろう。返信はない。

メールをしないほうだという三井がはじめてくれた短いメール。

表示させて眺めているだけで…なんだか心が温かい。






















、なにニヤニヤしてるんだ?黒板に出て問題解きなさい」

「あ、はーい先生」




















携帯を机にしまって立ち上がる





















メールは相手といつもつながっているという幸せを味合わせてくれるもの。

メールを考えた人、エライ!!!








後書き

やったw初めて一話で終われた!
でも一応連載の形をとっているんだから…一話で終わらなくてもいいのか??

一真は携帯のメール嫌いです(爆)
PCならいいけれど、携帯は文字打つのがめんどくさくないですか??
まあ、PCを所有する前はさんのように携帯メール打ちまくってましたがw

2004・5・8


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