最近愛用しているのは、蜂蜜の成分が入った薬用リップクリーム。

唇が乾いてるかな?って思ったときにつけると、よく効くんだ。

たまに、サランラップを使って唇パックだってしてるよ?

だからさ、自分で言うのもなんだけど…あたしの唇は最近いつだって絶好調。

けっこういい感じだと思うんだよね〜。

これはぜひ…寿に味わってもらいましょ?



























「10分休憩!このあとは紅白試合よー!!」





















彩子の声とともに、湘北高校男子バスケ部は休憩時間に突入。

いつものようにギャラリーで練習風景を眺めていたは、と一緒に下へ降りて行った。

三井と付き合うようになってからは、休憩時間を二人で過ごすのが日常になっている。

今日だって、彩子からドリンクを受け取った少々バテ気味三井と一緒に裏庭へと向かった。

だんだん暑さが厳しくなる季節。

体力に自信のない三井は少しでも涼しい場所を求めて、裏庭にある木陰で休憩時間を過ごすのだ。























「うぇ…あちぃ…」

「はい。いつものヤツ」

「お。さんきゅ」























が渡したのはアイスノン。

暑い暑いと騒ぐ三井のために、は毎日登校すると調理室へ直行。

勝手に冷凍庫を開けてアイスノンを凍らせる。部活が始まるぐらいに取りに行けば、

休憩時間には程よく溶けて、三井の頭にピッタリフィットなのだ。

アイスノンを頭に載せて、その冷たさを堪能している三井。

はその隣に腰を下ろして、練習の感想だとか今日あったことだとか…他愛のないことを話す。

いともと変わらないその光景。それを壊したのはが言った予想外の一言…





















「寿にキスしてみたい」





















別にそんな色っぽい雰囲気になったわけじゃない。

今まで話していたのはが新しいリップクリームを買ったっていう内容だったはずなのに…

























「ね?ダメ?」

「ダメじゃ…ねえけどよ…」

「けど?」

「なんで??」





















恋人との初めてのキスは、たとえそれが人生においての「ファーストキス」じゃなくても感慨深いもの…

つき合ってそろそろ二ヶ月が過ぎるし、三井だって…そろそろ…とか思ってなかったわけじゃない。

ただ、二人でいると会話が盛り上がりすぎて、全くそういう甘い雰囲気にならないだけ。

だったら…







「そろそろキスするか?」







なんて一言言えば







「そだね〜。いいよー」







って軽くOKしてくれそうな予感もしたが…こんなのってアリ?



































『デートの帰り、夕暮れ迫る公園で…』とか







































『部活のあと、星空の下…人気のない夜道でひっそりと…』とか











































『どちらかの部屋で、不意に会話が途切れて…』とか





































三井的「甘いシチュエーションプラン」というものも一応あったわけで…

急なの申し出には、嬉しいよりも驚いたというのが三井の本音。































「今さ〜、唇の調子よくて。寿も気持ちいいと思うのよ。」

「…おまえねぇ…」

「まあ…あたしもそろそろ寿とキスしてみたいってのが本音なんだけどさ。ねぇ、だめ?」





























こういうことは男から…と思わなくもなかったが…

女にここまで言われて断るのも、男としてどうかと思うわけで…





















「チッ…しょうがねーな…」

「いいの?やった!」

























三井的には「キスへの誘い」という男の見せ場をに奪われてしまったわけで。

名誉挽回とばかりにキスは自分から…と、三井が体勢を立て直したとき

先に相手の頬を捉えたのはの方だった。

すべすべの手で頬に触れられて…気持ちいいなと思う間もなく

次の瞬間にはの「最近調子のいい唇」とやらが三井の唇に押し当てられていた…





















『あ…気持ちいいかも…』





















暑さと練習中の発汗のせいで渇き気味の三井の唇を覆うそれは

しっとりとしたいい感触。

あんまり気持ちいいものだから、三井の両腕は無意識にを抱きしめる。

の方も、本当はもう目的を果たしたはずなのに離れがたくて…

三井の頬を捉えていた手を解き、彼の首に腕を回してみたりして。























『なんか幸せかも』



















名残惜しそうに二人が離れたのは、そろそろ部活も再開されるという頃。

























「気持ちよかったでしょ?」

「おう。まあまあじゃねーの?」

「まあまあって何よぉ!寿のバカ!」

「あ?バカって言うな!」

「なにさー!バカバカバカー!」





















さすがに二人とも照れくさそうだけど、しっかり繋がれたその手を見れば

お互いの気持ちが一緒だということはよくわかる。

練習が再開して、それを見つめるの顔がずっと緩みっぱなしだったとか

前半ですでにバテていた三井が急に元気になっていたということは

言うまでもないね。








後書き

とうとうキスまできたけれど…甘くなくてごめんなさい(汗)
唇の調子がいいとキスしたくなるのは一真も同じですw
お肌の調子がいいなら「触って〜」とか言えるけれど、唇となればやっぱりキスでしょう!


2004・6・16



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